「潜行する魔神」(2008/02/09 (土) 12:48:48) の最新版変更点
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**潜行する魔神 ◆dol7ALuruQ
『ふうん……これは雪かな? ここが会場なんだね。』
2m前後の巨躯を確かめるように動かしながら、異形が呟いた。
銀色のボディ。赤い瞳。全体像は人型に近かったが、細部が違う。
肩からは角のようなものがせり出し、銀色の尾を持っている。
握ったり開いたりを繰り返す手には、人間の瞳のようなものがついていた。
『それにしても面白そうな……そうだな……そう、[ゲーム]だね。』
その名はドラス。あらゆる生命体を超越した生命体であり、金属を統べる者。
ヒトが神を目指して生み出した、生命を冒涜する存在だった。
かつて敗れ、消滅したはずの体を取り戻し、ドラスははしゃぐように体を動かす。
よみがえったばかりか、核を覆う超硬度の液体金属の鎧まで彼には与えられていた。
森の中を影が走る。
ウォーミングアップにはいささか激しい調子で、ドラスは雪原を駆け抜けた。
ドラスに訊けば否定するだろうが、初めての雪で興奮しているのかもしれない。
『ふふ……あのおじさんが溶けて体を変えただけで、
あそこにいたおねえちゃんたちやおにいちゃんたちは随分驚いてたな……』
ドラスはあの詰められた部屋での出来事を反すうし、笑みを浮かべた。
もっとも、それは心象イメージであって彼の擬骸が実際に笑ったわけではないと注釈しておこう。
怪物の顔には感情というものは何一つない。
あの程度の体の組み換え程度、ドラスにもできる。
はっきり言って、たかがそれだけでしかない出来事に、随分と驚いていた。
ほとんど全員が慌てふためいていたと言ってもいいだろう。
それがドラスには愉快だった。たかがあれだけの出来事であの調子だ。
あの反応一つでも力の差が分かる。自分と、その他の参加者の格とも言うべきものの差は圧倒的だろう。
当然だ、なにしろ自分は『神』に最も近いのだから。
あそこにいたのは皆人間ではないらしいが、どんな機械生命体だろうと自分に比べれば等しく塵芥。
この壊し合いも、彼からすればゲームに過ぎない。
町のような場所まで走り込んだあと、足を止めた。
体の調子の確認を終えたドラスは、肩に力を込める。
すると、肩にが一瞬輝き、光の束が撃ち出された。
分子破壊光線マリキュレイザー。
一度打ち出されれば数km先の鉄塔すらも分子ごと粉砕するその一撃は目の前のビルを――
粉砕しない。
『……?』
いや、確かに当たった場所から一部屋分くらいの範囲は蹂躙していた。
しかし、あまりにも威力がない。なさ過ぎる。
それに射程も何か足りない気がした。100mもないのではないか……?
体を覆っていた興奮が一気に引いた。
しらけにも似た状態へテンションは急降下。
足元に転がってきた瓦礫を投げやりに蹴散らすと、ドラスは冷めた気分で他の能力を試してみた。
まずは、形状変化能力。
高速飛行形態へ体を縮小させようとした。
結果だけいうと無理だった。子供程度までは小さくなれても、ボール大のサイズまで縮小することはできない。
自分の力の弱さを感じ、クモ女とコウモリ男を造りだそうとする。
これもできない。精製しても、すぐさま崩壊してしまうのだ。小さくなったままで、大きくすらならない。
『なるほどね……これが答えって訳だね。』
自分が完全な状態でこのゲームに参加しては、自分に勝ちはあっという間に決まってしまう。
それを恐れての制限とドラスは判断した。
生き返らせたと同時に、自分に何か手を加えられたことを悟る。
そう、自爆装置と一緒に何かリミッターをかけられたのだ。
『気に食わない……凄く気分が悪いよ。』
ドラスは、そこで初めて携帯端末を取り出した。
彼は子供独特の、無知からくる傲慢はあった。
だが同時に、自分の能力を著しく制限された状態で、楽に生き残れると思えるほど子供な楽天家ではなかった。
ならせめて制限した当人から与えられる力だけでも、活用しなければならない。
端末へ、支給された武器の一斉送信を入力。
目の前に送られてきたものを眺めてみる。
転がっているのは、ナイフと棒が一本ずつ。
名称を確認すると『20万ドルのバターナイフ』、『枕を柔らかくする棒』となっている。
棒は役に立ちそうにないが、ナイフはなかなかのものらしかった。
正式名称は、荷電磁ナイフ。
木など熱に強く質量の大きいものは無理だが、人間の手や金属チェーンなら容易に切り裂き、溶解させられるとか。
生物を切っても傷口が焼かれて血をまったく流さないというのもいい。
返り血などの汚いものを受けなくてすむのだ。
手の中のナイフを握りこむ。
すると指が落ちた。
『ちょっと僕が使うには小さすぎるかな。』
説明通り、刃に当てられたドラスの人差し指はあっさり切断された。
わざと当てたわけではない。
2mを超える、まして怪人の手に比べれば、ナイフのグリップが小さすぎたのだ。
そのため、グリップから手がはみ出て刃に指が当たってしまった。
しばしドラスは黙考すると、
『なら、これに合う体にすればいい。』
グニャリと、ドラスの体が歪んだ。くすんだ銀色が、光沢のある銀へ変化し、うごめいた。
ドラスの体の9割以上は周囲の金属の分子組成を組み替えて造る、いわば木偶に過ぎない。
コウモリ男がやったように、姿を組み替えることなど至極簡単なことだった。
金属が収縮し、それまでより2回りは小さい姿を形作った。
いや、小さいというよりむしろ幼かった。
『へえ……あのおねえちゃんを元に作ったんだけど、結構いいじゃないか。』
水色に近い青で、肩まで伸びる髪。緑に近い青の瞳。
それは、あの最初の会場で爆殺された少女、セインをそのまま幼くしたような姿だった。
今度は、ナイフのグリップに手が十分におさまった。
もちろん作り直した体には指は5本備わっている。
ドラスがこの姿を選択した理由は、いくつかある。
まず、ナイフのグリップ以下の大きさの手を持つこと。
2つ目にドラス自体、客観的に言うと精神が幼く、無意識にそういった肉体を選択していたこと。
3つ目は、保護欲を煽ること。
3つ目が重要だ。
ドラスはこの制限された状態では自分が戦えば負けもあることも認識していた。
一人でうろつきまわるには危険すぎた。かといって、怪人態では敵意と警戒心を煽るだけだ。
どうすればいいか?
簡単だ、他のものに戦ってもらえばいい。
自分が他のゲームへの参加者を減らす手間も減る。
自分以外を殺し合わせ、武器や道具を集め、弱った破壊否定者のみを冷徹に間引いていく。
そのためには、まずこのゲームを否定し、ゲーム開催者と戦うために協力しあう人間の環の中へ入らなければいけない。
そのための選択がこの姿だった。
『まず他の人と協力して自爆装置とリミッターを外す。
その後他の人を皆殺して……あとはあのおじさんを殺して帰ろうか。』
勝手に神の体をいじった罪を、シグマにも味あわせてやらなければならない。
新しい姿を手に入れたドラスが手をかざす。
すると、手の向こうにあった民家のドアが吹き飛んだ。
『念動力は使えるんだね、ならまず十分かな?』
家の中をナイフを片手に物色する。
探しているものは……
『とりあえず服を着ないとね。』
【C-3 市街地/一日目・深夜】
【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:健康
[装備]:荷電磁ナイフ)@マルドゥックスクランブル
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:自爆装置とリミッターを外す。その後参加者を全員殺す。優勝したあとシグマも殺す。
1:服を探す。
2:対主催の人間たちにもぐりこむ。
3:自爆装置、リミッターの解除。
※細かい外見はお任せします。
※枕たたき棒@魁!!クロマティ高校 が周囲に落ちています
*時系列順で読む
Back:[[愛しの君は負に向かわない]] Next:[[ELECTRICAL COMMUNICATION]]
*投下順で読む
Back:[[愛しの君は負に向かわない]] Next:[[ELECTRICAL COMMUNICATION]]
|&color(cyan){GAME START}|ドラス| |
**潜行する魔神 ◆dol7ALuruQ
『ふうん……これは雪かな? ここが会場なんだね。』
2m前後の巨躯を確かめるように動かしながら、異形が呟いた。
銀色のボディ。赤い瞳。全体像は人型に近かったが、細部が違う。
肩からは角のようなものがせり出し、銀色の尾を持っている。
握ったり開いたりを繰り返す手には、人間の瞳のようなものがついていた。
『それにしても面白そうな……そうだな……そう、[ゲーム]だね。』
その名はドラス。あらゆる生命体を超越した生命体であり、金属を統べる者。
ヒトが神を目指して生み出した、生命を冒涜する存在だった。
かつて敗れ、消滅したはずの体を取り戻し、ドラスははしゃぐように体を動かす。
よみがえったばかりか、核を覆う超硬度の液体金属の鎧まで彼には与えられていた。
森の中を影が走る。
ウォーミングアップにはいささか激しい調子で、ドラスは雪原を駆け抜けた。
ドラスに訊けば否定するだろうが、初めての雪で興奮しているのかもしれない。
『ふふ……あのおじさんが溶けて体を変えただけで、
あそこにいたおねえちゃんたちやおにいちゃんたちは随分驚いてたな……』
ドラスはあの詰められた部屋での出来事を反すうし、笑みを浮かべた。
もっとも、それは心象イメージであって彼の擬骸が実際に笑ったわけではないと注釈しておこう。
怪物の顔には感情というものは何一つない。
あの程度の体の組み換え程度、ドラスにもできる。
はっきり言って、たかがそれだけでしかない出来事に、随分と驚いていた。
ほとんど全員が慌てふためいていたと言ってもいいだろう。
それがドラスには愉快だった。たかがあれだけの出来事であの調子だ。
あの反応一つでも力の差が分かる。自分と、その他の参加者の格とも言うべきものの差は圧倒的だろう。
当然だ、なにしろ自分は『神』に最も近いのだから。
あそこにいたのは皆人間ではないらしいが、どんな機械生命体だろうと自分に比べれば等しく塵芥。
この壊し合いも、彼からすればゲームに過ぎない。
町のような場所まで走り込んだあと、足を止めた。
体の調子の確認を終えたドラスは、肩に力を込める。
すると、肩にが一瞬輝き、光の束が撃ち出された。
分子破壊光線マリキュレイザー。
一度打ち出されれば数km先の鉄塔すらも分子ごと粉砕するその一撃は目の前のビルを――
粉砕しない。
『……?』
いや、確かに当たった場所から一部屋分くらいの範囲は蹂躙していた。
しかし、あまりにも威力がない。なさ過ぎる。
それに射程も何か足りない気がした。100mもないのではないか……?
体を覆っていた興奮が一気に引いた。
しらけにも似た状態へテンションは急降下。
足元に転がってきた瓦礫を投げやりに蹴散らすと、ドラスは冷めた気分で他の能力を試してみた。
まずは、形状変化能力。
高速飛行形態へ体を縮小させようとした。
結果だけいうと無理だった。子供程度までは小さくなれても、ボール大のサイズまで縮小することはできない。
自分の力の弱さを感じ、クモ女とコウモリ男を造りだそうとする。
これもできない。精製しても、すぐさま崩壊してしまうのだ。小さくなったままで、大きくすらならない。
『なるほどね……これが答えって訳だね。』
自分が完全な状態でこのゲームに参加しては、自分に勝ちはあっという間に決まってしまう。
それを恐れての制限とドラスは判断した。
生き返らせたと同時に、自分に何か手を加えられたことを悟る。
そう、自爆装置と一緒に何かリミッターをかけられたのだ。
『気に食わない……凄く気分が悪いよ。』
ドラスは、そこで初めて携帯端末を取り出した。
彼は子供独特の、無知からくる傲慢はあった。
だが同時に、自分の能力を著しく制限された状態で、楽に生き残れると思えるほど子供な楽天家ではなかった。
ならせめて制限した当人から与えられる力だけでも、活用しなければならない。
端末へ、支給された武器の一斉送信を入力。
目の前に送られてきたものを眺めてみる。
転がっているのは、ナイフと棒が一本ずつ。
名称を確認すると『20万ドルのバターナイフ』、『枕を柔らかくする棒』となっている。
棒は役に立ちそうにないが、ナイフはなかなかのものらしかった。
正式名称は、荷電磁ナイフ。
木など熱に強く質量の大きいものは無理だが、人間の手や金属チェーンなら容易に切り裂き、溶解させられるとか。
生物を切っても傷口が焼かれて血をまったく流さないというのもいい。
返り血などの汚いものを受けなくてすむのだ。
手の中のナイフを握りこむ。
すると指が落ちた。
『ちょっと僕が使うには小さすぎるかな。』
説明通り、刃に当てられたドラスの人差し指はあっさり切断された。
わざと当てたわけではない。
2mを超える、まして怪人の手に比べれば、ナイフのグリップが小さすぎたのだ。
そのため、グリップから手がはみ出て刃に指が当たってしまった。
しばしドラスは黙考すると、
『なら、これに合う体にすればいい。』
グニャリと、ドラスの体が歪んだ。くすんだ銀色が、光沢のある銀へ変化し、うごめいた。
ドラスの体の9割以上は周囲の金属の分子組成を組み替えて造る、いわば木偶に過ぎない。
コウモリ男がやったように、姿を組み替えることなど至極簡単なことだった。
金属が収縮し、それまでより2回りは小さい姿を形作った。
いや、小さいというよりむしろ幼かった。
『へえ……あのおねえちゃんを元に作ったんだけど、結構いいじゃないか。』
水色に近い青で、肩まで伸びる髪。緑に近い青の瞳。
それは、あの最初の会場で爆殺された少女、セインをそのまま幼くしたような姿だった。
今度は、ナイフのグリップに手が十分におさまった。
もちろん作り直した体には指は5本備わっている。
ドラスがこの姿を選択した理由は、いくつかある。
まず、ナイフのグリップ以下の大きさの手を持つこと。
2つ目にドラス自体、客観的に言うと精神が幼く、無意識にそういった肉体を選択していたこと。
3つ目は、保護欲を煽ること。
3つ目が重要だ。
ドラスはこの制限された状態では自分が戦えば負けもあることも認識していた。
一人でうろつきまわるには危険すぎた。かといって、怪人態では敵意と警戒心を煽るだけだ。
どうすればいいか?
簡単だ、他のものに戦ってもらえばいい。
自分が他のゲームへの参加者を減らす手間も減る。
自分以外を殺し合わせ、武器や道具を集め、弱った破壊否定者のみを冷徹に間引いていく。
そのためには、まずこのゲームを否定し、ゲーム開催者と戦うために協力しあう人間の環の中へ入らなければいけない。
そのための選択がこの姿だった。
『まず他の人と協力して自爆装置とリミッターを外す。
その後他の人を皆殺して……あとはあのおじさんを殺して帰ろうか。』
勝手に神の体をいじった罪を、シグマにも味あわせてやらなければならない。
新しい姿を手に入れたドラスが手をかざす。
すると、手の向こうにあった民家のドアが吹き飛んだ。
『念動力は使えるんだね、ならまず十分かな?』
家の中をナイフを片手に物色する。
探しているものは……
『とりあえず服を着ないとね。』
【C-3 市街地/一日目・深夜】
【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:健康
[装備]:荷電磁ナイフ)@マルドゥックスクランブル
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:自爆装置とリミッターを外す。その後参加者を全員殺す。優勝したあとシグマも殺す。
1:服を探す。
2:対主催の人間たちにもぐりこむ。
3:自爆装置、リミッターの解除。
※細かい外見はお任せします。
※枕たたき棒@魁!!クロマティ高校 が周囲に落ちています
*時系列順で読む
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|&color(cyan){GAME START}|ドラス|034:[[善意と悪意の行方]]|
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