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『さよなら霊界探偵』


(キャラ) 甘織れな子、聖園ミカ、浦飯幽助、雪村螢子






胸の辺りが燃える様に熱を持って、
次に感じたのは、強烈な痛み。
膝から崩れ落ちながら、あぁ、撃たれたんだと分かった。
やっぱ、モデルガンとは言え銃を持ってたのは不味かったか。
多分助からない。死ぬんだろうなって、ぼんやりそう思って。



────オメーが一番好きな色だろ、雪村。


────あのバカ何て言ったと思う?


────あっちが神なら、こっちは女神だとよ。



ふふふ。
今から死ぬって言うのに、それを思い出したらおかしくて。
不思議と怖くはなかった。
薄れていく意識の中、思い浮かぶのはあいつの顔だけだったから。



───三年したら戻って来る。そしたら……………結婚しよう。



ねぇ幽助、ごめんね。
私の方が約束破っちゃうみたい。
ま、いいですよって言った覚えもないし。
そもそもアンタだって私に断りもしないで勝手に死んだ事あったから、許してね。
………アンタ、私が死んだらどんな顔するのかな。
怒るのかな。それとも………泣いてくれる?
もしそうだったら、少し嬉しい。


謝りついでに、もう一つだけお願いしておこうかな。
幽助、アンタ不良でしょ。学級委員の私や竹中先生散々困らせてくれたわよね。
だから……こんな『命の授業』なんて壊してくれる?
どうせ戦うなら普段のアンタみたいに、タダのケンカしようぜ、授業なんか抜きでよって。
伊達にあの世は見てないって笑いながら…私はそう言って欲しい。
できるよね?だって今でも私にとって貴方は、浦飯幽助は………




───霊界探偵、だから。





【雪村螢子@幽☆遊☆白書 死亡】








あぁ、何だ夢だったのか。
芦ケ谷高校の高校一年生、甘織れな子は目を覚まして早々状況をそう結論付けた。
いきなり知らない教室で目が覚めたと思ったら命の授業だとか訳の分からないことを言われて。
挙句殺し合いをしろ、だなんて。


「そりゃあ私は陰キャでFPSとか超好きだけどさ……流石にリアルで撃ち合いがしたい訳じゃないのよ」


夢にしたって、これはない。
暫くFPSは控えるべきだろうか……等と考えつつ周囲を見回す。
薄暗くて空調が行き届いた室内、ホールの様に広々としており、椅子が横一列に並べられている。
そして、目の前には光を放つ巨大なスクリーン。


「映画館…?最近見たい映画とかあったっけ?それとも誰かとの約束で……?
誰だ?真唯?沙月さん?紫陽花さん?香穂ちゃん?」


どうやら現在居る場所は映画館らしいが、どういう経緯で訪れたのか思い出せない。
所属している陽キャ女子グループ。スクールカーストトップ集団の顔を一人一人想起していく。
しかし思い出せない。友達と映画何て青春っぽいイベントを約束すれば、陰キャたる自分が忘れる筈はないのだが………



────立て!それほど効いていない筈だ!オレの殴る力は同じ!しかしお前の受けたダメージは小さくなっているはず!
────それが強さでなくて何かね!



応えの出ない問いに思考の迷宮に入りかけた所で、スクリーンから響く声に意識を引き戻される。
上映されていたのは、現実離れしているのにまるで現実に実際に起きた様なそんな生々しさを孕んだ実写映画だった。
筋骨隆々の大男と、れな子と変わらない位年齢…いや少し年下に見える少年が死闘を繰り広げている。


「なんか……凄いな」


男の子って、以前から少し怖くて。
中学時代はぼっちであんまり関わる事もなかったけど。
これが良い感情なのか、それともやっぱり怖いって感情なのかは分からないけれど。
それでも凄い物は凄いのだ。そう思った。


───何かを一つ極めるというのは他の全てを捨てること!それが出来ぬお前は結局半端ものなのだ!

───捨てたのかよ……逃げたんだろ?


スクリーンに意識が吸い寄せられる。
2人がどんな決着を迎えるのか、見入ってしまう。
その時の事だった。どさりとれな子の傍らから、覚えのないカバンが一つ倒れ込んできたのは。
周囲を見渡しても自分一人で閑散とした劇場は、他の人間の荷物とも思えない。
首を傾げながらきょろきょろと周囲を見渡して、中を開いてみる。


「え……?」


入っていたのは、散々FPSで使用した銃と言う名の武器。
モデルガン…などではない。この重さはモデルガンではありえない。
何?一体どういうこと?そんな困惑がれな子の脳裏を瞬く間に制圧し。
不吉な予感は、首に感じる違和感で確信に変わる。




「これ……首輪………?」


何だこれは。こんなもの付けた覚えはない。
そう言えば、さっき見た夢の中でも爆弾付きの首輪がどうとか、言っていた気がする。
ぞっとするほど冷たい物が、背筋を駆け抜けた気がした。
もう一度きょろきょろと辺りを見回す。誰もいない、独りきりの映画館だ。


「と、取り合えず一回外に出て……ここが何処なのか確かめよう。後警察に行こう」


銃には迂闊に触って指紋を付けちゃったけど、正直に話せば分かって貰えるはず。
どうか銃刀法違反とかで逮捕されませんように~!と強く願いながら、席を立とうとする。
その直前、スクリーンに映っていた画面が切り替わる。


『黒の章』
(え、なに、いきなり映画が変わった……?)


急に移り変わった映像に、意識が吸い寄せられ。
立ち去ろうとしていた足が止まってしまう。
そして、彼女は………それを見た。








「ここ、どこ?」


甘織れな子よりも15分程早く。
学園都市キヴォトス、その中でも三大学園と位置付けられたトリニティ総合学園。
三つの学派から選ばれた首長、三人の最高権限者『ティーパーティー』の一人である聖園ミカは目を覚ましていた。
甘織れな子が目覚めたスクリーンの隣、外へと繋がる出入口に最も近いスクリーンだった。


(確か私、アリウスを扇動して、ナギちゃんを襲おうとして……)


学園都市キヴォトスに生きる生徒の象徴であり力の源(諸説あり)であるヘイロー
同じティーパーティーであり、親友である百合園セイアのヘイローを事故で破壊し。
かつてトリニティが斬り捨てた学派閥であるアリウス・スクワッドを学内に呼び寄せ。
対立している三大学園であるゲヘナとの平和条約───通称エデン条約の成立を「トリニティの裏切者」として妨害しようとした。
残ったもう一人の友であり、ティーパーティー最後の一人である藤桐ナギサをアリウスと共に襲撃することによって。
である筈のなのに、なぜ自分はこんな所にいる?
そう考えるよりも早く、彼女の意識もまたスクリーンへと誘い寄せられる事となった。



────心が痛むかね?くくくく"はしか"みたいなものだ越えれば二度とかからない!
────今のお前は無力感に病んでいるのだろう!?強くなりたいか!?もっともっとだ!俺と同じ境地に!他の全てを捨ててでも!
────それが今だ!強く信じろ!力が全てだと!!



彼女が見た物は少し後に甘織れな子と同じ映像。
暗黒武術会と呼ばれる非合法の武闘大会。その決勝戦。
霊界探偵浦飯幽助と、妖怪戸愚呂弟の最後の決闘だった。


(はしかみたいなもの、か………)


今のミカには筋骨隆々の大男──戸愚呂という男の言葉に不思議なシンパシーを感じていた。
今この胸にずっと走る痛みもまた、はしかのような物なのだろうか。
いずれそんな痛みを覚えていた事も忘れてしまう程度の、一過性の痛みなのだろうか。
そんな疑問が渦巻いて。



────アンタの全てを壊して、俺が勝つ。



宿敵の叫びに対して、少年は穏やかにそう宣言した。
血だるまで、傷だらけで、泥だらけの。
意地と誇りを賭けた、男同士の決闘。
そしてそれを見て、聖園ミカは憧憬にも似た思いを抱く。

あぁ、凄いな。
羨ましいな。
真っすぐだな。

でも、こんな話は………私には関係ないよね。
遠い国の寓話みたいなもの。私達の生きる世界は、もっとドロドロしてるもの。
その時まで、聖園ミカはそう考えていた。
直後に、映像が切り替わるまでは。


『黒の章』


奇妙な画面の切り替わりに眉をひそめ、首を傾げて。
2人の決闘はどうなるのかと、腕を組んでスクリーンを見つめた後。
そして、彼女もまた見る。甘織れな子と同じ光景を。







…お前は、自分がどんな生き物か知らないのさ。


たまたま平和っぽい所で生きてるからな。


だが、それは人間の本質じゃない。


殺されるために並んでいる子供の列を見た事があるか?


その隣に蹲ってる蛆虫だらけの死体も……!


明日殺されることが分かってて玩具にされてる人間を見た事があるか?


そして、それを笑顔で眺めてる人間の顔を……ッ!!


…目の前で子供を殺された母親を見た事はあるか?その逆は!?


殺してる奴らは鼻歌混じりで如何にも楽しんでるって顔つきだ!!分かるか!?


人は笑いながら人を殺せるんだ!!!!



お 前 だ っ て き っ と で き る ぜ ! ! ! !



気 が つ い て な い だ け で な ! !  ! ! !









償わなければ。贖わなければ。
甘織れな子は顔を真っ青にして、ふらふらと映画館を後にした。
見せつけられたのは地獄だった。目の当たりにしたのは悪魔だった。
少年と大男の決闘の最中、画面が切り替わり映ったのは『黒の章』という文字。

そこには今まで人間が犯してきた罪の中でも、最も残酷で非道なものが何万時間という時間記録されているそれを、見た。

時間にしてほんの僅かな時間、ほんの十分ほどの視聴時間。
だがそれは、殺し合いという極限状況において。
普通の女子高生の精神を蝕むには充分すぎる猛毒だった。
脳裏に焼き付いて離れない。瞬きのほんの一瞬の間に映し出される、恨めしそうにこちらを見てくる目、目、目。

どうして、お前だけが。

怨嗟の声が耳朶の奥で鳴り響いて。
訳も分からず、何かを償いたくて仕方なくなる。
見た者の精神が見ず知らずの人物の惨状にも心を痛める程、善良であればその毒の威力はより強く。
気づけば彼女は、支給された実銃をその手に歩いていた。


「償わない、と」


自分が穢れた存在に思えて仕方ない。
そしてその穢れを雪ぐ方法は一つ。
人間を殺す。殺さなければならない。
彼女の胸の中にあるのは、ただそれだけだった。


「あの………」


そんな状態のれな子に、1人の少女が現れ声をかける。
茶髪のセミロングの髪の、何の変哲もない普通の少女。
れな子と同じ、この殺し合いに囚われた被害者だろう。
それは何となく今のれな子にも理解できた。できたけれど。
彼女がその手に握っている物を見た瞬間、反射的にれな子はその手の拳銃を向ける。


「お、落ち着いて………私は雪村螢子。貴女を傷つけるつもり何て」
「む……無理ッ!し、信じられない……あなたも……私と同じ人間だもん……!」


恐慌状態と言った様相で、れな子は自身を宥めようとする雪村螢子を拒絶する。
恐怖と、贖わなければならいという強迫観念。
今の彼女の説得は、不可能に近かっただろう。
はぁはぁと荒い息を吐いて、螢子を睨みつける。無論のこと、両手でしっかりと銃を向けた上で。


「……………」
「…………………」


必然的に睨み合うような形となり、緊迫した雰囲気が流れる。
しかし、れな子は撃てなかった。
この距離なら撃てばきっと当たる。それは分かっていたのに。
どうする?撃っていいの?
相手は人間で、あんな酷い事ができる生き物で。
迷っていたら、私もあの光景と同じ事をされるかもしれない。
それに殺さなきゃ、人間に生まれた罪を償えない。
お願い、そんな目で見ないで。助けて、誰か。殺さなきゃ、いや、できない、でも。
償わない、と。



───タァン!



溢れ出た思考を切り裂く様に。銃声が、響いた。
それを耳にするのとほとんど同時に、響いた音と衝撃で極限の緊張下にあったれな子はまた尻もちをついてしまう。
打ち付けた臀部の鈍い痛みに涙目になるが、それを気にしている余裕はなかった。
何故なら、どさ…という大きい肉が倒れる音と共に。
さっきまで向かい合っていた少女が、膝から倒れ伏していたからだ。
それを見てから、呆然と視線を握っていた銃の銃口へと移す。
硝煙の匂いと、撃った煙が薄っすらと漂うにそれに。
撃った?何時?引き金は引いてない…と思う。尻もちをついた時?



「………む………無理、無理、無理ッ!!!無理ぃいいいいいいいッ!!!!」



限界だった。
色々な感情の閾値をとうに超えていた。
ぼろぼろ、と。大粒の涙を溢れさせて。
声にならない悲鳴を上げて、無我夢中で駆け出す。


(助けて……たすけて、お父さん、お母さん、遥奈。真唯、沙月さん、紫陽花さん、香穂ちゃん───)


頭の中がぐちゃぐちゃで、分からなかった。
家族と、友達。彼女達も罪を償うために殺さなければいけない人間の筈なのに。
どうして、こんなにも会いたいと思ってしまう自分がいるのか。
どうして、彼女達も殺さなければならないと考えると。
人を殺してしまった自分はもう彼女たち会えないと考えると。
こんなにも苦しくて、悲しいのか。


【甘織れな子@わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)】
[状態]:動揺(大)、黒の章を見た事により精神不安定
[装備]:ワルサーPDP残弾(15/16)、予備マガジン×2
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:殺し合いには乗らず、ここから脱出…したかった。
1:罪を、償わないと…
2:…たすけて







知っていた筈だった。
世の中はそんなに美しい物ではないと。
きらきらとした澄み渡る夏の蒼空の様な青春の世界よりも。
むしろ欲と嫌悪が渦巻くドロドロとした世界の方がずっとずっと世界の大半を占めている。
そう思っていたはずなのに。
目にした世界の裏側は、想像を絶していた。


「違う……違うよ………あんなの…………」


乾いた笑いが漏れた。
さっきまで、自分はドロドロとした世界の住人なんだって、そう思っていたのに。
実際の地獄を見てしまえば、あんな世界は間違っている。あんな、狂った世界は。
聖園ミカが思うのは、ただそれだけだった。
とにかくあの世界を否定したかった。
あんな世界に自分やナギサや、セイアが生きているだなんて認めたくなかった。
ダン!ダン!と支給された銃を撃ち続ける、けれど何故かスクリーンは破壊されず。
やがて根負けした様にフラフラと外に出た。


「あ………」


薄暗い映画館から外に出て。
まず目にしたのは、銃を向け合っている二人の少女だった。
虚ろな瞳で「止めなきゃ」と考える。
止めなければ、今しがた見た地獄を肯定してしまう気がしたから。


(威嚇……威嚇で動きを止めて、それから二人の銃を取り上げよう)


ゆっくりとその手に握っていた銃をセミロングの茶髪の髪をした少女に向ける。
特に理由はない。単に、その少女の方が先に目についたからだ。
大丈夫、この距離なら当てられる。そう思って、引き金に指をかけ。


────セイアちゃんの、ヘイローが?


刹那に想起するのは、この島に来る前自分の犯した過ちと。
地獄を作り上げながら下卑た笑みを見せる、人間。人間人間人間人間人間人間人間────、
月明かりの届かない建物や木の陰で、誰かがそれでいいのかと問いかけてくる。
威嚇なんて甘い対応でいいのか、と。相手はあんな地獄を作り出せる生き物なんだぞ、と。
そう囁いて。それは今のミカにとって……精神を凌辱する猛毒だった。
何かに突き動かされるように……引き金に指を絞る。二人の少女は未だ気づいていない。
これは仲裁のためなんだと誰に言うでもなく何度も心の中で呟き。


────起こしてみませんか。この閉ざされた島で。
────誰一人として逃れることのできない───"死因100%の予期せぬ死"を。





耳障りなチョークの音。
そして自分たちに殺し合いを命じてきた"先生"の声を思い浮かべながら。
少女は引き金を引いた。タァン、と。夜の闇に銃声が響いた。


「え………?」


そして、呆然と。
その結果生み出された、こと切れた少女の遺体を見つめる。
まず最初に覚えたのは困惑だった。


「な、なんで……!?違う……!わた、私は………威嚇のつもりで………」


学園都市キヴォトスに生き、ヘイローを有する生徒はごく一部の例外を除き頑丈だ。
銃弾一発程度ではびくともしない。せいぜいが痛みを覚える程度。
そして、キヴォトスに生きる生徒たちはキヴォトスの外界の人間と接する機会が殆どない。
だから銃弾一発程度で壊れる脆い目標なんて、その時までは想像すらしていなかったのかも────


「違うッ!!!」


私は、当ててない。
放ったのはあくまで威嚇射撃──本当に?
夜の暗闇で見えにくかったけど、誤射するほど下手な腕になった覚えはない──ほんとうに?
もう一人いた女の子だって銃を持ってた。きっとあの子が───ほんとうに?
あの映像を見て、あんな酷いことができる生き物を排除しようと、お前は本当に考えなかったのか?
そうだと言い張るなら、弾の当たった場所を確認してみればいい。
それで全てがはっきりするじゃないか。


「………フフ……フフッ………アハハハハハハ………」


ケタケタ、と。何だかおかしくなって笑いだす。笑う。笑う。
あぁ、笑うしかない状況というのは、こういう時の事を言うんだろう。
だって、あの映像の世界を否定したくて行動したのに。
その結果、自分も───あの映像の世界の住人だと思い知らされた。


「なら、もう………」


そう呟いた、その時。
バァン!と頬に衝撃が走る。
殴り飛ばされたのだと理解したのは、ごろごろと地面を転がって。
建物の外壁にあたってようやくだった。
攻撃されたのだというショックはなかった。ただ、虚ろな瞳で自分を殴った下手人を仰ぎ見る。


(あぁ、そっか………)


そこにいたのは、映画館で見た少年だった。
決闘の最中でも取り乱す様子のなかった少年が。
既に死んでしまった少女の肩を抱いて、必死に元に戻そうとしている。
その姿は何処か滑稽で哀れだったけど、それだけに。
今しがた撃たれた少女は、少年にとって大切な人だったんだろうと直感的に理解する。


「いいよ………どうせ私は────」


自暴自棄そのものといった様相で、ゆらりと立ち上がる。
もう何もかもどうでもよかった。どうせ自分は、魔女だったのだから。
だから後は魔女らしく荒れるだけだ。愚かに滑稽に踊って、荒れ狂おう。
もう私は私を───止められそうにない。


「という訳で、悪役登場☆」


あぁ、何だか認めてしまったらすごく楽だ。
だって世界はこんなにも醜いんだから!
私は人殺しだから…学園も、友達も、宝物も、帰る場所もなくなっちゃった。
ならもういっそ、一切合切───なくしてしまった方がいいよね☆


「かかって来なよ───霊界探偵さん☆」


だから、今は目の前の敵を───、









───幽助君、君は魔界に行った方がいい。それが多分一番いい。
───人間を食べた妖怪を前にして「食事」と割り切れてしまう君は、もう人間界の住人じゃない気がする。
───今は君が怖い。君がいたらいつか私の子供達と戦う事になりそうで、すごく怖い。


────人は自分の気分しだいで壊せるものをそれぞれ持ってる。
────おもちゃだったりペットだったり恋人だったり家庭だったり国だったりする。
────お前はそれが人よりデカいだけだ。だから壊したくなったらその前にここに来な。
────まずは私の首をくれてやる。









もう息をしてない螢子に。
心配するなって、俺は笑いかけた。
その後、返事が返ってこないのを承知の上で話しかける。


「大丈夫だ、螢子。こんな下らねぇ命の授業なんてさっさと終わらせて…
コエンマ脅してでも……俺や幻海のバーサンみたいにきっと生き返らせてやる」


霊力を注ぎ込んでも、螢子が目を覚ますことはなかった。
当たり前だよな。だって俺はもう人間じゃなくて、魔族なんだから。
だから、できたのは妖力じゃない残ったなけなしの霊力を使って、螢子の体を腐らせない様にすることだけだった。


「心配すんなよ、幻海のバーサンが言ったみたいに何もかも嫌ンなって、世界をぶっ壊そうとか思ってねぇ。
おふくろとか、お前の家族とか、桑原とか…蔵馬の家族だっているしな。生憎俺は仙水の奴みたいにクソ真面目じゃねーんだ」


そう言って、飛んできた銃弾を跳ねのけた。
痛くもかゆくもなかった。そん時思ってたのは一つだけ。
螢子をこんな殺し合いに巻き込んだ奴も、殺した奴も両方ともぶっ殺す。
今考える事はそれだけでいい。それさえ考えてたら後はどうでもよかった。
ただ、殺す。意味も理由もいらない。
握り拳を作って、螢子の所に流れ弾が行かないようにだけ気を付けて。


「かかって来なよ───霊界探偵さん☆」
「"元"だよ、くそったれ」


何で俺が霊界探偵をやってたか知ってるとかはどうでもよかった。
また飛んできた銃弾を殴って明後日の方向に押しのけて。
敵の女のどてっ腹を全力でぶん殴る。手加減なんてしてやるつもりはなかった。



────ただケンカしようぜ、国なんか抜きでよ。


────悪いな黄泉、今から俺はただの蔵馬だ…………



ちっと前に魔界を統一して、人間界も支配しようとしてた黄泉に言った言葉と。
俺の話に乗ってくれた蔵馬の言葉を、何故か思い出した。
でも、それが今はどうしようもなく遠い。
だけどもう今の俺は俺を止められない。
今はただ、目の前の敵を───、




「「───殺す!」」」




【浦飯幽助@幽☆遊☆白書】
[状態]:怒り(大)、殺意(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:殺し合いには乗らず、森口を殺す。
1:螢子を撃った奴を殺す。
2:殺し合いには乗らず、森口を叩き潰す方法を探す。

【聖園ミカ@ブルーアーカイブ】
[状態]:自暴自棄(極大)、黒の章を目にした精神不安定、魔女
[装備]:Quis ut Deus(残弾95%)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:魔女として、死ぬまで暴れる。
1:目の前の霊界探偵さんの魔女として振舞う。
2:………ごめんなさい。


※映画館で黒の章が上映されています。

※どちらが、あるいは両方が雪村螢子を射殺したかは後続の書き手にお任せします。








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最終更新:2026年08月03日 21:31