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  • 黒猫なわたし

たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ

黒猫なわたし

最終更新:2009年09月26日 02:48

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管理者のみ編集可
 あー。
 どうしよう。

 どーしよー。

 だって…。だって、ほら…頭と、ね? しっぽ。おしり…。

 しょーがないのかなぁ。
 2度あることは3度あるって、言うじゃない?

 って…。
 まだ2回目だけど…。


                         □                           □


 なんとなく目が覚めた。
 隣にいる美貴ちゃんは気持ちよさそうにスースー…って。
 寝顔、かわいいんだよねぇ。
 昨日がオフだったから、今日はお泊り。
 美貴ちゃんってほら、自分でもインドアっていうくらいおウチ大好きさんだから、1日DVD見て、なんとなくゴロゴロしたり、お昼寝したり。
 だけどあたし、そのときも寝た振りしてしばらく寝顔眺めてたんだけどね。
 あとね…ふふふっ。その、ね。そーゆーこと。
 え? わかんない? やーだ。教えない。ふふふっ。

 って、ね。そうじゃなくって、そうじゃないのよ。
 どうしよう…。
 くすぐったいなぁって思って、それになんかね。仰向けになると、なんかおしりで踏んじゃってるっていうか、寝にくい。
 だから、美貴ちゃんを起こさないようにそーっと起き上がって、鏡を見に行ったの。
 でもね。もしかして、また?って、ちょっともう思ってたんだよね。
 だって、お部屋真っ暗なのにすっごくよく見えるんだもん。
 だから、洗面所の電気をつけて、頭の耳とジャージのズボンから出てるしっぽ見ても、なんか驚かなかった。
 なんていうの?
『ああー』
 そんな感じ。

  とりあえず、ジャージのズボンは脱いだ。だってきついんだもん。下着に穴あけようか迷ったんだけど、めんどくさいから、それはいいや。
 とりあえずシャツで隠れるし。

 そんなこんなで、それが10分前。
 すーすー眠ってる美貴ちゃん。
 さて、で、どうしよう。

 …って。起こさないとね。
 寝起きのいい美貴ちゃんのことだから、すぐに起きてくれるはず。
「ね。美貴ちゃん」
 ゆさゆさと体を揺らしたら、
「わっ!」
 ぶんってグーが顔の前を横切った。
 ちょっとぉ! 殴ろうとしたでしょ!
「もう! ねぇ。美貴ちゃん。美貴ちゃん、起きて!」
「んー…」
 ゴロってあたしに背中を向ける美貴ちゃん。
 なによぉ! 寝起きいいって言ったじゃん! もぉ!
「起きて! 美貴ちゃん!」
「んーっ!」
「おっ!?」
 『起きる?』と思ったら、タオルケットをぐいって引き寄せてコロンて丸まった。
「ちょっ…とぉ…っ!」

 かっちーーーーーんっ!

 もー怒ったんだからね。
 あたし、今日はそんなに激しくしなかったよぉ!
 そりゃあ…ちょっと激しい運動だけどさ。でも、なによ。あんだけお昼寝してどーして寝れるのよぉ!
 ぐいっとタオルケットを掴んで引っぺがしてやろうとぐいって引き寄せると、コロンって今度はあたしに顔を向けて転がる美貴ちゃん。

「…」
 やだ。かわいいじゃん…。

「んー…。りかちゃ…ん…」
 鼻声で舌ったらずな寝言。ふにゅって感じで唇が動いて…。
「…んー…。すきぃ…」
「…もぉ」
 やだ。うれしい。
 丸まった美貴ちゃんを仰向けにして、そっと顔を近づけてふにっとぽっぺをつついてみる。
「ん…」
 やわらかい。むうっと唸って、でも起きる気配はゼロ。
 もう一度つついてみると、また「んっ」って。面白いからふにふにとほっぺつついて遊んでたら、
「…ふーん」
 なんか微妙な声と一緒に腕がするって体に巻きついた。
 ありゃ。つかまっちゃった。

 ま。いいんだけど。

「美貴ちゃん?」
「…」
 やっぱり起きてくれない。ちょっとは期待したのになぁ。
 もう。いいや。
 美貴ちゃんの上に乗っかって、あたしもぎゅうって美貴ちゃんを抱きしめて、なだらかな胸の上にちょこんって頭を乗っけた。

 ドクン。ドクン。
 心臓がドクン、ドクンって。あーなんか…。
 んー。気持ちいい…。
 ね…。

 ………。
 ……。
 …。

「…ら…! って………。か…!」

 んー。
 じしん?
 したのほーから、ぐらぐらー…って…。

「こら! 起きろー! いしかー!」

 んー。なぁにー。
 やぁ。やぁでぇすぅーだ。
 だって…。おきて…くんないんだもん…。
 ……。
 あったかいし…。

「らっ…! おー…ぃ…!」

 んー。もぉ。
 ほっといてってばぁ…!

「こらっ! 梨華ちゃんっ!」
 ふぁ!? たおるけっとぉ…。どこぉ?
 てでぱたぱたぱた。
 んー。なぁい?
 もぉ。しょーがないなぁ。
「…なぁに…」
「なーにじゃないってば! 起きてっ!」
「んー」
 もぉ。
「キモチよかったのに…」
「そりゃそうでしょ。最高の抱き枕だもん。梨華ちゃんにはね」
「んぅ」
 こっくりとさんせー。ふぁ。なんかまぶしー。デンキついてる。
「…。おはよー」
「はいはい」
 なんかミキちゃん。怒ってる?
 むにって膨れてるほっぺをかたっぽ指でつまんで伸ばしてみた。
「いひゃっ! ひょっほぉ!」
「なぁに?」
「なぁにらないれひょう! 手、はなひて!」
「やだ」
 んー。なんとなく頭が冴え来た。ホントに寝ちゃったんだ。
「だって美貴ちゃん、さっき散々起こしたのに起きてくれなかったんだもん」
「えー!」
「ずーっと起きてーって、体ゆすったりしたのにさぁ」
 頭にきたからもうかたっぽのほっぺもえいってひっぱる。
「グーでなぐられそーになったし」
「ほんほにぃ?」
 むかっ!
「ほんとにっ!」
 たてたて、よこよこ、まるかいて…えいっ! って離してあげた。
「いったぁ!」
「おしおきだもん」
「んーっ…」
 アヒル口な美貴ちゃん。なんだよぉ。かわいいぞぉ。
 ちゅってキスをした。
「ふぇっ!?」
「へんな声」
「…梨華ちゃんと一緒にしないでってば」
「ひどっ! それに、何で驚くのぉ?」
 って、まぁ。ふつー。驚くと思うけど。なんかあたしもいつもと違うって、わかるし。その。見た目がってゆーんじゃなくって。
「驚くに決まってんじゃん! 重いなぁって目ぇ開けたら、耳だよ!」
 重いなぁって、それ、何気にひどいよね。まっ、しょーがないっていえばそーなのかもだけど。
「だから、一生懸命起こしたんだよ」
「いや…あーその、それは美貴が悪いけどさあ…」
「キスしたのにびっくりされちゃうし…。いいじゃん…かわいかったんだもん」
 いじいじと布団をつついてのの字のの字。
「あ…ありがと」
「真っ赤になってるし…」
「そりゃ…そうでしょ」
 美貴ちゃんの目の先はあたしの足。  じーっと見つめたら、なんか怒ったような顔してるし。真っ赤な顔で。

 ふーん…。

 ちらりと、ロマンス仕込みのセクシーポーズで片足をすいっと上げてみた。
「うっ!」
 鼻を押さえた美貴ちゃん。思わずニヤリ。そそるよねぇ。たしかに。あたしも美貴ちゃんがこんなポーズしたら、『おおーっ!』って思うもん。
 ベッドサイドのティッシュで鼻を押さえる美貴ちゃん。
「ふふふっ。セクシー? ねぇねぇ」
「…。はいはい。じゅーぶんエロいです」
「なぁにぃ? それ。エロいってさぁ」
「だってホントじゃん。どーいえってゆーのよ」
「だからぁ、セクシーって聞いてるじゃん」
「セクシーねぇ…」
 もう血は止まったらしくって、いじけるよーにぐしゃぐしゃとティッシュを丸めながら、ふてくされたよーな顔をする美貴ちゃん。
「っていうか、やっぱエロいよ」
「あっ。ひどい。自分だってエロいじゃん」
「なによー! 美貴がエロい…って!」
「だってぇ! 前にネコになっちゃった時、美貴ちゃんいろんなとこ触ったりいたずらしたじゃん!」
「それは梨華ちゃんが誘ってたからでしょー!」
「誘ってないもんっ!」
 誘ってないもん! だって、いじわるばっかしたじゃん!
 むうって、なんか悔しい。じっと上目遣いで目を見つめたら、美貴ちゃんが困ったように笑った。
「だって…。かわいかったんだもん。梨華ちゃん…。なんか甘えてきて」
 もう。素直じゃないんだから。あーやだ。笑い止まんない。
 すすすっと近寄って、ぺたって胸に顔をうずめた。ささやかな美貴ちゃんの胸にぐりぐりって顔をうずめて…。
 えへへ。やわらかい。気持ちいい。
 そっと包み込んでくれる美貴ちゃん。
 シャツの上から小さな胸のてっぺん辺りをぱくって。
「ん…。梨華ちゃん?」
 くすぐったそうに目を細める美貴ちゃん。ほんのりと赤いほっぺとはにかむ笑顔を見上げたまま、はむはむと口を動かす。
「や…。ねぇ、くすぐったいって」
 言ってるわりにはしっかりあたしを抱っこしてるし。
 ほら。小さな山の標高がちょっとだけ上がったよ? つんってとがった頂をシャツの上からチュって吸ってみたら、ぴくって美貴ちゃん。

 ふふっ。満足。

 せっかくなので、お隣も。

 で、ぺたって胸に顔をくっつけて見上げた。
「…梨華ちゃん」
 あれ? なんでそんな困った顔するの?
「美貴ちゃん?」
「ねぇ…梨華ちゃん」
「なぁに?」
「エロい」

 がーーーーーーーーん!

 なに? それ…。
 真っ赤な顔して、困った顔して、なにそれ。なにそのセリフ。

「ひどい。ひどいよ…」
 いいじゃん。甘えたいんだもん。
「ひどいって…」
「だってひどいもん。ぴたっとしてたいのにさぁ」
「してればいいじゃん」
「べたべたしてたいのにさぁ」
「だから、してればいいじゃん」
「エロいっていうんだもん」
「だってエロいんだもん」
「…」
 ずりずりと美貴ちゃんから離れてタオルケットをぐるぐると巻きつけて、コロンとベッドに転がってイモムシさんになってみる。

 ひどいよ。エロいエロいってさぁ。
 そりゃあ、あたしやカオたん、美貴ちゃんとあとはぁ…そうだなぁ、さゆかな。…はさ、エロ担当だよ? 娘。の中でもさ…。
 だからって、だからってさぁ…。
 どーせあたしはセクシーじゃないですよぉーだ。

 でもさ…。
 そんなこと言わなくってもいいじゃん。甘えさせてくれたっていいじゃん…。
 なのにさぁ…。
 ネコだから? しっぽがあるから? 耳がついてるから?

「ばかぁ…」
「あー。ゴメン! 梨華ちゃん」
 ゆさゆさって、体をゆする美貴ちゃん。
 しっぽがパタンパタンって。あたし今、すっごく不機嫌。
「どーせあたしはネコですよぉーだ」
「そーだけどさぁ…ね?」
 ゴメン。美貴ちゃん。今のは自分でもイミわかんない。
 パタンパタンってしっぽが揺れて、体に巻きつけたタオルケットからぴょこっとでてる耳はしゅーん。
「ね。ごめんってば。だって、ね。かわいいんだもん」
 ぱしぱしって、体を叩いて、苦笑いしてるんだろうな美貴ちゃん。

 いいや。困らせちゃえ。
 さっきお仕置きしたけど、こっちが必死で起こしたのにさ。だからお返し。

「どーせあたしなんて…。たぶんムリって…。どーせ生まれ変わってもなりなたくないんだもん」
「もぉ。そんなのいつの話よぉ。だいたいさぁ、美貴が梨華ちゃんになったら、誰が美貴のこと…その…愛してくれるのよ」
「あたしが愛してあげるもん。あたしムリなんて思ってないし。美貴ちゃんになってみたいって思うもん」
 選べないけどさ。みんな個性が眩しくて、みんなになってみたいって思うけどさ。あたし、美貴ちゃんすきだもんっ。
「全否定したもん。あたし否定してないもん」
 ふーんだっ。
 パタンパタンって。しっぽも不機嫌。
「それにさ…。男だったらよっちゃん彼女にしたいって…」
 あたしも何気に思ってるけど。美貴ちゃんよりも昔から。
 でも、そんなのだったら…の話で、あたしは美貴ちゃんがいいんだもん 。
 そんなのわかってるんだけど。でも、あたしじゃなきゃやぁだ。
「よっちゃんも美貴を彼女にしたいって言ってくれたって…。なんで言うの?」
 テレビで言わなくってもいいじゃん。
 体をゆすってた手が止まる。
「あー。それはさー」
「なによ…」
「男だったら…って話じゃん。美貴、今男じゃないし。それにさ…」
「…それに?」
「……こんなかわいい恋人がいるもん」
 なんか照れちゃってごにょごにょって。ふふっ。かわいい。
 しっぽもちょっとご機嫌。

 でもね。

「ふーん」
 わざとそっけなく。
 っていうか…なんか眠くなってきちゃったりして。だって、ゆすってくれる手が気持ちいい…。
「なによぉ…。ふーんって。美貴はぁ、梨華ちゃんがすきなの。だいすきなの!」
 ふふっ。うれしい。
 あーなんか、笑顔全開って感じ。
 でももうちょっといじわるする。
「いいよ。もぉ。どーせあたしなんかさぁ。美貴ちゃんいじわるだし。いいもん。カオたんにかわいがってもらうから」
「あーそれはだめぇっ!」
 うわわわわわわ! 美貴ちゃんそんなに体激しくゆすんないでぇっ!
「シャレになんないってば!」

   …うん。

 でも、カオたん、きっとすっごくやさしいんだよ。なんかねぇ……。うふふふふふっ。

 はっ! いけない。ダメダメ。あたしは美貴ちゃん一筋なの!

「ねぇ。わかってよぉ。美貴は、梨華ちゃんがいいんだってば。ね?」
 ゆさゆさって、照れ隠しにあたし体を揺さぶる美貴ちゃん。
「だからぁ……。美貴はぁ……」
 ふふーん。しあわせ。
「……がぁ……すき………ぁ…」
 んー。
「……」

 ……。
 …。

「こらーーーーーっ!」
 ふぁ!?
 くるんって体が回った。
 ほぇって目を開けたら美貴ちゃんが怒ってる。むうって唇尖らして、拗ねてるのがちょーかわいい。
「なぁにぃ?」
「寝るなぁーっ!」
 もう。そんなに怒っちゃやーだ。
 するするって首に腕を巻きつけた。
「だってきもちいいんだもん」
 起き上がってぎゅうって首にかじりついて、美貴ちゃんをえいって引き寄せた。
「わっ! あぶなっ! っんっ!」
 ぱしって手を突いて体を支えようとするから、顔をむぎゅってあたしの胸に押し付けてベッドにまた転がる。
「ほら。大丈夫じゃん。クッションクッション」
「…」
 じとって胸の間から見つめる美貴ちゃん。
「なによぉ」
「…ぁ。なんでもない」
 むにって顔をうずめて、あたしをぎゅって抱きしめてくれる。

 ふふふふふふふふっ。うれしい。

 でも気になる。
「なにがなんでもないのぉ?」
「…」
 むぎゅーって顔をうずめたままふるふるって首を振るからくすぐったい。
「ねぇねぇ。みきちゃん?」
「…」
「言ってくれないと、襲っちゃうぞぉ」
 そしたら…。
「…もー襲ってんじゃん」
 …。
 そーかなぁ。
「襲ってないよぉ」
「ううん。襲ってるってば。…んーあー…あぁ」
 なんかもどかしそう。
 考えてみたら仰向けでミキちゃん乗っけてるから、ちょっとおしり痛い。だからコロンとそのまま横に転がって、美貴ちゃんをだっこ。そして、頭をやさしく撫でてあげる。
 しっぽでとんとんって背中を叩いてあげると、なんかうっとりと目を閉じた横顔。
 あれ? また寝ちゃう?
 って思ったら、はぁってため息。
「あーあ。やだなぁ」
「美貴ちゃん?」
「だって明日お仕事だもん」

 そうだった。
 そうなんだよねぇ。

 あーあって、またため息をついて、あたしを抱きしめる腕に力が入って、なんか気持ちいい。
「イイダさん…絶対お持ち帰りしようとするだろうし。あー見えてヤグチさんもけっこうエロいから侮れないし、セクハラしてくるだろうから」
「そんな…真里ちゃん、ケメちゃんとは違うよ?」
「ほんっっとにそー思ってる?」
 ガバって顔を上げた美貴ちゃん。うわ…! 目がコワイ…。
「けっこー腕触ったりくっついたりしてんじゃん!」
「でもスキンシップなら美貴ちゃんの方が多いかと…」
「美貴のはカムフラージュなの!」
「…そーなの?」
 よっちゃんとかにべたべたしてるのとか、あんまりそー見えない時あるけど…。
「うれしそうなのに? よっちゃんとくっついたり話してる時は」
「…ぐぅ」
「なに? 今の」
 そしたら、妙に慌てて、
「いいの! とにかく、要注意なのっ! とーにーかーくっ! 美貴は梨華ちゃんなのっ!」
 って言うから、とりあえず納得してあげる。あたしもなんだかんだとよっちゃんといちゃつくし。よっちゃんもなんだかんだとあたしにかまってくるから。
「わかった。でも、考えすぎ」
「そんなことなーいっ!」
「声大きいよぉ」
「それだけ美貴は心配なのっ!」
 そう言って、また胸に顔をうずめてぼそぼそぼそ。
「つじちゃんだって梨華ちゃん大好きだし、カゴちゃんだってけっこー甘えてるし。おもちゃにされちゃうかなぁ…とか思ってさ。独占されそうでヤダ」
「大丈夫だって。ね」
「でも、梨華ちゃん、お仕事のときあんまりかまってくれないもん。つじちゃんとべったりで」
 あー。もぉ。かわいいなぁ。いじけてる。ふふっ。ゴメンね。でもうれしいよ。
「だって、ののはほんっともぅ、甘えてくるから…ねぇ。手がかかるっていうか」
「…」
 むにむにって顔が動いて、あんまり押し付けると窒息しちゃうよ? っていうほど、あたしも胸おっきいわけじゃないけど。それに…。
「ほら。タカハシはイヌになってるから、ね。それにあの子マコトLoveだし」
「でも、愛ちゃん、梨華ちゃんのことかわいいって、戻ってきてから言ってた」
「戻って…あぁ」
 びっくり顔のまま飛んでったあとね。
「ガキさん引くし…。レイナ真っ赤になったし。さゆうらやましいって言った」
 そうそう。でも、豆がひいたのは美貴ちゃんの目……ま。いっか。あの時のレイナはなんかかわいかったけど。
「最初引いてたのに絵里ちゃんずっとあれからにやにやしてたし。コンコンは本物ですよねぇって目がキラキラしてたし」
 さゆと亀ちゃんは本気であの後うらやましがってみたい。どこがいいのかなぁ?
 コンコンはねぇ。コスプレじゃないから。あたしそんな趣味ないし。
「よっちゃんさんはずーっと鼻の下伸ばしてて怖かったし」
「せっかくかっこいいのに、オヤジだったよね」
「うん。でさ、マコトが鼻血出すの」
 もー定番というかなんと言うか。倒れちゃったからね。タカハシのときもやっぱりだったらしいし。
 ミキちゃんがぎゅうってぎゅうって抱きしめる。ちょっと苦しい。
「だから、やだ。明日行くの」
「じゃ、サボっちゃう?」
 そんなことできないけどね。
「それはダメ」
「だよね」

 だからね。だから、美貴ちゃん。
 あたしはね…。

 するするってしっぽを美貴ちゃんの腕に巻きつけた。
 そして、顔を上げさせて、じいっと目を見つめる。
「ね。美貴ちゃん」
「ん?」
「キスして?」

 うーんと愛してほしいの。
 美貴ちゃんでいっぱいにしてほしいの。

「ね?」
 そしたら、ずりずりって這い上がってきて、そっと唇を重ねた美貴ちゃん。
 でもね、こんなんじゃ物足りないから、あたしから舌を差し入れて絡めていく。シャツの中に手を入れて、直にぎゅうって抱きしめたら、美貴ちゃん、熱かった。
「こら!」
 ぱって顔が離れてキスが終わっちゃった。
 むーってにらむ美貴ちゃん。
「だってぇ。愛してほしいんだもん。待ってらんない」
「もう…」
 やれやれって顔して起き上がると、あたしを仰向けにして上に覆いかぶさる。
 ドキドキ。
「もぅ。美貴止まんないからね」
「うん。止まんないでね」

 こんなにドキドキさせてくれるの、美貴ちゃんだけなんだよ?
 その指、その唇、そのまなざし。
 もっとあたしを見て? 感じて?
 もっとあなたを感じさせてよ。
 あたしはどこにも行かないよ。

 ねぇ。もっと。もっと…。
 ね。美貴ちゃん。

                        □                         □


 そんなこんなで夜が明けて、二人揃って楽屋に到着。
「美貴より前に出ちゃダメだから」
 っていう美貴ちゃんの言うとおりにぴったりくっついて中に入ったら、
「ええええぇぇぇぇぇっ! またぁ!」
 って声をそろえて大絶叫。

 タタタッて、まりっぺがさっとあたしの後ろに回りこんできて、きゅってしっぽを掴んだ。
「わっ! 真里ちゃん!」
「すげっ! ホンモノだよ」
 ってぺたぺたとあたしを触るから、ほら…。美貴ちゃんの肩が小刻みに震えてる。
「やー。エロいよ。梨華ちゃん。でも…うはぁ」
 あら。顔真っ赤。けっこう純情だったりするまりっぺ。
 そのちっちゃい真里ちゃんの襟をぎゅっと掴んで持ち上げる美貴ちゃん。ぷらーんって真里ちゃん。
 ありえないけどおもしろい。
「「ぶっははははははははははっ!」」
 ののとあいぼんが爆笑してるし。
「こらー! ふじもん離せっ!」
 ジタジタって暴れる真里ちゃん、かわいい。そんな真里ちゃんをにらみつけて、
「はいはい。おいたはダメです」
 ってポイ。
 っひゃー。美貴ちゃんかっこいい!
「大丈夫? 梨華ちゃん」
 肩を抱き寄せるミキちゃんにうっとり。
「うん」
「あーあー。熱いなぁもぉー」
 とか言いながら、にやにやにやにやに笑ってるよっちゃん。
「りかちゃん。またしっぽついちゃったねぇ」
 って、ののとあいぼんがぱっ!とスカートをめくった!
「きゃあ!」
「へへへーっ。パンツもピンクだ」
「ちゃーんと穴空いてんのぉ」
 ってのの。そしたら、
「うぁ…」
 パタンってよっちゃんが倒れちゃった。
 ののがきょとんとしてる。
「あーあー。鼻血でてるし」
 って言いながら、ははははははって笑い出すあいぼん。
 美貴ちゃんはのののこめかみをがっとゲンコツで挟むと、ぐりぐりと押した。
「いたっ! いたいってばミキティ!」
 で、次はあいぼん。
「いたたっ! ごめんってば!」
「もぉ。油断も何もあったもんじゃない」
 って、マジで怒ってるし。
 そしたら豆が、
「イシカーさん。なんか嬉しそうですねぇ」
 って。あったりまえじゃない。トンって肩を押したら、
「いたっ! そんなに強く叩かないでくださいよぉ!」
「あっ。ごっめーん」
 力加減忘れちゃった。うふ。
 紺野は相変わらず目をキラキラさせてるし。レイナがじーっと真っ赤になって見つめてるから、ぱちって、頑張ってウインクしたら…。
「あっ! レイナ!」
 さゆが慌てて抱き起こす。
「いたっ!」
 美貴ちゃんにむぎって腕をつねられた。
「こら。レイナ悩殺してどうすんのよ」
「ごめんなさーい」

 でも、さゆとエリちゃん。今度は二人して「にゃー」って言いながら、
「あたしの方がかわいいもん!」
「私の方がかわいいの!」
 って、レイナ相手に悩殺合戦してるし。っていうか、なんかちがくない? それ…。
 焦点の合ってないようなレイナの目はずーっとあたしに向いたままだし。
 やれやれって美貴ちゃんのため息と苦笑い。
 タカハシは飛んでったかと思ったら、すでに鼻血をだして倒れたマコトの頭を膝に乗っけてむーって顔してるし。

 たいへんだよね。タカハシ…。

 え? いつマコト倒れたかって?
 だから、入ってカバン下ろして帽子取ったと同時に。『ええーっ』て悲鳴のとき。ちょっと早すぎだよね。だからタカハシ、すっごい微妙な顔してるし…。

 まぁ。なんのかんのとにぎやかで。
 美貴ちゃんはむうって周りをにらみつけてるし。
 頼もしいなぁ…と思ってたら、後ろからトントンって。

 あ…この感じ。
「梨華ちゃん」
 後ろからすって抱きしめられて、あ…。なんかいい香り。
 顔を上げたらカオたんが微笑んでた。
「あっちでカオとお昼寝しよっか?」
 耳元でふんわりと囁かれて、んー。なんか気持ちよくなってきちゃった。ダメダメ…なんだけど…。
 ゆったりと撫でられて、カオたんの唇が耳に当たってくすぐったくって…。
「んー。どーしよぉ」
「いや。どうしようも何も、ダメだから」
 はれ?
 ぐいって引っ張られて、こんどはぽすって美貴ちゃんの腕の中。
「美貴のものなんで」
 きゃっ! かっこいい! もーうれしい!
 しっぽがぴんって喜んでる。
「あーあー! パンツ見えるって!」
 まりっぺがティッシュを取り出しながら慌ててスカートを押さえてくれた。
「ちぇっ」
 ってカオたん。でもなんかあたしに微笑みかけて優雅に去っていくその後姿。
「んー。なんだか油断ならないなぁ」
 って呟く美貴ちゃん。あたしも同感。

 でもね。

「大丈夫。美貴ちゃん、だいすきだもん」
 ちゅって、キスした。
「あーもー。かんべんしてよー」
 やれやれとティッシュを鼻に詰めてまりっぺがため息ついた。

「とりあえず。梨華ちゃん、悩殺しすぎ。まっ、それはそれで…んー。うれしいんだけどね」
 って笑って、
「美貴のすきな人はこんなに魅力的なんだもん」
 って、あたしにキスをしてくれた。
 …のはいいんだけどね、ちょっとそのオトナなキスっていうか、激しすぎだよ。中学生もいるのにさぁ。

 明日になればたぶん元に戻っちゃうけど、まっ、いいか。
 いつもとちょっと違うあたし。
 違うやり取り。
 こんなにすきでいてくれるんだって、こんなにすきなんだって確認し合えるから、たまにはいいのかも。

 た・ま・に・は…ね。



(2004/6/30)
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