猿たちによるクソゲーSTART ◆s5tC4j7VZY
Price is what you pay. Value is what you get.
Warren Edward Buffett
1章 GAME START
ガチャガチャガチャ!!!
タン!タタン!!タ―――ン!!!
目にもとまらぬレバー捌きとボタン押し。
殺し合いという場に余りにもふさわしくない音が響く。
音の出所はB-3/デパート内のゲームコーナー。
参加者であろう一人の女はACに夢中。
その光景は、殺し合いの真っただ中にはとても感じさせない一枚絵。
「かめはめ波―――!!!」
「うわぁ!!!」
山吹色の胴着を身に纏い、腰を青色の帯で巻いているツンツン黒髪の青年による攻撃を受けた白い体色の宇宙人。宇宙人の体力ゲージが0になり倒れる。
すると青年は左手でピースをする。それと同時にPLAYER1 WINの文字が浮かぶ。
続いて、画面はゲームの開発者達の名前が次々と記載され、開発したゲーム会社のクレジットが表記された。
「よしACドラゴンボールZクリア。んじゃ、そろそろ”クソゲー”の攻略を開始するとするか」
―――夜桜四怨
夜桜家の次女にしてシルバーライセンスを持つスパイ。
作戦名(コードネーム)夜桜前線を終え、夜桜百(おやじ)の痕跡を追っていたところ、この悪趣味な催しに参加させられることとなった。
会場となるこの島に送られた場所はデパート。
なら、ゲーマーとしての嗜みとしてまずやることは、デパート内にあるゲームコーナー。
メダルゲームにスウィートランド(お菓子を落とすアレ)や多種多様のACを堪能した。
しかし、いつまでも興じるわけにはいかない。
ん~~~と背伸びしながら、遊びは終わりだと言わんばかりに席を立つ。
「残念だが、GAMEOVERだ。女」
背後からの強襲。
首元を狙う凶刃。
しかし、死神の鎌は後一歩のところで届かなかった。
―――ギャルンッ!!!
なんと、韋駄天のような速さでその場から移動したからだ。
四怨が履いていた靴は普通の靴ではなかった。
祓忍具”韋駄天輪”
自分を狙う気配に気づいた四怨はACに夢中になっていた風に様子を見せかけて事前にスイッチを入れて発動していた。
支給品である靴に仕込んであるローラースケート風の車輪が名を現すかの如く、移動した。
「…へぇお前、面白いじゃん?」
四怨はたった今、躊躇なく自分を殺そうとした男に興味津々と言った風に顎に手を置き、観察する。
一方、男は自分の奇襲が避けられたことに自分の身体が本調子ではないことを知る。
「……」
(背後に隠れていた俺が気取られていたのは、あの六眼以来だ)
呪術界御三家の一つである”五条家”から六眼が爆誕したガキの話を聞いた男は面白半分で物見遊山にいった。
まだガキであったその少年はなんと、気配を消していた男に気づいていたのだ。
それは、後にも先にもそのときだけだった。
それが、本調子ではないとはいえ、女のガキにも気づかれた事実に男はため息をつく。
――――伏黒甚爾
職業 ヒモ……ではなく術師殺しの異名を持つ裏社会の住人。
主に荒事で報酬・賞金を得るアウトロー。
「じゃあ、今度はこっちからいく」
四怨がパチンと指を鳴らすと、重々しい足音と共に姿を現す。
それは両腕がボクシンググローブを身につけたロボット。
―――機巧木人・測型
この殺し合いに共に参加させられている一人香炉木恋緒が設計したロボット。
「そんなおもちゃで俺に勝てると思ってんのか」
だとしたら、頭が花畑。
先ほどの不意打ちは避けられたが、タネが分かれば対処できる。
さっさと、その木偶の坊を破壊して殺すだけだ。
そう言わんとばかりに甚爾は呆れた表情を見せる。
「うるせェ、全力で楽しむのがゲーマー魂だ」
男が身に纏う強烈な死の匂い。
自分達と同じ裏社会に生きる者が放つ匂いだと四怨は直ぐに気づいた。
参加者には、凶一郎(変態)だけでなく、大切な妹である六美にその夫の太陽がいる。
危険人物は野放しにはできない。
その言葉が引き金となり両者の火花が散る。
☆彡 ☆彡 ☆彡
2章 ■■恵
機巧木人と甚爾の戦闘は直ぐに決着がつくと見られたが、以外にも長引いている。
その要因の一つは四怨によるタブレットを通した手動による巧みな操作。
その操作が一見、木偶の坊に見える巨体を歴戦の格闘家の如く立ち回りをさせている。
しかし、四怨は自身が優勢とは判断せず、相手の男から目を離さない。
「……」
(……フィジカルがチート並みの野郎だな)
対峙する男の身体能力の高さに四怨は心の中で驚愕の色を隠せない。
葉桜など、何かドーピングを使用しているわけでもない。
純粋なる身体一つでこの能力の高さ。
クソ長男といい勝負だ。
その身体能力にちょっぴり嫉妬する。
自分の存在に自信がもてず僻んで閉じ籠っていた経験があるだけに。
対する甚爾も劣勢とは感じてはいないが、予想以上の機巧木人の動きにてこずる。
その要因が操作している四怨の手によるものだと理解しているために認識を改める。
「……」
この女……予想以上にやるな。
木偶の坊を巧みに扱うその腕前は、下手な式神使いや呪霊操術使いより格上。
しかし、見たところ呪力は感じられない。
ただ、呪力とは違う力を有するのは見受けられる。
その違う力(さいのう)に少しイラつく。
自分にとっては、ゴミ溜めでしかない親に恵まれた環境からグレて出奔しただけに。
―――バッ
跳躍。
そして、刀で頭部を突き刺すと、懐に隠していたも鋭利なナイフで膝の部位を何度も突き刺す!突き刺す!!突き刺す!!!
腕による乱暴な振りは、機械であろうと容赦なく破壊する。
そして駄目押しとばかりに頭上に突き刺した刀の柄を握るとそのまま振り下ろす。
切れ味抜群の刃は頭を真っ二つに斬り裂き、機巧木人を破壊した。
それは、一瞬の出来事であった。
「フー……少し、勘が戻ったかな」
コキコキと首を鳴らしながら悠然と歩く。
四怨は知らないことだが、甚爾は一度死んでいる。
死んだ矢先に”これ”
自分に敗れた呪霊操術のガキの手か何かで蘇らせられた。
最初の不意打ちこそ避けられたが、肉体との感覚が戻ればこの程度の相手は問題なし。
ナイフを仕舞うと、最後の武器であるリボルバーを取り出す。
―――ジャキッ
「なるほど、伏黒甚爾って名かあんた」
操作タブレットに記された身体データの名から四怨は対峙する男の名を知る。
機巧木人が破壊され、今にも殺されようとしている状況だが、四怨の表情は変わらない。
「どうせ、直ぐに死ぬんだ。覚えなくていーぜ」
名前が知られたところでここで仕留めればそれは意味もなさなくなる。
女を殺そうと、動きだす。
「ってことは、伏黒恵って名はあんたの子か?」
ピクと体が止まる。
それは、耳を疑う言葉。
「おい、今なんて言った」
「ん?……伏黒恵と書かれているからあんたの子かって」
「……おい、その紙を見せろ」
「は?自分のデイパックに入っているのを……いいぜ、ほらよ」
四怨が投げて寄越した名簿を無言で受け取ると目を通す。
―――伏黒恵
時が止まった。
眼を疑う。
もう一度、名簿を確認する。
―――伏黒恵
―――”禪院”恵ではなく”伏黒”恵
「……」
―――よかったな
それは、■■に向けた言葉。
☆彡 ☆彡 ☆彡
終章 四怨の酒場
あれからすっかり殺る気が削がれた。
すると、殺す予定だったが女が話しかけてきた。
「……よし、アンタを雇う」
「……あ?」
命乞いかと思っていたが、斜め上の言葉に気が抜ける。
しかし、雇うという言葉にふと孔時雨(ビジネスパートナー)の顔が頭に過った。
「俺を雇うっていうが、金の用意はあるのかよ。いっておくが俺は安くねーぞ」
雇うということは金銭があってこそ成り立つ。
タダ働きはゴメンだね。
「3億」
「……は?」
すると、女はデイパックから中身を取り出す。
黄金の山だった。
素人目でもわかるほど、値打の黄金。
「いや、正確には3億B(ベリー)の価値があるらしい」
かつて、黄金郷と呼ばれた都市”シャンバラ”に眠っていた黄金。
それを手にした海賊が換金した結果、それは3億の値打ちがした。
「アタシらとは紙幣が違うが、同等の価値はあるはずだ」
手にした重みに高純度。
確かにこれなら3億はしてもおかしくない。
「それはあくまで前金。クソゲー攻略に成功したら、あたしのキャッシュカードの残金をすべて払う」
女の言葉に嘘偽りはない。
この女はそこまでしてまで俺を雇いたいらしい。
俺を価値づけている。
呪力がねぇ猿の俺を。
「なんで、そこまでして俺を雇いたい?言っておくが、俺は呪力を持たない猿だぞ」
「あたしがクソゲーをクリアすんのに必要だと感じた。それだけだ」
「クリアすんなら単純に10人殺せば済む話じゃねーか」
そう、呪霊操術のガキの駒として働けば済む話だ。
しかも、願いが叶う特典付き。
まぁ、あの呪霊操術のガキがすんなりと叶えるとは鼻から思っちゃいねぇが。
「バーカ。それは”あたしらのクリア”じゃなくて”縫い目坊主のクリア”だろ。あたしらのクリアはこのクソゲーをぶっ壊すがクリア条件だ」
女はあ゛?馬鹿かといった目で俺を見やがる。
「ゲームってのは、ホスト側と客側両方の勝利と敗北が設定されてるからゲームとして成り立つ。この場合、ホスト側の勝利条件はこの殺し合いが完遂されることだ。とすると、あたしら客側はそれを完遂させないことが勝利条件になる。ホスト側の勝利条件しか用意されてないんだったらそれはクソゲー以前の問題だ」
この女は、この殺し合いをあくまでゲームでしかないと判断しているようだ。
俺は、この女の言葉から耳を離せなくなっている自分に気づく。
「あの縫い目坊主は”忌々しい六眼に介入されないため”と言っていた。つまり、このクソゲーを攻略できるバグキャラが外にいる証拠だ。他にもチート級のアイテムが隠されている。もしくは支給されている。まー、可能性は低いだろうがな……だけどな、どんなに強固な結界術(セキュリティ)を用意しても、厚く複雑になるほどスキマ(セキュリティーホール)も生まれやすくなる」
「……」
―――たしかに。あの六眼やあれなら、この女の言うこともあながち法螺ではなくなるな。
五条悟。
うん百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせ。
そして、俺と殺り合う中、覚醒した。
アイツならこんな結界術なんか直ぐに対応して見せるだろう。
それにあの呪具なら”こちら側”でも対処できる。
女のチートで脳裏に浮かんだ呪具。
それは、”天逆鉾”
その能力は”あらゆる術式を完全解除する”
どんなに縛りを課そうと”解除”されれば、お終いだ。
「それに……」
女が二ィと口元を釣り上げこう答える。
その顔はゲーマーとしての矜持を持つ者の目。
賭けに興じる俺と同じ目。
「猿たちがエンディングに到達するところみたいだろ」
「……は!いいぜ。ひとまずは雇われてやるよ」
―――猿が……非術師が術師を否定して捻じ伏せてコケにする。
―――最高じゃねぇか
自尊心(それ)は捨てたはず。
だが、俺はどうやらそれを―――………
「んじゃ、第一回にして最終回「四怨のゲーム部屋~甚爾編~」のはじまりはじまり~」
【B-3/デパート/1日目・未明】
【夜桜四怨@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:健康
[装備]:韋駄天輪@あやかしトライアングル
[道具]:基本支給品一式。機巧木人・測型@あやかしトライアングル、工具一式 菓子沢山
[思考]
基本:家族の生還とクソゲー攻略
1:雇った甚爾と行動を共にする
2:まずは夜桜邸を目指す(自身の部屋を確認)
3:六美に太陽……死ぬんじゃねぇぞ。あと、バカ長男もな
[備考]
※参戦時期は104話後。
※伏黒甚爾から呪力や呪術界(五条悟・天逆鉾)の存在について知りました。
※伏黒甚爾に夜桜家について簡単に伝えました。(能力や開花については自身のみ)
四怨のクソゲー攻略へのルート ※最新話現在
ルートA五条悟というバグキャラでのクリア
五条悟に接触(ハッキングか5人殺しでの報酬)
ルートB天逆鉾といったチートアイテムによるクリア
チートアイテムの入手(探索もしくは5人殺しの報酬)
【伏黒甚爾@呪術廻戦】
[状態]:疲労(極小)
[装備]:天羽々斬@ONE PIECE リボルバー@アンデッドアンラック、
サバイバルナイフ@僕のヒーローアカデミア
[道具]:基本支給品一式。金塊の山@ONE PIECE
[思考]
基本:雇い主を守りつつ猿の手によるエンディング
1:雇い主の女と行動を共にする
2:伏黒恵……よかったじゃねぇか
[備考]
※参戦時期は75話死亡後。
※名簿を確認して恵の名字が伏黒であることを知りました。
※四怨から夜桜家のことについて簡単に知りました。(能力や開花については四怨のみ)
『支給品紹介』
【韋駄天輪@あやかしトライアングル】
四怨に支給。
香炉木恋緒が履いていた祓忍具。
靴に仕込まれている車輪で韋駄天の如く素早く移動できる。
【機巧木人・測型@呪術廻戦】
四怨に支給。
香炉木恋緒が設計したロボ。
体内には絶頂くすぐり責め装置が内蔵されている。
内部のメンテナンスブースに入れば、直接操作も可能。
PADに測定した相手の身体データを得ることが出来る。
現在は甚爾の手により破壊されている。修理すれば、再稼働できる可能性があります。
【金塊の山@ONE PIECE】
四怨に支給。
空島となった黄金郷シャンドラの財宝。
高純度のそれは3億B(ベリー)の価値がする。
現在は四怨に雇われた甚爾が所有している。
【天羽々斬@ONE PIECE】
甚爾に支給。
光月おでん愛用の一振り。天をも斬り裂くと言われており、閻魔と共にカイドウに唯一傷をつけた刀。
【サバイバルナイフ@僕のヒーローアカデミア】
甚爾に支給。
ステインが使用していたナイフ。
数多のヒーローを殺害・殺傷してきただけに切れ味は抜群である。
【リボルバー@アンデッドアンラック】
甚爾に支給。
1876年の頃、アンディが使用していたリボルバー。
前話 |
登場人物 |
次話 |
START |
夜桜四怨 |
感電 |
START |
伏黒甚爾 |
感電 |
最終更新:2022年05月12日 18:30