「 問 お う 」





卿にとっての"それ"とは、何か?



必然的なものか?



偶然的なものか?



超然的なものか?泰然的なものか?


悠然的なものか?歴然的なものか?逸然的なものか?


否然的なものか?鬱然的なものか?完然的なものか?法然的なものか?

飄然的なものか?漠然的なものか?突然的なものか?決然的なものか?

忽然的なものか?巨然的なものか?黙然的なものか?寂然的なものか?
勃然的なものか?自然的なものか?呆然的なものか?愕然的なものか?

赫然的なものか?確然的なものか?脱然的なものか?本然的なものか?
翻然的なものか?頑然的なものか?憤然的なものか?黯然的なものか?
否然的なものか?豪然的なものか?依然的なものか?粛然的なものか?
頽然的なものか?薫然的なものか?靄然的なものか?湛然的なものか?
平然的なものか?爽然的なものか?淡然的なものか?俄然的なものか?


瞭然?晏然?暗然?安然?井然?淒然?整然?寂然?戚然?釈然?
截然?愴然?蒼然?藹然?唖然?沛然?藐然?驀然?判然?靡然?
怡然?惟然?灼然?隠然?蔚然?蓋然?駭然?画然?劃然?廓然?
悵然?闖然?徒然?挺然?的然?惘然?恬然?靦然?天然?当然?鏗然?
陶然?蕩然?同然?童然?瞠然?徒然?凜然?冷然?煌然?傲然?猛然?
眇然?渺然?憫然?愍然?憮然?怫然?忿然?奮然?鏘然?洒然?婉然?嫣然?
煥然?紛然?錚然?騒然?巍然?屹然?翕然?恟然?跫然?凝然?艶然?汪然?
果然?戛然?豁然?莞然?旺然?温然?介然?快然?恢然?慨然?慄然?隆然?了然?
愀然?愁然?驟然?柔然?糅然?倏然?蹴然?純然?昭然?悚然?亮然?断然?湛然?
竦然?悄然?聳然?蕭然?鏘然?森然?公然?哄然?昂然?浩然?坦然?赧然?端然?然然?
粋然?悠然?融然?優然?歓然?喟然?毅然?炳然?厖然?茫然?索然?颯然?渾然?截然?
惘然?漫然?雑然?惨然?粲然?潸然?宛然?敢然?渙然?間然?窈然?爛然?囂然?轟然?兀然?
燦然?嶄然?灼然?釈然?綽然?凝然?居然?遽然?欣然?醺然?耿然?皓然?杳然?躍然?油然?
炯然?闃然?孑然?蹶然?喧然?歉然?顕然?眩然?厳然?儼然?惻然?卒然?率然?堆然?卓然?未然?











「……くだらぬ。よもや貴公、そのような戯言を余に聞かせに参ったのか?
 話にならないな。"全然"関心が持てぬ」


男は答えた。
その態度はまるでその話自体に関心がないようなそぶりであった。
事実そうなのだろう。
男にとってその問いかけは何度も何度も飽きるほどに自問自答し尽くしたものだったからだ。

「ほう、全然、か。なるほど、確かに卿が私と同じく既知(ゲットー)に囚われているというのなら今更の問いかけではあるか。
 許されよ、つまらぬことを聞いてしまった」

それは問うた側の男にとっても同じことだった。
かつて彼は常に自らへと襲い来る既知感に悩まされ、この世全てに飽いていた。
つまらぬ、下らぬと、見下すわけでもなく、ただ事実としてそう感じながら生きてきたのだ。
あの時までは。あの男に会うまでは。

「余を前にした第一声がその下らぬ問か。貴公は一体なんのつもりだ?」
「何、鏡写しとでも言うのか、或いは同族意識というものか。ふむ……同族か。
 面白い、よもや私にそのようなものがいようとはな」

問うた側の男が自己完結し納得する。
なるほど、確かに二人の男は容姿からして類似していた。
金髪金眼にして余りにも完成された黄金比。
いかなる芸術家がその技術を尽くしたところで再現しようもない眉目秀麗な男がなんの因果かここに二人。

「世界は常に定められた軌跡に辿って輪生しつづけている……だがその軌跡とは何だ?
 誰が定め、何故このような世界となった? 卿はその答えに心当たりがあると見たのだがね」
「くどいぞ、貴公。……いや、まさか。くくく、フハハハハ! これが喜劇でなくて何とする!?
 貴公は本気で気づいておらぬと!? 古来より人の運命を縛る存在など一つしかないというのに!」

その二人が相対するホテルのロビーは彼らが何をするまでもなくびりびりと揺らめいていた。
書を構えてもいなければ槍を手にしてもいない。ただ、二人の圧倒的な魂の密度に耐え切れず世界が悲鳴を上げているのだ。
男は、待合室の豪華な椅子に座り、どこかから調達した高級なブレンドコーヒーを愉しんでいた。
男は、階段から降りて来たばかりで、一歩、一歩歩み寄って行く。

その二人の間の距離は20メートル。
遠いようで、狭いその距離は確実にホテルそのものを轟かせていた。

座りながら"それ"に疑問を問う、軍服の男はラインハルト・ハイドリヒ
愛すべからざる光"メフィストフェレス"を信条に、全てを愛する男であった。

それに相対し、恐れずただ立ち向かい歩いてゆくその男はマスター・テリオン。
ブラックロッジの大導師"グランドマスター"であり、全てを憎む男であった。

鏡写しとはよく言ったものだ。
彼らは似ているようで決定的に相違えている。
全てを壊してまで全てを愛そうとするラインハルト。
全てを憎み全てを壊そうとするマスターテリオン

そんな二人。相容れない二人であったが、共通する事がひとつだけあった。
ラインハルト・ハイドリヒもマスターテリオンも"それ"だけには逆らえなかった。
どれだけ人々を覇そうが、世界を覆そうが、全ての要になろうが、"それ"だけには打ち勝つことができなかった。

故に、

彼らは結局のところ"それ"の囚人に過ぎず、最強の座もただの肩書でしかなかった。
"それ"は常に世界が動くのと同時に、また彼らがこの世に点在しているのと同時に。
そして"それ"は彼らが誕生する遥か以前から点在し、彼らが消滅した遥か未来でも残っているだろう。
"それ"を動かすことはできない。
マスターテリオンは故に諦め、それから逃れることを望んだ。
ラインハルトは故に挑み、それを破壊することを願った。
だが不可能なのだ。
世界のカタルシスに導かれている。そして、"それ"の流れる、場所は全てであり、このホテルの中にも流れていた。
扉に、カウンターに、植木鉢に、暖炉に、机に、電灯に、ポールに、車に、絨毯に、ソファに、ペンに、そして人間に。

「やはり卿は答えを知っていたか。よければ私にご教授願いたい。
 我が友は面白い男なのだがどうにも物事を遠回し語るくせがあってな。
 中々に、我らの真の敵について教えてはくれぬのだよ」
「フ、ならばその友に聞けばよかろう。余の想像通りなら面白い答えが返ってくるだろうさ。
 貴公が囚われているゲットーとやらが、真に余の“それ”と同じならばな」

ラインハルト・ハイドリヒのコーヒーを飲む手が止まる。
ティーカップの中に微量に残ったコーヒーが机の上に置かれた時、カップは揺れ、波紋が広がった。
ティーカップが映していたラインハルトの顔は波紋によってかき消された。
ラインハルトは立ちあがった。その時ホテルの響きが一瞬強くなっていた。

「そもそも"それ"とは、何のためにあるものか?」
「邪神の庭をこじ開けるもの。二つの鍵と鍵がぶつかり合う時封じられし神が姿を現し今の世が終わりを告げよう」
「鍵、か。なるほど、それが私とツァラトゥストラであり」
「余と大十字九郎である」
「二つの流出のぶつかり合いが世界に穴を開け」
「二つのトラペゾヘドロンが相殺し邪神がこの世に解き放たれる」
「なるほど、神、か。ふむ、しかしとなると、余とツァラトゥストラもまた相討つというわけか」
「ツァラトゥストラ、それが貴公の待ち人の名前か。……いや、或いはそれさえも」
「ほう、何かを察したか?」
「もしも余にとっての大十字九郎にあたるものだとすれば、憎しみが足りぬ」
「憎しみ?」
「或いは、貴公からすれば愛、か。同族の好として忠告しておこう。
 貴公が対峙すべき相手は貴公にとっての特別でしかありえぬよ」
「どうやら卿は私より遥かに私を縛るものに詳しいようだな」

ラインハルトはマスターテリオンへと歩み寄る。
マスターテリオンは逃げない。そして戦わない。
いつしかマスターテリオンの中では彼と共にいることが"それ"なのだろうと諦観したからだ。
このくらいの誤差などこれまでの輪廻でも何度もあった。
これまでと幾らか違う展開に期待するには彼は摩耗しきっていたのだ。

距離は10メートル。そしてそのまま縮まって行く。
ホテルの中は静寂であった。しかしカウンターの上のペン立ては揺れていた。
絨毯の毛は総立ちしてざわざわと揺らめいていた。植木鉢のベンジャミンの木の葉は既に2、3枚落ちていた。
距離は5メートルを切る。それらの動きは更に一層激しくなる。
ラインハルトはマスターテリオンに手を差し伸べた。
マスターテリオンは胡乱な目で見つめ返した。

その時、

「どうかね、我が先達よ。しばらく同士として私とともに歩いてみないか?」

ラインハルトがその言葉を発した時、

すべては収まった。
扉もカウンターも植木鉢も暖炉も机も電灯もポールも車も絨毯もソファもペンも。
微動だにせず、静かにそこにあるだけとなった。
ペン立ては垂直に立ち、マットの毛も横に眠り、ざわついていた葉も静まる。
そのホテルのロビーの中央で男二人は手を重ねていた。
何もマスターテリオンはラインハルトの申し出を真に受けたわけではない。
ただ、この男になら、自らが背負った“それ”を自分の分まで押し付けられるのではとそう僅かに期待したからだ。

最強の座を手にし、それに飽いた男が二人。

彼らはこのゲームで手を組む"運命"にあったかもしれない。

そして、"それ"に、"運命"に“神の敷いたレール“に、従うだけであった。

ホテルも、空も。

ラインハルト・ハイドリヒも。

マスターテリオンも。

そして、世界も。


"それ"は、全てそこにある、"運命"である。






【D-5 ホテル・2日目 夕方】
【ラインハルト・ハイドリヒ@Dies Irae-Acta est Fabula-】
[状態]:健康
[道具]:デッカー・スパナ@スーパーロボット大戦Z ロンギヌスの槍@新世紀エヴァンゲリオン 支給品一式
[思考・状況]
基本思考
1:既知感の破壊
2:全力を出せる相手と場と自分自身を整える
3:目の前の人物へ関心

※蓮と同じ参戦時期。そのため自分の真の渇望及びメルクリウスの正体について完全には察していません


【D-5 ホテル・2日目 夕方】
【マスターテリオン@斬魔大聖デモンベイン】
[状態]:健康
[道具]:苺大福@ローゼンメイデン ういろう@戯言シリーズ 支給品一式
[思考・状況]
1:輪廻より抜け出すために大十字九郎と邪神のシナリオのまま戦う
2:それ以外には特に興味なし。ただ余と大十字九郎との戦いを邪魔した黒のカリスマは気に食わない
3:目の前の人物への関心



※お互いまだ名前を知りません。

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最終更新:2014年02月04日 03:03