たぶん素敵妄想集(爆@ ウィキ
いたずらとキスと午後の授業
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午後の授業は憂鬱。
窓際の前から4番目の席は陽だまりに包まれて、夢の世界にあたしを誘おうとする。
窓際の前から4番目の席は陽だまりに包まれて、夢の世界にあたしを誘おうとする。
文系なあたしには憂鬱な5時限目は数学。
なんとなく窓の外を眺めつつ、ケメちゃんがキリキリと黒板に書き出す数式をにつらつらとノートに書き写す。
あたしの後ろ、5番目に座る彼女は…っていうと…。
なんとなく窓の外を眺めつつ、ケメちゃんがキリキリと黒板に書き出す数式をにつらつらとノートに書き写す。
あたしの後ろ、5番目に座る彼女は…っていうと…。
『ひま』
さっきから先生の目を盗んで、とんとん…と人の背中をシャーペンの頭でつついて手紙を渡す。
で、開けたらぐてーって崩れた字で『ひま』だって。
で、開けたらぐてーって崩れた字で『ひま』だって。
書くことなくなってきてるねぇ…。
普段は5時限目は高い確率で寝てる美貴ちゃん。
村田先生の化学なんか完璧に寝てるしね。
けど、ケメちゃんもとい保田先生の数学と中沢先生の古文はそれができないから、手紙とかいたずらとかで眠気を払おうと懸命みたい。
まぁ、あたしはそのとぱっちりを食らっているわけだけど…。
村田先生の化学なんか完璧に寝てるしね。
けど、ケメちゃんもとい保田先生の数学と中沢先生の古文はそれができないから、手紙とかいたずらとかで眠気を払おうと懸命みたい。
まぁ、あたしはそのとぱっちりを食らっているわけだけど…。
授業が始まって25分。
手元にある何枚かのノートの切れ端。
『放課後デートしない?』
いいよって返した。
『じゃあ、どこいく?』
行きたいとこある?
『駅前にできたカフェ、ケーキおいしいらしいよ』
じゃ、そこにしよっか。
『そーだ、見たいピアスあるんだよね。そこもねー』
はいはい。
手元にある何枚かのノートの切れ端。
『放課後デートしない?』
いいよって返した。
『じゃあ、どこいく?』
行きたいとこある?
『駅前にできたカフェ、ケーキおいしいらしいよ』
じゃ、そこにしよっか。
『そーだ、見たいピアスあるんだよね。そこもねー』
はいはい。
で、この後、まるでフェイントとばかりに黒板に向かってたケメちゃんが振り向いた。
『びびったー!』
ね。相変わらずタイミング読みづらいよ。ケメちゃん。
ね。相変わらずタイミング読みづらいよ。ケメちゃん。
その後は返事を返さなかったけど、お構いなしに手紙は回ってくる。
それもいつものこと。
それもいつものこと。
『いい天気だねー』
『おなかすいた』
『はやくおわんないかなー』
『おなかすいた』
『はやくおわんないかなー』
段々漢字が減って、文字もよれよれ。
『たいくつ』
『ねむい』
『ねむい』
そして、単語が回ってくる。
で、『ひま』に至る…と。
で、『ひま』に至る…と。
一応ノートはとってるみたいだけど、美貴ちゃん、自分でノート見て読めないって言ってたし。なんていうのかな、線の羅列って感じ?
でも本人はあっけらかんとしたもので、試験前にあたしのノートをコピーしたりする。
今日みたいに手紙のペースが速いと、もはやノートなんてとってないんだろうなんてことは容易に想像できるわけで…。
でも本人はあっけらかんとしたもので、試験前にあたしのノートをコピーしたりする。
今日みたいに手紙のペースが速いと、もはやノートなんてとってないんだろうなんてことは容易に想像できるわけで…。
まあ、楽しいから、いいんだけどね。
あたしも眠いのは一緒だから。
あたしも眠いのは一緒だから。
そして、とんとんってつつかれて新しい手紙を受け取る。
『あきた』
なーんか、その3文字にふと、いやーな予感がした。
あれ?
あたしの背中をつついていたシャーペンの動きが変わった。
つつーって動いて、離れたかなーと思ったら、またつつーって動く。
つつーって動いて、離れたかなーと思ったら、またつつーって動く。
「で、ここは…」
先生の話をまじめに聞く……ふりをしつつ、背中に意識を集中。
先生の話をまじめに聞く……ふりをしつつ、背中に意識を集中。
た……い……く………。
はぁって思わずため息。 『たいくつ』ね。
また黒板に向かうケメちゃんを確認すると、後ろを向いた。
にかーって笑うミキちゃん。
ノートの端に、
『たいくつってかいた?』
『あたり』
すぐに下に3文字で帰ってきた。
また黒板に向かうケメちゃんを確認すると、後ろを向いた。
にかーって笑うミキちゃん。
ノートの端に、
『たいくつってかいた?』
『あたり』
すぐに下に3文字で帰ってきた。
あーあー。そんなうれしそうな顔しちゃってぇ。
それからというもの、前を向いたあたしの背中は美貴ちゃんの黒板代わり。
『ひま』『ねむい』とか、『カルビ』『タン』とか。
眠い上に空腹であるということもうかがえる。
『ひま』『ねむい』とか、『カルビ』『タン』とか。
眠い上に空腹であるということもうかがえる。
とりあえず好きにさせておいたら、ふいにシャーペンの頭が横に滑ってわき腹に!
ひゃっ!
『さけとば』の『ば』の最後の払いのところ。
ぎりっぎり声は出なかったけど、思わずひじで腰をかばった。
先生が黒板の方に向いてるのを確認して、ぱって振り向いたら、美貴ちゃんがきょとんとしていた。
ひゃっ!
『さけとば』の『ば』の最後の払いのところ。
ぎりっぎり声は出なかったけど、思わずひじで腰をかばった。
先生が黒板の方に向いてるのを確認して、ぱって振り向いたら、美貴ちゃんがきょとんとしていた。
わざとじゃ…ないのよね。
そう信じて、また黒板に書かれた問題に取り掛かった。
でも、予感は的中しちゃうわけで……。
「さて、そろそろいいわね。じゃあ、そうね。できた人、いる?」
ケメちゃんが教室を見渡す。
ケメちゃんが教室を見渡す。
そのとき、ふいに後ろから思い切りわき腹をつつかれた!
「はぁぃっ!?」
いやーーーっ! 声が裏返ったー!!!
いやーーーっ! 声が裏返ったー!!!
「石川?」
すっとんきょうなあたしの声にケメちゃんが不思議そうな顔を向ける。
みんなの視線が集中してるのがよーーーーーくわかる…。
なんかざわざわしてるし…。
「何? できたの?」
「は…はい」
かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
顔があついっっっっっっ!
すっとんきょうなあたしの声にケメちゃんが不思議そうな顔を向ける。
みんなの視線が集中してるのがよーーーーーくわかる…。
なんかざわざわしてるし…。
「何? できたの?」
「は…はい」
かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
顔があついっっっっっっ!
「そう。じゃあ、問1ね」
「はい…」
あーもー顔あげらんないよぉ!
とりあえずノートを確認すると、ふらふらと立ち上がった。
「はい…」
あーもー顔あげらんないよぉ!
とりあえずノートを確認すると、ふらふらと立ち上がった。
黒板に向かう前に振り向いたら、口を押さえて涙目で笑いをこらえる美貴ちゃん。
ああああーっ! もーーーっ!
黒板を指差すと、しっしって手を払う。
「っく…く……くくっ……」
笑い声が漏れてるよ…美貴ちゃん。
なによぉ…。そんなに笑わなくってもいいじゃん。
「っく…く……くくっ……」
笑い声が漏れてるよ…美貴ちゃん。
なによぉ…。そんなに笑わなくってもいいじゃん。
きーん…こーん…
チャイムが鳴って授業が終わった。
あーもう。疲れた…。
あーもう。疲れた…。
放課後。
約束したわけだから、美貴ちゃんとデート。
掃除当番のあたしを教室で待っててくれた美貴ちゃんと昇降口に向かって並んで歩く。
約束したわけだから、美貴ちゃんとデート。
掃除当番のあたしを教室で待っててくれた美貴ちゃんと昇降口に向かって並んで歩く。
ずーっと授業終わってからも、やたらとご機嫌でテンションの高い美貴ちゃん。
ずーっと授業が終わっても、恥ずかしいやら頭にくるやらで憂鬱なあたし。
ずーっと授業が終わっても、恥ずかしいやら頭にくるやらで憂鬱なあたし。
「ほらー。せっかくデートするんだからさ、笑おうよ。ね」
手を繋いで大きくぶんぶん振り回す。
なんか、怒るっていうよりも、疲れたというかあきれたというか…。
そんなあたしを見て、美貴ちゃんが唇を尖らせる。
「なによぉ」
とりあえずにらんでおこうか。
「えーっ。美貴が悪いっていうの?」
「違うの?」
「違うでしょ。わき腹が感じやすい梨華ちゃんが悪いの」
「そんなのへ理屈だよ」
「いーの。なんでも。それにさ、梨華ちゃんがにらんでも怖くないから」
はいはい。そーですか。
まぁ、でも…いつまでも怒っててもダメだよね。美貴ちゃん曰くデートなんだし…。
手を繋いで大きくぶんぶん振り回す。
なんか、怒るっていうよりも、疲れたというかあきれたというか…。
そんなあたしを見て、美貴ちゃんが唇を尖らせる。
「なによぉ」
とりあえずにらんでおこうか。
「えーっ。美貴が悪いっていうの?」
「違うの?」
「違うでしょ。わき腹が感じやすい梨華ちゃんが悪いの」
「そんなのへ理屈だよ」
「いーの。なんでも。それにさ、梨華ちゃんがにらんでも怖くないから」
はいはい。そーですか。
まぁ、でも…いつまでも怒っててもダメだよね。美貴ちゃん曰くデートなんだし…。
なんか不思議。
手なんか繋いで、つまんないことでちょっとすねたりすかしたり。
悪くないよね。
かなりいい感じ。
手なんか繋いで、つまんないことでちょっとすねたりすかしたり。
悪くないよね。
かなりいい感じ。
でも、やっぱりなんか、ずーっとからかわれっぱなしで、なんか癪なんだよね。
「ねえ、美貴ちゃん」
「なに?」
「お願い聞いてくれたら、さっきのいたずら忘れてあげる」
「何よ。やっぱり美貴が悪いわけ?」
「えー。だってそうじゃない。いたずらしてきたのそっちじゃん」
そしたら、ちょっと納得いかないって顔をしつつ、
「で、なに? お願いって」
「うん」
立ち止まると、美貴ちゃんが不思議そうに首を傾げた。
「ねえ、美貴ちゃん」
「なに?」
「お願い聞いてくれたら、さっきのいたずら忘れてあげる」
「何よ。やっぱり美貴が悪いわけ?」
「えー。だってそうじゃない。いたずらしてきたのそっちじゃん」
そしたら、ちょっと納得いかないって顔をしつつ、
「で、なに? お願いって」
「うん」
立ち止まると、美貴ちゃんが不思議そうに首を傾げた。
「キスして」
見詰め合ったまましばらくの無言。
固まった美貴ちゃん。
やっぱり引いたかな? でも、この間の放課後、してきたのはそっちだよね。美貴ちゃん。
「美貴ちゃん?」
「…いいの?」
「いいよ。なんなら…」
ついと距離を縮めて、唇を重ねた。
固まった美貴ちゃん。
やっぱり引いたかな? でも、この間の放課後、してきたのはそっちだよね。美貴ちゃん。
「美貴ちゃん?」
「…いいの?」
「いいよ。なんなら…」
ついと距離を縮めて、唇を重ねた。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。
これで、おんなじ…だね。
美貴ちゃんが我に返るまで5秒くらいかかった。
目を見開いて、ぽかーんって口を開けて。
なんだかおかしかった。
目を見開いて、ぽかーんって口を開けて。
なんだかおかしかった。
「梨華ちゃん?!」
「ふふっ。まだあたしからごほうびあげてなかったもんね」
そしたら、急にむっとした顔をした。
「なによぉ。怖い顔しちゃってさー」
「だって…」
なんかもごもごと口ごもる。
らしくない、そんな恥らう美貴ちゃんがかわいい。
「ふふっ。まだあたしからごほうびあげてなかったもんね」
そしたら、急にむっとした顔をした。
「なによぉ。怖い顔しちゃってさー」
「だって…」
なんかもごもごと口ごもる。
らしくない、そんな恥らう美貴ちゃんがかわいい。
ふてくされて膨らんだ頬を撫でて、もう一度キス。
なんだろう。
一度や二度じゃ物足りない。
一度や二度じゃ物足りない。
「ね、美貴ちゃん?」
ぎゅって繋いでる手に力をこめて、くいって、開いてる方の手でブレザーのすそを引っ張った。
ぎゅって繋いでる手に力をこめて、くいって、開いてる方の手でブレザーのすそを引っ張った。
美貴ちゃんがやれやれって顔して笑った。
今度は2人とも目を閉じて、今日3度目のキス。
そういえば、あの日と同じだね。
また並んで歩き出す。
かつんかつんって、廊下に響く二人の足音。
かつんかつんって、廊下に響く二人の足音。
なんなんだろう。
不思議。
やっぱりなんかすごくいい感じ。
美貴ちゃんはどう思ってるかわからないけど、でも…。
不思議。
やっぱりなんかすごくいい感じ。
美貴ちゃんはどう思ってるかわからないけど、でも…。
デートって言葉に胸が躍ってるあたし。
こんな毎日が続けばいいなって、思っていた。
こんな毎日が続けばいいなって、思っていた。
(2004/3/7)