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*兵器・軍事技術 **【シングラル】 人型全領域戦闘機。凡そ縦軸20~30m程度のサイズ。 重力工学の粋を集めた機動兵器であり、兵器体系の常識や戦場の法則を打ち破る 性能・戦法からSingular(特異点)の名を冠せられた。シングラルのパイロットは俗に 「アクター」と呼ばれ、これは後述の特殊な操縦方式に由来している。 鉄壁の防御機構「IDeA」や「DiSc」を備え、真空炉<ケノンリアクター>を搭載することで 大出力の兵装をドライブ可能。かつ多数の斥力干渉器<リパルジョン・インターフィアラー>を 全身に内蔵し、秒速10000km以上のスピードまで瞬時に加速する。単機で惑星を滅ぼすことすら 可能な恐るべき兵器だが、恒星間戦争の時代にあってはこれすら戦闘の一単位に過ぎない。 シングラルが従来兵器に対して持つ最大のアドバンテージは操縦方式にある。アクターの 脳神経電位をフィルタリングし変換、機体の制御シグナルとして利用する脳介機装置の一種 「QFI(Qualia Feedback Interface)」により、人間はシングラルを自らの肉体として操る。 換言すればこのシステムは、ニューロンを駆け巡る信号のすり替えを行い、巨大な人型兵器を 「自分の身体である」とアクターの脳に誤認させることで成り立っている。 QFIは操縦桿や物理スイッチ類を介さないため、アクターの意思が機体の行動に反映される までの時間がきわめて短い。また直感的思考で操縦できるということは、現代の戦場で重要な 電脳戦(ロジカルコンバット)に対応するための論理的思考リソースをより多く確保できる ということでもある。従来兵器と一線を画する反応速度に、素人でも乗りさえすれば動かせる 究極のマン-マシンインターフェースを兼ね備えるシングラルこそ、宇宙空間において行われる 超高速マルチタスク戦闘の速度域に、人間が唯一追随し得る兵器なのである。 前述の通りパワードスーツの要領で直感的に操作できるため、従来の戦闘機などに比べ 慣熟訓練期間が格段に短く済むという利点もある。 一般的な機体は斥力干渉器の集中した脚部が主推進機関であり、シングラルは自ら生み出す 斥力を足場に、空間そのものを「蹴って」加速する。この際、拡散する重力波面が局所的に 電磁波のスペクトルを歪め、同心円状の光輪となって可視化される。 **【IDeA】 Ineatial Deflexion Armor(慣性偏差装甲)の略称。「イデア」と発音。 リパルサー・テクノロジーを用いた防御フィールド形成技術であり、厳密には 装甲ではないが、機体や艦体の装甲表面を鎧うように展開されるためArmorの名を持つ。 理屈としては、防御主体から見て外向きの斥力フィールドを展開し、突入してくる 質量体の運動ベクトルを偏向させる防衛機構。実弾兵器および粒子ビームに対し 絶対的と言ってもよい防御力を誇る。ある程度はレーザーなど電磁波も曲げられるが、 質量ゼロかつ減速しないという光の特質上、波長が伸びるだけで偏向効果は薄い。 フォトンドライバーのように強力なレーザーに対してはダメージ軽減も微々たるもので、 そのため対レーザー装甲と併用しての二重防御が一般化している。 排熱が追いつく限り恒星内部への潜行すら可能とする防御力は、反応弾など従来の主力兵器を 悉く無力化した。それゆえ兵器の火力インフレーションを招いた直接の原因ともされる。 **【DiSc】 Distortion Screen(歪曲障壁)の略称。「ディスク」と発音。 IDeAの斥力フィールドを単方向へ集中することでブラックホール内部に匹敵する 重力勾配を発生させ、光さえ弾き返す円盤状の空間歪曲面を形成する。正面からは 白い光の円に見えるが、裏側(つまり展開主体側)から見ると黒い円に見える。 限定的に物理法則そのものを破綻させる障壁であり、質量弾、粒子ビームはおろか 戦艦主砲など超高出力のフォトンドライバーを以てしても突破できない。破るには 同等の斥力フィールドで重力偏差を補正する(DiSc同士をぶつけて相殺など)か、 天体現象並みの高エネルギーで力押しに押すか、あるいは単純な斥力では防げない 特殊な攻撃(マイクロブラックホールカノン、相転移砲など)を行うほかない。 DiScを展開しながら体当たりするだけでも凄まじい破壊力になるため、攻撃手段として 応用する事も可能。歪曲空間を刀剣状に形成したディストーションスライサーなどが該当。 弱点として、DiScはIDeAとの同時展開が基本的に不可能な点が挙げられる。 これは原理的な問題ではなく、一般的なシングラルのRI搭載数と供給エネルギー量が IDeAとDiScの併用に耐えうるほどのレベルにないため。艦船は総出力こそ高いものの、 カバーしなければならない面積が広すぎてDiScを局所的にしか展開できず、効果が薄い。 (展開面積の拡大に比例して、DiScの消費エネルギーは二乗倍で増加する) なお、「機体全面をDiScで覆い尽くせば無敵なのでは?」との発想で、障壁の全周囲展開を 可能とするためのジェネレータと斥力干渉器を大量に増設した試作機が作られたこともある。 結果、電磁波やニュートリノなどあらゆる粒子・波動を弾き返してしまうため、視界と 索敵能力がゼロに近くなることが判明。とても実用に堪えないとして開発は打ち切られた。 構想段階で誰もこの欠陥に気付かなかったことは、現在まで残る大いなる謎である。 **【フォトンドライバー】 劇中の時代、GCC歴1014年(A.D.4009)現在の最も標準的な中・長距離攻撃兵器。 EP(エレクトロン-ポジトロン)カートリッジの激発による電子-陽電子対消滅を 線源とする、超高エネルギーのγ線パルスレーザー砲である。プログラミング可能 フォトニック結晶レンズが、莫大なエネルギーを細く収束しつつコヒーレント化し、 マイクロ秒~フェムト秒単位の一瞬間に解放する。長時間(それでも最大数秒)照射する タイプはフォトンカッターと呼ばれるが、ほとんどはフォトンドライバーとの撃ち分けが 可能なため、実質照射モードの違いでしかない。 レンズの形状には勢力・メーカーごとの傾向があり、連邦軍が採用しているものは細く 長いタイプ。利点は一発の威力・有効射程を大きくできること、欠点は砲身が長大化すること。 ザナドゥの艦船・シングラルなどに広く採用されているレンズは太く短いタイプ。 ほとんど円盤状にまで薄く広く成型されたものもある。利点はレンズへの負担が少ないこと (射撃サイクルの短縮、耐用期間の延長に繋がる)、欠点は威力・射程で長砲身式に劣ること。 フォトンドライバーはIDeAを突破するために作られた兵器で、標準的なシングラルの 携行用ですら、小さな街程度は一撃のもとに消し飛ぶ威力を発揮し得る。 (参考までに、連邦軍で最も広く普及しているポータブル・フォトンドライバーの出力は 最大で1京8000兆J=18PJ=広島型原爆の327倍のエネルギー) そのため、惑星上及び付近の宇宙空間では使用禁止、または出力を落として運用される。 有人惑星などではフォトンドライバーの威力が著しく落ちるが、これは 一般的なレーザーのような「大気による減衰」ではなく、上述の出力制限が理由。 通常の対物・対人使用に反応弾クラスのエネルギーは必要ないため、大気圏内で使うと 解っている状況ならさほど問題はない。対人モードではガトリング砲以上のスピードで 照射対象を切り替えながら連射でき、きわめて高い精度と殲滅力を兼ね備える。 リパルサー・テクノロジーを用いずIDeAを貫通し得る点で他と一線を画す兵器ではあるが、 普及してしまった現在では、IDeAの下の実体装甲が耐レーザー性能に特化している場合が多い。 そのため反応弾クラスのエネルギーを一点に集中してぶつけても一撃では仕留められず、 戦闘が長引きがちである。とはいえ数発も当たれば対レーザー装甲と言えど耐久限界を 超えることには変わりがなく、ここにDiScの使用タイミングと他種兵装による牽制などの 駆け引きが生まれる。シングラル戦においてアクターの技倆が戦果に反映されすぎる 傾向があるのは、このような攻防に求められる高度な判断が、個人技の差を拡大させる ためだと言われている。 **【パーティクルドライバー】 粒子砲。荷電粒子ビームや中性粒子ビーム、プラズマ砲などが含まれる。 要はイオンや有質量の素粒子を加速し投射する粒子線兵器全般。 IDeAと相性が悪いため、非IDeA目標への攻撃能力を追求したものが多い。 最も一般的なのは反物質を投射するポジトロンドライバーやアンチプロトンドライバー。 かつては多重シンクロトロンやストレージソレノイド加速器(蓄積リング式の進化形)、 レーザープラズマ収束加速器など電磁相互作用を用いた加速方式のみだったが、 重力工学の再発展に伴い粒子の縮退が容易になると、より省スペースかつ 本体ジェネレータの電力リソースを食わない圧縮粒子解放式が主流となった。 現在は一次加速を縮退圧で、二次加速と射線コントロールを電磁場で行う ハイブリッドアクセラレーション方式が艦船を中心として配備されつつある。 威力は投射粒子の種類や加速方式・出力・規格にもよるが、非IDeA目標への打撃力や 純粋なエネルギー量で見るならば、凡そ同サイズのフォトンドライバーを上回る。 例として、連邦軍ウォーロック級戦艦の副砲として装備されているアンチプロトンドライバーは 最大出力なら粒子生成だけで90PJ(1kgの質量に相当、広島型原爆の1635倍のエネルギー)、 さらにそれを亜光速まで加速する砲身内線形加速器の投入電力を加算すると、 エネルギー消費量は莫大なものとなる。 もっとも、弾薬となる粒子はカートリッジ式またはコンデンサー蓄積式であり、 実戦でパーティクルドライバーの最大出力砲撃を敢行する機会も殆ど無いと言ってよい。 そのため弾切れやエネルギー切れで撃てなくなったというケースは稀である。 **【実体弾砲】 質量投射兵器のうち、弾体が固体状のもの。または固体と看做せるもの。 投射体が流体状のもの(水圧カッターなど)とは区別されるが、着弾時に 固体化している場合は実体弾として扱う(単分子フィラメント形成弾など)。 歴史が長いだけに最も多様なヴァリエーションを持つ飛び道具で、弾体の加速方式と 弾頭の種類によって、発揮し得る性能には無数の組み合わせが存在する。 歩兵の携行用としてであれば火薬式(炸薬は、合成技術の進歩により少量でも高い爆発力を発揮する) も使用されるが、対装甲目標兵器としての火砲は廃れ、電磁加速砲とRACが主流。 電磁加速砲はレールガンや超電導コイルガン、マスドライバーキャノンの類。一世代前の 主力実弾兵器であったが、IDeAに対しては完全に威力不足で、一部の超大型砲を除けば 牽制用のサブウェポンにしかならなかった(斥力干渉器内蔵のRI弾頭を使用する場合は例外)。 RAC(リパルサーアクセラレーションキャノン)はリパルサー・テクノロジーを用いた 弾体加速装置で、砲弾は歪曲空間の中を「落下してゆく」形で加速する。 弾体の潮汐破壊を防ぐため人工重力の加速度(=重力勾配の傾斜率)には限界があり、 高い砲口初速を得ようとすれば比例してバレルが長大化する点では電磁加速式と同様。 しかし近年、兵器メーカー「ブラックスミス・システムアームズ」が開発した新型RACは リング状に「巻かれた」空間が元に戻る際の回転運動で弾体を押し出すことにより、 砲口初速が0.9C以上に達する遷光速実弾攻撃を実現した。この速度域ではIDeAにも有効。 BS社製の新型RACは、歪曲空間の形成に従来以上のエネルギーを食う難点こそあるものの、 バレル長はかなり短縮できるため、取り回しの向上が見込めるなどの利点もある。 加速方式を問わず、弾切れが起こり得ることに注意が必要。汎用アセンブラで合成可能な 弾種もあるが、結局材料は必要となるし、合成可能弾の多くはもはや役に立たない。 **【ミサイル】 推進装置を備えた飛翔体で、無人攻撃機などの範疇に入らないもの。誘導弾。 合成不能資源を必要としない化学推進ロケットなどは、ナノテクの発展により 安価な量産が可能となっている。しかし通常弾頭ではIDeAに対し効果を発揮しないため、 DiSc封じの牽制と割り切って使うか、逆にフォトンドライバーで隙を作るなどの工夫が必要。 ペネトレーターと呼ばれる特殊弾頭ミサイルも存在する。これは弾頭に斥力干渉器を 搭載し、目標のIDeAないしDiScを中和してダメージを与えられるようにしたもの。 当然ながら特定資源を含むので補給が必要。 有用な兵器ではあるが、着弾前に破壊されることが多く、万能にはほど遠い。 命中率向上のため、ペネトレーターの大半は敵の迎撃を自動で乱数回避する 知性化弾頭となっている。しかし小型弾はIDeAを搭載できないため簡単に破壊され、 IDeA搭載の大型弾はDiScすら貫く攻撃力と引き換えにコストが高く大量投入は困難である。 仮にRIの生産コストが現在の20%まで下がることがあれば、ミサイル万能時代が 到来すると予測している軍事評論家も一定数いる(ペネトレーター万能論者)。 **【MAUS】 Maneuver Assault Unit System(機動攻撃端末システム)の略称。「マウス」と発音。 シングラルや艦船などの「本体」を持ち、かつ本体から分離稼働する無人攻撃機等の 攻撃端末兵器全般を指す。本体を持たずに独立運用される攻撃衛星などはMAUS兵器に含まない。 パイロットの脳波でコントロールする「COMAUS」と、自律制御式の「AMAUS」がある。 (「CO」は「Consciousness Operating」、「A」は「Autonomous」の略) 一般的なモデルはリパルジョン・インターフィアラーによって機動、姿勢制御などを行う。 化学推進式のものもあるが、シングラルの戦闘速度に追随できないため防衛用などが殆ど。 搭載武装はフォトンドライバーが主流であるが、荷電粒子砲や実弾砲のものもある。 またRI搭載を活かし、それ自体が貫徹体となってIDeAごと敵機を貫くタイプや、大型の場合は 白兵戦用のリパルサーウェポンを兼ねるものもある。ペネトレーターとの違いは、着弾の際に 端末が破壊されることを前提としているか否か。再利用が効く分こちらの方が高価になりがち。 攻撃能力を持たないものの場合、二文字目のAは「Assist(支援)」の略であるとされる。 **【リパルサーウェポン】 広義のリパルサーウェポンは、リパルサー・テクノロジーを用いた(斥力干渉器を内蔵した) 兵器の総称。そのためMAUSやペネトレーター、RI弾頭、RAキャノンなども含まれる概念である。 狭義のリパルサーウェポンは、斥力フィールドによって強化された白兵戦用武装類を指す。 シングラルが装備する大剣、槍、ハンマーなどはほぼ例外なくこれで、IDeAに守られた 装甲目標への攻撃手段としては最も打撃力の高いものとなる。 機体と武器の斥力フィールドで敵のIDeAを中和して攻撃できるだけでなく、 フォトンドライバーなどに比べてエネルギー消費も少ない。レンジ外では機体の推進力の 一部として使え、DiSc展開時の補助出力器にもなる。また有人惑星の大気圏内でも 威力を制限されないなど、環境を選ばない。重力下戦闘においてはほとんど唯一の決定打と なり得る武器であり、シングラルの空中戦は必然的に白兵同士の打ち合いになる。 弱点があるとすれば、遠距離攻撃の手段にはなりにくいことと単価の高さ。MAUS兼用の タイプも存在するが、本体の斥力場が加算されないため破壊される危険も増す。 攻撃範囲の狭さゆえ艦船など大型目標への攻撃にも不向き。 **【分子兵器】 広義にはBC兵器を含むが、狭義の分子兵器は微小機械技術を用いた兵器類。 特にナノアセンブラやナノディスアセンブラ、マイクロレーザークラスターなど ナノマシンないしマイクロマシンによる兵器を指すことが多い。 かつて戦場を支配するまでに猛威を振るった兵器カテゴリだが、同じく分子機械で 対抗するアクティヴ・シールドの技術が発展するにつれ陳腐化した。またIDeAに対しては まったく効果がないことから、空間戦闘においては攻撃よりも索敵に利用される。 索敵用ナノマシンとして最も一般的なのは限ヶ島ユニバーサルテクノロジー社の 散布型微小通信ネットワーク端末システム“全知の塵(オムニシャント・ダスト)”。 対人攻撃や工作用途ではまだ使い道が多く、戦線を陰で支える脇役としては重要。 人類が地球を追われた“大喪失(グランド・フォーフェト)”の前には、 分子レベルを超えて原子レベルの物質変成が可能なアセンブラさえあったとされるが、 現在のナノマシナリーテクノロジーは未だそのレベルに再到達していない。 **【レーザーブレード】 名の通り、レーザー光を発し物体を切断する刀剣状の個人携行兵器。 かつて医療器具として用いられたレーザーメスなどとは違い、固体のエッジを持つ。 何が「レーザー」なのかというと、半透明のエッジ部全体がレーザー発振レンズの機能を 持っており、近接戦闘モードでは刀身に圧力を受けた部位からレーザーを照射するのである。 この仕組みにより刃に接触したものだけを的確に加熱し、灼き切ることができる。 実際にレーザー光束を発振している線源はグリップの部分にあり、バッテリーなども ここに内蔵されている。エッジ部はプログラミング可能フォトニック結晶体で形成されており、 グリップ部の励起媒体が発した光を蓄積・偏向・集束するコントロールユニットの役割を果たす。 時間さえかければエッジ内に膨大な電磁波を蓄えることが可能で、蓄積エネルギーレベルが 高いほど、拘束し切れず漏出する光の量が増える(つまりエッジが激しく輝く)。 結晶エッジの主要材質は炭素であり、レーザーを切った状態でもその強度は通常の エンハンスト・カーボンブレード(CNTの1000倍の引っ張り強度を持つ)に準ずるレベル。 グリップに内蔵した機器の分だけ重量は増えるが、レーザーブレードはそのまま 近~中距離用のレーザーガンとしても転用可能で、装甲目標への攻撃としても有効。 その汎用性から、勢力を問わず歩兵の標準装備のひとつとなっている。 ただし白兵武器としての切れ味では単分子ブレードに劣り、飛び道具としての射程や威力では レーザー発振媒体を大型化できない分、射撃専用のレーザーライフルなどに劣る。 各レンジで特化型の兵器に及ばない器用貧乏が弱点と言える。 **【インテリジェントアーマー】 インテリジェントウェアの派生品。戦闘に特化した鎧状のモデルで、 通常のウェアとパワードスーツの中間的な性能を持つ。 パワーアシスト機能の出力ではパワードスーツに及ばないが、防御力では 近いレベルに迫っている。演算能力はウェアを上回り、またパワードスーツより 軽量小型であるため、運用しやすい利点も。 しかし総合的な汎用性ではウェアの方が遥かに勝っているため、見栄えの良さから 市民へのプレゼンスとして一部組織が制式装備化している以外、現場ではあまり見かけない。 つまるところウェアとスーツの中間というのは、戦場においては中途半端な性能だったのである。 外見はプレートアーマー型が主流。その姿は古代地球の騎士たちが着込んだ甲冑を彷彿とさせる。 **【ブラックホール兵器】 ブラックホールを利用する兵器。主に弾頭としてであり、縮退炉などブラックホールを 動力源とする兵器は含まれない。 現在研究中のものは、空間歪曲を一点に集中してマイクロブラックホールを形成し、 これを投射して攻撃するタイプ。フォトンドライバー同様にIDeAを貫通可能、かつ エネルギー投入量が十分であればDiScさえ貫くという非常に有用な特性を持つが、 マイクロブラックホールは短時間で蒸発してしまうため射程が短いという欠点がある。 もっとも、これは誤爆の危険を減らすという意味では有用な特性でもある。 メリットの多さから、次世代の主力射撃兵器となり得るのではないかとの声も。 構想だけならば、天然のブラックホールを電場で誘導加速し目標にぶつけるという 天体現象クラスの戦略兵器が考えられたこともある。必要な時間や人的コストに対し、 あまり効果が期待できないとされたため、実現はしなかった。 **【リプレイサー兵器】 ワープ駆動の一種、リプレイサー・ドライブを攻撃に転用した兵器。敵が存在する 空間ごと消し飛ばしてしまえるため、IDeAはおろかDiScでさえ全く防御できない。 リプレイサー・ドライブは莫大なエネルギーを消費するため、シングラルのサイズで 幾度も攻撃に使用することを考えると、転移空間はごく小さな領域に限られる。しかし 転移空間を恒星内部と繋げるなどの工夫によって破壊力の底上げを図ることも可能。 理論上は全宇宙の任意の点に対し防御不能のエネルギー攻撃を仕掛けることも 可能であるが、現在の人類が作り得る兵器でそれを可能にしたものはない。 **【ロジカルウェポン】 電脳戦(ロジカルコンバット)においては、“ロジカルウェポン”と総称される戦闘用ソフトウェアを 攻防に使用する。仮想空間に投影した身体でただ殴り合ったりするだけではダメージにならない。 (苦痛の感覚もある程度は再現されるが、閾値を超えるとカットされる。また投影者の脳や 物理肉体にダメージを与えるようなフィードバックも、安全機構が働くため通常は起きない) ロジカルウェポンにはいくつかの種類があり、用途ごとに分類される。 &bold(){ 炎<フレイム>} 対人攻撃用ソフトウェア。ネットワークに接続している人間の脳や神経に直接ダメージを与える。 理屈としては、敵の神経接続端子に偽の指令を噛ませ、安全機構を迂回して過大な フィードバックを起こさせるもの。直撃なら脳にサージ電流を叩き込まれて即死、軽減できても 回路が破損して通信不能になるなど効果は絶大。 しかし当然ながら脳介機装置の安全機構は堅牢であり、後述の“氷”も合わせると 容易に突破できるものではなくなる。必殺の威力を持つ“炎”も、それ単体では防衛プログラムに 弾かれてしまう。敵の防壁に隙を作り出すため、他種のロジカルウェポンと併せた運用は必須である。 &bold(){ 雷<ボルト>} 対機攻撃用ソフトウェア。艦船、シングラル、攻撃衛星、砲台などを破壊するためのプログラム。 “炎”と同様のサージ電流で回路を破損させるタイプから、ミサイルの信管を誤作動させるものや 冷却系の機能停止を招くもの、斥力干渉器にでたらめなコマンドを出し機体を自壊させるもの、 果ては機密保持用の自爆システムを強制的に発動させるタイプまで様々なモデルが存在する。 これも“炎”と同様に各種の防壁プログラムで止められてしまうため、有効な一打とするためには 予め敵の演算リソースを削いでおくなどの工夫が必要。 &bold(){氷<アイス>} 対プログラム用ソフトウェア。主に防衛用途で用いられ、敵の攻性ロジカルウェポンを 無力化するためのカウンタープログラム。一部には人間や物理兵器への攻撃力を持つものも。 ネットワーク上に広域展開され、識別した敵性プログラムを破壊する「オフェンシヴ型」と 艦船やシングラル(人型全領域戦闘機)のメモリ領域を監視・保護する「ディフェンシヴ型」がある。 前者は敵の攻撃力を削ぐための能動的防御であり、後者は機体や人員を守るための受動的防御である。 「不正アクセスに対し発信アドレスを解析、自動的に“炎”を送り込む」などの複合的機能を 備えるモデルもある。強力だが、データが大きいため演算リソースを多く消費するのが欠点。 &bold(){迷光<ストレイライト>} 感覚欺瞞用ソフトウェア。敵兵に幻覚を見せたり、敵機のセンサーを欺いたりするプログラム。 非常に種類が多く、また“炎”や“雷”に比べて検知されにくい記述で構成できるため ロジカルウェポンの中で最も多く使用される。ほとんどが派手な視覚イメージを 伴うこともあり、仮想戦域の主役といっても過言ではない。 実際の効果は多種多様ながら、これ自体に致命的な攻撃作用や敵性プログラムの妨害機能が あるわけではない、という点では共通している。しかし生命維持に関わらない知覚情報やセンサー部は 外界との接点ゆえどうしてもセキュリティが弱くならざるを得ず、“迷光”はそこを衝いて 比較的簡単に防壁プログラムを抜け、効果を発揮することができる。そして直接的な破壊効果がなくとも、 戦闘中のアクターが幻覚を見せられたり、FCSが敵機を正確に照準できなくなったりすれば 基底現実での物理戦(フィジカルコンバット)において多大な不利を背負うのは必定である。 物理戦をサポートできるロジカルウェポン、という特異な有用性は他種と一線を画す。 また“迷光”には別の重要性もある。“氷”などの妨害をすり抜けて効果を発揮しやすい ということは、それだけ敵の演算リソースに負荷をかけられるということでもある。 総演算能力で優位に立てばそれだけ力押しが通りやすくなり、“炎”や“雷”が効果を 発揮できるようになる。けだし、これなくしては電脳戦など千日手の将棋に過ぎない。 &bold(){衝界<ナイトメア>} 演算リソースに一定以上の余裕ができた状態でしか発動できない、決戦用ロジカルウェポン。 大勢が決したところで投入し、敵の最後の砦を打ち崩すための破城鎚となるプログラムである。 電脳戦の主な舞台となるレイヤ1の仮想戦域内に、レイヤ2のフィールドを召喚し、 これを敵のレイヤ2論理結界(艦載メインフレームなど、戦術ネットの中枢を守る絶対防衛圏)へ撃ち込む。 本来であれば論理結界は内側からしか崩せない鉄壁の護りなのだが、総演算リソースで 大きく差を付けられている状況では、別のL2領域による「侵蝕」に抗しきれない。 実戦で“衝界”を使われるような事態になった場合、論理結界が崩壊する前に通信を遮断して スタンドアローン状態へ移行するのがセオリーである。もっとも、ここまで追い詰められては 逃げるのも困難なため、悪あがきのメソッドでしかない。
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