次元を繋ぐゲートを超えた先に待っていたのは――元の世界。
六人と一匹はあの恐ろしい命の奪い合いの中でとうとう生還を果たしたのだ。
だが、その顔は皆、浮かないものだった。
友人を奪われ、恋人を奪われ、教え子を奪われ、最後の最後には戦友のころびすら失われた――失うものがあまりにも多すぎた。
六人と一匹は疲れきっていた。
ある者は涙を流し、放心し、打ち震え、悔んだ。
だが、どれだけ泣こうが呆けようが震えようが悔やもうが、一度奪われたものは帰ってこないのだ。
「今は生き残れたことを喜び合おう」
その言葉を誰が言い出したかは定かではないが、大事なのは言葉の方だろう。
ここでメソメソしていても死んでいった仲間達は喜ばない。
そう思ったから生還者達は泣くのを止めて互いの生還を喜び合った。
泣くより、喜び合った方が亡くなった者達も報われるだろうと信じて。
そして、殺し合いを乗り越えた彼らの新たな日常が始まる。
千聖はころび達の意志を引き継いで人々のためにパワードスーツを作り続けることにした。
ノヴァが言うとおり、自分が作り上げた物が時を経て殺戮の道具になる未来が待っているのかもしれない。
だが、到来する未来を恐れてばかりではなく、武器も道具も良き方向に使われるよう努力することが大事なんだと彼女は学んだのだ。
散っていった者達の言葉を胸に情熱を燃やす千聖。
千聖「ころび、阪口くん、ニューソンさん、統香先生、瞠ちゃん。
死んでいったあなた達のためにも必ずこの手で良き未来を創りあげてみせる!」
――そんなある日、彼女の耳にあるニュースが舞い込む。普通の手段では倒せない『謎のくらげ状の怪物』が海から現れたと。
後日、人々を襲うクラゲの怪物を倒すために各地から多くの研究者・科学者・技術者が招集される。
その中にはパワードスーツに乗った半身不随の少女の姿もあったという。
日常に返った凜吾は魔法少女もののアニメや漫画を見るようになり、さらに阪神ファンになった。
どうやら羽亜兎やシルフら同行者の影響を色々受けまくった結果らしい。
しかし以前より霊に対して進んで親身に相談に乗るようにもなっていた。
もう、少年はこの霊媒体質を治そうとは考えていない。
殺し合いを経験した結果、少しでも後悔しないために、後悔させないために彷徨う霊達にお節介を焼くのだ。
凜吾「さあ、今日も幽霊たちが残した未練を解決してあげようか」
霊媒体質の少年は今日も奔走する。
現代にやってきた彼女グソクムシちゃんは人間の世界をマイペースにエンジョイしていました。
というか、元々巨大なメダカすら人語を話せれば生徒として受け入れるヘンテコな世界観なので、彼女の存在は割とすんなり社会に受け入れられ、今ではすっかり人類の隣人です。
ふと殺し合いの中で友だちだったSF組の「人間ってなんだろう?」というテーマに対してグソクムシちゃんは考えます。
その答えは殺し合いの中で他の七人に言った時と変わらず
グソクムシ「私たちには人間さんのことはわからないし、人間さんたちにも私たちのことはわからない。
それでもいいじゃないですか。わからなくても、私たちは人間さんが大好きです」
それを言った時、七人の友だちには微妙な顔をされましたが、それでいいのかもしれません。
彼女はまだまだ人間のことを知り足りず、人間はヒトガタグソクムシのことを知りません。
だから、もっと知り合いましょう。お互いが好きになるかもしれませんよ?
でも人前で脱皮したり、街中で動物の死体を見つけて食べたり、自分の腕をもいだりしちゃいけませんよ?
みんなとの約束だからね(はぁと)
恭介は、この後誰とも再婚せず独身を貫いた。
亡き妻琴音への愛は深く、彼女以外の人生の伴侶は考えられなかったのかもしれない。
そして一刑事として、この後も様々な事件に向き合い、刑事として戦い続けた。
その胸に、正義と愛しき妻への子守唄を宿しつつ。
時は流れ、数十年後、彼はとうとう永い眠りにつく日がやってきた。
ふと、眠りにつく前に、子守唄が聞こえてきた。
その子守唄はひと時も忘れたことのない愛しき妻の歌。
恭介「琴音、長らく待たせたな」
数十年の時を経て、一人の刑事は天国の入り口で妻と再会を果たした……
殺し合いが終わって間もない頃、東原学園は窮地に陥っていた。
理事長含む多くの教師と生徒が殺し合いによって死亡したことにより、学園は存続の危機に立たされていたのだ。
特に理事長に関しては、このまま次の理事長が決まらなくては東原学園は閉鎖されるかもしれないらしい。
暗いムードに包まれる教員室の中で古畑は解決策を必死に考えるが、ロワの惨劇による放心状態が完全には抜けきっておらずIQ180の頭脳が機能しない。
日和が、もみじが、東堂が、鈴が、日高がいた、この学園を守りたい気持ちはあるのに。
そこへ、教員室の扉を叩く音が……
古畑「誰ですか? ……って、あなたは!?」
古畑六星の前に現れた者とは!?
→続く!
ここはとある田舎。ひとりの少年が、納屋の片隅で泣いていた。
たった一人の家族である母親がいなくなり、遠い親戚に預けられた少年。
そこでの暮らしは決して、よいものではなかった。
今日も親戚一家にこき使われ、暴力を振るわれ、ボロボロの身体で唯一の安息の地である、納屋へと向かう。
一家や世間の言うように、確かに彼の母親は所謂クズだったのかもしれない。
それでも、少年にとっては大切な母親だったのだ。
泣き疲れ、眠ってしまった少年は夜中に目を覚ます。ふと、顔を上げるとそこには母が立っていた。
優しく微笑む、母親のもとへと、彼は少しずつ歩みを進めた。その顔にはもう、涙はない。
翌朝、その少年は薄暗い納屋の隅で冷たくなっていた。幸せな笑みをたたえながら。
芦塚はようやく自分の変化に気づいた。
彼女はロワを経て生き物の命や傷みに少し向き合うようになっていたのだ。
だからこそ主催での決戦の折に仲間だったルークを傷つけられなかったのだと。
もはやサイコパスだった芦塚陽菜はどこにもいない……本当ならそれは人として良い事なのだろうが、すなわち裏社会の掃除や妖怪退治などの流血沙汰の荒事を引き受ける何でも屋は、もうできないことを意味していた。
途方に暮れる芦塚だったが、そこへ一枚のチラシが目に入る。
そして何を思ったのか、今まで続けてきた何でも屋を畳み、 猛勉強を始めた。
一体彼女は何をするつもりなのだろうか?
芦塚「ちょうど、行くすえが気になる坊やもいるしね。待ってなさいよ夢無」
→続く!
連日、イタリアを中心とするヨーロッパ情勢が報道されていた
イタリア裏社会を支配していたギャング組織血染の蝙蝠のボスや幹部が失踪し、混乱に陥っていた
その機に乗じて、ギャングの支配権をめぐる抗争が勃発。
それを切っ掛けに、周囲の中小規模のギャングも蝙蝠を壊滅させるべくこの抗争に参戦
いつしか抗争はイタリアだけでなく、欧州全土に広がっていた
町並みは破壊され、裏通りにはいくつもの死体が転がっていた
この地獄を止める者は、誰もいない
ここはとある家庭。リビングで4人の家族が談笑していた
話題は、とある学園にやった末の娘のこと。
「アイツ、いなくなったんですってね?」
「だそうだよ。理由はわからないけど」
「このまま戻ってこなきゃいいのに」
「同感。あんなのがいたら、家の恥だ」
げらげらげら。一斉に笑う家族。
果たして、それは現実のものになっているのだが彼らはそれを知ることはない
お話はこのロワが開催される2日前にさかのぼる。
東堂あゆみが所属する、いじめグループがひとりの生徒を自殺へ追いやったのだ。
勝利を祝し、缶ジュースで乾杯する一同。そして、その2日後……
「あゆちゃんがいなくなったのって、もしかしてアイツの呪いなんじゃ?」
少年少女たちの頭の中はそのことであふれかえった。
それはやがて次に『呪い』が降りかかる相手を言い合う事態に発展。
言い合いはやがて罵倒へと変わり……。
この日、ひとつのいじめグループが終わりを迎えた。
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消えずに輝き続けるもの |
荒木夢無、青井凜吾、芦塚陽菜、古畑六星 |
夢無は苛立っていた。
殺し合いの末に、担任である笛吹の死、そしてクラスが大幅に減ったことで馴染んだ笛吹クラスがなくなると知らされたのだから。
一方、理事長不在で東原学園が無くなることは、新理事長の出現で回避されたらしい。
しかし笛吹クラス自体がなくなることは避けられなかったようだ。
末井、宝木、荒谷、
サービスちゃん、時逢、羽澄 由希、
ゆり☆ばら、有村、吉川、 尊大が生きていたクラスが消滅するのだ。
夢無「これがオメーの言う33-4って奴か」
凜吾「なんでや、阪神関係ないやろ!」
あの殺し合い以来、すっかり仲の良くなった凜吾とそんなやりとりをしていると、ある女が教室に入ってきた。
スーツ姿の芦塚陽菜である。「何でアンタがここに?!」と驚く夢無と凜吾。
芦塚曰く、東原学園の新任教師募集のチラシを見て亡くなった笛吹の後を継いで教師になろうと決心。
何でも屋を閉店し、猛勉強の末に教員免許を取得。東原学園の教師になり、夢無らクラスの担任になったのである。
つまり、笛吹クラスは芦塚クラスとして生まれ変わったのである。
さらに芦塚は二人に一枚の紙を見せる。
なんとそこに書かれていたのは『新理事長は馬!』という見出しの校内ニュースだった。
グリンガレッドは主の下に帰った。ハッキリと馬の素性そのものは明かされてないから別の馬かもしれない。
校内新聞の号外にドヤ顔で写った写真の馬は、何故か殺し合いの中で会った馬に雰囲気が似てて、何故かサイボーグ手術が成されてて、何故か殺し合いが起こったことを知っているような素振りを見せただけの馬かもしれない。
しかし二人には、どう見ても自分達が知るあの馬にしか見えなかった。
笛吹クラス改め芦塚クラスの教室の外には、古畑がいた。
新しい理事長が馬ということに今でも困惑している古畑だが、「これもしかしてあの馬野郎かよ!?」と嬉しそうに笑顔を取り戻した夢無と凜吾を見ていると、これで良かったんだとなんとなく納得し微笑むのであった。
凜吾「あれだな、奇跡も魔法もあるんだよ」
夢無「うるせえよバカ」
字面に反して夢無の顔は笑顔で満ちていた。
そして彼の胸ポケットに収まっている『絆』のタロットは彼の喜びに呼応するように仄かに輝いていた。
最終更新:2016年12月07日 17:42