【名前】御木津藍
【性別】女性
【出展】輝光翼戦記 天空のユミナ
【支給品】汎用支給品一式
【名セリフ】
「とりあえず、もう『あなたは一人じゃない』から」
「―――― う  み  ね  こ  、 最  近  誰  か  話  題  に  し  て  く  れ  て  る ?」

【ロワ内での動向】
混沌ロワ2開始当初は、汎用の名簿で論説部メンバー(弓那、雲母)の存在を確認するも合流の当てもなく、
組める仲間が見つからず単独で会場を徘徊。道中で参加者の貴重かつ豊富な食料確保ポイントである
大型スーパーマーケットに行き着くも、そこは参加者の中でも有数(原作中では最強)の大食いキャラの面目躍如。
あっという間に店内の食料を食い尽くして気力回復しながらなおも徘徊を続けたところで、
変人ホイホイと名高い広瀬康一と、ホイホイされた大物変人その1こと桂小太郎と合流。
桂とはまた違うベクトルの期待の大物変人その2として、
康一と、同時期に合流した門倉甲の気苦労の種になりながらも対主催として行動を共にする。
なお、道中で水坂憐の存在について、憐と同世界の出身である甲とかなりシリアスな考察を重ねるなど、切れ者な一面もアピール。

そこから幸運にも大々的な鉄火場に巻き込まれることもなく紆余曲折を経て、
ドS組や勇者部と行動をともにしていた弓那&雲母とようやく合流。歩武はいないが論説部が揃う。
そこからケストラー戦を経て対主催が続々集まり大集団となる中で、
ゾンビ耐性&T-アビス罹患と小保方によるSTAP細胞投与などでB.O.W化が進行する恵比須沢胡桃と出会う。
諦観から自分を生物兵器として使い潰そうとする悲壮なくるみの姿とそこからの悲痛ムードが気に食わなかったのか、
そこへ食欲任せに飛び込んで、くるみに文字通りかじり付き、その血肉をちょっとだけ飲み込んだことで、ワザと「くるみと同じモノに罹患」。


「おなかがすいて腹の虫が騒いでいたのでいたのでむしゃむしゃしてやった。
 今は後悔している。クルミ味ついてなかったし、イキが良くなかったので。
 ……あ、STAPそぼろ、追加でお願い。 ……え? もうないの?」

                           ――O・A容疑者(原典の都合上建前上は18歳以上)


……とは、後の彼女の韜晦である。

いきなり噛まれて怒るくるみにも悪びれず「これであなたはもう一人じゃない」と嘯く藍に、
くるみも周囲もそのシュールさにあきれ返ったことで、それまでのウェットな毒気が萎え、その場の悲壮ムードは収まった。
その後も、危険視され小保方が隠し持っていたSTAP細胞の、ジルとクリスの処分が及ばなかった培養体をユッケ代わりに食べたりと
相変わらずの味方も呆れるフリーダムぶりを発揮し続けるが…

小保方「この恩知らずッ!!」
くるみ「あんたに感じる恩なんてこれっぽっちもないッ!!!」
小保方「ゾンビを殺す力が欲しかったんだろッ!!」
くるみ「それとこれとは話は別だッ!!」
小保方「私のSTAP細胞で不死身になったッ!!いや、してやったんだッ!!」
くるみ「化け物にしてくれなんて頼んでないッ!!」
小保方「化け物なんかじゃない!!新たな人類の進化だッ!!!」

小保方「この青臭い小娘ッ!!!!」
くるみ「嘘つきの糞ったれ女!!!!」

研究者としての野心を肥大させ、くるみから培養したSTAP超細胞を投与して暴走した小保方と、
その被験者として人外化を進行させられたくるみ。
異常再生とそれを嵩に着ての残虐な潰しあいと、それを経てもまだ死に切れずクリスとジルに介錯され看取られたくるみの最期に、
藍も自分の食欲およびフリーダムテンション任せな「お通夜空気破壊」の代償と、明日はわが身であることを悟り、
くるみの遺したものの一つで、その件でも揉め事を起こしていた彼女の友人・りーさんこと若狭悠里にも思いを致すようになる。


そこから、散々な目にあったすえに悪堕ちし、新世界創造のために参加者皆殺しを標榜する立花響の軍団と対主催が交戦。
こちらも悲惨案件にまみれた果てに死して深海棲艦化し、ビッキー一味に加わった大井と彼女に追従する羽黒が、
かつてともに行動してそれなりの因縁もあるりーさんに誘いをかける。

大井「ずいぶんいい姿になったわね、若狭悠里。分かったでしょ」
羽黒「一度堕ちた人間が元に戻ろうなんて甘いのよ」
大井「だから私達と一緒にいきましょう?そうすれば今までの事許してあげるわ」
羽黒「力もあげる」
大井「そして私達の邪魔をする奴も叩き潰すの」


りーさん「あなたの言う通り、一度堕ちた人間が元に戻るなんておこがましいのかもしれない…。
     あなたに従えば、力も手に入る。大人だってもう必要ない。
     あの三人だって帰ってくるかもしれないんだ。それはとてもとても嬉しいこと……」


それは、惨い現実に苛まれ、そこから抜け出したいと願う者にとっては垂涎モノの甘美な誘惑。
だが、

りーさん「…だけど、お断りします。かけがえのない三人の気持ちを裏切りたくないから」

会場で出会った仲間や、一緒に「がっこうぐらし」を続けてきた学園生活部への思いによって
今にも折れそうな心に踏ん張りをきかせ、深海の悪魔と化した大井の誘惑を振り切るりーさん。


最愛の姉艦・北上亡き後では一番入れ込んできた人物のその拒絶に激高し、りーさんを手にかけようとする大井。


『堕ちた人間が元に戻ろうともがくなんて甘い』。『邪魔をする奴も一緒に叩き潰す』――
その発言通りの、『りーさんにとって非日常の権化』たる暴威を振るう深海棲艦に、傷心の女子高生が恐怖から身をすくませた所で。



「……と。
 テストで一回赤点取ったからって、補修も落第回避もせずに学校に火をつけてごまかそうとする人たちが言ってる」


深海の魔女を否定するツッコミとともに、その『不審火』を消さんと巻き起こる水の柱――『ハイドロブラスター』。
それは『りーさんにとって本来あるべきだった日常』とも言える、学校ネタに絡めた言霊。

己の意思や発言を、相手の心に、果ては現実にダイレクトに影響させる超能力――イシリアルによって、
大井をその理屈ごと跳ね飛ばし、割って入るは御木津藍。
響一味との決戦へユグドラシル本社ビルに乗り込む対主催の中、先刻の物思いから弓那&雲母から離れ、
くるみの友人だった彼女を追っての介入だった。

鬱陶しい横槍によってさらに猛り狂う大井と、その甘い毒の夢にすがる追従者として艤装の砲門を向ける羽黒に、
いつものポーカーフェイスを崩さずに砲雷撃戦を挑む藍。


しかし、相手は(私生活や思想に問題あれど)数多の海の怪物を屠ってきた歴戦の艦娘と、その報われぬ想いから魔に転じた元艦娘の深海棲艦。
宇宙で異空体相手にそれこそ艦娘めいた戦いを続けてきたイシリアル能力者たる藍とて、2対1、数の劣勢は如何ともし難い。
二挺拳銃で二十の光弾を放つ隙に、四十の魚雷の爆発が眼下から襲い掛かり、
銀河連邦の宇宙戦艦ばりのレーザー砲を具現化して一発叩き込む間に、大日本帝国の重雷装艦の、重巡洋艦の砲火が横合いからその身を吹き飛ばす。

この凄惨とも言える劣勢の中、たった一人の戦線崩壊を防いでいたのは、先刻くるみに噛み付き、その血肉から取り込んだSTAP超細胞。
何度も砲撃や雷撃の被弾によって破壊され、屠殺場の吊るし肉めいた悲惨な肉塊と化しているが、その端から、
高速修復剤を乱用する艦娘めいた異常な速度で再生していくその変質した肉体こそが、この戦場で藍にとっての命綱だった。




だが――


「へ?」

ぴちゃ。

「あ、あ、ああああ……!」


傷心の少女の頬に、服に撥ねた赤い飛沫。
それは真っ当な生物なら致死30回分は下らないほどの砲雷撃で何度も肉体を破壊され、そしてその端から異常な速度で再生していく藍のもの。
無茶苦茶に壊され、『どう考えても死んでなければおかしい』状態から、見る間に元に戻っていく、青い髪の少女のその姿は。
先刻から脳裏に焼きついている、『自分の親友がゾンビ以上の化け物になっていく』様とまったく同じで――


りーさん「いやっ、あ、やだ…ッ!?」

フラッシュバック。
ただでさえ壊れそうな心を、仲間への想いをつっかえ棒にして必死にこらえていたりーさんの心は―――


りーさん「そんな、ひ…ッ、いやああああああああああああああああああっ!?」


この心的外傷を想起させたストレスに耐え切れなくなり、ついに折れた。


藍「!?」


退避していたと思った少女が、金切り声とともに恐慌状態に陥り、すぐ後ろで腰を抜かしてへたり込んでいる。
藍がその事実に気づいたときは、すでに遅く――




りーさん「……ぁ、かは……ッ…」

17回目の砲雷撃で吹き飛び潰れた藍の左顔面の、その再生していく目の視界端に映るのは――
被弾で自分が吹き飛んだ際に巻き込まれ、全身に至近弾の衝撃波と20.3cm砲弾の破片を浴び、
大量出血のためその周辺だけ目立って赤い水域に半ば沈む、虫の息の若狭悠里。

藍「くっ……!!」

呼吸こそまだ止まっていないものの、もはやそれだけで奇跡といえる惨状。
『尖った石のようなもの』を握り締めたまま痙攣し、もはや何を映しているとも知れないその瞳を見て、すでに手の施しようがないことを悟る藍。
せめてこれ以上巻き込まないようにと、りーさんから離れ、改めて大井たちに向き直る藍だったが――


大井「……馬鹿な子。
   私たちと一緒に堕ちていれば、そんなみっともない姿にならずに済んだのに。うふふふふ…!」



……目の前の深海棲艦のその一言に、藍の中でも、何かのブレーカーがはじけとんだ。

その瞬間、脳裏に次々と浮かんでくる映像。
この殺し合いに巻き込まれる前に部室で、寮の自室で、暇つぶしに見ていた、軍艦の力を持つ少女を題材にしたゲームを原作にした物語。
全13話放映終了後、世間の熱心なファンも原作プレイヤーの自分からも
「安易なネタ先行の駄作」「原作とコア提督への冒涜」「そもそも物語作品としての5W1Hからしておかしい」
「むしろキャラDisのために作った?」という評価でおおむね固まりきった、そのアニメの視聴記憶。



それは、目の前で嘲笑的な笑みを浮かべ、緑色のセーラー服もどきの残骸で、ボリュームある胸と腰を申し訳程度に覆う、

かつてある程度は持っていたであろう使命感と矜持を、嘲笑と絶望と暴力の炎にくべ、うち捨てて嗤う、

その露出の多い肌色が完全に死人めいた灰色になった、目の前の長い茶髪の、深海棲艦にとてもよく似ていて――




藍「――みっとも、ない…。
  『その言葉の体現者』が、襲った犠牲者をそういって貶め憚らない、今のその姿こそ、まさにそう…」

大井「はぁ? 何を言い出すかと思えばあなた、とうとう頭のほうまで――」






藍「正直、あの毎週のクソレズ劇場は鬱陶しかった。物語に何の深みも面白みも与えなかったし」




大井「!!?」

反撃の砲火は、御木津藍の両腕で抱えるレーザー砲と、再生していく顔、両方の口から火を噴いた。





「スタッフの悪乗りが過ぎる。というかその尺削って他に描写する大事なことなくね?」




「ごらん、あんなに北上さんの胸が揺れている。
 北上さんは巨乳組ですか? おかしいと思いませんか、あなた?」



「なによりあのアニメ、相方さんは完全に都合のいい甘えん坊のお人形だった」


「本当はあなたが好き好き言ってるあの雷巡の子、貴方がいなきゃ軍事行動どころか子供のお使いも出来ない無能だったんじゃないの?」




――『突き刺さる言葉のチョイス』。

自分の意思や言葉そのものを攻撃現象に転化できるイシリアル能力者にして、すまし顔でツッコミ・毒・大ボケをさらりと吐ける御木津藍ならではの。
そのエネルギーや言霊――『心の力』を帯びたイシリアルの砲撃攻勢で、相手を物理や論理より先に心理サイドから砕きにかかるオフェンススキル。




「なにより、あなた自身、あの子を『敬意を持つ相棒』じゃなくて、そんな『ダッチワイフ』にしか見てなかったんじゃないの?」







「あの子がアニメであんなふうになったの、 あ な た の せ い じ ゃ な い の ?」




その瞬間。

半死半生のイシリアル能力者が、『深海の青』よりもなお深く広い『宇宙の藍』の焔を瞳に燃やし。
猛毒の域に至った言霊を絡みつかせ、微笑みながら放った、青い思念エネルギーの散弾砲。

物理的破壊力そのものは、先刻までの藍の最大威力のレーザー艦砲射撃に比べれば、ひと段以上格の落ちるはずのその光弾を受けた瞬間―――




大井「い…!? いやああああああああああああああああああああ!!!!」

羽黒「大井さん!!?」


深海棲艦・雷巡『大井』――――否。
『ガチレズ大井bot』は、ココロの痛みに、狂乱した。


大井
「違う…!! 違う違う違う!!!
 なんなの、なんでいまこんなのが頭の中に沸くの!!?」

「あんなの私じゃない、あんなの北上さんじゃない!!! あんなの私の知ってる鎮守府の皆じゃない!!!!」

「何よあの『大井』は!? あんなただのモンペまがいの下品女は!!? 私あんなんじゃない!! 一緒にしないでよ!!」

「アニメ私も期待してた、でも私だってあんな雑すぎる内容だなんて思わなかった!!」

「挙句『あのクソレズ劇場ジャマ』!?
 本家がヘイト交じりの二次ネタ勘違いで逆輸入!!? だったらそんなの運営鎮守府とか脚本家に言ってよ!!」

「私はただの二次ネタ、可能性のひとつとして存在してただけ!! それもあんなモラハラのDQNな行動なんかやった覚えない!!
 ガチレズとクソレズは違う!! 私のせいじゃない、私のせいなんかじゃない!!
 お前があんなネタやったからアニメがああなった!!? 違うっていってる、あんなのやってなんかいない!!」

「それにあの『北上さん』なに!!? 巨乳で、私に甲斐甲斐しくされるのはともかくとして、私なしじゃあんなにも弱々しくなる依存っぷりは!?
 北上さんは私のやり方が何であろうと猫みたいに飄々としてで大活躍する、豊満でなくてもそういったことに頓着しないマイペースな人なのに!!
 あのネタ展開した脚本家、私と北上さんを何だと思ってるのよ!!! 何もかも安易なのに無難な甘い球どころかビーンボールだらけ!!
 仮にも公式プロデューサーが監修する脚本が雑でキャラ下げな二次の誰得偶像に縋るな!!
 最近『公式の大井』の実装ボイスまでただのメンヘラ化進行させてるじゃない!! もうやめてってば!!!」

「ちがう、ちがう、ちがう、ごめんなさい、私じゃない、私のせい!? わたしのせいなの?」

「いやだ、そんな、『死ね』『消えろ』『お前のせいでアニメがごみに』!? 違う、そんな、いやああああああああああッ!!」





光の砲弾に大量に載せられた思念と、それを想起させるイシリアルの言霊から流れ込んでくる光景。
その青い光弾を放った射手―――藍も見ていた件のアニメの放映時期。


その雑な話の展開と、ありえないキャラ下げ二次ネタを雑にこれでもかと取り込んだ、諸提督が激怒と失望をあらわにしたその内容。

さらにその、自分と同じ失望を味わった筈の視聴者から、
『大井』のbot存在たる自分ですらあそこまで大袈裟にはやるまいと思うほどの、アニメの『大井』の、ヘイトの温床になったキャラ付けについて、

『お前のせいだ』
『公式への逆輸入の病原体め』『大井のクソレズ化の原因はお前だ』
『お前がガチレズネタやらなきゃよかったんだ』『アニメを糞にしたA級戦犯の一人め、消えろ』と――

ツイッターTL上で、電子の海のあちこちで、深海の怨嗟よりなお酷く、『ガチレズ大井bot』に浴びせられてきた有形無形の罵詈雑言。


目の前の青い髪のボロクズに成り下がった女から放たれる、それほどでもないはずの威力の光の散弾を被弾するたびに。

脳内に流れ込み、湧き上がり。
深海の暗黒に沈みきったはずの己のココロを、そのさらに下から海底火山の噴火めいてかき乱すフラッシュバック。
自分でも見るに耐えない醜悪な姿を『大井』が晒すアニメと、それにこじつけられて自分を罵ってくる、八つ当たりめいた無尽蔵の吐き捨てカキコ。



ひびが入る。
怨念――すなわち暗くよどむ『心の力』が、その存在構成そのものに大きなウェートを占める深海棲艦の、そのココロのバイタルパートに。





大井「あが、ああ、おご、あgggggggg……!?」
羽黒「お、大井さん!! しっかりして!!
    あなた、よくも大井さんを――」

口から泡を噴き、両目の焦点を盛大に乱し、全身を痙攣させて悶絶する大井。
それに慌てふためき、藍に攻撃しようとする羽黒のココロにも、『心理』を焼き焦がす光の散弾砲は牙をむく。


藍「黙ってろよ出撃もせず教え子沈んでも特に最終回になってもケアらしいケア何もしなかったモブ従順教師」
羽黒「はがぁ!!? あ、あれは、単純に、あのアニメの脚本の都合で――私は、私は…あんなんじゃ………!?」


藍の構えるカノン砲から辛辣な罵声とともに放たれ続ける、『突き刺さる言葉のチョイス』のエネルギー散弾。
その言葉を心身に被弾し、のけぞった羽黒がその直後、眼前に垣間見たのは、


藍「……ようやく、各個撃破できる隙ができた。
  モブはモブらしく、壇上からさっさと去って……!」

羽黒「…え? あッ――」

『レーザー砲』ではなく、『拳銃』の銃口で膨れ上がる、さっきの散弾砲の砲弾をはるかに上回る巨大な、青い光の砲弾。
抵抗しようにも、すでに先の暴言イシリアル散弾で、肩や手首の20.3cm主砲はおろか腰周りの副砲・機銃群も破壊、ないしは機能不全に陥っており。


藍「……シュート…ッ!!」


羽黒「ダメ…見ないで……!」
大井「脚本(さくせん)が悪いのよ…!? そんな可哀想な生き物を見る目で……ッ!!」
羽黒&大井「「見ないでェーーーッ!!?」」


『デヴァステイター』。
藍の拳銃から放たれた巨大光弾が着弾、爆発し、羽黒は錯乱した大井ともども、大破して戦闘領域外へ吹っ飛ばされていく。




藍「……悠里…」

紛れもない強敵であった、堕ちた歴戦の艦娘二人を退け。
超STAP細胞の力で見る間に治る肉や骨や臓物とは裏腹に、
すさまじい疲労と空腹、そして肉でも骨でも臓物でもない体のどこかが軋む音と、それの音源であるかのように全身から沸く疼痛に苦悶しつつも。
守ることはできなかった、しかしその死の間際まで辱められてはならないと思い守るために戦った、少女の姿を捜すが、




藍「……悠里? どこ…?」


彼女の姿は視界のどこにもない。
先刻放ち、至近距離で爆発した青い光の砲弾は、その爆風で艦娘ふたりを視界のはるか彼方まで吹き飛ばし、
さらに巻き込んだ藍さえも反対側へ弾き飛ばした――
それも、戦場となったビル内通路の、足元を魚雷がぎりぎり走れるほどに冠水させていた、水ごと。

それほどの爆発が、いくらその大量の水に半ば浸かっていたとはいえ、何の抵抗もできない少女の体を見逃すはずもなく。
大爆発で壁にあいた穴から、りーさんはビルの外に放り出されていたのだった。





藍「ゆう、り……」

守ろうと思った対象さえも見失い、激戦と無茶苦茶な超再生乱発の反動に襲われ、藍はそこで意識を手放した。
ゾンビもののお約束すら踏みにじるような超細胞を取り込んだことで、自分にも遠くないうちに来たるであろう結末を、理屈ではなく体感で察しながら。


禁断の果実(クルミ)を口にした自分には、このまま高速修復を繰り返して命を燃やせば、がっこうぐらしのコンティニューもままならない、脳細胞がバックギアな。
バイオなハザードレベルのヤベーイ、食欲という欲望に飲まれた、とてもデンジャラスな宇宙ゾンビもどき化という、ある意味『神』展開な時代がキタりして、と…。






――この戦いで遠くまで吹き飛ばされた者たち。

重雷装巡洋艦・深海棲艦大井は、直後目の前に現れた男に錯乱したまま攻撃を仕掛け、肉体精神両面が大破炎上し混乱の極みにあった最悪の状態で、フォルテッシモ世界におけるラスボスたる彼に敵うはずもなく。
重巡洋艦・羽黒は、目の前で深海大井を無慈悲に叩き潰すオーディンの姿に恐怖し、女としてのシナまでつくり、必死で媚を売って命乞いをするが――
一顧だにされず、次の瞬間にはその一撃で大井のあとを追わされ。


若狭悠里は、彼女と縁のある榊遊矢たちの目の前に虫の息で放り出され。
その死に目を看取ろうとした彼らの目の前で、致命傷を負う直前に暴走したココロと『矢』の力により、スタンド能力の『学校』を顕現させるのだが――

それらはまた、別の話である。

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最終更新:2018年04月28日 10:32