『トリオ・ザ・捜査一課 臨時増刊号:おにぎりとジャガイモ』
(キャラ)伊丹憲一、野原しんのすけ、佐藤マサオ
「くそが……こんなことが許されるとでも思ってんのか!!」
深夜零時。冷たい雨が降りしきる中、代々木公園を精巧に模したような森の腐葉土を思い切り踏みつけ、警視庁刑事部捜査一課巡査部長――伊丹憲一は歯噛みした。
「いきなり拉致して『命の授業』だぁ? 死因百パーセントの殺し合い……? ふざけんのも大概にしろ! 俺は絶対に乗らねぇ!」
怒鳴り声が、雨音を切り裂いて暗い木立に反響する。
――その時。伊丹の耳に届いたのは、この狂った世界にはおよそ似つかわしくない、幼い泣き声だった。
「うわあああん!! お家に帰りたいよぉ!!」
子どもの泣き声。
伊丹の表情が一変した。
(ガキ……? まさか参加者に未成年……それもこんな幼児まで巻き込んでんのか……!)
「まあまあマサオくん、きっと帰れるって。きがなに待とうよ」
「それを言うなら気長だよしんちゃん! うわああん!」
「そうとも言う~薄口しょうゆ~」
(……呑気なのか混乱してんのかどっちだ……ったく……!)
伊丹は反射的に足を動かしていた。子どもの扱いは苦手だが、そんなことを言っている場合ではない。
生い茂る濡れた枝が頬を掠め、鋭い痛みが走る。スーツに泥がはねるのも構わず、伊丹の心に宿ったのは、恐怖ではなく、理不尽に対する激しい「憤怒」だった。
藪をかき分け、伊丹が飛び出した。
「おい! 坊主ども! 大丈夫か!」
しかし、伊丹は失念していた。
返り血のような泥を浴び、額に傷を負い、眼光鋭く絶叫しながら現れた自分自身が、五歳児にとってどれほどの「恐怖」であるかを。
「うわあああん!! 怖い人が来たぁ!!」
「やめろー! マサオくんなんて売っても大した金にならないぞ!」
「そんなこと言わないでよぉ!!」
「落ち着け! 俺は警察だ!」
「ほうほう、お勤めを果たした後に警察官に」
「ヤクザ上がりじゃねぇ!!」
「うわああん怒鳴らないでぇ!」
(……だから子どもは苦手なんだよ……!)
伊丹は天を仰いだ。降り注ぐ雨の中、この「嵐を呼ぶ五歳児」に振り回されるのは、特命係の「相棒」を相手にするよりよほど血圧に悪い。
「おじさん、顔こわいよ? 便秘?」
「お前らのせいだろ!!」
「オラの母ちゃんも便秘だと機嫌が悪くなるぞ」
「おま……」
怒鳴りかけて、伊丹は言葉を止めた。
(母ちゃんか……こいつらにも帰るべき家族がいるんだな)
首輪に触れる。ひどく冷たい金属の感触。
本当に怒るべき相手は、この子供たちでも、ましてや不運な己でもない。
深く息を吐いた。
「……はぁ。……悪かったな、怒鳴ったりして」
伊丹は泥だらけの地面に膝をつき、視線を子供たちの高さに合わせた。
その顔はまだ怖いが、瞳の奥には確かな「正義の灯」が宿っていた。
「俺は伊丹だ。このふざけた殺し合いには絶対に乗らねぇ。お前らは俺が守る。命に代えてもだ」
しんのすけがにっと笑う。
「オラ野原しんのすけ! 春日部で父ちゃんと母ちゃんとひまわりとシロと暮らしている五歳児!」
「マサオです……」
「よろしくな」
「ほっほーい!ヤクザ警察の伊丹さんもよろしく~!!」
「だから違うって言ってんだろ!!」
二人のやり取りを横目に、佐藤マサオは震える手で自分のズボンを握りしめていた。
(優勝したら……『あらゆる願いを叶える権利』が、もらえる……)
森口悠子の冷たい声が、耳の奥でリフレインする。
この地獄から抜け出すため? それとも、大好きなあの子に振り向いてもらうため? あるいは、誰にもいじめられない「強い自分」になるため?
(しんちゃんは友達だ。伊丹さんも、本当はいい人みたいだ。でも……でも……!)
おにぎり頭の少年の中に、小さな、しかし毒々しい「欲望」の種が芽吹き始めていた。
胸がざわつく。
怖い。
でも。
少しだけ。
ほんの少しだけ。
甘い響きがした。
マサオはぎゅっと拳を握った。
「おい、おにぎり頭。行くぞ。風邪引く前になんか雨を凌げる場所を探すぞ」
伊丹がマサオの背中を、無骨な手でポンと叩く。
「ひえっ!? は、はい……!」
刑事と五歳児。
奇妙な三人組の逃避行が、雨の降りしきる、ネオンの光が不気味に反射する偽物の渋谷の暗がりへと溶けていった。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]: 殺し合いはしない
1:ヤクザ刑事の伊丹さんについていく
2:家族やマサオくん以外の春日部防衛隊のメンバーもいるのかなぁ……?
3:マサオくんのお守りは大変だぞ。
【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]: 健康、迷い
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]: 今はまだ迷ってる
1:今はとりあえず伊丹さんについていく
2:なんでも願いをかなえてくれるのかぁ……
3:でもしんちゃん達は裏切りたくないなぁ……
【伊丹憲一@相棒】
[状態]: 健康、怒り、顔に裂傷、衣服に泥汚れ、雨による濡れ
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]: 殺し合いは絶対にしない
1:こいつらをなんとしてでも守る
2:こんな幼児まで参加させるなんて……あのクソ女!!
3:こいつらもこいつらで疲れるな……
4:呼び方はなんとかならないのか!?
最終更新:2026年06月06日 23:29