「全く、キョンの女性に対する認識の鈍さには驚嘲すら覚えるよ。」
休日に男の部屋でしかも男女二人きりで勉強会という非常においし…悩ましいイベントなのに…
いや、キョンのベッドの上でずっと眠っている猫をカウントするのであれば、厳密には二人きりではないが。
今はキョンが飲み物を取ってくると席を立ったので、眠り続ける三毛猫と僕だけだ。
「これだけ条件が整っているのに、アプローチどころか動揺すらしないのは何故なんだろうね?」
眠っている猫に問いかけるなんて我ながらどうかしていたとしか思えないが、まさか
「私が思うに、奴は自身の内に介在する異性への感情が何なのか図りかねているのではないか。」
等とえらく実直な意見が返ってくるとは思わなかった。
「…猫が…喋った?」
しばし呆然としていると、三毛猫は「しまった」と言った表情をし、
「にゃあ」
と一声鳴き、また眠る素振りを見せた。
常識で考えれば猫が言葉を発するなんてありえない。
うん、あれは疲れを訴える僕の脳がもたらした幻の類だ。間違いない。
と以前の僕ならそう結論付けるだろう。
しかし、非日常な出来事は意外と身近に存在するのを身をもって体験した今の僕は、先ほどの声が幻などではないと確信を持って言える。
物は試しだ。
「そうかい? だとしたら僕のアピールにも少しは意味があったのだろうか。例えば…。」
ガチャ
「佐々木、シャミセンに向かって独り言か?」
「うわぁ!」
「? 何を言っていたかは知らんが、そんなに猫が好きなのか?」
キョン…ホントに…君って奴は…ホントに…
最終更新:2007年07月20日 21:10