【名前】木村拓哉
【元ロワ】
信長ロワ
【支給品】
全自動卵割り機@サザエさん
【これまでのあらすじ】
ご存知国民的アイドル「SMAP」のメンバー。通称キムタク。
CMで信長の生まれ変わりの役を演じたことから信長ロワに参戦したが、あくまで現実世界の「木村拓哉」としての参戦。
大勢の織田信長に囲まれてコロシアイという妙な状況に混乱したが、甘味好きの信長達相手に料理を作り信頼を得、生還。
【本ロワでの動向】
登場話で周囲にたまたまあった設備と、何の因果か支給された全自動卵割り機を見たことで、信長ロワ同様BISTRO SMAPよろしく料理を作っていくことに重視することに。
初っ端から
ザルナ・アエゴーシュマや吉良吉影といった危険な参加者と遭遇するも、料理を振舞うなどでなんとか戦闘を回避していく。基本的に単独行動中はこの方針を貫き通した。
序盤は碇シンジと肩を並べ、ビストロコンビを結成していた。
お互い元のロワで料理を作り続けたという共通点を持っていたためか両者はひかれあい、そして・・・三途の川の向こう側をうっかり見ることとなった。
というのもこのシンジ、
音楽ロワでは終始大食いキャラのインデックスのために、質より量の精神で料理を作っていた。地の文にすら「味・量・スピードの鼎立を目指すことこそが彼の戦い」と書かれるほどだから大したもんである。
一方信長ロワでのキムタクは、何かと甘いものを求めるくせして、個々の個性が強い信長連中を相手に料理を作っていたので、一品一品に力を注ぐ調理に慣れてしまっていた。
そんな二人が、あの孫悟空相手に料理を作り続けたらどうなるか・・・
ビストロスマップが体に染みついていたこともあっただろう。チーム料理人(くろうにん)とは言い得て妙である。
互いにロワを通して料理スキルが磨かれた同士、しかしその方向性は質より量、量より質と見事に真逆へ進化したものだった。
方向性の違いで解散…というより大量生産する必要がある悟空を養うのは無理と悟ったことでキムタクはシンジの元を離れることに。
【死因:過労死 加害者:孫悟空 詳細:料理疲れで力尽きた】などという情けない死因は回避された。
第一放送が始まる前限定の、かなり期間の短いコンビだったがネタ的にも戦力(主に孫悟空)も充実していたため長い間人気コンビとして名が挙がっていた。
コンビ解散の後は各地を巡りながら、今まで通り一人ビストロスマップで料理を振舞い続けることに。その道中で様々な参加者と接触、情報を集めていった。
特に、主たる志々雄がいったんやられ、そこらを彷徨っていたカルナに料理を施したことが、後の戦いで大きな意味を持つことになる。
またこの際、あのマイケル・ジャクソンに料理を送るというとんでもないイベントが起こる。
キムタクの料理をバーっと指差して「this(全部ください)」などコミカルな一幕もあり、まさかの夢の共演に読み手は沸きあがった。
そして、そんな沸きあがりを起こしたのは、参加者も例外ではない。
このロワにおいて、キムタクと出会った時の参加者のリアクションが、信長や孔明といった歴史上の人物よりも大きかったのだ。
みく「凛ちゃん凛ちゃん!キムタクにマイケル・ジャクソンにゃ!こんな所で大物に会えるなんて思わなかったにゃ!」
凛「お、落ち着きなよミク、みっともないよ」ドキドキソワソワ
ごらんのありさまである。
なにせ、国民的アイドルであるキムタクなので、女子高生はもちろん、自身もアイドルである前川みくや渋谷凛も年頃の女の子らしくはしゃぎサインを求めたりした。
特にかのキング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンと行動している時期など、殺し合いの最中であるにも関わらずライブ&サイン会が始まる始末であった。
「SMAPとマイコーは世界観超えて共通認識」……GENJITU出展とか逸般人とかとはまた違うベクトルでの魔改造みたいなもんだが、特に問題なく許容されたのはさすがというべきか。
長い期間単独行動をしていたキムタクだが、ついにホルモン屋チエちゃんを有する対主催組に合流。この時点でほぼすべての参加者が集結しつつあった。
もちろんマーダーも一か所へ集中するということであり、ロワを引っ掻き回したフェイスレスを因果の中心とした、対主催VSマーダーの大規模戦が巻き起こることに。
宇宙の帝王フリーザに吸血鬼
アーカード、悪知恵をつけたデビルひでに加え、全てを喰らい尽くし凄まじい繁殖力で増えまくる蝗まで襲撃してきたのである。
特に蝗はその数という長所をいかんなく発揮し、圧倒的な物量で攻めてくるのに加え、G細胞を取り込んだ通称イナゴジラと呼ばれる強化形態となっていたためさらに厄介になっており、
そのうえ他のマーダーの対処に実力者が割かれている状況で残ったメンバーは非戦闘員がほとんどであり、絶体絶命のピンチに陥る。
更に突如として捕鯨こと両さんがイナゴジラとの闘いに乱入。今までのさんざん暴れてきた両さんを知るものは当然ながら警戒する。
ところが、驚くべきことに両さんは対主催側に加勢した。突然現れた破天荒な警官の格好をした男に、しかしキムタクは既視感を覚える。
音楽ロワ出身である両さんとは、実写版こち亀の生放送パート出展の両津勘吉である。そしてその両さんを演じた俳優こそが、キムタクと同じSMAPのメンバーである香取慎吾。
実はこのロワで何度もニアミスを繰り返していた二人だったが、彼らを引き合わせたのは、キムタクがかつて同行していた碇シンジだった。
シンジはキムタクと別れた後、合流した両さんが突然発狂し殺されてしまうが、今際の際で両さんに残した言葉が、今この場に呼び寄せた。
非戦闘員である自分たちを守って戦っている、そんな両さんを見て。
彼が香取慎吾に見えているキムタクは、たまらず前線に飛び出し、肩を並べ戦った。
後ろに控えた力のない子たちを守る為。長年連れ添ったチームメイトと共闘する為。
支給品やギャグパート特有のハチャメチャを武器にして広範囲の蝗を蹴散らす両さん。
イケメンを生かした格好いいダンスやアクションを利用して蝗に立ち向かうキムタク。
今ここに、ロワの垣根を越えて、国民的アイドルSMAPが夢の共演を果たしたのだ。
だがそんな防衛戦も長くは続かず。キムタクの疲労のスキに蝗が襲い掛かり、それを両さんが身を挺して庇い群がられてしまう。
庇われたキムタクにもあわや蝗の毒牙にかかろうとしたまさにその瞬間。あたり一帯を覆う蝗の群れが、一瞬で焼き尽くされた。
カルナ「おまえの一食の恩、今こそ報いよう」
かつてキムタクに料理を振舞われた恩義を返すために、カルナが切り札の宝具を開放したのだ。
もっとも、発動までに時間のかかる切り札のため、カルナを見かけた両さんが「ワシが時間を稼ぐ」と言い含め近くに潜んでもらっていたので、今まで戦闘には参加していなかったが。
宣言通り両さんが時間を稼いでくれたおかげでカルナの切り札が開放、広範囲に渡る攻撃により群がる蝗をあっという間に焼き尽くし命をつなぐこととなった。
しかしイナゴジラとなった蝗に食われたことで、食いちぎられた傷だけでなく高い放射能まで浴びたような状態になってしまい、両さんの命が助かる見込みはなかった。
今までのハイテンションが嘘のように、静かに倒れ伏す両さん。彼を見てキムタクは、ポツリと彼の名前を呼んだ。
キムタク「慎吾……」
両さん「違う、ワシは……両津勘吉だ……」
このロワに参加しているのは「両さん」であり、「香取慎吾」ではない。
実写版こち亀の生放送パート。そんな出展であるせいか彼の中には両津勘吉と香取慎吾、二人の意思が混ざり合い、混沌とした存在になってしまっていた。
その混沌に、キムタクの零したその名前が、両さんの中の香取慎吾としての意思を呼び起こす。
だが……このまま認めてはいけない。認めてしまったら、キムタクの知るSMAPメンバー「香取慎吾」という男の名に傷をつけてしまうから。
だから、彼の中にいる両津勘吉と、香取慎吾の意思は、キムタクの読んだ名前を否定するという、同じ結論に至る。
両さん「君のメンバーの香取慎吾は……アイドルグループSMAPの香取慎吾は……誰かを殺す様な事はしない。そうだろ?」
キムタク「……ああ」
キムタクの返事を聞き、それでいい、とでも言いたげな表情を浮かべ、両さんは静かに息を引き取った。
戦闘音の響くロワの只中、ひときわ静寂が響き渡る。キムタクからすれば、メンバーである香取慎吾に出会った直後に先立たれてしまったようなものだ。
音楽ロワの問題児の幕引きには不相応な静かさに包まれ、キムタクの中に「悲しみとは違う、言いようのない感情」が生まれた。
襲い掛かるマーダー達を一通り沈静した後も、参加者内でのゴタゴタは続いた。
先のフェイスレス戦にて対主催に協力ていたワムウの突然の宣戦布告。その裏で起こったせいぎちゃんの死による疑心暗鬼。
今までが派手で強大な戦闘が多かった反動か、終盤にきてそれぞれの人物の内面を掘り下げるどろどろとした展開が続くことに。
この状況でも、キムタクは自分にやれることを求め活躍した。
ゴタゴタが始まる少し前にも、一人ビストロスマップの際に得た情報を共有して考察の援助等も行った。
凛たち一般人による、『アイドル』としてのキムタク評がすでに浸透していたのも大きく、ずっと単独行動していたという面をカバーして有り余る信頼を得ることができた。
せいぎちゃん殺しの犯人探しに精を出し、ワムウの乱戦にも介入した。
犯人探しにおいては恐慌したみくによる誤殺だと判明したが、蟠りの解消まで少しといったところでワムウとの戦闘の流れ弾がみくにとどめを刺してしまう。
そして、「女の子ばっかりに危ないことさせるわけにはいかない」とみくの説得に関わっていた秀吉と凛を逃がすため戦線のしんがりを担当。
秀吉に飛んでくるワムウの攻撃を引き受けなんとか逃げ切ったところで、残っていたほかの対主催とも合流する。
凛の友人であり同じアイドルであったみくは死んでしまったが、これで一安心。そう思った矢先、ふと一つの考えがキムタクの頭をよぎった。
「そうだまだいるじゃないか。将来有望そうなアイドルが・・・・・・・・・・・」
…さて、ここでおかしな点をいろいろと見返してみよう。
第一に、木村拓哉が他のアイドルたちへの関心があまりにも希薄だった事。
木村拓哉主観では死んでいるはずのマイケルに出会っても、そこまで感情を高ぶらせず、冷めた目で見ていた。
またアイドルである凛と出会った当初はファンの一人に接するような態度だったが、彼女がアイドルと知った途端冷たい態度のようなものを見せ始めた。
第二に、一般人であるはずの木村拓哉の戦闘力だ。
前線に出ているのに、多くの参加者を葬ったマーダーと戦い、生き延びている。
よくある一般人なのに強いキャラはロワ補正で魔改造されたり、支給品で強化されていたりするが、
音楽ロワ出展のマイコーなどのように前のロワで超人的な力をふるった描写のない木村拓哉が、突然魔改造されるのは不自然である。支給品も調理器具の類でパワーアップにつながらない。
そして第三、あまりにも行動が大胆なことだ。
再三いうように木村拓哉は常人より体力があるとはいえ、超人や化け物がひしめくこの世界で、単独行動や戦闘行為などをしでかしている。
いくら木村拓哉が一度ロワを経験しているとはいえ、そこまで大胆なことはできないだろう。
それこそ、彼がドラマなどで数多く演じたような、『物語の主人公のような存在でない限り・・・』
それは、本当に序盤。このロワで木村拓哉が初めて、他の参加者と出会ったところから始まる。
ザルナ・アエゴーシュマ。最低最悪と呼ばれる彼が持つ低俗な願いのみ叶える「獣姦胎児の脳漿杯(ビースト・カリス)」。穢わらしい、低俗な欲望のみを実現させる汚濁の杯。
木村拓哉がザルナに出会ったとき、その穢れた杯は、確かに木村拓哉へと与えられた。
木村拓哉の持つ願い。それは「俳優・歌手・タレントとしてトップに立ちたい」という望み。
人の前に立つ者からすれば望まずにはいられない、逃れることのできない欲望を、脳漿杯は聞き届ける。
そのおかげで、木村拓哉はまるで物語の主人公のようなイケメンな性格と行動力を得た。
しかし木村拓哉の行動はそこまで大きくぶれることはなかった。
元々SMAPという日本においてトップに近いアイドルグループであった事。様々な役を撮影で演じてきた経験。
今までに木村拓哉本人が培ったモノによって、一般人ながら、脳漿杯の恩恵を少しずつ利用することができた。
メタ的に見ても、クロスオーバー要素、かつての仲間との再会と別れ、その姿を見ての覚醒と、ロワとして見た場合の主役要素は十分に揃っている。
現実勢ながら木村拓哉本人の一種のカリスマによってその活躍は違和感なく盛り込まれ、このまま何事もなければ、本当にこのロワの主人公格の一人としていられたかもしれない。
だが忘れるなかれ。木村拓哉がここまで活躍できたその一因である、ザルナの能力「獣姦胎児の脳漿杯(ビースト・カリス)」を。
かつてザルナに杯を与えられた者は、例外なく破滅の運命を辿った。
現にこのロワでも、吉良吉影が杯の力で受肉、スタンドのパワーアップを果たしているが、目覚めた能力に引きずられあっけない最期を迎えている。
木村拓哉に与えられた杯にも当たり前のように副作用がついていた。本人も気付かぬうちに。
『芸能人として高いレベルの存在に対しての異常なコンプレックス・ライバル心』・・・木村拓哉の心の隙間に植え付けられたのは、そんなくだらない嫉妬心だった。
その小さなエラーは、ザルナの死亡した第三放送あたりから芽を出し始める。
世界観の違いで知らないとはいえ、仮にも同じアイドルであるみくや凛に対する応対。
あのマイケル・ジャクソンに出会ったのにも関わらず冷めた反応。
なにより、SMAPメンバー香取慎吾と似た存在である両さんの死に、「悲しみとは違う、言いようのない感情」を抱いたとされたが、
その感情は感謝の気持ちなどではなかった。
「ライバルが死んだことによる安堵感」
「先に逝く友を見届けるという美しい役への恍惚」
そんな自分本位な感情が、木村拓哉の心に浮かんでいた。
せいぎちゃんの殺害犯を探す際も、あきらかにみくが犯人であるという状況だからでもあるが、
無自覚に煽り、みくの心をえぐり追い詰めはじめる。
その後戦場に逃げ出し死んでしまったことはさすがに想定外だったが、これも自分の人気を高めることに利用し、凛や秀吉を守り戦うなどもした。
戦線から逃げ切った先で他の対主催と合流をするのだが、木村拓哉の脳裏には明らかに異常な思惑が浮かび上がった。
現状、自分の知りうるすべての参加者と出会い、生き残りの内情を確認した。
そしてその上で、まだ一人、自分の障害となりうる存在が生き残っていることに気付く。
「そうだまだいるじゃないか。将来有望そうなアイドルが・・・・・・・・・・・」
対主催たちの前で、宣言した。その場の全員の視線を引き付け堂々と、絶大の存在感を放って。
マイケル・ジャクソンは殺した。前川みくも死んだ。だがまだ、もう一人残っている。アイドルはまだ、ここにいる。
そう言ってたった一人で、あろうことか多数の対主催の前で、『アイドル渋谷凛』の殺害を宣言した。
凛と秀吉含む、対主催に挑みかかる木村拓哉の様子は、明らかに異常だった。
いままで確かに、アイドル特有のアクションシーンを利用した動きで戦闘をこなしてきたが、それでも耐久力やスタミナは普通の人間同様のはず。
しかしこの戦いにおいては、もはや彼は木村拓哉という存在ではなかった
脳漿杯によって、自らがかつて演じた物語の配役へ変身しながら攻撃をいなす。
さらに「アイドル七変化」と呼ばれている事象が木村拓哉の身に起こる。
ふざけた通称であるが、その事象は紛れもなく脅威であった。
「アイドルは死なない」「アイドルは事故を起こさない」「アイドルは汚れない」・・・・・・
「アイドルは○○しない」
大衆の抱く期待、アイドルという偶像に求められていたものを具現化したかのような存在へと木村拓哉は覚醒した。
司波やギーの放つ攻撃も有効打にならず、汚れのない身綺麗な姿で凛たちの元へじわじわと近寄る。
欺瞞・嫉妬・恍惚をこれでもかと垂れ流しながら、ゾンビのごとくにじり寄るその姿は、どう見てもアイドルのそれには見えなかったが。
そしてついに、木村拓哉はもう一人のアイドルと対面する。
みくを失い、互いを励ましあっていた直後に木村拓哉に襲われた秀吉と凛。
両者SMAPとしての木村拓哉を知っていて、そして信じていた。
特に自身もアイドルである凛は、その大先輩である木村拓哉の豹変に戸惑いと躊躇を隠せない。
「ちょ、待てよ。」
何度もテレビで聞いた声と一緒に、
何かが、割れる音がした。
キムタクに与えられた杯は、確かにその効力を発揮した。
「もっと、醜い人間同士の諍いが見たい。」
あまり上手く機能しなかった脳髄杯で、せめて最後にひとあがきを。
キムタクの持つ杯に残ったザルナの残留意思が、キムタクの欲望を底上げし暴走させていた。
完全に信頼されたカッコいいアイドルが、ライバルを減らすためという目的で殺し合いに乗ったこと。
上げて下げる。あまりに有用なその作戦は見事対主催に動揺をもたらした。
だがそれ以上はなかった。
脳髄杯を得た者のジンクスに当てはめれば、キムタクを待つのはとても皮肉な最期だっただろう。
偶像という名の意思無き怪物と成り果て、対主催に絶望をもたらす結末があったかもしれない。
真なる正義の主人公に討たれ、外道な悪役として皆の心に刻まれる末路があったかもしれない。
そんな救われない終わりへと収束する脳髄杯を。ジンクスごと叩き壊す。
アイドルでも混沌でも、まして超人でもない、あくまで木村拓哉という存在の意思によって。欺瞞と仮面のアイドル像を呑み込んで、脳漿杯を砕く。
木村拓哉は、溢れ出る欲に飲まれながらも、再び自分を取り戻し、我を貫いた。
「カッコ悪いとこ、見せちゃったな」
そう言って再び凛に向けた顔は、SMAPのキムタクとしての顔ではなく、アイドルという偶像の顔ではなく。
木村拓哉という一人の人間の顔だった。
未来あるアイドルと、若者達へ謝罪をすると、
木村拓哉は自らが生み出した歪んだ光の中へと歩き、消えていった。
それは一つのケジメ。過去に自分が看取った香取慎吾と同じ考えをもって。
ただ"木村拓哉"という一人の個人として、消えることを選ぶ。
歩みを進めていくうちに、聞き覚えのある歌が聞こえた。
――そうさ 僕らは
――世界に一つだけの花
――一人一人違う種を持つ
――その花を咲かせることだけに
――一生懸命になればいい
光の中で徐々に消えゆく木村拓哉の耳に届いたのは。
SMAPの仲間とともに歌った"世界に一つだけの花"。
――小さい花や大きな花
――一つとして同じものはないから
――NO.1にならなくてもいい
――元々特別なOnly one
その歌は、望みに負けて頂点を目指そうとした自分だからこそ流れ出したのか。
ロワに残されたもう一人のアイドルに届けるための歌だったのか。彼には分らないが。
ただ、一般人の身でありながら杯の支配から自分を取り戻した木村拓哉を見て、凛と秀吉を勇気付けさせたことは事実である。
最終更新:2024年01月20日 02:19