『時代遅れのアクション・ヒーロー』
(キャラ) ジョン・マクレーン、ダニー・マディガン
「ブルース・ウィリスってあんまりアクションのイメージ無いんだよね。どうせならシュワルツェネッガーの方が良かったんだけど」
甲高い喚き声を背中で聞き流しながら、ジョン・マクレーンは支給された武器を確かめていた。
ベレッタM9。憎らしくなるほど手に馴染んだそのオートマチック拳銃は、マクレーンにとって長年の相棒であり、ある種の戦友でもある。マガジン、銃身、そしてスライド。全てを丹念に調べても、異常は見当たらない。少なくとも、何か罠が仕掛けられている訳ではなさそうだ。
「アンタも刑事だけど、派手さが足んないよ。そりゃ『ダイ・ハード2』は良かったけどさ。『ジャック・スレイター3』に比べたらまだまだだね」
マクレーンはベレッタをズボンのベルトに差し込み、ようやく声の主に向き直る。視線の先にいたのは、小柄な少年。
「……なあ、ダニー」
「なに?」
ダニー・マディガンと名乗ったこの少年は、マクレーンが『命の授業』とやらに巻き込まれてから初めて出会った相手だった。
勤務態度に難はあれど、マクレーンも刑事の端くれである。当然、危険な場所に子供が一人でいるのを放置できるはずもない。
従って、とりあえず彼を保護して一緒に行動することにしたのだがーー思えばそれが頭痛の始まりだった。
「今日はクリスマスか?」
「違うよ。見たところナカトミビルでもダレス国際空港でもなさそうだし。ハンス・グルーバーもスチュアート大佐もいないよ」
「……ああ、ありがたいね。なら今回は運が良かった」
頭痛の原因はまさにこの会話にある。
ナカトミビルの一件からダレス国際空港の事件まで、この少年は異常に詳しいのだ。それどころか、名乗る前からこちらの名前を知っていた。
大方ピープル・マガジンの記事でも読んだマセたガキだと思っていたのだが、本人が言うにはどうも違うらしく。
「これで分かったでしょ?マクレーン警部補、アンタも映画から出てきたんだ」
「……映画の話はやめろと言っただろ」
ダニーが言うには、自分の活躍は『映画』の中の世界の出来事らしい。それもシリーズが二作も作られている大人気作。「スレイターには負けるけどね」とはダニーの言だが。
つまり、ナカトミプラザの屋上から消火ホースを巻き付けて飛び降りたのも、飛行機の主翼の上でスチュアートに殴り倒されたのも、全部『フィクション』だったという訳だ。
もちろん、マクレーンとてそんな与太話を信じた訳ではない。この年頃のガキが空想の世界に耽るのはよくある話だ。それに、仮にそうだったとしたら監督か脚本家を殴り倒してやらなければ気が済まない。ここまで毎度毎度ボロボロにされているのが他人の仕業だとしたら、あまりにも趣味が悪すぎる。
「ホントなんだってば!ねえ!聞いてよ!」
縋りつくように喚き立てるダニーに一つため息を吐いて、マクレーンはポケットに入っていた煙草を取り出して火を点ける。
「何の映画かはわからないけど、たぶんここは映画の世界なんだ!アンタも、あの女の人もーーここにいるのはみんな映画の世界のキャラクターなんだ!」
そう熱弁する少年を見下ろすマクレーンの眼差しは、あまりに突飛な論理を展開する終末論者のホームレスを街角で目にした時のそれに近い。
「そりゃどうも。なら、ジョン・ウェインかランボーを連れてきてくれ。……ロイ・ロジャースでもいいぞ。一度会ってみたかった」
マクレーンは吐き出した煙の向こうで不機嫌そうに鼻で笑う。だが、それでもダニーの熱は止まらない。
「茶化さないでよ、本当なんだから!だって考えてもみなよ。変な首輪を着けられて、見知らぬ街に集められて、最後のひとりになるまで殺し合いをさせられる……そんな悪趣味でイカれたシナリオに現実の警察官が巻き込まれると思う?これは観客をハラハラさせるための、出来の悪いB級アクション映画のプロットそのものなんだよ!」
映画のシナリオ、ね。
マクレーンは自分の置かれている状況を思い返し、心中でそう吐き捨てる。もしこれが本当に誰かの作ったシナリオだとしたら、その脚本家は相当な性悪に違いない。
「……あのな、ダニー」
マクレーンは煙草を足元で踏み消し、ダニーに低い声で呼びかけた。
「もし俺の人生が映画だとしたら、俺は間違いなく監督と脚本家をブチのめしてる。ナカトミでは足をガラスでズタズタにされ、ダレスじゃ滑走路で凍え死にそうになり、ニューヨークに戻ったらイカれたゲームに巻き込まれた。で、次は怪しい首輪を着けられてガキのお守りだ……勘弁してくれ。観客がいるならチケット代を返金してやるから今すぐ全員家に帰れって言いたいね」
「でも、アンタは生き残ったろ!どんなに酷い目に遭っても、最後には悪党をブチのめしてハッピーエンドを迎える。それが主人公のルールなんだ」
ダニーは食い下がったが、マクレーンは苦々しい表情を浮かべてさらに続ける。
『ハッピーエンド』。自分の人生から抜け落ちたその単語が、映画として切り取られた中に存在しているのだとしたら、これほど皮肉な話はない。
「ハッピーエンド?俺の現実ってやつは、映画みたいにエンドロールが流れて綺麗に終わっちゃくれないんだよ。事件が終われば書類仕事の山、上司からの小言、そして冷めきった夫婦生活が待ってる。夢のない話で悪いが、ヒーローにゃ『ご褒美』なんてもんはないんだ」
「……アンタ、ホリーさんとまた別居してるの?『ダイ・ハード2』の最後では上手くいきそうだったけど」
「……その件についてはノーコメントだ。大人の事情ってやつがあるんだよ」
マクレーンは不機嫌そうに呟き、支給されたデイパックを肩に担ぎ直して周囲を見回す。人の気配はないが、いずれ殺し合いに乗った連中が集まるのも時間の問題だろう。
「まあいい、とりあえずこの世界が映画かどうかなんてのは一旦置いておく。今はこの場を生き延びるのが先決だ。しっかり俺の後ろについてろ。変なマネはするな。それと……映画の知識とやらで役に立つものがあったら、出し惜しみせずに言え。それでいいな?映画評論家先生」
「……信じてくれるの!?」
マクレーンは目を輝かせるダニーの肩をポンと叩き、その手にぐっと力を籠める。
「信じるわけねえだろ。ただ、使えるモンは何でも使うってだけだ」
腰に差し込んだベレッタと、映画オタクの少年が語る不確かな『知識』。このイカれたシナリオに放り込まれたマクレーンが頼りにできるのはその二つしかない。
だが、諦める気など毛頭なかった。何故なら、この世界一不運な男もまた、『アクション・ヒーロー』なのだから。
【ジョン・マクレーン@ダイ・ハード3】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM9(15/15)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×2
[思考]:殺し合いには絶対に乗らない。
1:ダニーを保護する。
2:警戒しつつ他に協力できそうな参加者を探す。
3:俺の人生が「映画」とはね。笑えないジョークだ。
[備考]
※参戦時期は本編終了後。
【ダニー・マディガン@ラスト・アクション・ヒーロー】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×3
[思考]:殺し合いには乗らない。
1:マクレーンと行動する。
2:スレイターがいないか探す。
3:他の映画のキャラクターも探す。
4:マクレーン警部補、なんか「ダイ・ハード2」の頃よりハゲてない?
[備考]
※参戦時期は本編終了後。
※参加者、および主催者を「映画のキャラクター達」、現在の状況を「映画の中の世界」だと思っています。
※1993年(「ラスト・アクション・ヒーロー」公開年)以前の洋画作品、特にアクション映画のメタ知識を有しています。
※「ダイ・ハード」シリーズの内容は2まで把握済。3(1995年公開)の内容については把握していません。
最終更新:2026年08月03日 23:15