『Re:Re:Re:Re:Re:Re:』
(キャラ)二階堂ヒロ、ナツキ・スバル
「――【戻った】、ということか……」
喉の奥からこぼれた声は、ひどく乾いていた。
「それなら、はじめから、やり直さないと」
二階堂ヒロは目を覚ました。
まぶたを開いた瞬間、視界に飛び込んできたのは、見覚えのある天井だった。
鼻につく空気の匂いも、肌にまとわりつく不快な緊張も、すべて覚えている。
ここは、始まりの場所だ。
ヒロは、バトルロワイアルと呼ばれる殺し合いに巻き込まれた。
理不尽に集められた参加者たち。
殺し合いを強要する主催者。
生き残るためという名目で、他者を蹴落とすことを当然とする空気。
そのすべてに対して、ヒロの胸にあった思いは一つだった。
――正しくない。
殺し合いを強要する、このバトルロワイアルも。
競争させられるまま、人を殺そうとする参加者も。
誰かの命を踏み台にしなければ進めないという仕組みも。
すべてが、正しくない。
二階堂ヒロという少女は、常に『正しさ』を追い求めている。
すべての判断基準はそこにあり、悪人のいない、きれいな世界を求めていた。
だからこそ、ヒロは抗おうとした。
ただ生き延びるためではない。
この正しくない殺し合いを、根本から正すために。
その途中で、彼女はナツキ・スバルという少年と出会った。
騒がしく、無鉄砲で、どこか危うい少年だった。
見ていられないほど不器用で、何度も無謀な行動を取った。
それでも、その瞳だけは妙に真っ直ぐだった。
彼の行動には、打算だけでは説明できない必死さがあった。
ヒロは、彼と行動を共にすることになった。
それから、彼と共にいくつもの困難を乗り越えた。
炎を操る少女と出会った。
剣を振るう少年と出会った。
異能を持つ者、怪物と呼ばれる者、探偵を名乗る者、ヒーローを名乗る者とも出会った。
本来なら交わるはずのない世界の住人たちが、一つの盤上に押し込められていた。
誰もが、自分の正しさを語った。
誰もが、誰かを守ろうとしていた。
それなのに、傷つく者は増えていった。
何人もの人間と出会い、何人もの人間と別れた。
何度も襲撃され、そのたびに生き延びてきた。
助けられたこともあった。
助けられなかったこともあった。
ヒロは、そのたびにスバルと衝突した。
スバルは必死だった。
ヒロもまた、必死だった。
きっと、目指していたものは同じだったはずだ。
誰も死なせたくない。
この殺し合いを壊したい。
けれど、二人の間には決定的な違いがあった。
スバルは、間違ってでも誰かを救おうとした。
ヒロは、間違った方法で救われることを認められなかった。
そして最後に、二人は決裂した。
その場には、瀕死の参加者がいた。
主催者に繋がるかもしれない情報を握った人物でもあった。
だが同時に、その人物は直前まで別の参加者を殺そうとしていた危険人物でもあった。
ヒロは、裁くべきだと主張した。
スバルは、今は治療して話を聞くべきだと叫んだ。
周囲では戦闘が続いていた。
異能が飛び交い、建物が崩れ、悲鳴が重なった。
判断を誤れば、さらに多くの人間が死ぬ。
ヒロは動いた。
危険人物を止めるために。
スバルも動いた。
ヒロを止めるために。
次の瞬間、ヒロの胸に鋭い痛みが走った。
誰の攻撃だったのか。
本当にスバルの手によるものだったのか。
混乱の中で、すべてを正確に見ることはできなかった。
ただ、倒れゆくヒロの視界に映っていたのは、血に濡れた手をこちらへ伸ばすナツキ・スバルの姿だった。
「違う、ヒロ! 俺は――!」
彼は何かを叫んでいた。
けれど、その言葉は最後まで届かなかった。
ヒロの意識は、そこで途切れた。
そして今。
彼女は戻ってきた。
自身の死によって発動する魔法。
【死に戻り】によって。
ヒロは理解した。
あの結末は、正しくない。
あの少年もまた、正しくない行いをした。
どれほど善意を語ろうと。
どれほど誰かを救おうとしていたとしても。
人を殺した事実は消えない。
ならば、裁かれなければならない。
二度目の始まり。
ヒロは、前回と同じ場所へ向かった。
そこに、ナツキ・スバルが現れることを知っていた。
「お、おい! あんた、無事か? ここがどこか分かるか?」
前回と同じ声。
前回と同じ表情。
何も知らない顔で、彼はヒロに駆け寄ってきた。
一度目の彼を、完全な悪人だと思っていたわけではない。
彼は何度も誰かを助けようとした。
自分の命を投げ出すような真似もした。
愚かで、無謀で、けれど真剣だった。
それでも。
正しくないものを見逃す理由にはならない。
ヒロは静かに、支給品であるスコップを構えた。
スバルの表情が変わる。
「え?」
それが、彼の最期の声だった。
次の瞬間、ヒロの攻撃がスバルの顔面に叩き込まれた。
鈍い音が響く。
スバルは何が起きたのか理解できないまま、後ろへよろめいた。
「なん、で……?」
裂けた唇から、かすれた声が漏れる。
ヒロは答えなかった。
答える必要はなかった。
これは復讐ではない。
感情に任せた報復でもない。
正しくない行いに対する、当然の裁きだった。
もう一度、スコップを振り下ろす。
一撃では足りない。
何度も何度も。
ナツキ・スバルは倒れた。
その目には、最後まで困惑が残っていた。
トドメに、倒れた胸の中心へスコップの先端を突き立てた。
ジワリと血が広がり、ナツキ・スバルは完全に沈黙した。
ヒロはしばらく、その場から動かなかった。
胸の奥に残った痛みが、消えることはなかった。
けれど、彼女は自分に言い聞かせる。
「これで、ひとつ正された」
バトルロワイアルは、まだ終わっていない。
正しくないものは、まだ数えきれないほど存在している。
主催者。
殺し合いを受け入れた参加者たち。
そして、命を奪うことでしか進めないこの世界そのもの。
二階堂ヒロは歩き出した。
自分の選択が本当に正しかったのか。
その問いから、目を逸らしたまま。
【菜月 昴 死亡】
【二階堂ヒロ@魔法少女ノ魔女裁判】
[状態]:健康
[装備]:スコップ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]:正しい行いをする
1:正しくない殺し合いを修正する
2:正しくない主催者を修正する
3:正しくない参加者を修正する
◆
ナツキ・スバルは、目を覚ました。
「――っ、はあ、はあ、はあっ!」
喉が裂けるほど息を吸う。
心臓が暴れている。
全身が冷たい汗に濡れていた。
覚えている。
痛みを。血を。
自分を見下ろしていた少女の顔を。
声をかけた。
ただ、それだけだった。
なのに、殺された。
「なんなんだよ……あいつ……」
スバルは震える手で、自分の胸を押さえた。
そこにはもう傷はない。
けれど、ぐちゃぐちゃに潰された感触だけが、はっきりと残っている。
間違いない。
スバルは死んだ。
そして、戻ってきた。
すべてが始まる、その瞬間へ。
「死に戻り、したってことかよ……」
スバルは歯を食いしばった。
スバルに与えられた能力。
いや、与えられたと言っていいのかすら分からない力。
【死に戻り】。
殺された際に発動し、一定の時点へと戻す能力。
どうやら、現時点でのリスボーン地点は、バトルロワイアル開始直後らしい。
だが、分からないことだらけだった。
なぜ自分は殺されたのか。
なぜあの少女は、初対面のはずの自分を迷わず攻撃したのか。
なぜ彼女は、まるで裁きを下すような目でこちらを見ていたのか。
ただ一つだけ、分かることがある。
「ふざけんなよ……。こんなバカげた殺し合いに、そんな簡単に乗りやがって……!」
彼の中にあるのは、怒りだった。
そして、どうしようもなく理不尽な死への拒絶だった。
少なくともスバルの視点から言えば、彼女は殺し合いに乗った人殺しにしか見えなかった。
あの少女は危険だ。
出会い頭に、自分を殺した。
理由も告げず、迷いもなく。
ならば次は、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
スバルは立ち上がる。
膝は震えていた。
恐怖はある。
当然だ。
どこに行けば彼女と出会えるのかは分かっている。
どうする。
道を避ければ、出会わずに済むかもしれない。
だが、あんな危険な人間を放置していいのか。
不意を突かれはした。
けれど、相手は普通の少女に見えた。
騎士たちのような超人的な身体能力があるわけでも、強力な魔法を放ったわけでもない。
来ると分かっているのなら、スバルでも止められない相手ではないはずだ。
だが、殺された相手にもう一度会いに行くというのは、どうしたって足がすくむ。
こればかりは、何度死を経験しても慣れない。
それでも。
確かめなければならない。
あの少女がなぜ自分を殺したのか。
彼女は何を知っているのか。
そして、この殺し合いの中で何が起きているのか。
逃げているだけでは、何も変わらない。
スバルは顔を上げた。
「行くしか、ねぇよな……」
ナツキ・スバルは走り出す。
どこへ向かえばいいのかはすでに分かっている。
誰に会うことになるのかも、分かっている。
やがて、見覚えのある場所が視界に入る。
そして、そこに前科の焼き直しのようにその彼女は、静かに立っていた。
表情は固く、視線はまっすぐスバルへ向けられている。
待っているのは一度目のバトルロワイアルで、スバルを殺した少女。
何の前触れもなく、何の説明もなく、ただスコップを振り下ろしてきた少女だ。
「……来たか」
少女が小さく呟いた。
その声に、スバルの背筋が粟立つ。
その目は、やはり前回と同じだった。
スバルを『正しくないもの』として見ている目。
「待て、待て、待て、待て、こちらの話を聞けぇえい!」
スバルは両手を上げた。
敵意がないと示すために。
少しでも話を聞かせるために。
「俺は殺し合いに乗る気なんかねぇ! あんたが何を知ってるのか、何で俺を狙うのか、それを――」
言い終える前に、少女が地面を蹴った。
「っ、くそ!」
前回と同じだった。
迷いない踏み込み。
少女の細腕から振るわれるには不釣り合いなほど、スコップの軌道は鋭かった。
スバルは横へ飛んだ。
鼻先を、鉄の縁がかすめる。
風を切る音が耳元を裂いた。
「話聞けって言ってんだろ!」
「聞く必要はない」
少女は淡々と言った。
「キミは、正しくない」
「だからって、いきなり殺していい理由になるかよ!」
少女は答えなかった。
代わりに、もう一度スコップを振るう。
スバルは後退する。
体格差はあっても、相手は本気で殺しに来ている。
だから、スバルは覚悟を決めた。
相手を制圧するために使える手札は、一つだけある。
「――シャマク!」
叫びと共に黒い靄が周囲に広がる。
「なっ……!」
彼女の瞳が見開かれる。
だが、その目にはもうスバルの姿は映っていないはずだった。
黒い霧が視覚を奪う、陰の魔法。
スバルが単独で扱える、数少ない魔法である。
「そのまま動くな! 俺はあんたを殺す気なんかねぇ!」
スバルは叫んだ。
だが、少女は止まらなかった。
暴走機関車のようにスコップが振るわれる風切音が響く。
明らかに、スバルの位置を捉えていない。
それでも少女は、闇雲に暴れていた。
鉄の刃が木の幹を叩く。
枝が折れる。
土が跳ねる。
草が裂ける。
「ちょ、待て! 暴れんなって!」
スバルは慌てて距離を取る。
少女の動きは無茶苦茶だった。
だが、だからこそ危なかった。
狙いが読めない。
殺意と焦燥だけで、スコップを振り回している。
止めるしかない。
殺すためではない。
話を聞くために。
これ以上、誰も死なせないために。
「悪い、力ずくで止めさせてもらうぜ!」
スバルは地面を蹴った。
視界を失った少女の背後へ回り込む。
そのまま抱き着くようにタックルを決める。
だが、彼女もまた必死だった。
スバルが飛びかかった瞬間、少女の体が反射的にねじれる。
スコップの柄がスバルの肩を打った。
「ぐっ!」
鈍い痛みが走る。
それでもスバルは離さない。
少女の腕にしがみつき、スコップを押さえ込む。
「放せ!」
「放したらまた殴るだろうが!」
二人はもつれ合った。
その拍子に、足元の土が滑る。
スコップの柄が二人の間で軋み、互いの体勢が崩れた。
「くそっ、落ち着け! 俺は――」
その瞬間だった。
二人の足が、同時にもつれた。
体が傾く。
視界が回る。
スバルは咄嗟に少女を抱え込むようにして倒れた。
次の瞬間。
ズブリ、と。
嫌な感触があった。
音ではなかった。
衝撃でもなかった。
何か柔らかいものが、鋭いものに貫かれる感触。
スバルの体が硬直する。
「……え?」
少女の抵抗が、消えていた。
さっきまで暴れていた腕が、力なく落ちる。
握っていたスコップが、地面に転がる。
乾いた音が、やけに遠く聞こえた。
やがてシャマクの効果が切れる。
黒靄が晴れ、スバルはゆっくりと顔を上げた。
そこに少女は、倒れていた。
その後頭部に、折れた木の枝が深く刺さっていた。
皮肉にも、それは先ほど彼女自身がスコップで暴れ回り、へし折った枝である。
鋭く裂け、槍のように突き出していたそれが、倒れ込んだ拍子に彼女を貫いていた。
「……うそ、だろ」
スバルの声は震えていた。
少女のの目は開いている。
けれど、そこにはもう何も映っていない。
さっきまであった強い意志も、冷たい裁きの色も、すべて抜け落ちている。
スバルは息を忘れた。
殺すつもりなんてなかった。
傷つけるつもりだってなかった。
ただ、止めたかっただけだ。
話を聞きたかっただけだ。
なのに。
「俺じゃ……俺は、違う……違うんだ……」
手が震える。
指先が冷たい。
喉が詰まり、胃の奥から何かがせり上がってくる。
スバルは少女の肩に触れようとして、途中で手を止めた。
動かない。
呼吸もない。
反応もない。
彼女は死んでいた。
「なんでだよ……」
スバルは膝から崩れ落ちた。
目の前が滲む。
自分がシャマクを使ったからか。
自分が飛びかかったからか。
無理に取り押さえようとしたからか。
どこで間違えた。
何を間違えた。
どうすればよかった。
答えは出ない。
ただ、目の前に死体がある。
自分を殺した少女。
けれど、殺したかったわけではない少女。
何かを知っていたはずの少女。
そして今、自分の目の前で死んだ少女。
「……なんでだよ、バカ野郎が」
スバルは掠れた声で呟いた。
それが誰のことを指しているのか、自分でも分からなかった。
【二階堂ヒロ 死亡】
【菜月 昴@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]:理不尽な死を回避し、殺し合いを止める
1:なんでだよ……
2:殺し合いには乗らない
3:主催者を見つけ、このバトルロワイアルを終わらせる
◆
「――また【戻った】、ということか……」
二階堂ヒロは目を覚ました。
見覚えのある天井。
鼻につく空気。
肌にまとわりつく、不快な緊張。
始まりの場所。
二度目ではない。
三度目の始まりだった。
ヒロはゆっくりと上体を起こす。
後頭部に、まだ鋭利なものが刺さっているような感触が残っていた。
視界が暗く落ちる瞬間、背後から覆いかぶさってきた少年。
ナツキ・スバル。
ヒロは、その名を胸の内で反芻する。
また、スバルはヒロを殺した。
故意ではなかったのかもしれない。
殺そうとしたわけではなかったのかもしれない。
倒れ込む直前のスバルの声には、確かに焦りがあった。
あの顔には、殺意ではなく恐怖があった。
けれど。
結果として、ヒロは死んだ。
ならば、それは正しいことなのか。
「正しくない」
ヒロは答える。
誰に問われたわけでもない。
自分自身の中に生まれかけた迷いを、切り捨てるように。
ナツキ・スバルは危険だ。
どう言う訳か一度目の出会いとは違う反応を見せた。
こちらの殺意を気取ったのだろうか。
それならば、もっと策を練る必要がある。
「今度は、間違えない」
二階堂ヒロは、静かに呼吸を整えた。
スコップの柄を握る手に力を込める。
今度こそ。
今度こそ、正しい形で。
この殺し合いを、修正するために。
【二階堂ヒロ@魔法少女ノ魔女裁判】
[状態]:健康
[装備]:スコップ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]:正しい行いをする
1:正しくない殺し合いを修正する
2:正しくない主催者を修正する
3:正しくない参加者を修正する
imageプラグインエラー : ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ChatGPT Image 2026年7月4日 18_24_09.png)
最終更新:2026年07月04日 18:26