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『Devilman』


(キャラ)ロイ・マスタング、堕天使エルギオス、ダンテ




 “昨日、どんな夢を見た?”。
会話が途切れた時、決まって誰かが口にする他愛のない質問。
私はその問いにだけは、生涯ただの一度も真実を答えたことはない。

部下相手なら尚更だ。
「軍の女性隊員全員がミニスカートを着用する夢だよ。私の理想がついに軍上層部に採用されたらしい。……素晴らしいと思わないかね?」
そんな冗談を飛ばせば、大抵は笑って話が終わる。

中尉に聞かれた時も同じようなものだ。
さすがに彼女相手に女性絡みの軽口は危険すぎる。だから私は、肩を竦めてみせる。
「君が素晴らしい紅茶を淹れてくれてね。何の邪魔も入らず、二人でそれを楽しむわけさ」
返ってくるのは冷ややかな溜息だ。
無論、誰が聞いても分かる、安っぽい嘘。
彼女もそれ以上は踏み込んでこない。それでいい。

鋼の少年に聞かれた時は、さらに容易い。
「夢など見ないさ。この階級まで来るとね。眠っている間まで油断大敵、それが『成長』というわけだよ。フフ……」
クソ食らえ、と吐き捨てて出ていく背中を見送れば、それで終わりだ。

話せないのではない。
話す必要がないだけだ。
少なくとも、私はそう自分に言い聞かせていた。



……私は、あの時、夢を見た。
書類の山に埋もれたまま、ほんの数分、疲労に負けて意識が沈んだ。
気が緩んでいたのだ。
汗で湿った私は、あろうことか、その内容を目覚めざまに口にしてしまった。
マース・ヒューズ。ただ一人、あの男にだけ。



…………今まで見た同じ夢とは違う。
あれは、『もう一人の私』を、遠くからただ眺めているような、そんな感覚の夢だった。


………
……





 どしゃ降りの夜。
燃え絶えた炎の残滓だけが、微かに燻っている。
濡れた壁にもたれかかった私の身体は、とうに感覚の大半を失っていた。

天からの柔い雨礫が、私の額を叩く。
発火布の手袋を濡らし、泥にまみれた大佐の階級章を濡らす。
光を失いかけた私の顔をも。すべてを冷たく塗り潰していく。

口を開けば容赦なく雨水が入り込むが、咳き込むことすら今の私には叶わない。
指一本動かす力すら残っておらず、ただ、肺を小さく上下させるだけで精一杯だ。
……もっとも、今さら痛みを訴えたところで、何が変わるわけでもない。

私の髪を鷲掴みにし、宙へと吊り上げる──目の前の『彼』。
彼が湛える、怒りとも殺意とも、あるいは寄る辺なき哀れみともとれる眼に、私はただ、視線を合わせることしかできなかった。


「最期に問おう、焔の使い手よ。……お前たち汚らわしき人間の『感情』とは、一体何なのだ」

「……、…………」

「無論、答えによってお前の運命は変わるわけではない。……だが、お前は私に抗った。私がこれまで見てきた人間の中でも、特異な存在だ。ゆえに聞こう。──」

「──『人間の感情』とはなんだ」

「…………。……、……感……情、か……」


 答えにくい質問ではない。この期に及んで言葉を厳選しているわけでもない。
そして、瀕死だから声が出ないわけでもない。
それでも私は、彼から投げつけられたその問いにだけは、即答することができなかった。

彼の禍々しく変貌した緑の腕に、何粒も何粒も。
静かに雨が打ち付け、弾けていく。


「差異が、……あると言いたい……わけだな。…………私たち……人間と、……君と……で」

「……答えろ」


 ──別に、彼と私の間に何か特別な因縁があったわけではない。
互いを理解し合うほど長い時間を共有した覚えもなかった。

 まだ空から雨が落ちてくる前、私は一通り手紙を書き終えてから、息抜きに街へ出た。そこで偶然出会った、それだけの関係だ。
挨拶代わりなんてものじゃない。あれは取り繕う余裕もなかった。
目が合うや否や、彼は静かに──『堕天使エルギオス』と名乗り、
私は彼の、『人間には存在し得ない威容』を見て、一瞬、顔に出るほどに狼狽えた。
……私のあの軽率な反応がトリガーだったとは言わない。
ただ、あの瞬間の、人間としての本能的な怯え一つで、もう何もかも、この末路は決定づけられていたのかもしれない。

結論から言う。
彼は、──エルギオスは『殲滅』を望む側の存在だった。
私の思想と完全に正反対だったわけではないが、戦闘が始まることに理由などなかった。

エルギオスの漆黒の羽から、無数に飛び交う容赦のない真空の刃。
その昏い瞳が冷たく揺らいだかと思えば、世界を白く染め上げる──『マダンテ』という光。
当然、私も無様に無抵抗でいたわけではない。必死に抗った。
大義名分などない。死にたくなかっただけだ。
指を鳴らし、爆炎の壁を築いて目眩ましを試みたが、──その瞬間、一粒の雨が私の首筋に落ちる。


……エルギオスが吐き散らした炎は、雨程度で消えるような代物ではなかった。



「………………人間の感情は、……器だ」

「器、だと? ……つまりは何を言いたい」

「……………」


 すべてが決着した今もなお、私を吊り上げる彼の呼気からは、世界を灼くほどの熱さが消えない。
限界を迎えた私は、もう彼の瞳を捉えることすらできず。
気がつけばその牙の先だけをただ呆然と見つめていて、私は口を開いた。


「……余裕があれば……人に優しくする。……なければ、理不尽に当たり散らす。──」

「──……金でもいい。地位でも、時間でも。…………その時々で注がれる……『余裕』という名の液体次第で……、中身などコロコロと……変わる………」

「……」

「器とは……言ったがね、……中身がなければ実体すら……ない。…………ただの空っぽで、透明な容器。……それが人間の感情の…………正体さ」

「…………以上が、お前という男の答えか」

「……私からは言えることは、……もう……ない」

「……………」


 再び、沈黙が落ちる。
世界を塗り潰すような激しい雨音だけが、絶え間なく続いていた。
鬱陶しいほどに。皮肉なほどに。
まるで、「お前は本気ではなかった。雨のせいで本領を発揮できなかっただけだ」。
──そう言い訳を用意してくれているようで、私はその雨がたまらなく嫌悪おしかった。


「…………器、か」


ふと、彼の声色が変わったような気がした。
雨音がさらに激しさを増したため、私の単なる思い込みなのかもしれない。
エルギオスは、天気模様も気にせず言葉を続ける。


「私たちの種族は違う。感情は器など何など比喩で語るものではなく、それ自体が気高く独立した概念。それ以外の在り方など、考えもしなかった」

「…………、……」

「種族の壁など関係ない。互いが幸せになれる対話をし、信じ合い、どれほど理不尽な悪意をぶつけられようとも、ただ深く包み込む。──」

「──誰もが不幸にならない選択をし、行動することだけが、感情の気高き表れだと信じて疑わなかった。──」

「──それはかつての私も、あのナザム村の者共も。──」


「──……そして、ラテーネも」



……もう、冷たいだけだった。
激しく降り続けているはずなのに、あれほど忌々しかった雨音は、もう私の鼓膜を震わせない。
だからこそ、はっきりと。
『ラテーネ』と口にした瞬間、エルギオスの明らかな変質を、私は認識できた。


「その捉え方の違いが、私の甘さだったのだろう。……人間共は、私の考えを理想郷だと、甘い幻想だと嘲笑う。──」

「──……その理想にこそ至高の可能性があり、……何より現実を見据えていないのが自分たちと知らずにな」

「……冷笑を浮かべることが……『大人』になることだと……信じ切っているのさ……。…………人間は……」

「ああ。理解し合えると信じた私が、徹底的に愚かだったのだ」


そしてまた、一粒の雨が、私の喉奥を無意味に潤した。
──『イシュヴァールの英雄』、その金紋の階級章と共に。


 ──ポツン、
 、──
 ────ポツン、


「…………」


 …………エルギオス。
確たる証拠があるわけではない。
ただ、私の拙い視点からすれば、彼は賢者の石錬成実験の失敗作。──『ホムンクルス』か、それに類する異形の種に思えた。
彼の語った言葉に、どれほどの過去があったかは想像すらも冒涜となる。
私もイシュヴァール殲滅戦を生き抜き、人間の残酷さや醜さを知っている身だ。
……同調ではないが、このまま大人しく怒りに処されることも、因果応報という意味では一つの流儀だったのかもしれない。

しかし、どれほど悲痛な過去が彼にあろうとも、私は最後まで泥に塗れて抵抗しなければならなかった。
雨が降り注ぎ、発火布が湿り果てようとも、この火花で奴を容赦なく焼き尽くさねばならなかった。
今、私の目の前で、無関係な民や、私の大切な部下たちの命を脅かす存在があるならば、抹消しなくてはならない。
それが私。それが積み重なった大佐という階級の重みだからだ。


私は過去に囚われ生き続けている。
眠る時に見る夢だって、あの頃から何も変わりはしない。
手足を失った自治区住民たちが、顔を歪めながら私を力なく噛み、「許さない」と繰り返す悪夢。
……ヒューズが消えてからは顕著だ。
アイツは、眼鏡も片腕も失くし、群衆に紛れて私の服を力なく噛みついてくる。
真っ暗闇の過去に、寝ても起きても私はずっと歩まされている現状だ。


エルギオスは、軍人としての立場上、断固として駆逐すべき対象であることに疑いはない。
それでも、ふとその過去を思い起こした時、


──私は、この戦地に赴いた当初、中尉や部下たちに向けて『遺書』を送っていたものだった。



「話過ぎたな。私としたことが、……たかが人間などと」

「……すまない…………」

「いいや、お前が謝る必要はない。──」


「──……雨だけは、昔から嫌いではなかったのだ。私は……」

「…………」



……ほんの、十数分前の過去だ。
『一通り手紙』とは。



「すまな……かった……」

「………………。──」

「──雨音を聴きながら眠りに就く。あの心地よさだけは、どのような種族であろうとも共通のはずなのだがな…………」



今際。
私は目を閉じなかった。

厳密には、一度瞼を閉じてから、改めて。
もう一度、目を開いた────。





「雨音? 冗談キツイぜ。あんなモン聴いて寝れっのはLo-fi大好きなバカ女ぐらいだろ」

「…………ぁ……」 「……」


「おいおい、雨だからってどいつもこいつもジメジメしたおセンチな会話か?」



 ────ポツン。


 ──次に私の視界に飛び込んできたのは、エルギオスの禍々しい顔ではなかった。
少し離れた路地、寂れた店の扉の前に、傘を差した男が一人。
まるで散歩の途中にでも割り込むかのように、フラリと踊り出てきたのだ。


「うわ、寒っ。こりゃシャワーってレベルじゃねえな。雨天決行の仕事なんてやってらんねぇぞ、おい……」

「…………おい──」

「あーストップ。今は俺のターンだ」

「……」 「…………」


異様な目を引く白髪に、鮮烈な赤のコート。
土草の湿る匂いが、妙にマッチする印象を私は受ける。
片手に持ったピザを、少し退屈そうに口へ入れたその男は、


「まぁよ。おたくらがなに痴話喧嘩してんのか、理由なんざ知らねぇけど。……ソイツは大事なお客さんだ。ちょっと、俺と二人きりにさせてくんねぇか?」

「……何だ。焔使い、お前の知り合いか」

「…………い、いや。私……は、……」

「あ? 勘違いすんなよ。その借りてきた猫みてぇな無能に用はねえ。──」


「──そっちの悪魔、お前に用がある。ハエにしちゃあ随分と立派な羽をお持ちのようだ」



傘を水たまりに捨て、エルギオスへ二丁──銃口を突きつけた。


………
……




 あれからあの二人がどうなったのか、私には知る由もない。
あの白髪の男が一体何者で、エルギオスに何の用があったのかも。
……一人、ホテルで雨宿りをする今となっては、関係のない話だ。


「…………。……雨天決行、か。──」

「──…………あいにく、私も雨は嫌いなのだがな。……雨は」


温かいコーヒーを口に含み、深く一息を吐き出す。
柔らかなベッドに深く腰を沈め、私はただ、容赦なく濡れていく窓ガラスを眺めていた。
浴室に干した、乾きかけの軍服の匂いが、微かに部屋へ漂ってくるのをただ待つだけの、無為な時間。


「…………」



……身体の芯には、確実に泥のような疲労がこびりついている。
だが、どうにも眠る気だけが起きない。
夢が怖いのではない。
ただ、今は出会いたくないだけだ。



“昨日、どんな夢を見た?”。


 ──ポツン、

 ────ポツン…………、


「……」



私の『現実』の話は以上だ。
……夢の話は、また別の機会にしよう。




【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師】
[状態]:眠気(大)、全身打撲、火傷(軽)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:……人間は愚かだ。愚かで、醜く、どうしようもなく俗な生き物だ。だからこそ、その責任は私たち人間自身が負わねばならない。
1:雨が止むのを待つ。
2:……手紙でも、書くか。


【堕天使エルギオス@ドラゴンクエストIX 星空の守り人】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:人間共を滅ぼす。その結論に変わりはない。
1:目の前の白髪男と対峙。
2:……人間ではないな。
3:人間は言葉を持つ。ならば神の最大の罪とは、言葉に悪意を宿すことを許したことではないのか。

【ダンテ@Devil May Cry 3】
[状態]:健康
[装備]:大剣「リベリオン」、二丁拳銃「エボニー&アイボリー」
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:ゲームはブッ壊すためにある。
1:ジャンジャカ銃撃つだけじゃあ猿にだってできる。……たまにはオハナシで解決っつうのも悪くはねぇだろ?
2:……まぁ、話せば話すほど相手をキレさせるのが俺なんだけどな。
3:とりあえずストロベリーサンデー奢れよな? ──堕天使の旦那。






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最終更新:2026年06月23日 20:42