雛「暑い…暑いのー…」
翠「ああもううるさいですぅ! 暑いって言うと余計暑く感じるです!」
雛「そんなこと言ったって暑いのは暑いのよー! クーラー入れたいのー!」
翠「ダメ、クーラーは夕方からですぅ。それまでは扇風機で我慢するですぅ」
雛「…扇風機じゃ生温い風しか来ないのよー…」
翠「まったく…そうだ。すぐ涼しくなる方法があるですぅ」
雛「え?」
雛「如雨露をどうするのー?」
翠「打ち水ですぅ。庭に水を撒けば少しは涼しくなるはずですぅ」
そう言って如雨露で庭に水を撒き始める翠星石。
水に濡れる芝生を見ているとそれだけで涼しくなるように感じられた。
翠「伸びやかに~健やかに~」
雛「何だか楽しそうなの、ヒナもやるのー」
そう言って家の中から水の入った象さん如雨露を持ってきた雛苺。
雛苺も庭に出て翠星石と一緒に庭に水を撒き始めた。
雛「少し涼しくなった気がするのよ」
翠「クーラーなんか使わなくても、こういうので暑さをしのげるですよ。草木も元気になるから一石二鳥です」
それから二人であちこちに水を撒いて回る。と。
雛「それー!」
翠「うわっ、冷たいですぅ…!」
雛苺が調子に乗って如雨露を振り回し、その勢いで出た水が翠星石の顔に掛かる。
雛「あ、ごめんなの翠星石」
翠「やったですねー!」
雛「きゃー!」
翠星石は雛苺を捕まえ、頭上から如雨露で水を掛け始めた。止め処なく出る水が雛苺を水浸しにする。
翠「どうですか、涼しいですかー?」
雛「むー! お返しなのよ!」
翠「わぁ!」
水を掛けられた雛苺が持っていた如雨露の水を一気に翠星石にぶちまけた。
翠「あーあ、水浸しですぅ…」
雛「お互い様なのよー」
翠「…っぷ」
雛「くす…」
雛翠「「あはははは!」」
ずぶ濡れになったお互いの姿を見て、二人は笑い合った。
そんな暑い夏の日。
翠「今日のおやつは…」
雛「いちごと
ちょこと
おいもで
つくるのー!」
「ね、寝坊なのぉー!」
「やっと起きたですか。皆とっくのとうに出かけちゃいましたよ」
「うゆ…起こしてほしかったのよ…」
「いい加減自分で起きられるようになりやがれですぅ…。ほら、朝飯と弁当ですよ」
「あ、ありがとうなの………あれ?翠星石は学校行かないの?」
「………チビチビがちゃんと家に鍵かけられるか確認するんですよ」
「そ、そこまで子供じゃないもん!」
「どうでしょうねぇ…?イーヒッヒッヒ……」
(チビチビが起きるの待ってた…なんて、言えるわけないですぅ……)
起こさなかったのは寝顔を見つめてたから
『タルトの代わりに』
「……………」
テレビに映る苺のタルト。それを見つめる雛苺の瞳は、キラキラと輝いていた。口の端から涎が垂れているのは、見なかった事にしておこう。
『……うん!サクサクのタルトと苺の甘酸っぱさがすごく美味しいです!』
「……ほぇ~…………」
テレビの向こうの人がタルトを一口頬張る度、雛苺は言葉にならない呟きを漏らしていた。
乙女の品格を重んじる真紅が見たら、みっともないと叱りつけそうな光景だった。
だが、そんな光景を見つめるのは蒼い瞳ではなく、紅と翠と瞳だった。
―――――
翌日。昨日のタルトが忘れられない雛苺は、色んなケーキ屋を回っていた。だが、時期のせいか苺のタルトはなかなか見付からなかった。
次のケーキ屋もタルトはなく、とぼとぼと家路に着いた。
「…ただいまなの……………うゆ?」
玄関を開けた瞬間、ふわ、と甘い香りが鼻を擽った。急いで台所に向かうと、緑色のエプロンが目に入った。
「ん?チビチビ、帰ったですか」
「す、翠星石…何かつくってるの?」
「えぇ、まぁ。もうすぐ焼き上がると思いますよ」
翠星石の言葉通り、たいした時間はかからずオーブンは焼き上がりを知らせた。
翠星石がオーブンを開けると、そこには雛苺が望んでいたものがあった。
「い、苺のタルトなのー!!」
「い、いきなり大声で叫ぶ嘗ですぅ…」
「ヒナもタルト食べたいのー!」
「別に良いですけど……タダではやらんです」
「ふぇ…?」
雛苺の不安げな表情を見て、翠星石の口の端が僅かにつり上がった。
「世の中ギブ&テイクです。タルトが欲しかったら何か寄越すです~」
「な、何を渡せば良いの…?」
「んー…そうですねぇ……………」
翠星石は一旦タルトを机の上に置くと、雛苺の肩に両手を乗せた。
「ほぇ………………?」
そのまま雛苺の唇と自分の唇をくっつけた。
「……確かに頂いたですぅ。タルトは冷やすから明日まで我慢するですよ」
そう言いながら、タルトを持って去っていった。
雛苺はポカンとしたまま朝まで立ち尽くしていたとか。
end
オヒルノデキゴト
「ちび苺ー、お昼ご飯出来ましたよー」
「はーい!いっただっきまーす!」
「ごちそうさまでしたなのー!」
「さて、翠星石はデザートのプリンでも……ん?」
「……美味しそうなの…」ジー
「ち、ちび苺にはやらんですよ!」
「……プリン………ふえぇぇ……」
「! な、泣くなですぅ…」
「……ひっぐ……」
「…………………ほれ、あーん」
「! …あーん」
「……これで我慢しやがれですぅ」
「…えへへ、翠星石だーいすき!」
「……ふん」
「翠星石~、お腹空いたのよ…」
「ん~、たまには外で食べますか?」
「うん!外食なのー!」
「美味しかったのー!」
「ま、翠星石の料理には叶いませんけどね。……あれ、真紅?」
「雪華綺晶もいるのよ」
「あいつら、あんな大きな荷物持ってどこいくですかぁ?」
「なんかすっごく嬉しそうなの………あ!アイスなのー!翠星石ぃ、買って欲しいの!」
「はいはい、その代わり翠星石にも寄越すですよぉ?」
雛「わーい!ジュン登り~~」
紅「お止めなさい雛苺、ジュンはまだ勉強中よ」
雛「はわわ・・・ごめんなさいなの・・・」
ジ「悪いな。またあとでな」
雛「ううん、ヒナがわがままだったのジュン悪くないよ?(´・ω・`)」翠「・・・・ちび苺・・・」
翠「しょ、しょーがねーですね//ちょいとちびちび、こっち来るです」
雛「ほえ?」
翠「惨めなおちびの為にこの翠星石が一肌脱いでやるです(クルリ回れ右)」
雛「ねえ翠星石~、後ろなんか向いて何するの~?」
翠「はあ~、まだわからんですか///このお馬鹿!この翠星石の背中が雄弁に語ってるのですよ!『姉の背中を越えてゆけ』と、ですぅっ///!」
雛「!!翠星石登り!」翠「わかったならさっさと登りやがれ!ですぅ///!」
雛「うわ~~い!(トテトテトテ)うんしょ、うんしょ、うんしょ・・・」
翠(うう、ちょ・・・ちょいと重いです・・・でも、ここが姉としての威厳の見せどころです・・・我慢、我慢ですよ翠星石・・・)
雛「わーいわーい、てっぺん到着なの~」
翠「こ、これで満足ですかちび苺~、と、ととと(グラリ)」
雛「ひゃあ!落ちちゃうのおおおお!」
バタ――――ン!
雛「ふええ・・・」
翠「ぎゅう・・・」
紅「二人とも静かになさいっ!ジュンの邪魔よっ!!」
翠&雛(´・ω・`)ショボーン
―――部屋から追い出された二人―――
雛「さっきはごめんなさいなの。翠星石ぃ、痛いところ、なあい?」
翠「へ・・・へっちゃらですう!す、翠星石はその程度では負けねえです(すっごく痛いですけど)」
雛「翠星石、あのね?ヒナ翠星石に遊んでもらってとっても嬉しかったのよ。とっても、とっても楽しかったの」
翠「おちび・・・」
雛「翠星石!だーい好きィ(チュゥ)///」
翠「!!!」
雛「えへへ////」
翠(ちび苺にはたまにはむかつくこともありますけど・・・・こういうのも・・・悪くないです///)
~翠色の山~完
「きょ、今日から料理研究部に入部する事になった、一年の雛苺です!よ、よろしくお願いします!」
「…二年の翠星石です。一応副部長です」
「えっと…部長さんは?」
「…後輩を味見するとか言いながら不気味な笑みを浮かべてどっかいったです。右目に眼帯付けたのが部長の雪華綺晶」
「(あ、味見?)ちゃ、ちゃんと挨拶しないと…」
「その内ひょっこり現れますよ。…さて、部長がいない間は、翠星石が一番偉いのですぅ。ちゃんと従ってもらいますからねぇ…?」
「!ビクッ…は、はい…」オロオロ
「……………一応入部祝いという事で…ケーキを焼いたです」
「ほ、ほぇ…美味しそう……!」
「残すんじゃねぇですよ?翠星石が一生懸命作ったんですからねっ」
「はーい!」ニコッ
「(スンスン)甘いにおい…翠星石、何食べてるの?」
「ん?た○のこの里ですよ?」
「ヒナも食べたいのー!」
「しょうのねーやつです。ほいです。」
「ありがとなのー!」モッモッ
「…もっと食べたいですか?」
「え?いいの?」
「口開けやがれです。あーんですぅ」
「あーんなの」
ちゅ
「!ん…ぷは」
「翠星石何するのー!」
「あれ?下のお口も食べたいっていってるです。」
「なっ…な!」