ニギメダナ-貳話『講堂前』
何故私は当時、海苔倶楽部という奇妙奇天烈な名前の同好会へ入ろうとしたのか。
実は私の実家は海苔の養殖場なのだ。私の実家はチェグ郊外の海沿いにある。
そこで育てているのはキンジョン海苔などという超高級海苔ではなく、
ナムチェ海苔というごく普通の海苔である。
当時は海苔倶楽部で海苔の養殖をしているということなど知らなかった。
ただ私は海苔が好きというかまあ、そんな単純な理由で入ったのだ。
ちなみに私の父の兄、つまり伯父は
ニギメダナ(和布店)を経営している。
ニギメダナとは海苔など海藻類を売っている店である。
我が実家で生産された海苔は、乾燥、加工などのプロセスを経て
伯父のニギメダナに売られる。
伯父のニギメダナはチェグの住宅街の近くにある商店街にあるため、奥様などからよく買われるのだ。
ちなみにキョウシェン風の味付け海苔も売っているため、おやつとして子供の客も多い。
伯父のニギメダナのおかげで私は喰っていけたのだ。有り難いことである。
◆
四時間待って正午になった。
私は食堂で買ってきた弁当を喰いながら講堂前でたった一人で待っていた。
何故四時間も待てるほど当時の私が忍耐力があったのかは不明だ。
そして向こうから三人の人影が現れた。
一番背の高い男は、長い前髪を真ん中で分けており、眼鏡をかけていた。
そのときは「なんだか見たことある気がするなあ」という程度にしか思わず、
彼がアレであるとは気付かなかった。
もう一人の男はなんだか知的そうで高貴な顔をしていた。ちなみに彼も眼鏡である。
そして一番背の低い男は、毎日会っていそうな見慣れた顔をしていた。
まるで寮で隣の部屋に住んでいて、自然科学研究会所属の、私と約三年付き合っている
ヤンという友人のようである。ヤンに瓜二つである。ヤンそのものである。ヤン本人である。
用語
最終更新:2011年04月09日 19:19