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『健康優良児達』


(キャラ)鎬紅葉、乙花スミレ




一人の男が、道を歩いていた。
 巨(おお)きい、男だった。
 184cmの身長は、長身とはいえ破格のものでは無い。
 巨(きい)と認識させるものは、男の身体。
 131kgの体重は、筋肉と僅かな脂肪で構成され、鍛えられていない場所など見当たらない程に、身体の全ての部位が鍛え抜かれていた。
 皮膚の内側にうねる筋肉の束は、力を込めれば鋼の如く、脱力すれば乙女の柔肌の如くになる、柔軟性と強靭さを併せ持ち、それでいてフルマラソンにも耐えうる持久力(スタミナ)をも有している。
 どの要素も極めて高水準で纏まったステータスを持つ肉体。これ以上の肉も脂もこの身体の機能を損なう事にしかならない。それ程までに完成された肉体。
 “超肉体”とでも称するべき肉体を有する男の名を、鎬紅葉という。
 首輪を嵌められて殺し合いを強要された身でありながら、鎬紅葉は泰然自若と落ち着いていた。
 紅葉の落ち着きぶりは、超肉体を頼りに、他の者を全て殺して、帰還できるという自負によるものか?
 否、紅葉は医師である、生命を救う医師である紅葉は、殺し合いなどに乗るつもりは無い。
 己の肉体への自負と、医師としての経験と知識を駆使すれば、相手がピクルや宮本武蔵でも無い限りは何とかなるだろうと、そう考えているのだった。

 「命の授業か…」

 過去に人を殺した事が無いとはいえ、大勢の患者をを用いて非合法の人体実験を執り行い、彼らの犠牲の上に極めて高度な医療技術と、超肉体を獲得するに至った紅葉である。
 “命の授業”というという言葉には、深く感じる所があった。

 「身に覚えが有り過ぎるな」

 此処に集められた者達もまた、紅葉の様に人体や命を弄んだ事があるのだろうか?
 ならば、最凶死刑囚達に匹敵する凶人達が、此処に放り込まれている事になる。
 紅葉の口元が吊り上がり、笑みの形を作る。
 心の奥底から、凶暴なものが沸々と湧き上がってくるのを、紅葉は感じ取っていた。
 笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙を剥く行為が原点であると言う。
 鎬紅葉は医者であるが、武神と称えられし空手家、愚地独歩との対戦を臨んだ事も有る程度には、格闘家(グラップラー)の精神(メンタル)を有してもいる。
 あの凶者達に匹敵する者達と闘えるかも知れないという事実は、紅葉の心を昂らせるものがあった。
 とは言え、紅葉の犠牲者達ならば兎も角。見ず知らずの女に闘争を━━━━殺し合いを強制される謂れは無い。
 あの、人生から倫理のネジを外している徳川光成であっても、闘う者同士の同意を得る程度の事は行う。
 無断で戦わせる━━━━ましてや殺し合わせるなどという蛮行は、流石にあの金と暇を持て余した老害でも行わない。
 最低限の確認も無しに、殺し合いを強制するなど、流石に不快感を禁じ得ない。
 紅葉が何処か余裕を感じさせる原因でもあるが。
 紅葉が識る最強存在。あの最も強く、最も自由な存在である範馬勇次郎。
 あの巨凶がこの事態に巻き込まれているとしたら?
 殺し合って勝てる見込みなど議論の余地無く存在し無いが、そもそもの話として、範馬勇次郎は殺し合いに乗る事は有り得ないと考えられる。

 “強さとは我儘を押し通す事”。

 範馬勇次郎が提唱する。全ての格闘士(グラップラー)が首肯する強さの最小単位。
 自らの意思のままに振る舞い。自らの欲望の赴くままに生きる。
 その定義に対し、殺し合いの強制というものは、真っ向から反している。
 当人の意思が介在しない、他者に強制された闘争など、上等な料理にハチミツをブチまける所の話では無い。
 あの暴と蛮の極というべき精神性は、あの女への怒りで満ち溢れているだろう。

 とは言え…。闘争を己が生存に必要な全ての要素よりも優先されるのが範馬勇次郎という生物である。
 安心していると“喰われる”可能性は十二分に有る。
 何よりも紅葉は勇次郎に“そそる”相手として目を付けられている。
 警戒しておくに越した事は無い。

~~~~


 「ほう…」

 あてど無く歩む紅葉の視界に、一つの建物が有った。
 スポーツジムである。
 紅葉も良く利用し、超肉体を作成(つく)りm維持する為に利用している施設だった。
 こんな時でも無ければ、利用するのだが。
 そんな事を考えながら行き過ぎようとした紅葉の耳は、ジムの内部から音がするのを聴いた。

 「誰か居るのか?」

 こんな時にトレーニングに励む者も居ないだろう。そう思いながら、用心深くジムに内部に立ち入り、慎重に奥へと進んでいく。
 そして、音の発生源である一室を覗き込むと。

 「何ッ!?」

 紅葉は驚愕した。因みに「なにっ」では無く「何ッ」である。
 「なにっ」とか書いた場合は自家製栄養ドリンクを一気に飲めッ。

 閑話休題。

 「馬鹿なッ!有り得ないッ!」

 一人の少女が居た。
 170cm近い背丈の少女が、バーベルスクワットに勤しんでいた。
 それはまあ良い。この状況下でやる事では無いというのは置いといて。

 「あの少女の体つきは、体操選手か陸上競技の選手のそれ、断じて格闘家(グラップラー)や重量挙げの選手の体躯では無い。
 なのに、あの少女は、重さ20kgのバーベルに、左右50kgの重しを付けて、スクワットに勤しんでいるだとッ!?」

 ベンチプレス270kを上げる末堂厚を始めとして、ウェイトトレーニングで数百キロの重量を持ち上げられる人間を多く知る紅葉にしても、眼前の少女は異常と言えた。
 均整の取れた鍛えられた身体をしているが、120kgを抱えて、高速でスクワットが出来る体付きはしていないのだ。

 「いや…しかし」

 とはいうものの、女子中学生並みの体躯の百四十歳を超える老爺の郭海皇が、全盛期のアイアン・マイケルが比較にならないレベルの打撃を打てるのである。
 それを思えばおかしくは無い…。とは言え理合の極みと、只の身体能力では、全く逆となる。極限の理合により、魔法じみた技術を駆使する郭海皇とて、120kg担いでスクワットは不可能だ。
 出来るとすれば、体格筋力共に優れた、末堂厚や花田純一の様な者達だろう。
 困惑する紅葉に気付く事無く、少女はスクワットを終えると、デッドリフトに取り掛かった。

 「何だとッ!まさか…パワーリフティングをッ!」

 スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの三つをこなすものを、パワーリフティングと呼ぶ。この状況下でパワーリフティングに勤しむのも異常だが、内容も異常に過ぎる。
 猛烈な勢いでデッドリフトを百回こなし、次いでベンチプレスも100回。
 紅葉が最初から見ていなかったスクワットも、百回やったのだろう。

 「ぶう…」

 バーベルを置いた少女が、軽く深呼吸をした。
 僅かに上気した凛とした顔立ちは、男だけで無く同性の視線も惹きつけるだろう、清冽な魅力を放っている。
 置かれていたタオルで汗を拭き、息を整え、紅葉の方へと向き直り、そこで初めて紅葉に気づき、硬直した。

 「…………」

 「…………」

 両者無言。紅葉にしてみれば己が少女にどう見えているかは大方察しがつき、その為にどう話しかけるか思考する。
 少女にしてみれば、このような場で出会った以上警戒するのは必至であり、そうで無くとも紅葉は変質者扱いされても仕方が無い行動を取っている。

 「…………………………」

 「…………………………」

 双方共に押し黙ったまま一分程の時間が過ぎ、少女がハッとしたかの様に後ろへと飛んで距離を空けるた。

 「誰ですか!?」

 身構えた少女からの鋭い誰何に、紅葉は両手を上げて敵意がない事を示す。

 「失礼を働いてしまい、大変申し訳無い。私の名は鎬紅葉。医療に関わるものとして、君に気概を加えるつもりは無い。
 余りにも素晴らしいトレーニング風景だったものだったので、つい見入ってしまった。許して欲しい」

 「失礼しました。私は乙花(おとはな)スミレといいます。
 紅葉さんも良く鍛え込まれた身体をしておいでですね…。トレーニングに興味がお有りなのでしょうか?」

 「トレーニングですか…。趣味…といっても良いでしょうね」

 「本当ですか!?」

 少女の瞳が輝く。花が咲く様に明るい笑顔になった。

 「どの様なメニューをこなしておられるのでしょうか?」

 「ええ…先ずウォームアップとして十字懸垂を…」

 「身体が温まった後は?」

 「ウェイトリフティング等を…」

 弾んだ声で質問を続けるスミレと、困惑した様子で応える紅葉。

 二人の問答は暫くの間、続いたのだった。


~~~~


 「ミレニアムサイエンススクール…?」

 十字懸垂をしながら、鎬紅葉は思考に耽る。
 聞いた事のない名前ではある。乙花スミレという名からして、日本人であると考えて良いだろう。
 ミレニアムサイエンススクールという校名に憶えが無い為に、海外の学校かとも思ったが、日本の校名全てを識る訳では無いので、放置する。

 「どうかしましたか?」

 スミレは紅葉の隣りでウェイトリフティングに励んでいた。

 「いや…聞いた事の無い校名だったので…」

 「ミレニアムサイエンススクールを…知らない?」

 「しつれい。寡聞にして知らないのだが、アメリカか何処かの学校かな?」

 「キヴォトス三大学園の一角を…知らない?」

 バトル・ロープに勤しみながら、スミレは首を傾げた。


 「学園都市キヴォトスか…俄には信じ難いが、現状が現状だ。信じざるを得ないな」

 フィットネスバイクを競輪選手も真っ青な勢いで漕ぎながら、鎬紅葉は真剣に考え込んでいた。

 「異なる世界…というのでしょうか?」

 紅葉の隣で、紅葉に勝るとも劣らぬ勢いで、フィットネスバイクを漕ぎながら、スミレは思考に耽る。

 紅葉もスミレも、互いに相手の語ることは、全て初めて聞く事柄。しかして駄法螺と片付けるのは、今の状況が許さない。
 二人の思考が加速するのに合わせるかの様に、フィットネスバイクを漕ぐ足の速度も増して行く。

 「時にスミレさん。結構体力がお有りですね」

 「紅葉さんこそ」

 スミレの外見不相応な身体能力に、内心首を傾げる鎬紅葉ではあるが、それはさておき自分のことペースについてこれる人間とトレーニングをするのは存外楽しく。直に忘れてしまった。

 十五分後。直径3m・幅1.5m・総重量3トンの超巨大タイヤを用いてタイヤ・フリックを始めた2人は、バト・ロワの事などすっかり忘れているのかも知れなかった。





【鎬紅葉@刃牙シリーズ】
[状態]:健康
[装備]: 無し
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~3
[思考]:状況を把握する



【乙花スミレ@ブルーアーカイブ -Blue Archive-
[状態]:健康
[装備]: 無し
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~3
[思考]:状況を把握する






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最終更新:2026年07月08日 23:47