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『アナコンダvsプレデター』


(キャラ)アナコンダ、プレデター




意識のどこか深い場所で、狩人――プレデターはそれを見ていた。目を開けば、見覚えのない「教室」のような空間に座らされている。周囲を取り囲むのは、狩人が生涯一度も目にしたことのない、奇妙な形状の机と椅子。そして正面には一人の女――人間の教師と思しき存在が、静かに佇んでいた。

『人は命に感謝しません。……何故でしょう? それは、皆さん、"明日も生きている"と、何の疑いもなく信じているからです』

『まぁ当然でしょう。統計上、人間の死因の大半は慢性的疾患によるものです。つまり人は、ゆっくり死ぬことには慣れていても、突然死ぬことには慣れていないのです』

『事故、災害、あるいは殺人。……そういった、ある日突然訪れる予期せぬ死を、皆さんは心のどこかで"自分には関係のない、遠い世界の出来事"だと考えている』

『ですが、それは本当に幸せなことでしょうか』

黒板に、チョークの鋭い音が走った。狩人にとって本来は意味を成さない記号の羅列であるはずのそれすら、なぜか脳裏に焼き付いて離れなかった。

『人は恐怖によってしか、命の価値を理解できません』

『ですから私は、身勝手で愚かな皆さんへ、これ以上ない特別な"命の授業"を行うことにしました』

――【BATTLE ROYAL】。

『起こしてみませんか。この閉ざされた島で、誰一人として逃れることのできない――"死因百パーセントの予期せぬ死"を』

『――では、これより命の授業を始めます』

その声を最後に、視界は白く塗り潰され、狩人の意識は暗転した。


深夜零時。

意識が浮上した瞬間、まず感じたのは首元の異物感だった。硬く冷たい金属の輪が、喉仏のすぐ上に食い込むようにして嵌められている。呼吸を確かめるように喉を鳴らし、それから初めて、自分が横たわっている場所が見知らぬ場所であることに気づいた。

そこは狩人にとってあまりに馴染みのないコンクリートとガラスの密林だった。頭上には見慣れぬ形の高層建築が林立し、足元には規則正しく舗装された道が延びている。空気は湿り、遠くから微かに潮の匂いが混じっていた。逃げ場のない檻。

母星から遠く離れたこの惑星――否、この惑星ですらないのかもしれない――に流れ着いた経緯を、狩人の記憶は正確には辿れなかった。最後に覚えているのは、獲物を追って未知の重力異常領域に飛び込んだ瞬間の閃光だけだ。その閃光の後、こうして見知らぬ夜の街に転がされ、あの奇妙な「授業」の記憶だけを引き摺っていた。

狩人はしばらくその場に片膝をつき、動かなかった。理解に苦しんだわけではない。むしろ逆だ。あの女の言葉の断片が、狩人の思考の中で確かな輪郭を結びつつあった。これは狩り場だ。強者だけが生き残り、弱者は自然に淘汰される場。体の奥底から込み上げてくる感情があった。歓喜、あるいはそれに近い戦慄。

ならばやることは一つだ。この島に潜む、狩るに値する獲物を探し出し狩る。

狩人は立ち上がり、自分の装備を確認した。幸いにも、狩人特有の武具一式――手甲に仕込まれた刃、肩に据えられたプラズマ砲、そして光学迷彩を可能にする外骨格スーツ――は失われていなかった。傍らには見慣れぬ布製の背嚢が一つ落ちている。恐る恐る中を検めると、奇妙な板状の機器といくつかの支給品が入っていた。

板状の機器に触れると、淡い光とともに画面が明滅した。狩人にとっては原始的な代物だったが、手甲の機器と比べればいかにも粗末なそれを、狩人は苛立たしげに操作した。画面には土地の地図らしきものと、周辺の建造物を示す発光点が浮かび上がっている。さらに操作を続けると、この儀式の詳細な条件を記したらしい文字列が表示された。

——舞台となる街の広さ。制限時間は四十八時間であり、終了時刻までに決着がつかなければ、生存者全員の首輪が例外なく爆破されること。最後の一体として生き残った者には、望むままの願いと、元いた場所への帰還が約束されること。

狩人はしばらくその文字列を睨みつけていたが、やがて興味を失ったように機器を背嚢に押し込んだ。細かな理屈などどうでもいい。結局のところ、やるべきことは変わらない。

背嚢を担ぎ、狩人は歩き出した。


夜の街は静まり返っていた。ネオンの残光だけが、誰もいない交差点を虚しく照らしている。
狩人は周囲を見渡した。人工的な建物の隙間、地下へと続く階段、川のような水路。狩人のセンサーが、その地下水路の奥に他とは明らかに異なる熱反応を捉えた。

巨大で長くうねるようなシルエット。

狩人は薄く笑った――いや、正確には、上顎の牙を微かに鳴らした。狩人の種族にとって、それは笑みに相当する仕草だった。ようやく、狩るに値するかもしれない獲物の気配を見つけたのだ。

地下水路へと続く階段を降りると、そこは思いのほか広い空間だった。水位は浅く足首ほどの深さの水が緩やかに流れていた。壁面には苔と錆が張り付き、遠くから聞こえる水音が反響して、まるで洞窟の奥にいるかのような錯覚を与える。

狩人は一歩、また一歩と水路の中央を進んだ。センサーは前方数十メートル先に例の巨大な熱源を捉え続けている。奇妙なのは、その熱源の動き方だった。人間や、あるいは狩人が知るどんな生物とも異なる、滑らかで、しかし恐ろしく素早い動き。まるで水そのものが意志を持って蠢いているかのようだった。

そして、狩人はそれを見た。

水路の奥、闇の中からゆっくりと鎌首をもたげるようにして現れたのは、常軌を逸した大きさの蛇だった。全長は優に十数メートルはあろうか。鱗は濡れ光り、眼球は爬虫類特有の縦長の瞳孔。そこに宿る光は純粋な捕食本能そのものだった。

そして何より狩人の目を引いたのは、その尾だった。通常の蛇であれば単なる先細りの尾であるはずのそれが、まるで研ぎ澄まされた刃物のように鋭く変形している。

狩人は即座に理解した。これは並みの生物ではない。異常な力によって生み出された、あるいは強化された怪物だ。だからこそ、狩るに値する。
狩人は肩のプラズマ砲を起動させながら、静かに、しかし確実な足取りで距離を詰めた。

蛇の怪物——アナコンダは狩人の接近にすぐさま反応した。人間であれば恐怖に立ちすくむような巨躯を持ちながら、その動きは驚くほど俊敏だった。水路の水面を叩くようにして体をくねらせ、狩人めがけて突進してくる。

狩人は横に跳び、その突進をかわした。同時に手甲の刃を展開し、通り過ぎざまに一撃を見舞う。刃は確かに怪物の胴体を捉え、深々と切り裂いた。だが、怪物は怯む素振りすら見せない。切り裂かれた傷口はすぐに閉じていく。

——再生している。

狩人はその光景に、狩人としての血が沸き立つのを感じた。これまで数多の獲物を狩ってきた狩人にとっても、これほど異常な再生能力を持つ生物と対峙する機会はそう多くない。恐怖ではない。歓喜だ。これこそが、狩人が焦がれ続けてきた狩るべき獲物なのだから。

狩人は距離を取り、光学迷彩を起動させた。外骨格スーツの表面が周囲の景色を映し出すように歪み、狩人の姿はゆらぎながら透明に近づいていく。これまで幾度となく、この技術は狩人に勝利をもたらしてきた。相手の視覚を欺き、死角から一撃を叩き込む。それが狩人の常套手段だった。

しかし、怪物は狩人の姿が消えた瞬間にも、まるで動じることなく、正確にその頭部を狩人がいたはずの方向へと向けた。

狩人は一瞬、動きを止めた。

見えないはずだ。光学迷彩は完全に周囲の光を屈折させ、視覚的にはほぼ透明に近い状態を作り出している。これまでの獲物は皆、この技術の前に混乱し、狩人を見失った。だが、この怪物の瞳は――いや、瞳ではない。怪物の吻部の左右に並ぶ、小さな窪みのような器官が、微かに震えている。

狩人は理解した。この生物は、視覚に頼っていない。獲物の体温そのものを、赤外線として感知する感覚器官を持っているのだ。蛇という生物が本来持つ、ピット器官と呼ばれる熱感知能力――それが、この怪物においては桁違いに研ぎ澄まされている。

光学迷彩は、光を欺くための技術であって、体温そのものを消す技術ではない。狩人の体表温度は、外骨格スーツ越しであってもわずかに漏れ出している。この怪物にとって、狩人の透明化はまったく意味を成さないのだ。

怪物が咆哮とも威嚇ともつかない音を発しながら、再び突進してきた。狩人は咄嗟に光学迷彩を維持したまま横に転がり、その巨体をかわす。だが、直後に振るわれた刃状の尾が、地面を抉るようにして狩人のすぐ横を薙いだ。コンクリートの破片が飛び散り、狩人の外骨格の一部に浅い傷を刻む。

——速い。そして、正確だ。

狩人は光学迷彩を解除した。無意味な技を使い続けるよりも、正面から向き合うことを選んだのだ。狩人の種族にとって、これは決して屈辱ではない。むしろ、真に強い獲物と対峙した時、狩人は己の技量と経験のすべてを注ぎ込む。それこそが狩りの本質であり、誇りだった。

狩人は手甲の刃を展開したまま、怪物との間合いを測り直した。単純な力比べでは分が悪い。怪物の体躯は狩人の何倍もあり、その一撃は建造物すら軋ませるほどの威力を秘めている。だが、狩人には長年の実戦で培われた戦闘技術と、種々の装備があった。

まず狩人は、腰に装着していた円盤状の武器――投擲用の刃を引き抜いた。回転する刃が空気を切り裂く音を立てながら、怪物の側面へと飛んでいく。刃は怪物の胴体に深く食い込み、肉を抉った。怪物が一瞬、体をよじるようにして怯む。

その隙を逃さず、狩人は地を蹴って接近し、手甲の刃で怪物の頭部付近を狙って斬りつけた。狙いは正確だった。怪物の吻部近くの皮膚を大きく切り裂き、感覚器官の一部を破壊する。怪物は苦悶するように体をのたうたせ、水路の水面を激しく叩いた。

しかし怪物の反撃もまた凄まじかった。狩人が距離を取ろうとした瞬間、怪物の巨体が水路の壁を蹴るようにしてしなり、まるで鞭のように尾を振るった。刃状の尾が空気を裂き、狩人の肩口を掠める。外骨格スーツの装甲が悲鳴を上げるように軋み、わずかに肉を裂かれる感覚が狩人に走った。

痛みは狩人にとって馴染み深いものだった。むしろその痛みこそが、この戦いが真の狩りであることを証明していた。狩人は怯むことなく、むしろその一撃を機に距離を詰め、怪物の胴体に手甲の刃を突き立てた。切り裂き、抉り、引き剥がす。怪物の体からは体液が飛び散り、水路の水を赤黒く染めていく。

だが切り裂いたそばから傷口が塞がっていくのを狩人は見た。まるで時間を巻き戻すかのように、裂けた肉が盛り上がり、新たな組織が形成されていく。これでは、いくら切り刻んでも決定打にはならない。

狩人は数歩後退し、怪物との距離を取った。全身にいくつもの浅い傷を負いながらも、狩人の呼吸は乱れていない。むしろその瞳――バイザー越しに見える狩人の目には、これまでにない昂揚の色が浮かんでいた。

——尋常な手段では倒せない。ならば。

狩人は肩に据えられたプラズマ砲を、ゆっくりと怪物へと向けた。これは狩人にとって切り札に近い装備だった。エイリアン——ゼノモーフすら一撃で屠る主砲。だが、この獲物には相応しい。狩人はそう判断した。

怪物は狩人の構えに何か本能的な危機を感じ取ったのか、再び水路の奥から突進を仕掛けてきた。全長十数メートルの巨体が、まるで津波のようにうねりながら迫る。狩人は左右に身を翻しながら、その突進をぎりぎりでかわし続けた。一度でも直撃を受ければ、外骨格スーツごと押し潰されるだろう。

狩人はコンクリートの壁を蹴って跳躍し、水路の上部の縁に足をかけた。怪物がすぐさま鎌首をもたげ、追撃しようと尾を振り上げる。その一瞬の隙――狩人はプラズマ砲の照準を怪物の中心部、胴体の最も太い部分に合わせた。

肩のプラズマ砲から、青白い光の球が放たれた。空気を切り裂きながら飛翔したそれは、怪物の胴体中央に命中し、水路全体を轟音で満たした。

爆発は凄まじかった。怪物の胴体は四散し肉片と体液が水路の壁面や水面に飛び散った。上半身と下半身が真っ二つになり地面に転がる。コンクリートの一部までもが抉れ、煙と粉塵が水路の空間を満たしていく。

狩人はしばらくその場に立ち尽くし、煙が晴れるのを待った。バイザー越しに残留熱の反応を確認する。二つになった肉片からはまだ微かな熱が感じ取れるが、それはもはや生命活動を示す反応ではない。単なる死骸の余熱だ。

——仕留めた。

狩人の胸に、狩人としての深い満足感が広がった。これほどまでに手強い獲物と対峙したのは、実に久方ぶりのことだった。傷だらけの体を労わるように、狩人は肩の力を抜き、プラズマ砲を格納した。そのまま背を向けて歩き出した。次の獲物を探すために。


その時だった。

背後、狩人が振り返るよりも早く、水しぶきを上げながら、闇の中から何かが猛烈な速度で迫ってきた。
上半身と下半身が真っ二つになったはずの大蛇が完全に再生している。狩人が完全に振り向いた瞬間、既に怪物の刃状の尾が眼前に迫っていた。

回避は間に合わなかった。

鋭利な尾の先端が、狩人の胸部装甲を貫き、そのまま背中まで突き抜けた。衝撃で狩人の体は宙に浮き、そのまま水路の壁に叩きつけられる。

狩人は霞む視界の中で、辛うじて右腕を持ち上げようとした。手甲の自爆装置――狩人の一族が敗北を悟った際に起動する自決の機構。
だが指先はわずかに震えただけで、起動キーに触れることすら叶わなかった。致命傷だった――狩人の意識は急速に闇へと沈んでいった。
最後に狩人が見たものは、自分を貫いた尾の持ち主が、感情のかけらもない瞳でこちらを見下ろしている姿だった。

【プレデター@プレデター 死亡】


水路には、しばらくの間、水の流れる音だけが響いていた。
怪物は尾で串刺しにした狩人の体を本能のままに捕食し始めた。丸呑みにするのではなく、顎の力で肉を噛み千切り、咀嚼するようにして体内に取り込んでいく。外骨格スーツの装甲部分だけが、噛み砕かれることなく水路に転がり落ちた。

不死の蘭より変異した怪物の再生力は最早普通のアナコンダを遙かに超越している。そして消化に時間をかける必要すらなく次から次へと獲物を食らう。それが、この怪物の在り方だった。

やがて狩人だったものの肉体は跡形もなく怪物の中に消えていった。残されたのは、傷だらけの外骨格の装甲と、いくつかの装備品の欠片だけだった。
怪物は本能のままに次の獲物の気配を探り、水路の奥、闇の深い方角へとゆっくりと体をくねらせながら消えていった。

やがて水音も遠ざかり、水路には再び静寂が戻った。
水路の片隅には、二つの物が並んで残されていた。
一つは狩人が背負っていた布製の背嚢。もう一つは、怪物――アナコンダに支給されていたはずの、まったく同じ形状の背嚢だった。中にはルールに従って支給されたはずの支給品やスマートフォンが入っているのだろう。だが、それを開けて確かめる者は、この場にはもういない。

当然のことだった。アナコンダには、背嚢を担ぐという発想も、スマートフォンを操作するという知能も存在しない。ただ純粋な捕食本能だけを研ぎ澄ませて、この夜の街を彷徨う一匹の怪物。それが、この街に解き放たれたアナコンダという存在だった。

薄闇の中、静かに水が流れる音だけが、二つの主なき背嚢の傍らに響き続けていた。

遠く、渋谷の夜空を模した虚偽の星々の下で、次なる惨劇の気配が、静かに、しかし確実に育まれ始めていた。


【アナコンダ@アナコンダ4】
[状態]:健康、不死の蘭による自己再生
[装備]:
[道具]:
[思考]:純粋な捕食本能のみで行動する。
1:熱源(獲物の体温)を感知し次第、反射的に接近・攻撃する。
2:捕食した獲物の量に関わらず、消化を待たずに次の獲物を探し続ける。
3:一度捕捉した獲物は、逃走を許さず執拗に追跡する。






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最終更新:2026年07月08日 23:55