『殺し合いではありふれた悲劇』
(キャラ)南雲ハジメ、ユエ、香風智乃
「まさかこんなに早く合流出来るとはな」
「んっ!私とハジメは運が良い!」
――殺し合いが始まってすぐに、俺はユエと合流出来た。
命の授業だかなんだか知らないが、俺はユエを殺される気がない。もちろん俺自身も死ぬ気はないが。
――『人は命に感謝しません。……何故でしょう? それは、皆さん、“明日も生きている”と、何の疑いもなく信じているからです』
あの女教師の言葉が脳裏を過ぎる。
たしかにそういう人間も見てきた。だがそうじゃない奴らも俺は知ってる。――なにより、俺自身もそんなことを信じていない。
―『事故、災害、あるいは殺人。……そういった、ある日突然訪れる予期せぬ死を、皆さんは心のどこかで“自分には関係のない、遠い世界の出来事”だと考えている』
――ふざけるな。
俺をわざわざ呼びつけておいて、その台詞か。まるでからかってるとしか思えねえな。
俺は予期せぬ死を味わいかけた。あの苦しみを、俺が忘れることはない。それなのに自分には関係ない、だと?笑えないジョークだな。
――『人は恐怖によってしか、命の価値を理解できません』
それも詭弁だな。恐怖以外でも、命の価値を理解することは出来る。――もちろん恐怖を味わえば否が応でも命の価値とやらは理解することになるが。
――『ですから私は、身勝手で愚かな皆さんへ、これ以上ない特別な“命の授業”を行うことにしました』
──【BATTLE ROYAL】。
『起こしてみませんか。この閉ざされた島で、誰一人として逃れることのできない──“死因百パーセントの予期せぬ死”を』
身勝手なのはお前だろ、女教師。何が命の授業だ、誰もそんなことは望んでいないんだが。予期せぬ死だかなんだか知らないが――その鉛玉を撃ち込まれるのはお前だ。
とりあえず俺はユエと合流する前、支給品を確認していた。
そこには見慣れた銃が入ってる。ドンナーだ。シュラークはなかったが、まあいい。そして錬成術はあまり使えなくなってる。制限、とでもいったところか。神代魔法もだ。
だが俺にはまだスキルがあるし、なによりドンナーがあるなら十分に戦える。
それに幸いにもユエと合流出来た。このふざけた授業をぶっ潰す準備は整ったということだ。
「よし、さっさとこのふざけた授業を終わらせるぞ。ユエ」
「んっ!こんな授業、ハジメとなら――」
――ズガン。
――ドサリ。
「かっ、は――」
「……は?」
たった今。
「どうしたんだよ、ユエ」
俺の目の前で。
「ごめん……ハジメ……」
ユエは血溜まりの中に沈んでいた。
◯
「はぁ、はぁ、はぁ……」
対物スナイパーライフル――シュラーゲンを必死に持ち抱えながら、冷や汗を垂れ流す少女が居た。
彼女の名は、チノ。殺し合いに巻き込まれた、哀れな木組みの街の住人。
命の授業、だとか。そういう女教師の言葉の意味はほとんどわからなかった。理解出来なかった。
だが、しかし。
これが殺し合いだということは、理解出来てしまって。
こんな理不尽な殺し合いに納得出来ないと思いつつ、優勝しなければ生還出来ない。
他人を殺してまで叶えたい願いがあるわけじゃない。しかし、こんな場所で死にたくない。
ゆえにチノは慣れない手付きでシュラーゲンを構え、ユエを撃ったのだ。
生き残るために。ただ、生きてココアたちが待ってる木組みの街に帰るために。
人を殺すことには強い嫌悪感がある。殺人なんてダメだとわかってる。
それでも。
この殺し合いから逃れるには、それしかなくて。
チノは無力な少女ゆえに主催者に反逆するなんて考えも及ばなく。
だからこそチノは他人を殺すしかなかった。
物陰からユエを狙い、シュラーゲンを発射したのだ。
次いで、白髪の眼帯男性――ハジメだ。
彼を殺す必要が――必要が――。
「ぉ、ゔぉぇぇ」
血の海に沈むユエの亡骸を見て、チノは少しだけ嘔吐してしまった。
それは単純にグロテスクな絵面だからじゃない。少女を――他人を殺したことに対する罪悪感が込み上げて。
気付いたらその場で吐いていた。
しかしそれでも必死にシュラーゲンを構える。
外すわけにはいかない。もう一人も殺さなければいけない。
わかっているのに、手が震えて銃口がブレる。
「私は……私はこんなことをして、正しいのでしょうか……」
絞り出すような、苦々しい声。
罪を犯した自覚があるからこそ、自分の行動を正当化出来ずに悩む。
腕でなく、全身が震える。果たして自分は正しかったのか、と。
「こんなところをココアさんに……みんなに見られたら、私は……」
脳裏に思い浮かべるのはココアをはじめとした友達。
彼女達が今のチノを見たら、なんと思うだろうか。
「私は……たとえ優勝出来たとして、木組みの街で普段通り振る舞えるのでしょうか……」
人を何人も殺めたのちに。
木組みの街に帰還したとして。
その時のチノは、今までのように振る舞えるのだろうか。そもそもみんなと関わる資格があるのだろうか。
そんなことを考えながら、嘔吐から立ち直り戦場を眺めたら――ハジメが消えていた。
そして一歩、一歩とこちらに向かってくる音が聞こえてくる。
その方角を見れば――南雲ハジメが居た。
「そんな、どうして……!?」
チノが吐いてる隙にその音から場所を察知し、空力でハジメが一気に接近したことをチノは知らない。
ゆえにあまりにも急展開過ぎて、困惑する。焦燥を隠せない。
「ユエを殺したのはお前か」
チノに向けられたのは、紛うことなき純粋な憎悪だ。
ユエが一撃で殺されたのもシュラーゲンなら納得いく。聖絶についても錬成のように“制限”されたのだろう。そんなユエの矮躯にシュラーゲンを撃ち込まれたら、当然死ぬ。
そしてチノは次なる標的――ハジメを狙おうとしていた。
これはもう、クロだ。
ゆえにハジメはドスを効かせ、チノに声を掛けたのだ。
そして迷わずドンナーの銃口をチノに向けた。
「ま、待ってください!私が元の場所に帰るには——」
ドン!
——ドンナーが、チノのか細い右腕の一部を吹っ飛ばした。
「きゃあああああ——!」
肘から先には何もなくなり、血飛沫を撒き散らしながらチノは絶叫する。
もう彼女の右腕の一部が復活することはないだろう。奇跡でも起きなければ。
ばくん、ばくん、ばくん——。
絶体絶命の状況に瀕して更に高鳴るチノの心臓の鼓動。
痛みが、絶望が、恐怖が、チノを支配する。
特に痛みが強い。あまりもの痛みに、頭が真っ白になりそうだがその痛みゆえに気絶なんて逃避も許されず。
「元の場所に戻りたかったのはユエも同じだ。それなのにお前は——ユエの命を奪い去った!」
ハジメとユエは特別な関係だ。
互いに互いを大切に想っていた。
だからこんなことになれば、ハジメは怒りを。憎悪を抑える気にもならない。
それに元の場所に帰りたかったのは。生き残りたかったのはユエも同じ。
だからチノの言い訳など、聞く価値もない。
「それはわかりま——ぁ、あああああああ——!」
——ズガン!
今度はチノの右足をドンナーで消し飛ばした。
右足の一部を失い、普通に立てなくなったチノが絶叫しながら無様に倒れる。
愛らしいその表情は、泥に塗れた。
だがそんなことでハジメの復讐劇は終わらない。終わってなるものか。
この程度では、ユエの無念は何一つ晴らせない
「私は……私はやっぱり間違えていたのでしょうか……」
誰かに問いかけたわけでもなく。
自然と、チノの口から言葉が溢れる。
しかしそれを答える者は、今ここにいた。
「そうだ。下らない命の授業に踊らされた時点で——お前は間違ってる」
——ズガン!
「きゃああああ——!」
今度は左足がドンナーで消し飛ばされる。
相手が幼く見える少女だろうと関係ない。ユエを卑劣な手段で殺した時点で、復讐対象になる。——南雲ハジメとはそういう男で。
人間の醜さをよく知るハジメは、チノの悪どい行為により、人間が醜い存在だということを思い出した。
もちろん、人間全員が愚かな存在だとは言わない。
だがしかし。そういう人間がいることを、ハジメはよく知っている。
そして。生き残るためだろうがなんだろうが。どんな言い訳をしようがチノの殺人罪は間違いなくて。
ゆえにハジメは、引き金に手をかけることに何ら躊躇しない。チノを断罪することに迷いもない。
所詮は私怨——そう思われてもいい。今のハジメにはもう他者と協力して殺し合いを打破する気はない。
人間は醜い。
全員が全員そうだとは言わないが、それでも。
眼前の少女は。——ユエを殺したコイツに生きる資格はない。
「お前はユエを殺した。だからここで死ぬ」
「ごめんなさい……。私はたしかに間違って——」
——ズガン
左腕が消し飛び、チノが芋虫のようになる。
「今更、何を言っても。何をしても遅ぇんだよ」
チノが何をしようが、何を言おうが。
彼女が奪った命は、ユエは。もう返ってこないのだから。
(——ああ。私はここで、死ぬんですね……)
打つ手がなくなったチノは、漠然的にそんなことを考える。
これはもうどうしようもない。詰みだ。
しかしそれは当然の結果でもある。他人の命を奪う罪人は、裁かれるべきなのだから。
(また木組みの街で楽しい日々を過ごしかったですが……私は最悪のやり方をとってしまいました。……ごめんなさい、ココアさん)
脳裏に思い浮かべるのは自称姉の姿。
いつも元気で明るいムードメーカー。チノを明るく照らしてくれる存在。チノが精神的に成長するキッカケ。
そしてチノにとって大切な——お姉ちゃん。
そうしている間にもハジメは手早くドンナーを構える。
狙うは胴体。ユエと同じように、血の海に沈める。
ヘッドショットで一瞬で楽にする、なんてことはしてやらない。
——それを外道と呼ぶなら、勝手にするがいい。
これがこの“命の授業”に巻き込まれ、人間の醜さを思い出したハジメの選択なのだから。
それにユエを不意打ちで殺した外道にゲスなことをして、何が悪い。
ハジメがトリガーを引くのが、やけにスローモーションに見えて。
その間にチノは言葉を紡ぐ。
「さようなら……」
——もう私は、ここで終わりですから。
だから最期に。本当に最期の瞬間だから、悔いを残したくなくて。
「ココア……お姉ちゃん」
だから、もうこの際、認めます。
ココアさんはお姉ちゃんのような存在でした。私の立派な姉です。
だからこそ——
「私が死んでも——ココアさんは、木組みの街で楽しく暮らしてくださいね」
最期に、これはただのワガママですが——
「そしてたまに、私が居たことを思い出してくれると、嬉しいです」
——ハジメがドンナーを射出した。
チノの土手っ腹に、大穴が空く。
ぜぇ、ぜぇ……。
息絶え絶えの中、それでもチノは生きていた。
いや。生かされた、というべきか。
殺人犯の苦悶の顔を拝もうと、ハジメが歩を進める。
しかしチノはそんなこと気にせず。
激痛の中でも、ココアという眩い太陽に照らされながら。
「——さようなら、私のお姉ちゃん」
ただそれだけ告げて。
色々と後悔したし、罪の意識に苛まれたけど。
最期にココアに救われて、チノは瞳を閉じた。
そのあまりにも安らかな死に様は、ハジメの怒りを煽るだけだった。
「……ふざ、けるなよっ」
ユエは無念を抱いて死んだのに。
どうして殺人犯はこんな安らかな表情で死んでいる。
あまりにも理不尽な光景に、ハジメは地面に拳を叩き付けた。
——当然、そんなことをしても何か起こるわけでもなく。
結果的に南雲ハジメは命の授業を真面目に受けるしかなくなった。
優勝してユエを生き返らせるしか、道はなくなった。
南雲ハジメは修羅と化す。
ユエや仲間たちのおかげで成長した彼はもういない。
白崎香織のよく知る、優しい南雲ハジメも——もう居ない。
——そこに居るのは、たった一人の修羅だった
【ユエ@ありふれた職業で世界最強 死亡確認】
【香風智乃@ご注文はうさぎですか? 死亡確認】
【南雲ハジメ@ありふれた職業で世界最強】
[状態]:健康、怒り、憎しみ、やり切れない気持ち、人間不信
[装備]:ドンナー@ありふれた職業で世界最強、シュラーゲン@ありふれた職業で世界最強
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2、香風智乃の支給品×0~2
[思考]:優勝してユエを生き返らせる
1:主催者も殺す。何が命の授業だ、ふざけるな
2:どうしてユエを殺した奴があんな清々しい表情で死んだんだ
3:ユエ……。お前のためなら俺は修羅になる
[備考]
※参戦時期はアニメ化or漫画化されてる範疇までなら基本どこでも
※詳細な制限については採用された際に後続の書き手さんにお任せします。少なくとも錬成術と神代魔法については制限されてます
『支給品紹介』
【ドンナー@ありふれた職業で世界最強】
南雲ハジメに支給。ハジメがメインで使用するリボルバー型レールガン。銃口に纏雷を纏わせレールガン化して音速で弾を撃てる。ゴム弾に変える事もある。
【シュラーゲン@ありふれた職業で世界最強】
香風智乃に支給。ユエと出会って以降に作成した対物スナイパーライフル。貫通力に秀でており、さらには大型化しているため竜であろうと貫通する。
最終更新:2026年06月28日 14:47