死滅跳躍 ◆GOn9rNo1ts


まず、闇があった。

「おはよう」

突然目の前に広がった暗い空間。
まるで夜のとばりが落ちてしまったような世界で、話しかけてくる男だけが冗談のように鮮明に見えた。
男。坊主のように袈裟を着飾り、整った顔の上部に存在する傷跡だけが歪に醜く見える男だ。

「これから君たち一人一人にルール説明を行う。
いやあ、本当は本丸とは別にもう一つの場に集めて、なんて方法の方が手っ取り早いのだけど、これも『縛り』の一つでね。
会場は一つしか用意できなかった。だから今君が見ているこれは夢のようなものだと思ってくれて良い。
忌々しい六眼に介入されないためとはいえ、我ながら面倒な結界を作ったものだよ」

結界と男は言った。
続けて、この話を聞いている「自分」はとある結界に閉じ込められていること、自分の他におおよそ60の『参加者』が同じ結界に存在していること、
『参加者』には他の参加者の載っている名簿やランダムに1つから3つの支給品などが配られること、ゲーム開始から6時間ごとに放送が行われ『脱落者』が読み上げられること、
6時間ごとに会場のいずれかのエリアが3つ禁止エリアと化し、放送から1時間の猶予の後、そのエリアに存在するものは必ず死亡すること、
本来は死なない者も大きすぎる損傷を受けた場合は死んでしまうこと、他にも参加者によってはいくつかの制限が設けられていること、
そういった細々としたルールが袈裟の男から淡々と告げられる。
『脱落者』『そのエリアに存在するものは必ず死亡する』『本来は死なない者も大きすぎる損傷を受けた場合は死んでしまう』
この時点でどう考えてもロクなことではないことが分かったが、これは夢の世界だ。
暴れることも泣くことも、笑うことさえ「自分」には許されない。


「さて、それでは本題に入ろうか」


「君たちにはこれから殺し合いをしてもらう」


予想以上に、ロクでもないにもほどがあった。


「ルールは簡単。一人殺せば5ポイント。50ポイントを集めた参加者はこの結界からの脱出を許され、更に願いを一つだけなんでも叶えてあげよう。
金、権力、力、死者蘇生だって、殺したいやつを殺すことだって簡単に出来る」


つまり10人殺せばいいのだよ、と、とても簡単そうに男は囁く。


「更に、25ポイントを消費することで会場全体に一つ新しいルールを追加することができる。
ただし、そのルールが適用できるかどうかはGM(ゲームマスター)の私の裁量によるものとし、
また適用そのものも、君がルール追加を決定した時間帯の次の放送で実施させてもらう。
新たなルールが追加された瞬間にルールを追加した参加者だけに一方的に有利な状態になる、といった悪用を防ぐためだね」


たった5人殺すだけでいいのだよ、と、とても楽しそうに男は囁く。


「それでは最後に。『私が述べた言葉はすべて真実であることを誓う』
分かるものは分かるだろうが、これは呪術における『縛り』だ。
この無茶な結界を作るにあたって私にだって相当なリスクなペナルティがかかっているということさ。私だって神ではないのでね」

『私が述べた言葉はすべて真実であることを誓う』
その言霊は「自分」の魂にまで浸透するように真実だと理解できた。
呪術を知る者も、似たような異能を知る者も、何も知らない者でさえも、袈裟の男の今までの言葉が嘘ではないことを理解させられた。

つまり。本当に。

10人殺せば、なんでも願いが叶う。

「さあ、今から10数えると君は私の結界内で目が覚める。
そこから先はよーいドン、だ。くれぐれも、まごまごしているうちに死ぬなんて醜態を見せないでおくれ。
私が選んだ選りすぐりの精鋭(モルモット)たちよ」


そうして殺し合いは始まった。
ヒトも鬼も霊も悪魔も否定者も邪神さえも巻き込んだ『史上最悪の術師』羂索による一世一代の大結界。


その名も。



「結界術、死滅跳躍(ジャンプ・バトルロワイヤル)はじまり、はじまり」



【主催 羂索@呪術廻戦】

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最終更新:2025年08月11日 22:21