『亜空の瘴気』
(キャラ) 桐藤ナギサ、琴沙月、小柳香穂、王塚真唯、瀬名紫陽花、ヴァニラ・アイス
パラレルワールドって奴じゃないかしら。
長い艶やかな黒髪に、意志の強そうな瞳が印象的な少女。
芦々屋高校の一年生、琴沙月は公民館のホールに募った面々にそう告げた。
自分たちが置かれている、奇妙な状況について。
「パラレルワールド、ですか……」
「ええ、桐藤さん。生憎だけど私も真唯も、貴方の言う学園都市キヴォトスなんて覚えがないもの。
その…羽が生えてヘイロー?がついている学生の街なんて、あったらニュースになっていないはずがない」
だけれど、現代日本の一学生である自分にはそんな話全く覚えがない、外国でもないと思う。
沙月はこの地で出会い、桐藤さんと呼んだ少女───桐藤ナギサにそう断言した。
背中まで伸ばし丁寧に手入れされた淡い栗色の髪と、理知的な瞳。そして深遠の令嬢と言って相違ない顔立ち。
これだけで言えば単なる目を引く美少女でしかなかったが、彼女の頭と背中に存在する光輪と翼が問題だった。
「しかし、本当なんです……!キヴォトスの外の住人である貴方たちにはご理解いただけないかもしれませんが……!」
「沙月の言葉で気分を害されたならすみません。私たちは貴方の言葉を疑っているのではないんです。ナギサさん」
ナギサの語った学園都市キヴォトスの情報は、沙月たちにとっては何かアニメか漫画の設定としか思えない物だった。
もしナギサにキヴォトスの住民の象徴であるヘイローが無ければ、単にコスプレした痛い娘として見られていたかもしれない。
事実最初は大なり小なり沙月たちはナギサを奇異の目で見てしまった。
とはいえ、今も疑っているわけではない、と。
金の髪をナギサと同じく背中まで伸ばしたモデル体型の美少女───王塚真唯は友人の沙月のフォローに回る。
「貴方の話が私たちの常識の外の話であることは事実です。
しかし今はこんな異常な状況ですから……一旦、お互いの話を受け入れて、共に手を取り合っていきたい」
キラキラ。
擬音を付けるならそんなオトマトぺを伴っていただろう。
少女漫画の王子様の所作そのもので、真唯はナギサに対し沙月のフォローを行った。
真唯の所作に(またこいつは無駄にキラキラして…)等と思いながらも、沙月もまたそのフォローに乗り。
素直に頭を下げる。気分を害させるつもりはなかった。すまない、と。
「い、いえ……私の方も少し過敏になりすぎました。
トリニティのティーパーティーのホストとして、恥ずべき態度でした。申し訳ありません」
沙月の謝罪にナギサも気まずそうに謝罪を返す。
一言で言って、今の状況は彼女にとって居心地が悪かった。
何故ならこの場に招かれた五人のうち、ナギサ以外の四人は顔見知りだったからだ。
疎外感と、奇異の目でみられる不快感で少々態度も刺々しいものになってしまった。
「でも、大変なことになっちゃったね~みんな攫われちゃって…弟達も心配してるかな………」
「とにかく、この首輪を外して警察を呼ぶ方法を探すしかないわね……この島に骨を埋めたくないなら」
「沙月(サー)ちゃん言ってること怖いって……そういえばここ日本なの?」
一先ずのファーストインプレッションを終えて。
次に議題になったのは、当然ながらこれからどうするかという事だった。
今いる建物の外に出て探索を行うか、それともこの場に留まって助けを待つか。
話のきっかけになった、柔らかい口調と緩やかなウェーブの髪が印象的な美少女、瀬名紫陽花が不安そうに声を上げ。
沙月の不吉な言葉に水色の髪の快活そうな少女、小柳香穂がツッコミを入れる。
これが、ナギサも含めこの場に招かれた五人の内訳だった。
「私としては行動した方がいいと思う。勿論、この命の授業に従う人間に襲われるリスクもあるけど……」
「禁止エリアのルールがある以上、どの道一か所には留まれない。
加えて私たちは爆弾付きの首輪を何とか出来るDIY能力にも縁がない、ね」
「そうだね沙月。流石の私も爆弾を解体した経験はない。外すアテが必要になるだろう」
タイムリミットは二日しかない。モタモタしていると間に合わなくなるかもしれない。
それまでに、このデスゲームから脱出する方法を見つけないと。
丁寧に手入れされた金の髪をかき上げながら、王塚真唯は方針を提案した。
「……ですが、何処に行くんです?ここがどこで、どんな方がいるか分からない以上、闇雲に歩き回るのは危険だと思います」
それに対し、藤桐ナギサは真っ向から反論を行う。
探索を行うのはいい。時間が二日しかない以上、ナギサも動かないわけにはいかないと考えている。
だが誰が味方で誰が敵かも分からないこの状況下で、闇雲に歩き回るのは危険だ。そう訴えた。
ここにいるのは殆ど普通の女子高生。銃を持った暴漢にでも襲われればそれだけで命を危うくする。
「えぇ、残念ですが、私達にはこの島の土地勘がありません。
ですので、機械に強いエンジニアの方が目指しそうな場所をまず目指すのはどうでしょう」
首輪を外せるエンジニアの参加者がいたとして、そんな参加者も首輪を外すための道具が必要だ。
あるいは、首輪の制御をハッキングなどして無力化するためにコンピューターが多い場所を目指すか。
順当に考えれば、その二択である可能性は低くないはず。
自分たちが予め首輪を解体するための道具を集めておけば交渉材料にもなる。
危険な参加者が寄ってくる前に道具を回収し、手早く撤収するのはどうか。それが真唯の立てた方針だった。
「問題は、危険な参加者もそう考えるであろう、という事ですね…」
「それは………否定しようもありません」
ナギサの言葉はもっともであった。
むしろこの命の授業を最後の一人になることによって乗り切る事を選んだ参加者にとっては。
首輪を外してこの島から脱出しようという非戦派は、優先抹殺対象だろう。
何しろ、もし万が一非戦派の脱出を許してしまったら主催がどう動くか分からないのだから。
最悪の場合、48時間の経過を待たずして取り残された参加者の首輪を爆破する恐れがある。
それを阻止するために、ゲーム肯定派が待ち伏せを行っている可能性も否めない。
「……すみません。先ほどから反論ばかりしてしまって…真唯さんの方針は正しいと思います」
「気にしないでナギサさん。このキラキラ女はこれまでの人生失敗なんてしてこなかったから。
だからこんなサバイバルゲームでも上手くいく事しか考えてないの。貴方の懸念も間違ってないと思う」
「君は私に対して本当に歯に衣着せないな。私のことを何だと思っているんだい?」
「そうね…人生初の挫折がデスゲームの犠牲者役の女かしら……」
その余りに歯に衣着せない言い分に、ナギサも思わずふっと笑ってしまう。
脳裏に浮かぶのは親友であり、同じティーパーティーのホストである聖園ミカと百合園セイアだ。
真唯と沙月のやり取りはまるでセイアとミカのようで、ナギサにとっても微笑ましく思えた。
「ごめんなさい、皆さん。少し不安で及び腰になっていたようです。もう大丈夫」
「ナギリン気にすんなってー!この状況じゃ不安なのは皆一緒さー!!あたし達もフォローすっから!」
「ナ、ナギリン…?」
「そ!ナギサちゃんだからナギリン!いいっしょ?紗月(サー)ちゃんと紫陽花(アーちゃん)もそう思うっしょ?」
「なれなれしいわよ、香穂」
「わ、私は良いと思うなっ、ナギサちゃんが迷惑じゃなければ」
にべもない沙月と気の抜けた紫陽花の返答に、緊張が和らぎ。
誰からともなく、ふふふふふ。あははははは、と笑いだす。
それは殺し合いの最中とは思えない、和やかな時間だった。掛け値なしに。
そしてこれが、彼女達が笑顔でいられた最期の時間となる。
◇◇◇
「よし…」
出立前に、少し準備をしてから行こう。物資的にも、精神的にも。
それを最初に言い出したのは誰だったか。
ともあれ、その提案は今の自分にはありがたかった───女子トイレ内でナギサは一人そう思った。
自身の愛銃であるハンドガン、ロイヤルブレンドの手入れを終え、付属のホルスターに入れる。
何か細工をされていないか心配だったが、これで問題ない。
たとえ襲われても───抜き撃ちで対処できる。誰に対してでも、だ。
───ナギサ、君は疑心暗鬼の闇の中にいる。
鏡に映るナギサの瞳。
それはどこか淀み濁った光を宿していたが、彼女自身は気づかない。
ただぽつりと、「私は間違っていませんよ、先生」とだけこぼす。
こんな爆弾付きの首輪を嵌められて、命の授業を強いられた状況で。
出会ったばかりの他人を疑ってかかる事の、何がいけないのか。自衛のため、むしろ当然のはずだ。
───本当は、怖かった。
キヴォトスの中でも三大校と称されるトリニティ学園のトップ。三人のティーパーティーのホスト。
そして親友である百合園セイアが何者かに襲われ、暗殺されてからずっと。
次は自分か、あるいは同じく親友である聖園ミカの番ではないかと疑心を抱かずにはいられない。
背後が常に気になるようになり、夜道を独りで歩くことにも覚悟を要するようになった。
そんな時に、招かれた直接的な命の危険を伴う場所。ましてこの島はきっとキヴォトスの外だ。
トリニティのトップである自身の権力も通じない。いやむしろヘイローや翼を奇異の目でじろじろと見られる。
それは今のナギサの精神に大いに負担をかけており、ゆえに彼女は。
この場に集った少女四人、誰も信用してはいなかった。
「……当然です。あの方たちの本心なんて証明できない。この島で出会ったばかりの他人なんですから」
セイアとミカの他に友人だと思っているヒフミすら恐ろしい犯罪集団のリーダーである噂があるほどだ。
他人の本心なんて、結局誰にも分からない。だから疑うのは、警戒するのは間違っていないはずだ。
自分はトリニティ学園のトップ。責任もある立場なのだから。
軽率にサバイバルゲームの中で出会った他人を信用して、後ろから撃たれたなんて笑い話にもならない。
だから、表面上はともかく。決して気は許さない。
「そろそろ、行きますか……何かあらぬ疑いをかけられたら面倒ですし」
銃のチェックと手入れも終わり。準備は整った。
であればそろそろ戻らなければ、あの4人に陰で何を言われるか分からない。
……なんて、言い方をすれば。「それは違う」と、「君はやはり疑心暗鬼の闇の中にいる」、と。
超法規的執行機関シャーレの、あの人は。そういうのだろうか。
「でも私は……間違っていません………!」
言い聞かせるように呟くが、その言葉に応えるものは存在せず。
ただ、薄暗いトイレの闇の中に溶けて消えていった。
◇◇◇
時間を取らせたナギサに憤る事も揶揄する事もせず。
4人はただこれで準備は整ったと、極めて友好的に彼女を出迎えた。
丁度、支給品の確認を終えた所だと真唯はナギサへと告げる。
「銃はマイマイと沙月(サー)ちゃん、あたしに配られてたけど…マイマイにサーちゃん、銃とか扱える?」
「れな子と遊んだFPSでなら」
「右に同じ」
王塚真唯にはイングラムM10 サブマシンガン、琴沙月にはマイクロウージー。
そして皆口香穂にはレミントンM31ショットガン。携行火力としてはそう悪くない籤運と言えたかもしれない。
この場に実銃を扱った者が誰一人としていないという事を除けば、だが。
「ま、まぁ…こんだけ銃持ってる女子高生が集まってれば危ない人も早々近づかないっしょ!
それにもし万が一そんな危ない人が出てきても───ね?紫陽花(アー)ちゃん!」
「う、うん。この漂流(ドリフト)のカードを使えば…何とか逃げられるんじゃないかな。多分」
「死ぬほど胡散臭い上に試しに使えないのが頭の痛い所ではあるけどね………」
紫陽花の握るカードは魔法のカードであり、使えばその場から離脱できるという。
何とも胡散臭い話であったが、今は藁にも縋りたい状況だ。捨てるわけにもいかない。
それにもしその効果が本当であれば、銃で敵対者と止めている間に逃げることも可能となる。
であれば、殆ど銃を撃ったことのない女子高生でも生き残れるのかもしれない。そんな希望があった。
「ナギサはもう準備はいいかい?忘れ物をしても申し訳ないが戻っては来られないから」
「えぇ、大丈夫です。支度はできましたから」
真唯の問いかけに、ナギサは微笑を浮かべながら頷く。
決して自身が抱いている疑心を悟らせないよう。侮られ軽んじられたりすることが無いよう、底を見せず。
ただ、何時でも自分のハンドガンであるロイヤルブレンドは激発可能な状態にしてある。
そんなナギサの現状など露知らず、ただ真唯はリーダーシップに溢れた笑みを浮かべ、声を上げる。
いや、あげようとした。
「よし、では出発───」
ガ
オ
ン
ッ !
「─────え?」
真唯が言い終わるよりも早く唐突に、それは訪れた。
何の前触れもなく。ただ何かを削り取るような音が響いて。
犠牲になったのは真唯───ではなく。彼女の隣にいた瀬名紫陽花だった。
デイパックを背負っていた背中ごと上半身がえぐり取られ。
周囲にボタボタと、内臓と鮮血の大輪を咲かせた。
◇◇◇
「DIO様のためだ、小娘ども」
「この私が再びDIO様の元へはせ参じるために────」
「ひとり、ひとり」
「順番に、順番に」
「このヴァニラ・アイスの暗黒空間にバラ撒いてやる」
◇◇◇
まるで、瀬名紫陽花という少女が、突如として空間に現れたクレバスに飲まれた様だった。
え?という愛らしい疑問の声だけを残して。
次の瞬間には下半身だけとなった少女が、崩れ落ちる。
「……は?え?なに?あー、ちゃん?」
小柳香穂が、瀬名紫陽花の鮮血のシャワーを浴びながら。
状況を飲み込めず、呆けた声を上げる。
王塚真唯も、琴沙月も動けない。何が起こったか分からない。
ただじんわりと、台風の夜に川の水が瞬く間に水位を上げるように恐怖がこみ上げ、そして。
絶叫が、ホールに響き渡った。
ウシャーッ!
少女たちの恐怖を煽るように。
虚空に異形の、悪魔のような人形が出現する。
明らかな脅威を前にして、少女たちは動けない。突然起きた惨劇を脳が受け入れられず凝固してしまう。
そんな中で、唯一動けたのは。
「この……ッ!!!」
桐藤ナギサただ一人だけだった。
素早くホルスターから引き抜いた抜き撃ちを行い、突如現れた悪魔に銃弾をぶち込む。
咄嗟の射撃であったが、その殆どが命中していたことは彼女の能力の高さの証明と言えるだろう。
オゴォオアアアアアーッ!!!
ここで少女たちに幸運が訪れる。
銃弾を撃ち込まれた悪魔の人形が、完全に想定外といった様相でダメージを負ったからだ。
その影響で人形の動きが止まる。今しかないとナギサは決断した。
「……ッ!」
紫陽花が持っていたカード、腕を下げていたお陰で消失を免れたそれを引っ手繰って。
その後まだ呆然としている「他人」達に彼女は声を張り上げる。
「何をしているんです!行きますよ!!!」
「え、で、でも………」
「ここに残っていても殺されるだけです!早く!!!」
普段の優雅さや余裕とは程遠い表情でナギサは一喝を行う。
これで動かないようなら置いていく。共倒れはごめんだ。
その時彼女は本気でそう思っていた。
「………ッ!分かった!行くぞ、沙月、香穂!!」
凄惨な状況下で、真っ先に我に返り動いたのは王塚真唯。
彼女は沙月と香穂の手を取り、一早くナギサに続いた。
紫陽花の遺体を置き去りにしていく逡巡はあったが、今は自分が遺体になるか否と言う瀬戸際だ。
そうして五人から四人になった少女たちは、ホールから外へと続く通路へと駆けていく。
「スタンドが……銃弾でダメージを受けた………
それに……スタンドに向けて銃を撃って来たという事は……"見えて"いるのか……あの小娘どもは」
体中に無数の銃創を刻まれながら。
悪魔の人形は衰える兆しを決して見せない。
いやむしろ、暗黒のクレバスの様などす黒い殺意は燃え盛る様だった。
この場においてはスタンドも物理干渉を受け付ける。その事実のみを咀嚼し。
少女達の逃走を、嘲笑うかのようにヴァニラ・アイスは独り言ちた。
「まぁ、いい……ここから出口までの通路は直線だ」
◇◇◇
一体先ほど起きたのは何だったのか。
そう考えながらも、誰も何も言えなかった。
だって、そんなの私が知る訳無い。
自分が聞かれたらそう叫ぶしかないし、もしそう叫んでしまえば。
そう叫んだ瞬間、このグループの命運は潰える。
誰もが聡明で、空気を読むことに長けたスクールカーストトップの彼女達だからこそ、それを直感できた。
だから誰もが皆、首元まで水位が上がった恐怖と言う名の水の中で必死に堪えている。
「真唯、貴方………」
そんな中で、グループの中で一際理知的だった琴沙月が声を発する。
先ほどの襲撃者にいつ襲われるか分からない状況で声を上げるなとナギサは叱責したかったが。
それでも今の真唯の状態を見れば何も言う事は出来なかった。
「あぁ…かすり傷だよ、大丈夫。この程度なら心配ない」
先ほど紫陽花が上半身を消失させて斃れた際、
もっとも近くにいた真唯の右肩もまた、抉られていた。
確かに即命に関わる様な大きさの怪我ではない。
だが、嫁入り前の娘が血を滲ませている姿は、流すには余りにも痛ましい姿だった。
「此処を出たら…どこか……王塚さんの怪我の手当てができる場所を探しましょう」
ナギサは真唯の状態を一瞥してそう述べるが、その声に力はなかった。
自分を含めたこの場の全員が激しく動揺しており、冷静さを欠いたこの状況で。
更に怪我人まで抱えて逃避行だなんて、完全に自分一人の手に余る状況だった。
正義実行委員会でもいい、シスターフッドでもいい、救護騎士団でもシャーレでもいい。
助力を乞えるなら藁にでも縋りたい状況だった。それくらい追い詰められていた。
どうすればよいのか。どうするべきなのか。誰でもいいから教えて欲しい────、
「────外よ!」
思考の袋小路に陥りかけた所で、力を伴った沙月の声が響く。
俯いていた顔を上げると、月明かりに照らされた外の景色が目に映る。
そうだ、今はまずここから早く立ち去らなければ。後の事は後で考えればいい。
もう直ぐ逃げられる。外に出てしまえば取り合えず一息つける。
月明かりは柔らかく明るい為、そんな錯覚を覚えてしまった。
そう、錯覚を。
ガ オ ン ッ !
悪夢はまだ終わらない。
少女たちの行く手を阻む様に。
彼女等の進行方向正面、その側面にある壁を突き破って。
悪魔が再び姿を現す。先回りをされていたのだ。
(これは、不味い───!)
そしてそうなれば真っ先に危機に直面するのは当然ながら戦闘を走っていたナギサだ。
全力で急ブレーキをかけ、身を翻そうとするがしかし僅かに間に合わない。
元々彼女はヘイローを持つ者の中でもそこまで身体能力が高くない一人なのだから。
死神の鎌の直撃だけは避けるが然し、先ほどの真唯の様に左の掌に掠ってしまう。
鮮血が舞い、尻もちをつく。
「ぐっ─────あああああああ!!!!」
痛みで涙目になりながら無我夢中でロイヤルブレンドを構え。
そして現れた悪魔にありったけの銃撃を見舞った。
背後でも叫び声と、銃を構える音が聞こえる。きっと真唯達も恐慌状態だろう。
だが、その銃撃が放たれる事はなかった。
「………は?」
突如発されるのは、真唯のただならぬ声。
それを受けてナギサは反射的に振り向いた。強烈な不吉な予感に突き動かされる様に振り向いてしまった。
その結果、王塚真唯が崩れ落ちる姿を目の当たりにする事となる。
悪魔が攻撃した訳ではない。悪魔が攻撃したなら、抉れたような損傷になる筈だ。
であれば、何故王塚真唯は頭に撃たれた様な血の紋様を浮かばせて崩れ落ちたのか。
────まさか、壁や天井に弾が跳ね返って?
ナギサの聡明な頭脳は、すぐさまその結論に行きついた。
狙いも良く付けず、そう広くない室内で考えなしに撃ちまくれば当然そうなる。
キヴォトスで発生する怪我人もそう言った者が大半を占めている。
そう、"キヴォトス"の住人であれば。それは単なる怪我程度の話になるが、しかし。
キヴォトスの外の人間であれば話は別だ。
…私のせいで?
……私が皆さんを待たせたから。
…………もっと早く出発していれば。
……………私が撃ったから。だから王塚さんは。
…………………違う。違う違う違うちがうちがうちがうちがうッ!!
…………………………私の、私のせいじゃ………ッ!!!
そう、打ちひしがれる暇もなく。
銃弾のダメージから復帰した悪魔の人形が再び動き出す。
先ほどよりも、確実に早い行動の再開だった。
「あ…………」
ナギサが絶望の声を上げる。
動かなければと思うけれど、裏切者の身体は動いてくれなかった。
ゆっくりと、最早戦意を奪ったと見たのか走馬灯のように迫りくる死神を見つめて。
そして全てを諦めた様に瞼を閉じ────、
「漂流(ドリフト)使用(オン)!」
そのまま五秒……十秒…………三十秒…………
一分が経過しても悪魔がナギサの身体を削り飛ばすことはなかった。
呆然と、瞼を閉じた後響いた声の方向に顔を向けると。
さっきナギサが拾い、けれど使うことなくどこかに飛んでいったと思っていた漂流のカードを構えて琴沙月が立っており。
傍らには、小柳香穂が嗚咽を漏らしながらへたり込んでいた。
「………何で、なんでよ。なんで……アンタがこんなに呆気なく死んでるのよ。真唯…………」
「………ッ!!何だよぉ…紫陽花(あーちゃん)も……真唯(マイマイ)も………!私達が何したって言うんだよぉ………!」
生き残ったという高揚はそこにはなく。
あるのはただ、唐突に訪れた理不尽への憤りと恐怖と、友の死という絶望だけだった。
それを見てナギサが思うのはどうして、と言う感情だけだ。
(どうして来てくれないんですか。生徒が困っているんです。怪我もして、泣いているんですよ。それなのに)
何故助けに来てくれないんですか。
私が間違っているというなら、謝罪しますから。
今すぐここに来てください。助けて下さい、先生。
【桐藤ナギサ@ブルーアーカイブ】
[状態]:左手の掌から出血(中)、疑心暗鬼、精神疲労(大)
[装備]:ロイヤルブレンド(残弾0/8)、予備マガジン×4
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:ティーパーティーのホストとして、殺し合いを脱出する。
1:……助けて下さい、先生。
2:………私は間違ってません。
※エデン条約編2章。黒い手以降より参戦です。
【琴沙月@わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)】
[状態]:精神疲労(大)、王塚真唯が死んだ動揺(大)
[装備]:マイクロウージー(残弾100%)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:殺し合いには乗らず、皆と脱出する。
1:なんで……何でよ、真唯………
2:紫陽花……
※アニメ一期終了時点より参戦です。
【小柳香穂@わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)】
[状態]:精神疲労(大)、王塚真唯、瀬名紫陽花が死んだ動揺(大)
[装備]:レミントンM31RS(残弾4/4)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:殺し合いには乗らず、皆と脱出する。
1:私達が何したっていうのよぉ……
2:真唯(マイマイ)……紫陽花……
※アニメ一期終了時点より参戦です。
───フン、全員殺せるかと思ったが……フフ、惜しい。
まぁいい、所詮あの程度の小娘ども、放っておいてもそう遠くない内に死ぬだろう。
スタンドが物理干渉を受けると知れたのは意義があった。
もしもっと強者と戦っていたら少なくないダメージを負っていたやもしれん。
殲滅できなかったのは遺憾だが、この殺戮を今後の戦闘にも活かす。それだけだ。
一つの直感があった。
今、ポルナレフに敗れ死んだはずの俺が、森口に逆らえば死ぬと。
正確には、塵に戻されると。
DIO様以外の女なぞに命じられ動くのは屈辱だったが全ては優勝して蘇り、再びDIO様の元へはせ参じるため。
そう、我が愛しの君──DIO様のために。
私がDIO様の元に帰還する事を阻む者すべて。
ひとり、ひとり。
順番に。順番に平らげ。
生きとし生ける物全て、一切合切をこのヴァニラ・アイスの暗黒空間にばら撒いてやる。
【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:吸血鬼化、身体の至る所に銃創(治癒済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:全員を殺戮し、DIO様の元へと帰還する。
1:邪魔する物全て暗黒空間にバラ撒く。
2:さっきの小娘どもは次に会えば今度こそ始末する。
※死亡後より参戦です。
【漂流(ドリフト)@HUNTER×HUNTER】
指定した対象一人を行った事のないエリアに飛ばす。使い捨てカード。
最終更新:2026年08月03日 23:04