『支配の悪魔』
(キャラ)スズキタゴサク、マキマ、類家、東山コベニ
えー、皆さんこんにちは。
公安対魔特異課のスズキタゴサクです。
この映像は、テレビ局、新聞社、動画サイト、SNS、あとチェンソーマン速報まとめみたいな胡散臭いサイトにも送っています。
では、今から犯行予告を開始します。
島中に爆弾を仕掛けました。はい大惨事です。
もう誰か死んでるかもしれませんし、最後まで誰も気づかないかもしれません。
これは無差別ではありません。
支配という厳正な審査のもと、選別したうえで『裁き』は下されます。
キシベは殺します。お荷物老人は必要ないからです。
アキ君は殺します。未来最高とか言いながら全然最高じゃないからです。
パワーちゃんは殺します。野菜を食べないからです。
コベニちゃんは殺します。殺そうとしたらチェンソーマンが助けに来るからです。
つまらない映画は殺します。映像だけにお金かけてるからです。
永遠は殺します。話が進まないからです。
ナチスは殺します。もう消えてるのにまだ擦られてるからです。
ポチタは殺します。丸いからです。
そして、チェンソーマンは殺します。
理由はわかりません。マキマがそう言ってるからです。
最後になりますが、私はこれを読まされています。
私に意思はありません。
さっきの発言も全部マキマに言わされています。
ちなみにこの映像も、もう既にマキマが見ています。
見ているというか、最初から最後まで全部マキマです。
私もマキマです。
あなたもたぶんマキマです。
それが理想の世界らしいです。
それでは以上、殺し合いの島からお伝えしました。
ごきげんよう。さようなら。
────プツンッ。
◆
東京都連続爆破殺傷事件から、まだ数日も経っていない。
上司の清宮が呪文のように唱えるまでもなく、警察という組織が休日を返上した馬車馬の集まりであることは理解しているつもりだ。
だが、こればかりは職務の範疇を逸脱している。
法外な時間外労働。あるいは、質の悪い悪夢だ。
俺は『類家』の名が刻まれた警察手帳を差し出し、眼前の女を一時的に繋ぎ止めた。
「ひっ、……あ、ぅ。る、類家、さん……。あ、あの、えっと、ごめんなさい、私、私は……その、怪しい者じゃ──」
「あー大丈夫ですよ、東山コベニさん……ですよね? 公安大麻特異課……と」
「は、はいぃっ! す、すみません! さっき……さっき言ったのに、私、また、同じことを……! ああぁ、もう、なんでいつもこうなんだろ…………」
東山コベニ。
先程から挙動のすべてがぎこちない。
怯えた小動物というよりは、踏み潰されるのを待っている虫のような危うさがある。──一応は、同業者。
「……それで、えっと」
「ヒッ!! …………あー、ぁ、あの………………その、」
「…………」
舞台は、夜の校庭に至る。
ラガーマンの涙も野球坊主の汗も亡霊同然、そんな砂漠のど真ん中にて、俺は自称・公安の彼女と対峙していた。
東山は先ほど「また同じことを」と吐いたが、文字通りだ。
一連の会話は、出会った瞬間からイカれたファミコンのように、同じ場所を空転し続けている。
すなわちこうだ。
俺が彼女に見切りをつけ、この場を去ろうとすると、東山は何が未練たらしいのか、死神に憑かれたかのような足取りで執拗についてくる。
そして、何かを言いかけては、また喉の奥で言葉を押し殺す。
意図は不明。情緒は崩落寸前の斜面より不安定。
自分のネクタイへ縋るように指先をモジモジと動かす彼女。──その様子を見て「俺を誘っているのか?」などという、三流週刊誌の人生相談にも載らないような自負が、一瞬だけ脳裏を過った。
もちろん、俺の異性に対する期待値が上昇したわけではない。
だが、ふと訪れた直感に従い、あえてこの無意味な対話を延命させることにした。
「……そうですね……。東山さん、趣味とかってありますか?」
「え、しゅ、趣味……?! 趣味って……あの、あの、えっと…………食べるコト…………かな」
「あー食べること?」
「は、はい……。あ、でも、あの、高いお店とかじゃなくて……。……ファ、ファミリーバーガー、とか……」
「ファミリーバーガー」
「あそこの、その……『ファミリー!』って掛け声、あるじゃないですか。店員さんが、みんなで、無理やり笑って……」
「……あー、まぁあるとして。……それで?」
「はいぃ……。あれ、見てると……『ああ、みんな苦しいんだな』って、なんだか、安心、するんです……。私だけじゃないんだ、みんな、嫌なのに笑って、働いてるんだ、って……。──」
「──……ヒッ、ご、ごめんなさい! 今の、性格悪いですよね!? 死にます、今すぐ舌を噛んで……!」
「いや、死ななくていいですよ。……それで、そこでは何がおすすめなんですか?」
「え……ええっ!? お、おすすめ、ですか……? あの、えっと……照り焼き……あ、でも、セットにすると高くなっちゃうから、単品で……。……でも、あの……」
「ええ、はい」
不毛な会話、と笑えばいいと思う。
否定はしない。確かに毛一本どころか頭の螺子が抜けまくった会話だ。
ただ、それでも今はこの会話に意味はある。
「……あそこのバーガー、たまに……『死の味』がする時があるんです」
「死の味?」
正直、『公安大麻特異課』だとか、聞いたこともない部署名に、俺の脳は反射的に偽名を疑った。
プロファイリングの回路を回そうともした。
だが、俺はすぐに無意味だと切り捨てる。
彼女の提示した手帳がどれほど胡散臭くても、その口から漏れる説明がどれほど論理を拒絶していても、今この場でその正体を暴くことにリソースを割く必要はない。
「はい……。隣で、誰かが殺されてるのに、それでも食べなきゃいけないような……そんな、油っぽくて、喉が焼けるみたいな味……」
「殺される……ですか」
「……私、その味に、すごく……慣れてる気がして……」
「……」
「あ、あ……すみません、おかしい……ですよね。……すみません」
「いえ。別に私は気にしませんから」
一見して人畜無害。
いや、むしろ勝手に自壊し、勝手に自らの首を絞めて果てそうなこの女を、今は紐解くわけにはいかない。
「……あー、でも。少しだけ、気になったところがあるんですが。よろしいですか? ……こんなこと、初対面の人に聞くのもどうかとは思うんですけども」
「うぇ……。あ、は、はい……ど、どうぞ……っ──」
いや、正確には。
「東山さん。あなた、普段はそんなに長々と喋るタイプじゃないでしょ?」
「え」
物理的に紐解くべき『物』が目の前にはあった。
「なんだろうな、直感ですよ。私、つい最近、とんでもない人間を取り調べましてね。……だから、そいつと同じ『匂い』というか。いや、気色の悪い話なのは百も承知ですが、漂っていたんですよ。さっきから、あなたから」
「……え」
「話してみて、確信に変わりました。正直、会話の内容なんてどうでもよかった。……いいですか、東山さん」
「……な、なにを、ですか……っ」
「長々と、私をこの場に留めておかなきゃいけない『何か』──。あなたは今、それをさせられている。違いますか?──」
「──……もっと端的に言えば、それは『爆弾』か何か……とか」
「………………………」
東山の顔から、一切の血の気が失せた。
彼女からの言葉は返ってこない。
当然だ。
彼女は何もかもを諦めたような手つきで、おもむろにシャツのボタンを解いていく。
露わになった白い肌。そこには羞恥も、異性を意識した熱も介在していない。
「……あの、類家……さっ…………、っ……! ……っ、……」
「…………」
────『この会話はマキマに聞かれている』────。
彼女の胸部に、無慈悲に巻き付けられた時限爆弾。
液晶が刻む残り時間と、ボードに書き殴られた歪な筆跡。
それらが突きつける事実はあまりに簡潔で、そもそも彼女の表情を読み取る必要すらなかったのだ。
「そ、それで……うぇっ…………、っ……ひぐっ、……うぅ……! ファミリー……バーガーは……、スマイル……くださいって、言えば、無料でぇ……ひぐっ…………」
………
……
…
◆
『冤罪』……。
ふふ、君は面白いことを言うね。
「どうせ疑われるなら、自分がやっておけばよかった」
……いいよ、その考え。私は全面的に肯定してあげる。
だってさ、この世界はとっくの昔に色を失った古い映画のようなものだもの。
白か、黒か。
世界はたった二色でしか物事を測れない。
目だってそうだよ。 白目と黒目しかない。
人間は灰色を理解したがるくせに、結局視界は全部、都合のいい黒に塗り潰して安心したがる。
その中間なんて、最初から誰も見てない。
だったら、最初から『黒』になった方が、合理的じゃない? ってさ。
私は一個人としてそう思うな。
これはほんの昔話。
「自分たちは必要悪だ」なんて嘯いて、自分たちを正当化しようとしていた……どこかのヤクザさんたちに会ったの。
かわいいよね。真っ黒なくせして今さら純白アピールだよ。スーツも黒いくせにね。
──悪いけれど。
──チェンソーマンが生きる世界に、『二色以外』は必要ないの。
どっちつかずなんて嫌い。
『引き分け』なんて、もっと嫌い。
だから今回は、延長戦なしでお願いね。
「ね、タゴちゃん」
【マキマ@チェンソーマン】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:支配。
1:スズキタゴサクという爆弾を飼い慣らす。
2:……あ、爆弾の悪魔っていたね。たくさんインフラ設備に迷惑かけてたな、あの個体。
2:全ての駒を盤上に揃え、等しく『支配』下に置く。
3:大丈夫。全部、私がいいようにしてあげるから。
【スズキタゴサク@爆弾(映画)】
[状態]:健康、催眠術にかけられている(自称)
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:えー、あのですね。私はただの善良な市民です。
1:マキマを利用。
2:コベニ型爆弾で、外野の出方を伺う。
3:類家さん。今度は、どちらが先に『正解』に辿り着けるか勝負しましょう。
【東山コベニ@チェンソーマン】
[状態]:胸部に時限爆弾装着、重度のパニック・過呼吸
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:私は関係ない私は関係ない私は関係ない私は関係ない私は関係ない……。
1:……助けて、だれか……おねがい……。
2:死にたくない、でも、生きていても良いことなんて一つもなかった……。
【類家@爆弾(映画)】
[状態]:健康、極度の疲労と冷徹な思考
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:スズキタゴサクを再逮捕。
1:東山コベニの保護。
2:および彼女の「主」であるマキマのプロファイリング。
最終更新:2026年06月11日 18:20