アンカリア料理術
第一の書:オーク料理
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第一の書
オーク料理
一見すると、オーク料理はとてもシンプルである。確かに、オーク料理には詳細で手の込んだレシピは多くは存在しない。おそらく、これが今日アンカリアの都市部でオーク料理がポピュラーなものになりつつある理由の一つかもしれない。人々は、洗練された不慣れな料理には飽き飽きしており、それよりも自然でワイルドな味を好むようになってきたのである。「祖先の味」というわけだ。いや、単に「肉の味」と呼ぶべきか?
昨今の都市部には、少なくとも一軒はオーク料理のレストランが存在する。ますます多くの人々が、ユニークでエキゾチックなオークの食べ物を、オークらしい余興と併せて楽しむようになってきている。もちろん、こういったレストランで出される食べ物は文明社会にあわせて色々と改良されている。オークは往々にして人々が食用ではないと考えるものを食べるものである。それらの食べ物の多くが、我々の文明においては名前すら持たない。本書の目的は、オークの調理方法の概論を記すことと、オークが食する特別な食べ物について読者に興味を持ってもらうことである。
オーク料理にはいくつかの原則がある。オーク料理の専門家である料理人グクラツラク氏は、オーク料理の哲学について彼の著書「日常的なオークの食べ物」(第三版)にこう記した(この書は若干言葉足らずであることを認めざるをえない)。
「生き物を殺し、料理すること」
まず、オークの言語には、料理を意味する単語が存在しないことを知って欲しい。「hthak」という単語がそれに近いが、これは食べ物の準備を行う全般的なプロセスを意味する単語である。食事の際の食べ物の状態や動物の種類はさほど重要ではない。また、皮や毛、羽の除去も必須ではない。
上記引用は若干言葉足らずと言わざるをえないが(これはオーク語の魅力でもあるが)、それでも原則をきちんと捉えている。オーク料理には肉が必要なのである。とにかくたくさん必要で、多ければ多いほどよい。この世に肉を使用しないオーク料理など存在しないのである。言い方を変えれば、肉ではないオーク料理を見つけることは簡単ではない。オークには次のようなことわざがある。Karukh nah erak. Karuki toptzak an erak.
(訳:動かないものは食べろ。動くものは殴ってから食べろ。)
オーク料理の飲み物はさらにシンプルだ。オークはビールを飲むが、ビールを飲むには若すぎる場合(1~3歳)は水を飲む。宴会の際には「チューク」と呼ばれるアルコールを飲むこともあるが、その作り方は謎に包まれており、オーク以外の種族には有毒であるといわれている。
さて、これ以上の余談はなしにしよう。ここで三つの典型的なオーク料理のコースを紹介する。ここで紹介するレシピは、全てグクラツラク氏の著書からの転載である。そのほとんどがとてもシンプルなため、我々が若干の改良を行った。改良版のレシピはオリジナルのレシピの下に記載している。
オードブル:耳が長くて足の速い動物
オリジナルレシピ:耳が長くて足の速い動物を殺し、料理する。
改良版レシピ:
兎 1羽(細かく切る)
タマネギ 1個
小麦粉 2 1/4
塩
コショウ
サラダオイル
まずタマネギが茶色になるまで油で炒める。兎の細切れ肉に小麦粉をまぶし、塩コショウをかける。フライパンにサラダオイルとタマネギ、兎の細切れ肉を入れ、肉が全面茶色になるまで炒める。肉を取り出して、サラダオイルとオニオンに小麦粉をまぶしてソースを作る。肉汁のソースが茶色になったら、水を適量加え、兎の肉を戻す。ソースにとろみが出るまで火にかけて完成。
メインディッシュ:剛毛で豚のような動物
オリジナルレシピ:剛毛で豚のような動物を殺す。歯を抜いて料理する。
改良版レシピ
猪 1頭
タマネギ 50個
ニンニク 10個
ビール 20リットル
猪の皮をはいで血抜きをする。切り開いて内臓を全て取り除く。中にタマネギとニンニクをつめる。細い棒を通して火であぶる。9~10時間回転させる。火であぶりながら常にビールをかけるようにする。猪の眼球が抜け落ちはじめたら食べごろである。
デザート:クワックワッと鳴く動物
オリジナルレシピ:クワックワッと鳴く動物を殺す。くちばしと足を取り除いて料理する。
改良版レシピ:
鶏 1羽
砂糖 1/4カップ
蜂蜜 1/2カップ
メース 1/2カップ
クローブ 小さじ1/2
しょうが 1/2
アーモンド 1/4
鶏の羽をもいで、腸、頭、足、臓器を取り除く。蜂蜜、メース、砂糖をボールに入れてかき混ぜる。できたソースを鶏肉にかける。鶏肉をオーブンに入れ、表面が金色に近い茶色になるまであぶる。
第二の書:ドライアド料理
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第二の書
全ての種族において、自然と最も深いつながりを持っているのはドライアドだろう。彼らは木々と密接に関わり合っているため、森の中で成長したり、森に生息したりするもの以外を口にすることを拒む。彼らの食料調達の術は一見すると非常に限られているが、ドライアドの食卓はとても変化に富んでいておもしろい。数世紀にわたりドライアドはその料理術を高めてきた。ドライアドの料理は、数々のニュアンス、様々な味、エキゾチックなレシピなどのおかげで、アンカリアの料理の中でも最も興味深い料理の一つである。
ドライアドにとって、料理とは集団で行う社会的な活動である。彼らは木で出来た樹木の家に住んでいるので、家の中に火を備えた調理場があることが少ない。その代り、村の中央には大抵安全な調理場が備え付けられており、そこで料理ができるようになっている。ドライアドは一度に大量の食べ物を作ることを好み、大釜や巨大なフライパンでの料理に慣れている。ドライアドの料理に詳細なレシピは存在しない。そのほとんどが、基本的な材料と調味料の組み合わせである。
ドライアドの料理において、肉は重要な役割をもっている。森には様々な動物が住んでおり、そのほとんどを食べることができる。たとえば鹿、猪、小型の熊だけではなく、野生のサーモンやカワカマスといった魚も食べられる。ドライアドは狩人なので、もっぱら狩りをして得た野生の動物を食べる。ドライアドの料理の中で、家畜の肉を見かけることはないだろう。
ドライアドは伝統的に植物を育てない。その代りに森の恩恵を受け、多量の野菜を手に入れることができる。その中には様々な種類の果物やベリー類、さらに、ポテトや米、小麦といったものまで含まれる。
ドライアドの食事の特徴として、多彩な調味料とハーブがあげられる。ドライアドは料理をするときに、驚くような量の様々なハーブと調味料を使用する。中にはドライアドの地でしか採取できないものや、他の地域では全く価値がないと思われているようなものもある。ドライアドのハーブに関する知識は他の種族の追随を許さず、熟練のドライアドの料理人なら、一羽の兎からでもすばらしい料理を作ってくれるだろう。
カワカマスのワイン酢ソース
大きめのカワカマス 1匹
ワイン 1 1/4カップ
酢 小さじ2
パン 3斤
ワイルドシナモン 大さじ1/4
白コショウを挽いたもの 大さじ1/8
タマネギ 2個
油脂
ワイルドパセリ
塩
フライパンにカワカマスを置き、ワインと酢をそそいでパセリを投じる。魚が浸るくらいまで塩水をそそぎ、魚の身が白くなるまで茹でる。魚をフライパンから下ろし、ボールにパンを入れ、ワイン酢をパンが浸るくらいまでに入れる。
魚の皮を剥ぎ、背骨とその他の骨を取る。魚は扱いやすい大きさに細かく切る。
煮汁を裏ごししてきれいなフライパンにそそぐ。そのうちのカップ2杯分を、パンを入れたボールにそそぎ、シナモンとコショウを加えて、滑らかになるまで混ぜ合わせる。混ぜ合わせたものをフライパンに戻す。タマネギを少量の油脂で柔らかくなるまで炒め、フライパンに加える。味見をして味を調整し、魚の切り身を加え、再度加熱して出来上がり。
鹿のロースト
タマネギ 4~6個
ワイルドチリ 4~6
ニンニク 4~6個
塩
レッドペッパー
レモン汁
水
油脂
タマネギ、チリ、ニンニクを細かく切る。鹿の肉に小さな穴を複数開け、細かく切ったタマネギ、チリ、ニンニクを詰める。
レモン汁と水を混ぜて肉にかけ、一晩置いてマリネにする。大きめの鍋で肉を炒める。油脂を鍋に溶かして水を適量加える。弱火で4~6時間煮る。鹿の肉を取り出し、ソースに小麦粉を入れてとろみをつける。
ドライアドのシチュー
野生の猪のショートリブ
小麦粉 1/4カップ
油 1/4カップ
ビーフストック 5カップ
シナモン 大さじ1/2
クローブを挽いたもの 大さじ1/2
メースを挽いたもの 大さじ1/2
カルダモン 大さじ2
ペッパーコーン 4
タマネギ 1個
パセリ 6本
セージ 大さじ1
酢 カップ1/4
サフラン 大さじ1/4
全粒小麦粉のパン
パセリとセージを細かく切り、タマネギをみじん切りにしてカルダモンはすりつぶす。
リブに小麦粉をまぶし、茶色くなるまで油で炒める。ストックとサフラン以外の調味料、ハーブを入れ、2時間煮る。パンを酢とサフランに浸し、ピューレ状にして、シチューに混ぜ入れる。味見をしてさらに30分煮込む。
第三の書:アンカリアの飲み物
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第三の書
アンカリアの飲み物
アンカリアの酒場では、実に様々な飲み物を見かけることが(そして注文することが)できる。食べ物とは違い、飲み物においてはアンカリアの異なる文化や異なる種族がお互いに影響しあっていると言える。飲み物の選択肢が少ないオーク(実際のところビールと水だけである)を除いて、全ての種族が様々な飲み物を共有している。例えば、初めてお茶を飲んだのはドライアドといわれているが、お茶はすぐにその他の種族でも毎日のように飲まれる飲み物の代表となった。
水は最も自然な形態の飲み物で、多くの飲み物の原材料となっている。フルーツジュースとワインは例外である。
蜂蜜酒
蜂蜜酒は、蜂蜜をベースとした醸造酒である。アンカリアには様々な蜂蜜酒があり、季節性の高いものや、地域性に富んだものが多い。しかし、全ての蜂蜜酒に共通して言えることは、蜂蜜とアルコールの組み合わせには非常に強烈な効果があるため、それと知らずに飲んだ人は大変な目に遭う点だ。
ドライアド・レモン・ミード
この蜂蜜酒はアンカリアの南部で、ドライアドによって生み出されたといわれている。そのフレッシュな味は、蜂蜜の重い香りとは対照的である。
水 6リットル
ナツメグ 15グラム
レモン皮 1
蜂蜜 1リットル
レモンの果肉 2~3
レモン汁
完成までの期間:1ヶ月
蜂蜜1リットルに対し、水6リットル、ナツメグ15グラム、レモン皮とレモンの果肉を2から3加える。これらを煮込み、灰汁が出てこなくなったら、火から下ろして冷ます。最後にレモン汁を搾りいれる。1ヶ月程度で蜂蜜酒が出来上がる。
クローブン・ミード
とてもシンプルだが、風味のある蜂蜜酒。クローブとしょうがの強い香りが、この蜂蜜酒の味にアクセントを加える。クローブン・ミードは、暖かくして冬場に飲むのが一番ポピュラーだ。
蜂蜜 1,350グラム
水 1リットル
しょうがの根っこ 15グラム
クローブ
メースの葉
キンミズヒキ
完成までの期間:2~3ヶ月
1,350グラムの蜂蜜を1リットルの水に溶かして煮込む。沸騰し始めたら、しょうが15グラム、クローブ、メース、少量のキンミズヒキを加える。1時間煮込み、定期的に灰汁を取る(相当量の灰汁が発生する)。別の容器に裏ごしし、冷めるまで待つ。黒いクリーム状になるのを待ち、2~3ヶ月熟成させる。
ビール
アンカリアにおける最もポピュラーな飲み物は、ビールである。サイリサイアムの高貴なバーからスラム街の酒場まで、大量のビールが毎日消費されている。
ビールの醸造は比較的簡単で、それゆえに価値も手頃である。もちろん、蜂蜜酒と同じで様々な味のビールがあり、アルコール度数も異なる。
アルコール度数の低いビール
10リットルのビールの醸造:
麦芽 2,100グラム
エンバク 675グラム
水 13リットル
イースト菌 1カップ
ライトオーク材のチップ 110グラム
水を沸騰させ、麦芽をつぶして乾燥したエンバクと混ぜ合わせる。醸造桶をストーブの近くに置く。水2リットルを桶に入れ、ろ過槽に麦芽とエンバクを混ぜ合わせたものを入れる。ゆっくりと沸騰したお湯3リットルを麦芽とエンバクにかけ、醸造桶にふたをして数分間放置する。さらに沸騰したお湯1リットルを加え、再度ふたをして20分間放置する。
ふたを取って中身をかき混ぜる。中身がどろどろしはじめたのを確認し、ふたをもどして2時間冷ます。醸造桶を開け、さらに沸騰したお湯を3リットル加える。かき混ぜたら再度ふたを閉じ、30分間待つ。最後に残りのお湯を入れ、よくかき混ぜる。
麦芽汁をろ過し、注意深く大半の水分が切れたことを確認する。発酵桶ふたをし、麦芽汁は一夜かけて冷ます。
麦芽汁にイースト菌を加え、よくかき混ぜる。1日発酵させると、イースト菌が活性化し、醸造工程も大詰めである。オーク材のチップを、カップを使って水で煮る。水が茶色くなったらすぐに火から下ろして冷ます。新しく水を加え、さらに煮る。そうしてできた煮汁を麦芽汁に加え、数日間発酵させる。
第四の書:テーブルマナーとエチケット
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第四の書
テーブルマナーとエチケット
マナーとエチケットに関してはさんざん議論されてきたが、それでも多くの間違いや失敗が生じるものである。テーブルほど人の教養の無さを明らかにする場所は他にはない。エチケットの基礎くらいは理解していないと、少なくとも恥ずかしいものである。しかし、時にはそれは致命的にもなりうる。「コンビーフ戦争」の引き金となった悪名高い「破滅の晩餐会」が最も有名だろう。
テーブルマナーとは、T-エネルギー学のような難解なものではない。誰でもテーブルでの振舞い方を心得ているべきであり、よからぬ事態を引き起こさないために文化的な違いについても心得ておくべきである。
他人と食事をともにするときにまず気をつけなければならないのは、どの食べ物に対してどのナイフやフォークを使うかという点だ。
肉にはフォークを使用しなくてよい。ナイフで切り、手でつかんで食べるだけである。フォークは熱くて手に取れない小さな食べ物に対して使用する。
もしフォークを使って自分の背中をかきたい場合は、食事で使用しているフォークを使うべきではない。その代りに、隣の席の人に、フォークを使っているかどうか丁寧に尋ね、隣の席の人もフォークを使用している場合のみ、自らのフォークで背中をかいてもよい。
決してテーブルクロスで手を拭いてはならない。往々にしてテーブル下には残り物目当ての猫や犬がいるものなので、その毛を使って手を拭こう。もしテーブル下に何もいない場合は、服、髪の毛、髭などを使って手を拭いてもよい。
決して自分の食事に向かってげっぷをしてはならない。とてもマナーが悪いと考えられているからだ。右か左を向き、隣の席の人に向かってげっぷをしよう。もし隣が女性の場合は、一言謝ろう。もし男性の場合は、グラスを手にとって乾杯をしよう。もしオークの場合は、一発殴るか・・・すぐに逃げるべし。
入れ歯をナイフで取るのはマナー違反である。フォークであればその限りではない。
正式に乾杯をするには、デリケートで複雑なマナーが要求される。乾杯には順を追って踏まなければいけないステップがあり、マナーの達人でもときに失敗するものである。一から全てを説明すると長くなりすぎるので、原則を説明する。まず、もし場に王族がいる場合は、王族に対して最初の乾杯を行う。もし王族がいない場合や、後継者争い中の場合は、最高位の貴族に対して乾杯を行う。その後の乾杯は、晩餐会の主催者、テーブルの最年長者、そして最も長く印象的な名前の人の順番で行う。
もしオークの食事会に出席する場合は、食事会の後のけんかに参加しないのは無礼と考えられている。誰かを殴り飛ばすのは、消化の助長になると考えられているのだ。もし参加しなければ、あなたが食事を気に入らなかったことを意味し、侮辱となる。
一般的に、オークは野菜や植物を食べないといわれている。もしオーク料理の中に緑色の何かを発見したら、それは決してサラダではなく、飾りである。恥をかかないように、それは食べないようにしよう。
もし出された食事が口に合わない場合は、テーブルの下に静かに落とせばよい。隣の席の人が見てないからといって、その皿によけてはならない。
吟遊詩人が食事中に歌うくだらない歌はうっとうしいものだが、かといって殴りかかってはいけない。暴力に訴えるのは弱者のみである。礼儀をわきまえている人は、皿の残り物を吟遊詩人の顔に投げつける。
パン、ぶどうなどの食べ物をテーブルの反対側の人に向かって投げつけるのは、よく知られたゲームである。ただし、やりすぎには注意すること! 決して鶏や小ガモより大きなものを投げつけてダメで、投げつける食べ物の堅さも柔らかすぎず、硬すぎないものを選ぼう。また、このゲームのために小型のカタパルトを持ち込むには、事前の同意を得ておく必要がある。
第五の書:楽しい宴会の手引き
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第五の書
楽しい宴会の手引き
「ゲストの機嫌を損ねないためには」
祝宴の準備とは困難なものである。祝宴の失敗といらだったゲストほど、祝いごとを台無しにするものはない。祝宴の主催者は責任をもち、決して安請負をしてはならない。しかし、心配することなかれ。本書では、祝宴にまつわる様々な障害や問題を回避する方法をお教えする。
準備
祝宴の全ては準備から始まる。最初のステップとして、次のような疑問に対する答えを明確にしておかなければならない。祝宴に招待する人数は何人くらいか。調理場とテーブルの大きさは十分か。下準備が必要なものはあるか。当日に全ての準備ができるか。食事の参加者は誰か。参加者の文化や宗教によって出せない食べ物はあるか。計画が全ての鍵である。これらの疑問に十分答えることができるようになって初めて、次のステップに進んでもよい。次のように数多くの祝宴が、その準備不足が原因で失敗してきた。
「だが、給仕がキッチンには薪が十分あると言っていたんだ。彼の自信はどこから来ていたんだ?」
「肉が少し変とはどういう意味だ?」
「本当にあのオークのくずども・・・いや、オーク族の人々を招待したのか?」
「私のレシピはどこへいった?」
このような質問が出てくるということは、準備不足だったということだ。もし疑問が浮かんだら、他人に尋ねるのではなく、自身で答えを考えよう。もし答えが見つかったらメモしておこう。紙が物忘れをすることはない。
テーブルや椅子の数だけでなく、テーブルクロスの数が十分であるかも確認しよう。ロウソクと適度な照明は必須である(「肉はどこだ?」)。
メニューの計画
おそらく、祝宴における最も重要なステップは、どの料理を出すかの決定である。大きな祝宴の場合、4品目以上のコースはオススメしない。もちろん、今まで試したことのない料理を出すべきでもない。また、調味料のいくつかは季節的なもので、常に確保できるとは限らないことを覚えておこう。
次のコースをオススメする。
パン、バター、果物
スープまたはシチュー
肉料理
デザート
シチューには、タイムを使った鶏肉のクリームシチューをオススメする。このシチューのレシピはアンカリアのあらゆる文化において知られており、準備にも時間を要しない。とても良い香りがするので、オードブルにはうってつけである。
タイムを使った鶏肉のクリームシチュー
鶏肉 15片
オリーブオイル 大さじ2
タマネギ 1/2
ニンニク 2片
小麦粉 大さじ2
マッシュルーム 1 1/2カップ
鶏がらスープ 1カップ
パセリ 小さじ4
タイム 小さじ1 1/2
シェリー酒 1/4カップ
コショウ 小さじ1/4
サワークリーム 1/4カップ
鶏を細かく切る。オリーブオイル大さじ1を鍋に入れ、煙が出ない程度に暖める。鶏肉を入れ、茶色になるまで炒める。鶏肉を取り出し、残りのオリーブオイルを鍋に入れる。タマネギとニンニクを入れ、タマネギが茶色になるまでかき混ぜる。小麦粉を混ぜ入れ、小麦粉が溶けるまで混ぜ続ける。
マッシュルーム、鶏がらスープ、パセリ、シェリー酒、タイム、コショウを加える。とろみがでるまで煮て、鍋に鶏肉を戻して1分間火を通す。
サワークリームを混ぜ入れ、熱いうちにゲストに出す。
肉料理には、次の料理をオススメする。
猪肉とピーナッツオイル
ピーナッツオイル 大さじ3
猪 1頭
ニンニク 2片
しょうがの根 小さじ1
大根 1/2束
タマネギ 2個
ソース:
クランチピーナッツバター 小さじ2
大豆油 小さじ1
酢 小さじ1
ゴマ油 小さじ2
チリペッパー 2片
砂糖 小さじ2
ブイヨン 1/3カップ
猪を細かく切る。大根をお湯に数分浸し、水気を切って四つ切りにする。タマネギは細かく切っておく。
ピーナッツバターと大豆油を混ぜ合わせ、残りの材料を加えてソースを作る。ソースはそのまま置いておく。
フライパンに油をひく。煙が出始めたら、猪の肉を入れて1分間炒める。ニンニクとしょうがを加えてさらに1分間炒める。猪の肉を鍋に移し、ピーナッツソースを加える。熱を加え、煮えるまでに15分放置する。途中でタマネギを加える。もしソースが固まるようなら、さらにブイヨンを加える。
大根を加え、さらに5分間煮る。その後火から降ろして、ゲストに出す。
第六の書:古代のレシピ・外国のレシピ
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第六の書
古代のレシピ・外国のレシピ
我が国の図書館には、数え切れないくらいの古代の本と巻物が収められている。だが、その中で調理法に関する本はほんの少ししかない。旧暦829年頃に書かれたエルフ・ハイロードのタウリス・オブ・グラート著の「食品大全」と、旧暦600年以前に書かれた「汝が目にするものは、汝の食べ物」が、現存する数少ない書物である。両書とも、食べ物に関して多くのおかしなアドバイスをしている。本に書かれている多くの材料が今では手に入りにくく、多くのレシピがあまりに奇妙で、そのレシピで出来る料理を誰も食べたいとは思わないだろう。両書ともに古代の不可解な言語で書かれており、アンカリアの現代の言葉に翻訳するのが非常に難しい。中には、まったく翻訳が不可能な部分もあるようだ。それでも、これらの本はとても興味深く、料理好きの読者以外でも楽しめる。また各時代の食生活を如実に物語っているため、この世界の歴史についても色々と教えてくれるのだ。
「食品大全」より抜粋
タウリス・オブ・グラート著、旧暦830年頃
ゴブリンのマスタードソース和え
まずゴブリンを狩り、頭、手、足を取り除く。巨大なフライパンで、塩、コショウ、ニンニク、ハムと合わせて炒める。ゴブリンの皮が茶色になったら、フライパンを火から下ろす。オニオンリングを水に入れ、数分間茹でる。オニオンリングが柔らかくなったら、鍋を火から下ろす。マスタードとブラシを用意し、マスタードをゴブリン全体によく塗りつける。オニオンソースをゴブリンにかけて出来上がり。もう少しスパイシーなほうが好みなら、ペパロニを細かくつぶして、ゴブリンにかけて食べよう。
スクランブル・ハーピーエッグ
ハーピーから卵を2~5個盗む。殻を割って味付けを行う。鍋に油を敷いて卵を入れる。木べらを使って卵がどろどろしはじめるまでかき混ぜる。どろどろしはじめたら、火から下ろして冷ます。パンといっしょに召し上がれ。
ジャイアント・ラビナス・ラマのグラーシュ
仲間を集め、ジャイアント・ラビナス・ラマを狩る。
(目安として、一匹のジャイアント・ラビナス・ラマで八人が満腹になる。)
ラマは非常に危険な生き物なので注意すること。有毒の唾に当たらないように気をつけ、安全ゴーグルを身につけるのも忘れてはいけない。ジャイアント・ラビナス・ラマを倒したらすぐに皮を剥ぎ、内臓を取り出す。巨大な鍋に水と一緒に入れ、数時間茹でる。肉の色が灰色になったら火から下ろす。肉から骨を取り除き、肉を細かく切る。細かく切った肉は別の鍋に入れておく。
タマネギ、しょうが、コショウ、メース、塩、酢、そしてワインを巨大な鍋に入れる。水を適量加え、乾燥させたリスを何匹か入れて30分煮込む。火から下ろし、次に巨大なフライパンを取り出してラマの肉を入れる。肉がダークブラウンになるまで炒め、ソースと混ぜ合わせて出来上がり。
バジリスク・ベーコンラップ
バジリスクの頭に袋をかぶせて捕まえる。バジリスクが死んだら皮を剥いで内臓を取り出し、中にタマネギ、りんご、塩、コショウ、シナモンを詰め込む。ベーコンを回りに巻いて、糸で固定する。バジリスクを火にかけ、15時間あぶり焼きにする(バジリスクの肉は火に対して抵抗力を持っているため、時間がかかる)。熱いうちに召し上がれ。なお食事中、皿は見ないようにしたほうがよい。
これらのレシピがどこか奇妙なのは明白だろう。中には明らかに異常と思えるものまで存在する。それゆえ、歴史学者の中にはこの本を単なる悪ふざけの本だと言うものもいる。また、不可解な言語のずさんな翻訳が原因だと言うものもいる。しかし、高名な研究者でさえも、さらに歴史的な本である「汝が目にするものは、汝の食べ物」について語るときは慎重になるという。この本は、古代の
ハイエルフ の遺跡の発掘作業中に見つかった。本の状態は悪く、多くののページが完全に破れており、残りも水によって重度の損傷を受けていた。さらに、この本は数世紀以上使用されていない人間の古い方言で書かれていた。それでも数ページが解読され、複写された。
「汝が目にするものは、汝の食べ物」より抜粋
著者不明、旧暦600年頃
ヴァンパイア・タルト・フランベ
ヴァンパイア 1~2
木の杭 1本
ニンニク 55個
タマネギ 3つ
パセリ
ニガヨモギ
まずヴァンパイアに木の杭を刺し、ヴァンパイアをマヒさせる。大きめの鍋に、ニンニク、タマネギ、ニガヨモギ、そして少量のパセリとヴァンパイアを入れる。日が昇るまで待ち、1分程度ヴァンパイアを朝日に照らす(ミディアムなら30秒程度)。
リスのシチュー
リス 50~60匹
水 40リットル
トマト 3つ
塩
コショウ
メース
タイム
リスを大きめの鍋に入れる。トマトを細かく切って鍋にいれ、水を加えて、大きめのエドガー(訳注:エドガーとは大きめの調理用スプーンを指す古代語)でかき混ぜながら1時間程度煮込む。
スープが濃くなったらすぐに、塩、コショウ、メース、タイムを加える。さらにエドガーでかき混ぜ、さらに塩で味を調整して出来上がり。
クリームをシチューに載せて、熱いうちに召し上がれ。
マジック・スカラベ団子
スカラベ 20匹
小麦粉
卵
タマネギ
ペパロニ
砂糖
塩
マジック・スカラベを20匹集め、羽と触覚を取り除く。卵、小麦粉、適量の水をボールで混ぜ合わせて生地を作る。タマネギとペパロニを細かく切り、生地に混ぜ合わせる。スカラベの回りに生地を巻き、団子状にする。表面が茶色になるまで団子をあぶり焼きにし、火から下ろして砂糖と塩で味の調整を行う。強めのスカラベの臭いを抑えるために、サワークリームと一緒に食べるのもよい。
注意書き
きちんとした調査なしに、これらの料理にチャレンジすることはおすすめしない。本書の編者は、たとえ読者がこれらのレシピを実践して精神的、肉体的なダメージを負ったとしても責任を負わない。それでもこれらのレシピを試すだけの「勇気」を持ち合わせた読者がいたとしたら、是非その感想を我々に送って欲しい。
最終更新:2011年07月23日 23:13