【名前】ひょう(鏢、金+票の字)
【出典】うしおととら
【性別】男
【年齢】三十代
【台詞】
「自分の信じる道を行け、志貴。お前はまだ、『終わってしまった人間』ではないはずだ」
「悲しき凶鳥よ、束の間であれ、その〈眼〉を……禁ずる!」
【眼】
「浄眼」:ひょうの右眼窩には、膨大な霊力を溜めた青紫水晶を磨きあげて得られる「翠竜晶」が嵌めこんであり、これが浄眼と呼ばれる。桃源郷にて仙人より与えられたもので、あらゆるまやかしや呪いを看破り、人ならざる存在の精細をも霊的視界に捉えることができる。また、催眠術に似た一種の暗示をかけることも可能。
【人物】
金をもらって鬼怪変化を退治する、青い右眼と黒コートの符術師。中国出身。最愛の妻子の仇である妖怪を追い求め、人の身でありながら全てを捨てて仙境に至り修羅と化した達人である。本名はすでに捨てており、呪符と合わせて自らが用いる投擲武器の一種「ひょう」の名を、字(あざな)として名乗っている。
結界を初めとする数多の道術・呪術のほか、種々の概念や魔の存在そのものを「禁」じることのできる強力無比の「十五雷正法」を得意とする。
目的のためには手段を選ばない非情なところもあるが、失った妻子への思いから、弱い者、特に子供を傷つける者には激しい怒りと憎悪を露わとする。
【本ロワでの動向】
『うしおととら』32巻「約束の夜へ」での死亡後より参戦。
仇を討ち果たした後であるためか、本編で見せた苛烈さや修羅としての顔は幾分影を潜めていた。だが、オープニングで目撃した参加者の中に子供らしき姿がいくつかあったことを理由に、愛する家族との安寧へ還ろうとしていた身を捨て、主催の打倒を強く決意する。
序盤にて、対主催として同じく行動を開始していた
遠野志貴と合流。金で化け物を殺す術師であるひょうと、化け物であろうと愛すべき相手をとことん愛そうとする志貴という奇妙な組み合わせであったが、志貴の姿にかつて自分の出会った少年・蒼月潮のひたむきさをよぎらせ、異能の眼を持つ先達として、ロワイアルの状況下で指導をつける。お互いの素性境遇を話し、情報を交換した直後、会場にトラップとして放逐されていたヨーマ@瞳のカトブレパスの群れに襲われた際も、むしろこれを好機とし、志貴と共に実戦の糧としていた。
符術と十五雷正法で塵芥の如くヨーマを葬りながら、すでにある程度の独自の型を得ていた志貴の戦法に対しては、補完のような形で助言を与え、結果的には「七夜」の体術をもそれなりに意識して組み込めるところまで、短期間でこぎつけさせた(仙境で得たスキルも活用していたようだ)。
また、同じくヨーマの群れを撫で斬りにしながら移動していたキング・ブラッドレイとも二人して出くわしており、主催打倒の意志を確認し合った後、乳・尻・太ももいずれが好きかなどと言った気の抜けた話題をも持ちかけられていたが、合流の申し出に対しては、志貴を抑えて断りを入れている。好々爺然としたブラッドレイの隠しおおせている違和感を、浄眼は薄々見通していたようである。
その後、同じようにヨーマの群れを狩りながら移動しているうちに、よりにもよって一時的に正気を失っていたアルクェイド・ブリュンスタッドと遭遇。説得に走る志貴を援護し、万物を対象に取る十五雷正法で以てアルクェイドの沈黙に一役買うも、騒動が収束しかけたその時に、邪眼フクロウ・ミネルヴァの襲撃を受ける。
浄眼で以てミネルヴァの接近、その呪毒の脅威にいち早く気がついたひょうは、とっさに即席の札と、自らの身に書きこんでおいた術式を用いて結界を展開、志貴とアルクェイドへ届こうとした邪眼の視線を弾くことに成功する。しかし、残された常人の眼である左眼を通して届いた自らへの呪毒まではカバーすることができず、浄眼と術式の抵抗で即死を免れながら、自らの二度目の死を悟ると、志貴へ先へ行くよう声をかけた。二人分を庇いながら戦うのは難しい、後で追い付くからその娘と共に遠くへ離れていてほしい、と。
その言葉を信じ、頷いて駆けて行く後ろ姿へ、
「自分の信じる道を行け、志貴。お前はまだ、『終わってしまった人間』ではないはずだ」
小さく呟くと、呪毒を散開させて飛び回るミネルヴァに向き直り、血泡を吐き零しながら、その視線を真っ向から見据える。刹那の交錯――――浄眼は、ひょうの眼は、ミネルヴァの抱える孤独と絶望の一端を感じ取った。
「悲しき凶鳥よ、束の間であれ、その〈眼〉を……禁ずる!」
残された最後の力を振り絞って放った術は、浄眼の視線を通してミネルヴァへと届き――――そして、それと同時に、目鼻口から紅いものをあふれさせながら、ひょうは斃れる。再度の生を得た孤高の符術師の、これがあっけない最期であった。
人間の達せる域においては最高クラスの実力を持ちながら、パロロワの宿命か、早期退場となってしまったひょうであるが、彼の放った最後の十五雷正法は、ミネルヴァという存在の象徴――〈邪眼〉への禁呪となり、一時的とはいえその効力を停止させることで、直後のミネルヴァの飛翔中に視認された参加者数名の命を間接的に救っている。また、その後にミネルヴァが
志村時生との接触で邪眼への制限をかけられる際にも、その足掛かりとなるなど、志貴との交流や助言の他にも、後に残したものは大きいと言える。そう、たとえ、その舞台の行きつく先が、救いのない幕切れだったとしても。
なお、ロワ終盤の
死者スレにおいて、新封神計画による残酷な真実を知らされた時には、比較的落ち着いたまま、「この手に数多の命を殺めて来た報い」として、運命を受け入れている。「約束の夜」の向こう、天国で己を待ち続ける最愛の妻子の魂へ向けて、帰れない謝罪と永遠の別れの言葉を呟く姿は、原作ファンからは胸に来る鬱シーンとして重く受け止められた。
最終更新:2014年03月30日 13:53