『正義と秩序の守護者』
(キャラ) メイス・ウィンドゥ
目を覚ましたメイス・ウィンドゥは弾かれたように上体を起こし素早く周囲を見渡した。
見知らぬ夜の街。高層のビル群、消えかけたネオンの残光、そして湿った潮の匂いを含んだ夜気。長年の実戦経験に裏打ちされた反射的な警戒が、混乱よりも先に体を動かしていた。
だが、その警戒は、すぐに別の感覚に取って代わられることになる。
右腕――たった今まで感じていたはずの、焼けつくような激痛の記憶が、そこにはなかった。メイスは驚愕しながら自らの右腕を見下ろした。そこには、確かに腕があった。指先まで、何一つ欠けることなく。ただ、手首から肘にかけての皮膚には、まだ生々しい火傷の痕が残っていた。まるで電流に灼かれたかのような、赤黒い痕跡が。
「……これは」
呆然と呟きながら、メイスは自らの記憶を辿った。
コルサント、共和国最高議長オフィス。パルパティーンの正体を暴き、逮捕するために踏み込んだあの場所。ライトセーバーを振りかざし、シスの暗黒卿を追い詰めた、あの瞬間の記憶。慈悲を乞う声に惑わされたアナキンによって、右腕を切り落とされた激痛。そして、丸腰となった自分に容赦なく浴びせられた、恐るべきフォース・ライトニングの奔流。窓ガラスを突き破り、コルサントの摩天楼の狭間へと落下していった、あの絶望的な感覚。
「――アナキン」
低く絞り出すような声が漏れた。その名を口にした瞬間、メイスの胸の内には、これまで感じたことのないほどの激しい怒りが込み上げてきた。
荒い息を整えながら、メイスはふと、傍らに見慣れぬ布製の背嚢が転がっていることに気づいた。警戒を解かぬまま中を検めると、薄い板状の機器とが収められている。メイスは訝しみながら手に取った。指先で画面に触れると、淡い光と共に、この土地の地図らしきものと、箇条書きにされた文字列が浮かび上がった。
――この島は外界から完全に隔離された孤立地帯であること。制限時間は四十八時間であり、時間内に決着がつかなければ、生存者全員の首輪が例外なく爆破されること。そして、最後の一人として生き残った者には、あらゆる願いを叶える権利と、元いた世界への帰還が約束されること。
メイスは、その最後の一文に、しばし目を留めた。
「……あらゆる願い、だと」
低く呟いたきり、メイスはその言葉の意味を深くは咀嚼しなかった。今はまだ、直前の記憶――アナキンの裏切りと、パルパティーンの正体、そして自らの敗北の重みの方が、あまりにも大きくメイスの意識を占めていたからだ。
「アナキン……! パルパティーン……!」
拳を握りしめ、メイスは吐き捨てるように呻いた。全身に満ちた怒りが、腸を焼くように渦巻いていた。長年の同胞たちが目の前で命を落とすのを見せつけられ、若造のジェダイに背かれ、そして丸腰のままシスの電撃によって窓の外へと突き落とされる――そのすべてが、メイスの矜持を粉々に打ち砕いていた。
だが怒りに任せて拳を振り上げたところで状況は何一つ変わらない。
フォースの奔流を通じて、メイスはおぼろげながらも確信していた。あの一戦において自分が敗れたことにより、パルパティーンはあらゆる障害を排除する自由を手にした。ジェダイという存在そのものが、共和国転覆を企てた反逆者として歴史に刻まれることになる。銀河中の同胞たちが、これから訪れる粛清の嵐に呑み込まれていく――その未来の輪郭が、メイスの脳裏に、あまりにも鮮明に浮かび上がっていた。
「……そんな」
声が震えた。長きにわたり守り抜いてきたジェダイ・オーダー。秩序ある共和国。それらすべてが、自分の一度の敗北によって、崩壊への道を歩み始めているという事実。メイスはその重みに、しばし言葉を失った。
だが同時に冷静な思考の一部が、さらに残酷な結論を導き出していた。
たとえここから生還しコルサントに舞い戻り、パルパティーンを討ち果たしたとしても、既に失われた同胞たちの命は戻らない。粛清された聖堂は元には戻らない。かつて銀河に秩序をもたらしていた共和国の理想も、既に取り返しのつかないところまで踏み荒らされているだろう。
――何をどうしたところで、もう遅い。
そう思い至った瞬間、メイスの胸に、深い虚無感が広がった。
その虚無の淵に立った時、ふとメイスの脳裏に、先刻この手で確かめた、あの端末の文字列が蘇った。
――最後まで生き残った者には、望むままの願いが叶えられ、元いた場所への帰還が約束される。
メイスは、はっと目を見開いた。
もし、この馬鹿げた儀式を勝ち抜き、最後の一人として生き残ることができたなら。あらゆる願いを叶えるという、あの言葉が真実であるならば――ジェダイ・オーダーを、そして秩序ある共和国を、元通りに取り戻すことすら、叶うのではないか。
失われた同胞たちの命。粛清された聖堂。踏みにじられた理想。それらすべてを、なかったことにできるかもしれない。この孤島に囚われるという理不尽な状況こそが、皮肉にもメイスにとって唯一残された希望の糸に見えてきた。
平時のメイス・ウィンドゥであれば、こうした考えが頭に浮かんだとしても、すぐさま自制していたはずだった。願いを叶える力などという、出所も定かではない甘言に安易に縋ることの危うさを、誰よりもよく理解していたのが、他ならぬメイス自身だったからだ。
だが今、メイスの中には、その自制を促す声が驚くほど弱々しくしか響いてこなかった。
その理由はパルパティーンとの死闘、そして何よりも、あの丸腰の状態で全身に浴びせられたフォース・ライトニングの奔流――あの暗黒面の力の奔流が、メイスの精神の奥深くに、消えない爪痕を刻み込んでいた。シスの電撃という、暗黒面そのものの顕現とも言うべき力に貫かれた経験は、メイスの魂の均衡を決定的に傾けてしまっていた。
「……いいだろう」
メイスは低く呟いた。その声には、もはや迷いはなかった。
優勝して願いを叶える。この孤島における勝利こそが、失われたすべてを取り戻すための、唯一絶対の道筋なのだ。そのためであれば、無関係な命を犠牲にすることすら、メイスにとってはもはや正当化された行為に過ぎなかった。
もしこの孤島に他のジェダイが紛れ込んでいるのなら自分の考えを理解させるよう努めるべきだろう。ジェダイ・オーダーと共和国を取り戻すという大義のために協力を求める。
だが、もしその同胞が、自分の考えに賛同しないのであれば殺す。
かつてのメイスであれば、決して選ばなかった選択だった。だが今、ジェダイという理想そのものが崩壊の淵にあるこの状況において、生半可な情けは、もはや意味を成さない。目的を達成するためには、あらゆる犠牲を厭わない。それこそが、今のメイスにとっての、唯一の正義だった。
メイスは腰の得物――紫のライトセーバーの柄を確かめると、ゆっくりと立ち上がった。傍らの布製の背嚢を担ぎ直し、先刻確かめた板状の機器を今一度取り出す。画面に表示されたままの文字列――閉ざされた孤島、四十八時間の制限時間、時間切れによる首輪の爆破、そして最後の一人に与えられるという、あらゆる願いを叶える権利と、元いた世界への帰還――その一字一句を、メイスは今度こそ、燃えるような決意を込めて見つめ直した。
「――取り戻してみせる」
低く呟くと、メイスは夜の街へと足を踏み出した。その双眸には、かつての慈悲深いジェダイ・マスターの面影と共に、もはや後戻りのできない冷徹な決意の色が確かに宿っていた。
夜の渋谷を模した偽りの摩天楼の谷間を、紫のライトセーバーを携えた正義と秩序の守護者が静かな足取りで進んでいく。
【メイス・ウィンドゥ@スター・ウォーズ】
[状態]:電撃による火傷痕
[装備]:ライトセーバー(紫)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:優勝してジェダイ・オーダーとかつての秩序ある共和国を取り戻す。
1:フォースを駆使して他の参加者を探索して排除する。
2:他のジェダイがいれば協力を求め、拒否されれば排除する。
3:アナキンとパルパティーンへの怒り。
4:自らの敗北がジェダイ壊滅を決定づけたという後悔。
最終更新:2026年07月15日 19:40