薬草学
第一の書:概要
第一の書
概要
アンカリアの多くの人々は四種類以上のハーブを見分けることができない。しかし、ハーミットリーブは臭いがひどいが料理の香辛料として使用できること、セレンダインが山羊のミルクに苦味を足すこと、シャドウモスが捻挫に効くこと、そして(多くの人々が正しく発音できないが)マンドラゴラオフィシナラムが恋愛に奇跡を起こすことはよく知られている。一般的にハーブは三つのカテゴリーに分類される。料理用の香辛料、薬草、そして毒草である。博識の薬草師であれば、傷の回復に使用するハーブが場合によっては死をもたらすこと、そして極めて危険な毒草が恋愛に利用できること(毒殺ではない)も知っている。
薬草師は、馬蹄が緑を踏みつけたり、陰惨な森が平野に変わったりする必要がないような、村や町の通りから遠く離れた場所で活動する。薬草師の知識は親から子に受け継がれるが、その知識を伝授されるのは己の技能を証明したものだけである。ヒーラー、毒薬調合師、そして料理人は、薬草師が訓練をはじめるころからつばをつけ、一流の学者になるのに期待する。大半の薬草師は、なぜ自身の知識が必要とされているか気に止めない。パンを切るのに使われるか、または頭を切るのに使われるかを刃が気にしないのと同じ理屈である。中にはギルドに参加するものもおり、そういった薬草師はヒーラーとして生計を立てる。多くの人々が薬草師にその命を助けられたり、生活を支えられたりしているため、多くの村や町で薬草師は敬われている。薬草師が無償で働くことはめったにない。よく薬草師は、コケに覆われた掘っ立て小屋に住む、降霊術を崇拝する森ゴブリンのようだといわれるが、薬草師はとても商売上手で、時と場合によってはハーブが同じ重さのお金よりも数百倍の価値を持つことをよく理解している。
もし薬草師の仕事に興味があるなら、尋常ならざる忍耐力と優れた洞察力が必要となる。ハーブの採取とは手間のかかる仕事で、単なる雑草と薬用のハーブとの違いとは微々たるものである。この分野の初心者は、たとえ最初の調合の結果で出来たものがただのスープや、最悪の場合、死をもたらす調合物(それでも、試しに使用するべきである)であっても、落ち込むべきではない。初心者は、瀕死の患者が抱える病気を集中的に取り扱うべきである。仮に調合に失敗してその患者が死んでも、誰もヒーラーに文句を言わないからだ。最初の関門を突破したら、その後の未来は明るい。ハーブとは、夜に足を痛める狩人から、イボに悩まされる貴族まで、誰しもが必要とするものである。数世紀にわたって、反道徳的な実験好きの薬草師たちの努力によって、あらゆる病気や症状の治療法が確立されるまでの知識が積み重ねられてきた。恐ろしい大病、そしてかなわない恋の病気や口臭まで治療することが可能となった。もちろん、優秀な薬草師でさえ全てのハーブを知ることは不可能である。なぜなら、その中には砂漠にしか生えないもの、山地や沼地でしか採取できないもの、そしてアンカリアで最も希少なハーブといわれる、火口でしか手に入らないファイアランスというようなハーブが存在するからだ。そのため、病気に悩む人が、自分に必要なハーブがわかり、かつどこで手に入るかを知っている薬草師と出会うことができれば、その人はとても運が良いといえるだろう。逆に、少し考えたあとに「まだ試したことはないですが・・・」「まず試してみましょうか・・・」などと言うような薬草師からは、すぐに逃げたほうがよい。
最後に一つ警告したい。薬草師としての人生に危険はつきもので、愚かなハルムッド王の話がそれをよく物語っている。とある予言者に「あなたは毒殺されるでしょう」といわれた王は、すぐさま国中の毒薬調合者と薬草師を一人残らず殺してしまったのである。最後の薬草師が息を引き取った後すぐに、王は敗血症で死んでしまった。その原因は、りんごの皮むき中に親指を切ってできた傷によるものだった。
第二の書:アンカリアにおけるハーブ―その効能、用途、特徴
第二の書
アンカリアにおけるハーブ-その効能、用途、特徴
スレッドラッシュ-背高の草むらに育ち、野原の片隅に育つ。火を通してとろみをつけると、目の痛みや打撲に対して効能のある、粘り気のある塗り薬になる。塗り薬として使用する場合、丸一日以上塗りっぱなしにはしないこと。こめかみや額に塗った場合、二日酔いにも効果があるとされる。酒場や兵舎の近くに住むヒーラーの必需品である。
パープルコーンフラワー-日当たりのよい乾燥した平野に生え、日陰では絶対に咲くことはない。このハーブを噛むと口臭をかき消すことができるため、ハーミットリーブスの効能を無効にすることができる。塗り薬として使えば日光から皮膚を守ることができ、液状にすれば胃の働きや消化を助ける効能もある。もし液状にしたこのハーブを飲み過ぎた場合、皮膚に青い染みができる副作用が出ることがある。この副作用に対する対処法は今のところ知られていない。
シャドウモス-じめじめした日陰に育ち、洞窟や沼地でよく発見される。このハーブは、採取したらすぐに、打撲箇所や骨折した患部に塗布することができる。包帯でシャドウモスを固定する場合は、毎日付け替えたほうがよい。このハーブを食べると幻覚や高熱を引き起こしたり、場合によっては死に至ったりすることもあるため、調理の有無にかかわらず絶対に口にしないこと。
ハーミットリーブス-アンカリア中の落葉樹林に育ち、茂みの間や古い木の葉の下で発見できる。ハーミットリーブスは調理の有無にかかわらず食べることができ、あらゆる痛みに対して効果がある。首や耳の痛みを抑えることもできるが、ハーブを塗布した部分の皮膚は数日間ひどい臭いを放つ。このハーブを食べると口臭がひどくなるが、パープルコーンフラワーでかき消すことが可能。栄養たっぷりの食事の味付けにはもってこいだが、ハーミットリーブスと大量のアルコールを同時に摂取すると、消化不良や下痢の原因になるから注意すること。
マンドラゴラムオフィシナラム-別名「恋人たちのハーブ」と呼ばれることもあり、岩山や砂漠地帯に生えている。このハーブは、アンカリア中の男女が知っているハーブの一つである。花には匂いがないが、つぶして食べ物と混ぜ合わすと、それを食べた後に初めて見た異性と恋に落ちるホレ薬となる。再びこのハーブを服用してもその効果が消えることはないため、まっとうな薬草師なら、十分な計画をもって使用するよう購入者には重々注意をするものである。マンドラゴラムオフィシナラムの茎は精力を高める効果があり、このハーブで作った塗り薬を皮膚に塗ると、不要な体毛を落とすことができる。
オールハーブ-よどんだ水辺や沼地に生えているハーブ。水に入れて茹で、暖かいまま飲むと、風邪や内臓の病気、特に肺と肝臓によい効能があるとされる。また、茹で汁は色あせた銀の研磨にも適している。オールハーブは、心地良い夢を伴う眠りを誘引し、イボの治療にもよいとされる。また、頭痛や歯痛を抑え、茹で汁に浸した包帯を使えば、傷の回復が促進される。料理に甘みを出すためにも使用できるが、火を通さずに食べると、髪の脱毛や心肺停止を引き起こしたり、場合によっては死に至ったりすることもあるので注意すること。
ファイアランス-アンカリアで最も希少なハーブ。活火山のクレーターの中でしか見つけることができない。その茎には強力な毒があり、皮膚だけではなく革や金属までも腐敗させてしまうため、採取には細心の注意が必要。理想的な採集の方法は、持ち運ぶ前に、まず根っこごと掘り起こし、水をはった大きなタンクに入れて火を通す。この印象的で長く赤い植物は、長きにわたって王族の食卓で風変わりな香辛料としてのみ使われてきたが、近年になって、その根っこが夢熱や恐ろしい黄炎病に効果があることが判明した。
セレンダイン-暖かすぎない川辺や流れる水の周辺に咲く、目立たない植物。セレンダインのビールは消化によいとされるが、その効果は数分後に出始めるため、飲む場所とタイミングには注意しなければならない。
スペックルモス-古い広葉樹の幹で育ち、北部でのみ発見される。皮膚や頭皮に塗布すると、ふけ、乾燥肌、皮膚炎、水虫に効果があるとされる。このハーブを食べると、なぜか自分がラマであるという思いこみを一時的に抱いてしまう現象が報告されている。なぜそうなるかは誰も知らない。
デザートハーブ-海と砂漠が出会う場所でのみ見つけることのできる希少な植物。生で、もしくは火を通してから葉を噛むと、数時間陶酔状態に陥る。お茶にして飲めばその効果は明らかに薄くなり、ちょうどよい満足感を得ることができる。デザートハーブは、愛する人を失ったり、似たような境遇の人がその悲しみに耐えたりするのを助ける薬として使用される。長期間の使用は脚部のマヒや精神障害につながる可能性があるため、続けて口にしないほうがよい。
第三の書:アンカリアにおける毒-その用途、効能、特徴
第三の書
アンカリアにおける毒-その用途、効能、特徴
シャドウウィード-アンカリアで最もポピュラーな毒草。洞窟内や岩の下のような暗がりに成長する。生で口にすると強烈な苦味があり、どんな香辛料を使ってもその苦味を打ち消すことはできない。しかし、長時間火を通すとほぼ無味となり、食事に容易に混入することができる。ハーミットウィードを加えれば苦味が完全に消え去り、毒殺の証拠を隠滅できる。シャドウウィードには即効性があり、摂取後即座に心身喪失状態となり、高熱をもたらして死に至らしめる。
ベアパー-北部の針葉樹林に生える毒草。木の梢や枝の上に成長する。葉を覆う微細毛に毒がある。茶色の毛皮のように見え、ナイフで削ぎ落とすことができる。それをそのまま食事に混入すればよい。この毒草の名前はその見た目だけではなく、その即効性にも由来している。人が熊に襲われると、太刀打ちできずに即殺されてしまうからである。
ウイッチミルクウィード-とても扱いにくい毒の一つで、その根っこからは白くて甘い香りのする液体が採取できる。液体に直接触れると皮膚を通して体内に毒がまわり、内蔵が毒に冒されてしまう。ウイッチミルクの毒素はとても弱く、数ヶ月経って効果が出ることも多い。草自体は砂漠地帯に生え、その大半が山際や岩と岩との間で発見される。毒を仕掛ける場合は足の裏が最適である。この毒は皮膚に若干の変色を発生させるため、足の裏だと見つかりにくいからだ。
デスルート-腐敗した死体上に成長するハーブ。このハーブをこして作ったお茶を飲むと、即座に心神喪失状態に陥る。デスルートは、生者と死者の両方から魂を吸い取るといわれている。デスルートの葉を食器棚に置いておけば、虫除けにもなる。
ゴーストミスト-このハーブに火を通す際に発生するガスにのみ毒素があるため、その採取には相当の技術を要する。風が強い場所では特に注意が必要である。ゴーストミストに接触した人は(それが毒薬調合者自身の腕になるかもしれないが)、激痛を伴うこぶを患う。この症状は恐ろしい大病とよく間違えられ、それを利用してヒーラーが不当な治療費を請求する場合もある。治療しなくても、こぶは2~3日経てば自然と消滅する。
ファーマーズカース-麦畑やトウモロコシ畑に成長する毒草。その花にはこぶし大の種袋がついており、何かが触れると爆発して毒のトゲををまき散らす。このトゲは激痛を伴うこぶを作り、トゲを飲み込むと死に至ることもある。その取り扱いには非常に難があるため、多くの毒薬調合者が避けて通る。
スタンブルウィード-池の近くでよく発見される毒草。よく火を通した根っこには水平感覚をマヒさせる効果があり、普通の移動すら困難になる。主な用途は、密造酒のアルコール度数の水増しである。乾燥させた葉は香辛料として使うことができ、その味はシナモンに似ている。
クラミングモス-毒があるが、畜産にも使えるコケ。荒れた山地に生え、食欲を促進する効果があるので、農場主が家畜を太らせるために使用する。まずコケを乾燥させ、少量を家畜の餌に混ぜ入れる。もし薄めずに使用した場合、摂取者は死ぬまで食べ物を食べ続けるようになる恐ろしい毒である。各国の王族が集う晩餐会にて、無用な戦争を未然に阻止するためよく使用される。
ブラックフィンガー-洞窟や廃墟のような暗がりに成長する。南部では別名トゥーステップとも呼ばれている。これは、ブラックフィンガーを摂取した後すぐに死に至るためである。その黒い葉は、火を通しても風味が一切発生しないため、濃いソースに容易に混ぜ入れることができる。残ったお茶は、染料として使用可能である。
最終更新:2011年07月31日 13:44