ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

心地いい時間

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もう3月ということもあり、徐々に春の足音が聞こえ始めている。
桜の木は蕾を蓄え、雪は溶けてアスファルトの至る所を濡らしている。
気温も例年通りの暖かさだ。
私は、大学の合格通知と案内を手に大学見学に来てるところだ。
自宅から徒歩で20分、中途半端に遠い距離だ。

「知ってる人は、居ないかしら」

そう思ってさっきからキョロキョロ辺りを見回している
のだが見知った顔の人物はいない。
学食でお昼食べて帰ろうかしら。
そう思っていた矢先、後方から聞き覚えのある声が私を呼ぶ。

「真紅じゃないですか?待ちやがれですう」
「翠星石?」

少し息を切らしてトテトテと駆けて来る姿が微笑ましい。

「はあ、やっと見つけたですう」
「やっとって?」
「ああ、いや何でもないですう。言葉の絢ですう」

少し赤面しながらそう答える翠星石。
私と同じように大学の合格通知と案内を持っている。
どうやら彼女も私と同じようにここに通うみたいだ。

「貴女もここの大学に?」
「そうです、結構大変だったですよ」

確かにここの大学の偏差値は60を超えている。
生半可な勉強じゃ入れない、まあ、私は余裕だったけど。

「これから学食でお昼でもどう?」
「そうですね、私もお腹空いてきたですよ」

私たちはパンフレットを見ながら学食へと向かった。

「あら、貴女もあのアパートに?」
「そ、そうです。たまたまですう。」

それにしても、この子と紅茶を飲みながら話すのって何年ぶりかしら?
そのせいもあってか会話も弾む。

そして、私は一つ気になってたことを聞いてみることにした。

「貴女はどうしてここの大学を?」
「ゲホッ」

急に咽始めた、何か変なこと聞いたかしら?
私の記憶が正しければ、お世辞にも彼女の成績はよろしいとは言えなかったはずだ。

「そ、それはですね、えっと・・・」
「?」
「し、真紅もここを受験するって聞いたからですぅ・・・///」
「えっ?」

そう言って俯く翠星石。
意外な答えが帰って来て返答に焦る。

私も受験するから?

私は胸の鼓動が早くなるのを感じた。
気のせいか顔が少し熱い気がする、まあ彼女ほどじゃないけど。
気まずい沈黙が辺りを支配する。

「そ、そろそろ帰りましょうか」
「そ、そうですね」

大学を出ると、急に雪が降ってきた。
まるで私たちが出てくるのを見計らったかのようだ。
あっという間に雪が積もりアスファルトを白く染める。
そんな道を淡々と歩く私たち。
しばらく沈黙が続くがそれを破ったのは彼女からだった。

「あ、あの真紅」
「何?」
「め、迷惑だったですか?その、いきなり現れて、同じアパートに引越してきて・・・」

恐る恐るそう尋ねる翠星石。
迷惑?そんなわけない、むしろ・・・

「いいえ、嬉しかったわ。貴女に会えてよかった」
「そ、そうですか、良かったですう」

そう言うと彼女は笑顔でそう答えた。
彼女にはやっぱり笑顔が一番だと思った。
それからも沈黙が続いたがさっきまでの様な息苦しさは全く無い。
むしろ心地いいくらいだ。
ただ、私の胸の疼きと顔の火照りだけが収まってくれなかった。

私たちはどちらからともなく手を繋ぎ、家路を急いだ。


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