【名前】天樹錬
【出展】ウィザーズ・ブレイン
【性別】男
【名セリフ】
「僕だって、僕だって好きだった。理屈なんかじゃなく好きだったんだ」

【人物】
便利屋稼業を営む魔法士の少年。分類は悪魔使いであり、能力は”他の魔法士能力の劣化コピー”であり”無限成長”
いわゆる試験管ベイビーに近い生まれであり、肉体・精神年齢は14歳だが、実年齢は9歳。
世界でも最強クラスの魔法士だが、私生活においては普通の少年であり、兄や姉にいじられたり近所の人と談笑したりと年相応の幼さを見せる。
家族や友人、恋人などの身内を大事に思う反面それ以外の人間を軽視する傾向にあり、フィアと神戸市民1000万を天秤にかけて前者を選んだ経緯がある。
しかし決して人命を軽んじることはなく、犠牲にした責任はきちんと背負っていくべきと自戒している。お前本当に14歳かと疑いたくなる精神年齢の高さである(これは錬のみならず、ウィザブレ世界の住人全てに言えることだが)。

【本ロワでの動向】
ヘイズの名前を知っていたことから、少なくとも4巻以降から参戦したと思われる。

殺し合いに巻き込まれた錬が最初に行ったのは、当然と言えば当然ながらフィアの捜索であった。
何よりも大切に思う少女を探して会場を彷徨い、最初に出会ったのは自分と同じ名前を持つ青年、藤井蓮
しかし彼は仲間と想い人を亡くして心神喪失状態にあり、あろうことか殺したいなら殺せと投げやりに言葉を吐き捨てたのだ。
当然、お人よしの少年に目の前を青年を殺すことはできず、そもそも殺し合いを否定していた錬は、目を離して死なれるよりはずっといいと蓮に同行を申し出る。
探している少女がいる。その探索に協力してほしい。
その強引な申し出に面食らったような顔をしたのも束の間、青年は一つだけ錬に問いを投げかけた。
その少女はお前にとってなんだ?
何をわかり切ったことを。青年の問いに対し、錬は胸を張り答えた。
―――たとえ世界を敵に回したとしても、絶対に守りたい僕にとって一番大切な人だ。
真実はたった一つ。例え何があろうともこの気持ちだけは変えることなどできない。
誇らしげに語る錬を前に、青年もまた納得したかのように苦笑しながら同行を許諾したのだった。

道中二人は幾度となく軽口を叩き合い、時には皮肉を交えながらも、しかし根底では強い共感と信頼が存在した。
100万の他人と1人の大切に思う人。天秤にかけて1人を守り、しかし切り捨てた100万の命を決して軽視せず、1人を救った責務を背負い続ける。
その思想、その理念。似通った価値観を持つ二人は、確かに通じ合っていたのだ。

そして定時に鳴る放送。そこで運命を分ける名が呼ばれることになる。

フィア。錬が命を懸けてでも、いいや命を捨ててでも守りたいと願った少女は、殺し合いの果てに命を散らしていたのだ。
内に去来する喪失の痛みは、少年を狂気に走らせることとなる。
死人をこの手に取り戻すという、誰もが願いそして諦めた奇跡の所業。
最早何もいらない、自分の命さえも―――想い人の死という不条理にかけた想念は、錬を殺し合いの優勝による死者蘇生へと駆り立てる。

錬「どこにもいないんだ、蓮。フィアはもう、僕の『未来(いま)』のどこにもいないんだ!」

ジーンDは歌う。青い空があり、緑の草原があり、そして愛する者が傍にいれば、それだけで世界は美しい。
それを失えば世界はどうなるか、誰も教えてはくれない。

そして錬は能力の全てをフィアを取り戻すために費やす。
悪魔使い―――数多の魔法士能力の劣化コピー。その有り余る幾多の能力で以て、斬首刀を身に宿す青年に挑みかかる。

蓮「時よ止まれ、君は誰よりも美しいから!」
錬「僕だって、僕だって好きだった。理屈なんかじゃなく好きだったんだ」
蓮「だったじゃねえ、好きなんだろ! ならその刹那をお前自身に刻み込め!」

神造の神格と悪魔使い。今ロワにおいても上位に位置する二人の能力者による死闘は苛烈を極める。
叫ぶ言葉は愛の叫びに、怒号はいつしか悲憤の叫びへと変化していた。
だがそれでも、失ってしまった彼女を取り戻したい。その報われることなどなかったはずの境遇故に、これからは人一倍幸せになってもらいたい。
その一心で錬は、参加者の鏖殺を誓う。

しかし身体能力を増強した腕の振るう刃の煌めきも、窒素結晶の槍も、生物化させたコンクリートの腕も、空間歪曲による重力場も蓮を捉えることはなかった。
何故? 単純な性能ならばこちらが圧倒している。事実、マリィという最上の魂を保有していない今の蓮は創造を使うことはおろか形成による強化の度合いすら平時よりも格段に劣っている。
理由は簡単なことだった。相手にかわせる道理などない。ならば原因は自分にある。
何のことはない、ただ自分が蓮を殺すのを躊躇っていただけのこと。
誰よりも家族を想い、仲間を想い、そして愛する者を想う彼が、過ごした時間こそ短かったとはいえ仲間と認めた者を殺せるはずなどないのだ。
錬が青年にとっての刹那だったように、青年もまた錬にとっての刹那だったのだ。
刹那を取り戻すために刹那を消し去る。その矛盾に気づいたとき、錬は悟った。
この状況に陥ったとき、既に自分は詰んでいたのだ。どちらにも戻れない袋小路、そこに自分は追い込まれたのだと。

―――みんなを幸せにしたかった。でも、本当は僕が、フィアを幸せにしたかったんだ。

最早戦う意志も気力も潰えた少年は、泣き笑いの表情を浮かべながら断頭の刃を迎え入れる。
そしてここに、神候補と悪魔使いの戦いは終結した。

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最終更新:2013年11月26日 23:10