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『エルタンケ撃てッ』


(キャラ)甘利田幸男、武部沙織、五十嵐響子





 戦車道だの、恋愛がどうのだの、
バトル・ロワイヤルだの、願いを叶える権利だの、
私の武器が『うめ原の粗品』だの、
世界で一番素敵な笑顔♪だの、
お料理得意なんですっ♪だのと、

……心底、理解に値しない。

誤解してほしくない。
私は理解できないのではない。理解する必要が毛頭ないのだ。


教師生活を続けていれば、生徒は様々な話題を持ち込んでくる。
流行りのアイドル。ゲーム。動画配信者。
聞こうと思えば聞ける。理解しようと思えば理解できる。
だが!
だがしかし、だ……!

それらを理解したところで、今日の【給食】のクオリティが1ミリでも上がるというのか!?
あの完璧なる三角形を形成する『あげパン・ポークサチュー・ABCスープ』の美味が、生徒たちの恋バナでさらに深まるというのか!?

……否。断じて否であるッ。


よって結論。
──これらは全て、私にとって『給食』未満。
──給食を超えない。ゆえに、私の脳細胞を割く重要性は皆無なのだ。

私の話は、これで終わりだ。




「……あの教師ぃ~~~~っ!!!!!──」

「──私たちは給食のおばちゃんかーっ!!! 『なら作れ、給食』って何よそれぇ~~!!! もっとこうあるじゃん!? 殺し合いとか! 陰謀とか! 願いとか!──」

「──……シンプルイズバーストか!! ありえないんだけどーーー!!!」

「ふふっ♪ 沙織ちゃん、そんなに怒ったらお塩と砂糖を間違えちゃいますよ~」

「いやいやいや!! そこなの!? 今の論点そこだった!?」

「お料理って心が出ますから」

「出てるよ!! 今めちゃくちゃ怒りが出てるよ~~~!!」


 騒がしい。実に騒がしい。
だが、不快ではない。
給食室とは本来そういう場所だ。
トントンと小気味よく野菜を刻む音、グツグツと鍋が情熱をたぎらせる音。世間話、愚痴、笑い声。
それら全てが渾然一体となり、やがて一つの至高なる献立へと昇華していく。
かつて『ぼく食べる人、わたし作る人』なるCMが世を賑わせた。
今となっては幾度となく擦られた古典的文句だが、現在の私たちは、ある意味でその究極の役割分担を体現していると言っていい。

──なにしろ、私は待つだけだからだ。


「でも先生も大変なんですよ~」

「えぇ~~~~~!? 響子ちゃん優しすぎだってば!!──」

「──『私たち二人、なんだか料理得意みたいで~』って話しただけだよ!? なのに返ってきたのが『なら作れ、給食』だよ!? 真夜中よ!? バトル・ロワイヤル中よ!? 何なのその発想!!」

「……給食が好きなんでしょうね~」

「好きで済むレベルかなぁ!?」

「うーん……」


 ……フッ。──思わず笑みが漏れた。
無論、彼女たちを笑ったのではない。
今もどこかでこちらを見ているであろう主催者への冷笑だ。
つい一時間前。
森口という女が、命の重さだの何だのと語っていた場所──それと酷似した、この閉ざされた教室。
人を殺すための舞台として用意された場所で、参加者たちは何をしている?
陰謀を巡らせているか? 殺意のナイフを研いでいるか?
──違う。
彼女たちは今、給食を作ってい……いや、作らされているのだ。しかも、驚くほど真面目に。


私は森口の授業、その価値観を否定するつもりはない。
そのうえで、「だから何だというのか」と声高にしたいものだ。

見ろ──、
いや、五感を研ぎ澄まして聞け──、


「でも、誰かのためにご飯を作るのって素敵じゃないですか」

「……うっ」

「私、ちょっと楽しみですよ?」

「……うぅ」


──五十嵐響子。
おそらくは衛生観念を律儀に守り、マスクまで着用しているのだろう。彼女の、わずかに籠った声を。
少し籠っている、それでいて、どこまでも準備に満ちた明るい響き。
アイドルだなんだという俗世の肩書きは私には分からんが、この極限状態において、彼女の役目は泣き叫ぶことでも、誰かを呪うことでもない。
『調理』である。その一点の、なんと彼女に似合うことか!

そして──、
三度聞け──、


「みんなで食べたら美味しいですし」

「……あーもう!!──」

「──しょうがないな~~~~~っ!!」


──武部沙織。
文句は人一倍多くとも、その手はしっかりとエプロンの紐をキュッと結び直している。その美しい音を。
次第に調理室から漂ってくる、胸を焦がすようなスパイシーな香り。乾いた小麦が熱を帯びる、香ばしいパンの香り。
これは誰か一人のエゴのためではなく、この場にいる全員の胃袋を救うために作られるもの。
豪華である必要などない。だが、絶対に、断じて不味くあってはならない。
それこそが給食だ。
それこそが、──彼女の歩むべき『道』なのだ。


ガラガラガラ……。
乾いた音を立てて、教室の引き戸が開かれる。
現れたのは、二人の生徒。
大きな鍋を抱え、まるで勝利を確信した将軍のように、しかし眩しい笑顔で立っていた。


「先生ぇ~~! ……あ、沙織ちゃんも一緒に♪」

「え?! ほんとに言うの!? それ!?」


学校とは本来、人を育てる場所だ。
そして給食とは、飢えを凌ぎ、人を生かす、義務教育最大の奇跡だ。
私は教師である。
教師が学校でやることなど、時代が変わろうと、世界が狂おうと、昔から一つしか決まっていない。


──最高にして最上の、『授業』を始めることだ────。



「……あーもういいや! せーの!!──」


「「──チャイムが鳴りましたよ~~~! できあがりです!」」






真珠の抱く~~~学び舎に~~~
笑顔でつどう、友よ師よ~~~~
いっぱい食べよう 豊かな食育~~~~
モリモリ食べれば 見える私の未来~~~~~
きっと、いつの日か会えるかな?

世界で一番、素敵な~~~~笑顔ぉ~~~~~~~


『お料理、得意なんですッ☆』

あぁ常節~~~~、常節中学校~~~~~



【本日のお品書き】
【みんなで前進♪ 恋する乙女のエルタンケカレー♡】

[材料]
  • カレー
  • 豚こま肉 300g
  • 玉ねぎ 2個
  • にんじん 2本
  • じゃがいも 3個
  • カレールー 1箱
  • 水 800ml
  • 戦車パーツ
  • ご飯 4~5人前
  • スライスチーズ 2枚
  • 海苔 1枚
  • ウインナー 4本
  • ブロッコリー適量




「……そもそも、そもそもの話をしよう。現在の時刻、およびこのシチュエーションにおいて考えるならば、これは【給食】ではない」

「それ言いますっ!!?」



 月明かりすらも完全に霞み、スパイシーな芳香だけでこの絶望の空間を完全支配した、カレーの独壇場。
神聖なる教壇を、今や臨時の配膳台へと変えたこの修羅の場にて。
──この甘利田幸男。
二人の生徒を『正しき道』へ導こうと思う。



【甘利田幸男@おいしい給食】
[状態]:健康
[装備]:うめ原の粗品
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:『腹が減っては戦はできぬ』を言い訳とさせていただこう。
1:……うまい、うますぎる!!
2:生徒たちに正しい給食の精神を教える。
3:森口の教育論はともかく、まずは食べてからだ。

【武部沙織@ガールズ&パンツァー】
[状態]:健康、やや呆れ
[装備]:エプロン
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:……不安はある。色んな意味で! っていうか、主にこの先生のせいで!!
1:この先生、飯になった瞬間急に踊り出すの、マジで怖いんだけどぉ~~~。不審者だよぉ!
2:殺伐とした空気は嫌だし、できればみほたちみんなとも早く合流したいなぁ……。
3:絶対に、何が何でも、100%の確率で、あの甘利田って先生はおかしいと思う!!!

【五十嵐響子@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:エプロン、マスク
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:もちろん脱出最優先です! でも、お腹が空いてちゃ動けませんよね!
1:こんな大変な時だからこそ、みんなで美味しくご飯を食べて笑顔になりたいです。
2:困っている人がいたらご飯を作ってあげたい。
3:それにしても先生、本当に、本当に給食がお好きなんですね~~♪




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最終更新:2026年06月06日 14:51