モンスターの知識
ドラゴンと遭遇したら
ドラゴンと遭遇したら
ドラゴンは、まず間違いなくアンカリアにおける最も魅力的な生き物だろう。ドラゴンには様々な種類があるが、真に目を奪われるような姿をしているだけではなく、賢く、五感を有する生物である。
ドラゴンの姿は神々しく、尊敬に値する。長さにして最大で500アンカリア尺、高さにして350アンカリア尺の大きさを持つ。体重については、確かな情報が存在しない。今までドラゴンに計りの上に乗ってくれるよう説得できたものがいないからだ(その巨体は計りではなく、すぐに説得者の上にのしかかってくるだろう)。多くの冒険者が、ドラゴンに体重を聞くとどうなるかを、女性に同様の質問をして身をもって理解している。
ドラゴンの起源、そして彼らがこの世界に君臨し続ける動機は定かではない。しかし、ドラゴンがアンカリアに安息の地を見つけ、その他の俗世界と遮断された世界を保っていることは知られている。
ドラゴンはとても希少な生物のため、遭遇したときのために常に準備をしておくことは重要だ。ドラゴンは必ずしも他の生物に対して敵対心を持ってはいないが、特異な性質を有した奇妙な生き物である。一見すると大したことのないような発言やジェスチャーでも、その怒りを買ってしまうこともある。これらの間違いの多くは回避可能だ。
ドラゴンは紛れもなく自意識過剰な生物である。お世辞やおだては通じない。その逆に、否定や反論はすべて侮辱として受け取られる。ドラゴンとの会話を試みるなら、皆これらの点を頭に置いておくこと。発言の際には肯定的な単語を選ぶことを強く推奨する。恩着せがましいような発言は、たとえわざとでなくても、絶対に回避しなければならない。
全てのドラゴンは傲慢で尊大であると考えよ。ドラゴンは自身を何よりも優れていると思っている。一般的に、ドラゴンが他の生物を自らに相応しいと思うことはない。ドラゴンと対峙するときは、自らの態度に気を付けること。
ドラゴンの最も大きな弱点の一つはその好奇心である。ドラゴンは常に自らが知らぬことに興味を持っており、それをアドバンテージとして利用できるかもしれない。
体臭はとてもセンシティブな問題だ。ドラゴンの臭いが、「ひどい」ことは、否定のしようがない。ドラゴンは、腐敗臭、硫黄、焼け焦げた肉などから発せられる悪臭をまとっている。身体をコントロールし、自然とわき上がってくるだろう吐き気を我慢しなければならない。もし我慢できなかった場合は、素直に吐いてしまったほうがよい。鼻をつまむような動作をすると、侮辱と取られかねないからだ。
ドラゴンには人間を捕まえる習性がある。多くのドラゴンが人間を犬小屋で飼っている。捕まったかわいそうな人間の多くが、自身の排泄物だけで何年も生きることを余儀なくされるため、まともな姿をしていない。しかし、もしドラゴンから軽い食事を勧められたら絶対に断ってはいけない。ドラゴンは食事や誘いを断るのを大変嫌うからである。
ドラゴンは、尊敬と礼節を持って接されることを好む。機嫌取りや馴れ合いが快く思われることはない。ドラゴンはもちろんエルフではないが、エルフの礼節は理解しており、適応している。
「ベルトラクは、兵士が彼のテントに入ってきたときに驚いて飛び起きた。周りに兵士がいることに気づくのに一秒くらいの時間が必要だった。
「時間ですか?」とベルトラクは尋ねた。兵士は頷いた。
少人数の使節団は、すぐに出発の準備を整えた。ベルトラクは荷物をチェックし、帝国の名でドラゴンに渡す書簡が入れ物にきちんと収まっていることと、ベルトにしっかりと縛り付けられていることを確認した。使節団は、丘に向かって歩き始めた。
ベルトラクは外交官として生まれたわけではない。彼はなぜ自分がこの任務に抜擢されたのか、再度自問した。国境を少し動かすためにドラゴンと交渉するのは、彼の日常ではなかった。彼は自分よりこの任務に適した人がいると信じていた。
予定された集合地点に到着すると、使節団は高い岩山にドラゴンが居座っているのを目にした。ドラゴンはその頭を腕の上で休め、反対側の腕の爪で石に模様を描いて、息を切らしながら丘を上がってくるエルフの一行を凝視していた。
後方を兵士に守られているベルトラクは、一瞬立ち止まって自らを落ち着かせた。書簡を探して入れ物を開け、紙の巻物を取り出して広げた。唾を飲み込むと、声を上げて政府の書簡を読み上げた。
「言い表せないほどの危険と幾多の困難にも関わらず、我はコボルトの町の外れにあるこの城までやってきた・・・」
ベルトラクは凍りついた。彼の頭は状況を分析しようとする一方で、激しく混乱していた。書簡を入れ替えるなんてくだらないいたずらをしたのが誰であれ、その責任を取る必要があった。ベルトラクは咄嗟に兵士の顔に目を通し、したり顔をした兵士を一人見つけた。テルトー、あいつに違いない!妻を横取りされたのを妬んでいたのだ。
ドラゴンはまぶたを上げた。ドラゴンが表情で感情を表すことは少ないというが、驚いた風だった。
ベルトラクの頭は必死に回転した。一か八か、即興で何か言うしかない。早くしなければ!適当な挨拶の言葉を考えながら、一滴の汗が彼の額ををしたたり落ちた。「親愛なる」や「おい」で始まる言葉はすぐにリストから除外された。重圧に押しつぶされそうになり、極限の状態に追い詰められた彼は、遂に最後の手段に出た。素早く深呼吸をし、まず一言叫んだのだ。
「こんにちは!」
(アンカリア英雄伝説、第四の書)
※原文ではベルトラクとベルトレクの二つの表記がある。ここではベルトラクに統一した
トロール
トロール
国中の図書館を回ってトロールに関する研究結果を探すのは、往々にして無駄に終わる。原始的で愚鈍なトロールを研究する意味は無い、というのが一般的な研究者の合意であるからだ。トロールはオークの領域に生息する、巨大で攻撃的な生き物である。多くの学者と冒険者は、トロールの解説としてはそれで十分と考える。
トロールがアンカリアにおける最も賢い生き物でないことは、誰しもが認めることだ。トロールの平均的な語い数は100語程度だといわれ、その多くが基本的な欲求、つまり「食べる」「飲む」「戦う」「子供を作る」といった単語のバリエーションである。完全な文章を作れたり、簡単な算数の問題を解いたりできるトロールはとても稀だ。それでも中には他より優れた個体も存在する。そのようなトロールの有名な例が、アルタマークの北部出身のトルグツクだろう。トルグツクは、短いながらも小説を3冊以上書き、世に出した。しかし、これらの小説は実はトルグツクのノミとハンマーで作られたものではなく、二流のオーガ作家によるものともいわれている。
トロールは戦いを愛する。トロールは対戦相手を潰し、ばらばらになった死体を貪り食うことを好む。戦いはトロールにとって生きる目的のようなものである。それ以外ではトロールは平和を好み、紳士的な側面すらある。トロールが戦えない状況に置かれたら(例えば、監禁されたら)、大人しくなり、争うのを諦めて自害するという。トロールの寿命は150歳程度だが、捕らわれて数年以上生き延びたトロールはいない。オーキッシュ・バイウェイの近くに長年住んでいたといわれるグロッツは、盗賊との戦いで命を失ったとき、184歳だったという。
オーガやオークと同じで、トロールの主食は肉である。トロールは一度に大量の肉を食べ、短い時間で消化することができる。さらに小石を食べ、岩をも食べる。トロールの歯はこういった食生活に最適で、あらゆる金属より固い。
トロールの視覚はとても悪いが、嗅覚は抜群に優れている。トロールの狭い視野はよく知られており、冗談や比喩によく用いられる。
アンデッドの対処法の手引き
アンデッドの対処法の手引き
「『それ』は私に向かって、身体を揺らしながら近づいてきた。その体は変にねじれて、関節は外れているように見えた。その奇妙な外見を一目見て、すぐにそれが何か想像がついた。それが何かを喋ろうとしたとき、緑色の禍々しい液体がその口からこぼれ落ちた。私はとっさに剣を抜いたが、よく見るとそれがゾンビではないことに気づいた。それは、泥酔して寝室に向かう隊長だったのだ。」
(冒険家ナイジョルの冒険記より)
冒険者なら誰しもがアンデッドについての噂を耳にするが、実際に遭遇したことのあるものは少ない。荒廃した墓地に巣くう人を襲うゾンビ、古戦場にいる凶暴なスケルトン、狼やコウモリ、ゴーストに変身して延々と人を驚かし続けるヴァンパイアなど、アンデッドの形や生態は様々だ。
アンデッドは著しく不快なだけでなく、非常に危険なモンスターとして分類される。アンデッドを過小評価していた冒険家の多くが、「命を持たないもの」に命を奪われた。この手引きは、向上心に燃える冒険家に向けた、アンデッドモンスター攻略の手引きである。我々のモットーは「敵を知ること」だ。では早速敵について考察してみよう。
最も下位のアンデッドモンスターは、スケルトン、ゾンビ、マミーである。これらは全て再生された死体で、精神や知性を持たない。死体の再生は屍術の基礎で、死の呪文を操るものにとっては、死ぬほど簡単である(冗談)。恐らくこれは、この種のアンデッドモンスターが一番多く存在し、より多くの亜種が存在する理由だろう。
スケルトン、ゾンビ、マミーへの対処法はとてもシンプルである。遭遇するのを回避するために、墓地や古戦場に近づかないようにするだけだ。地下墓地やダンジョンもまたこの種のアンデッドモンスターが好む場所である。
もしそれでも遭遇してしまった場合、そこで起こせるアクションは限定される。会話による説得はまず無意味なので、己の力に頼るしかない。しかし、ゾンビやスケルトン、特に後者はとてもタフなため注意すること。彼らは屍術によって体をつなぎ止められているため、深い傷や手足を失っても、短時間で再生することができてしまう。全ての体の部位が完全にばらばらになってはじめて魔力の効果が消え去り、そうして初めてアンデッドは消滅する。
スケルトンとゾンビの知性はゼロに等しいが、グールは多少の思考能力を有している。グールは半死半生のモンスターである。生と死の狭間に取り残されたグールは、当てもなく辺りをさまよい、人間などの死体を餌とし、臆病であることが多い。それでも、グールとの切迫した衝突を説得で解決しようとするのは無駄である。まず剣を抜かなければいけない。
「『300年前なら、その一撃で死んでいたかもしれんな』とゴーストは勝ち誇ったかのように言い放つと、鍵のかかった扉をすり抜けて消えていった。私は剣を手に、一人取り残されてしまった。」
(冒険家ナイジョルの冒険記より)
ゴーストや亡霊は肉体を持たないため、肉体を持つゾンビやスケルトン、マミーといったアンデッドの対極に位置づけられる。生物の永遠なる部位だけが再生された結果がゴーストや亡霊である。彼らは十分な思考能力を有しており、喋れることも多い。複雑な屍術の呪文を組み合わせて生み出される。
肉体を持たないにも関わらず(もしくは、それ故に)、ゴーストや亡霊はとても危険な敵となりうる。生半可な武器ではゴーストにダメージを与えることはできない。もしゴーストを相手に戦う気であれば、魔法を使うか、少なくとも魔法の武器が必要となる。それらの方法以外でゴーストにダメージを与えることはできない。
ヴァンパイアは究極のアンデッドである。ヴァンパイアは自由で自立しており、十分な思考能力と魔力を有する。
ヴァンパイアは屍術で作られるものではなく、自らの意思でヴァンパイアとなる。ヴァンパイアがどこにいるのか、はたまた本当に実在するのか、真実を知るものはいない。確かなのは、ヴァンパイアが極めて危険なモンスターであるということだ。
ヴァンパイアに遭遇し、生き延びてその武勇伝を語ろうとする冒険者は少ない。木の杭をヴァンパイアの心臓に突き刺すと、マヒさせることができるというのは実例もある事実だ。また、ヴァンパイアは頭を打ち落とすことで倒すことができる。よくニンニクや聖水が効くとか、流水を苦手とすると信じられているが、これらは全て迷信で、実際には効果がないと多くの筋が伝えている。
最終更新:2024年08月06日 11:53