将棋というボードゲームは多分日本人ならだれしも名前くらいは知っているだろうし
中にはそこそこ強いという人もいるだろう。
将棋はここまで日本人の中ではメジャーなボードゲームの内の一つであるがその出生は謎につつまれていて
平安時代に生まれたとも6世紀に生まれたとも言われている。
現存する最古の資料としては。藤原明衡の著とされる「新猿楽記」であると言う考えが今では主流となっている
俺が何故将棋について歴史や雑学の前置きをしているのかといえば、この状況を少しでも忘れるための誤魔化しの一つに過ぎない。
やっぱり頭がいい人は何でもできるようで佐々木は着々と自分の陣形を整えつつ俺の駒をジワリジワリと剥ぎとっていった。
対する何をしても平凡な俺が平凡な陣形を整え(もうその陣形も機能していないが)
平凡な攻め方をしても勝てる分けがなく、俺の戦術はことごとく佐々木引きいる角と飛車に打ち砕かれて行くのであった。
小学生のころ夏になると戦争に実際に行ってきたと言う人に目の前で味方がなくなる悲しみを熱心に語っていたが、
所詮小学生ごときの脳みそでそんな悲痛な体験が理解できるわけもなく、ただぼーっと聞いていた。
しかし今ならあの名前も忘れてしまったじーさんの気持ちは十二分に分かる。
俺の飛車と角や歩達の無念、
コ ノ ウ ラ ミ ハ ラ サ デ オ クベ キ カ
そう思って勇んでもこの状況を打破できるわけもなく、ただ虚しく佐々木をとその周辺の自分の部屋を睨む事ぐらいしかできなかった。
「あのねキョン、これは単なるボードゲームなのだがら一駒取られる度に親の敵を見るような眼で見るのはやめて貰えないかな
やってる側としては非常に気分が悪いし、君の目にもこれ以上の負担をかけて視力を落とすのに協力する義理もないだろう」
あぁ、もしこれが普通の将棋の勝負だったら俺もここまでムキにならないさ。
お前がネチリネチリと俺の飛車や角(ryを剥ぎっとっていかなければな。
「?ぎとるとは人聞きが悪いね、純粋に将棋のゲームを楽しんでいるんじゃないか。
さぁキョン君の番だよ、諦めずに見事僕の王を取ってくれよ。」
そうやってくっくっと笑う佐々木が俺には八重歯を剥き出し、角と尻尾が生えた悪魔にしか見えなかった。
・・・・・・・・・・・・・・そんな佐々木もありかもしれないな。
イカン、イカン!!!!飛車達の無念を忘れたのか!!
悔しいが確かにここは佐々木の言う通り諦めるべき所ではない。
だけどなぁ、自分の持ち駒は歩が三枚と金銀が各々あるだけの陣形で持ち駒はさっきから握りしめている歩が一つ
おまけに周囲は竜と馬が2つと金と銀の軍団が雪崩のように攻め込んできたら諦めたくもなるだろ?
くそ!!諦めるな!!!KOOLになれ俺!!!
俺がそんな風に某同人ゲームの主人公の真似ごとをしていると、俺をさらに弄ぶかのように
「まぁ、君が諦めるのは無理もない。しょうがないから飛車と角は返そうか?
もっとも、例えそうなっても君が勝てる可能性は万に一つもないと思うが。」
等とくっくっとさも面白そうに笑いながら冷静に真実をつけつけくる。
くそ!!確かにこの状況で勝つ事は最先端のコンピューター将棋でもかなりきつい・・・・いや無理だろう。
「そんなこんな状況に陥っても諦めないエジソンンの様な殊勝な心がけのキョンにいいハンデをあげよう、
もし君が僕の駒を一つでもとれたら君の勝ちと言う事にしてあげるるよ、もっともできたらの話だが」
畜生、余裕ぶりやがって・・・・・て、ちょっと待てよ?今佐々木は何て言った?
「おい佐々木、お前のその言葉に嘘はないだろうな?」
佐々木は少しやる気を出した俺に一瞬驚きを見せたようだが、すぐにいつもの偽善的な微笑みに戻った。
「もちろんだとも、ここまで来てそんな嘘をつくほど僕はサド侯爵と同じ性癖は持ち合わせてはいないさ。」
よし、そこまで聞けば安心だ。俺は佐々木に勝てる!しかし、このままあっさり勝っては面白くない。
飛車達の無念の弔いの為少し罰を受けて貰おうか。
「そうだな・・・・・もしそこに、勝った者は負けた者の言う事を何か一つ従うって条件をつけてくれるって言うんなら勝てるかもしれないな。」
笑いだしそうになるのを堪えつつ、限りなくさりげなく飛車達の弔い戦の布陣を始める。
そんな俺に佐々木はいささか呆れたようであったが、溜息を一つつくと
「キョン、君はいよいよ頭に血が昇って錯乱したのかい?君がこの将棋に対する条件じゃないかぎり君の王将の立場は変わらないだろう。
しかしキョンがどうしてもと言うのであれば、僕も一つ条件を付け加えた事だしそれをに異論を出す脳組織は僕の脳内にはないかな。」
まるで出来の悪い生徒を諭すような口調だったがそんな事はどうでもいい。
計 画 通 り
プライドの高い佐々木の事だ、このような条件を出せばぶつくさ言いながらも了承してくれるのは分かっていた。
これでこっちの布陣は終わった、後は始まりの狼煙を上げるだけだ。
「じゃぁ、これでどうだと」
そう言って俺は今まで握りしめていた歩を確実に一駒は取れる位置に置いた。
「なっ・・・・・・・」
佐々木はと言うと今の俺の行動をセロの手品を生で見る観客のような眼で見ていた。
「ほら、お前の番だぜ。早く打てよ。」
俺は今から起こるであろう佐々木の様子をモルモットを観察しようと喜々としていたが、佐々木は内心穏やかではないようだった。
ブツブツと何事かを聞きとれない速さで呟きながら、感情のない目はどこか遠くを見つめている。
「お、おい佐々木!?」
さすがに心配になった俺が佐々木の名前を大声で言うとはっとした様子で俺を見つめてきた。
「いや済まないキョン、僕も頭の中ではこれはどうしても一駒取られると分かってはいたんだが、
深層心理がそれを固く拒絶して受け入れてくれなくてね。
それを口で一旦言えば納まるとも思っけど、僕の深層心理は僕が思う以上に固く核シェルター並に手強かったんだが
君の一言ですんなり核シェルターは砕け散ったよ。ありがとうキョン」
何だか良くわからんが自分の負けを認めるのに時間がかかったって事か?
「端的に言えばそういう事になるね、全く君がここまで策士だとは思わなかったな。
最初からこれを狙っていたんだろう?」
まさか、偶然だよ。よく親戚に将棋はどんなに有利でも持ち駒がなけらば負けるし、
逆にどんなに不利でも持ち駒があれば逆転のチャンスは必ずやってくると言われてたのを実行しただけさ。
「君の親戚は超能力者か何かかい?
まるでこの対局を読んでたかのような発言じゃないか」
そんな事言われても見かけは50過ぎのどこにでも居るような禿げたおっさんだぞ。
それより佐々木、俺が出した条件は勿論覚えているよな?
「さすがに僕の脳細胞も死滅するスピードは早くはないね。
もっとも僕としてはこの頭を壁に打ち付けてでも、そこに関する記憶を持った脳細胞だけを死滅しておきたいが。」
もしそれが実行可能だったとしても俺がそれを全力で阻止しているし、
成功したとしても次の瞬間に俺の口から直接お前の脳細胞に刻み込んやるよ。
「くっくっ、まさに君がやりそうな行為だな。で、一体僕に何を要求するというんだい?
できれば今すぐここで腹筋百回した後にスクワット百回等という無駄に体力を消耗する行為を遠慮していただきたいのだが・・・・」
俺としてはそれも選択肢にあったのだが、佐々木なら汗一つ流さずに済ませそうな気がしたのでやめておいた。
ここは是非とも佐々木が困る顔をみないと俺の勝ちとは言えない気がしたしな。
「そうだな、ここはキスの一つでもお願いしておこうか」
さすがの佐々木もこんな注文が来るとは思わないだろう、さてどうでるか。
俺はこの時佐々木の次の反応が戸惑うとか驚くとかそういう反応を見せると思ったんだが、
次の佐々木の行動は俺の予想斜め上をいっていた。
あろうことか「何だそんな事か」と言うと顔を俺に近づけてきたのである!
「ちょ、ちょっと待てよ佐々木!」
さすがの俺もうろたえてしまう、
何せムードもへったくれもない雰囲気のまま俺のファーストキスが奪われそうになったんだからな。そこら辺はご理解いただきたい。
「キョン、君が言い出した事じゃないか」
いや確かに言ったよ、言ったけでもそれは佐々木が表情を変えるのを見たかっただけで
別に佐々木とキスしたかったわけではない。
「いや、俺のことより佐々木はいいのかよ?」
そういうと佐々木は苦虫どころかゴキブリを噛みしめた顔をみせ、
「キョン、君は実に不思議な事を言うね。
君は僕にキスしろと言っておきながら直前になると、僕の了承を得ようとするその行動の真意が見つけられないよ。
仮に僕があそこで嫌だと言ったら君は、じゃあしなくてもいいよとでも答えてくれたのかい?
いやそれはありえないだろう。わざわざ君がだした条件だし、それならこんな条件を出す必要もなかった。
もしこれが僕の不快感を出すためのものだったとしたらキョン、僕は君をいささか軽蔑せざるをえないだろう。」
半径200m以内の生物に圧迫感を与える物凄い不機嫌オーラ(俺分析)を出しながら佐々木様が優雅に笑っていらっしゃいました。
やばい!!素数を数える暇もないしそんな物を数える前に体が先に動いていた。
俺は光年を超える速さ(俺体感速度)で佐々木に近づきその華奢で本当に三食食っているか不安になるような体を抱きしめた。
「きゃ!・・・っちょとな・・・」
俺の予想外すぎる行動に対抗してか佐々木も予想外過ぎる声を出してくれた。まぁ、そんな事は円周率並のパーセンテージでないだろうが、
・・・・・・・・・後ちょっと胸が当たったのはキミと俺だけの秘密だ。
「佐々木、お前がキスするのを直前で止めたのは悪かった、謝る。だが俺としては別にお前とキスするのが嫌だったわけじゃないし
むしろ俺だってしたい、けどなやはりこんな形だするのは間違ってるだろ?
それなら最初からそんな事言うなよと言うかもしれないが、俺はただお前のいつもと違う顔が見たかっただけなんだ。
でもそんな事言ってするような顔ってのは本当の顔じゃないと俺は思うんだ。
それであんな捻くりくさった言い方をしちまった、すまんかった佐々木」
しばらく沈黙が流れた。
やばい、BADENDフラグか?等と冷や汗をダラダラ流している間佐々木はじっと黙っていたが、急に口をひらいた。
「キョン、君の今の発言をまとめると僕の普段と違う表情が見たかった、
だから僕にキスするように言った、という事で違いないかい?」
オッシャルトオリDEATH
「とりあえず僕を離して顔をこちらに向けてくれないかな、これじゃあ息苦しくて仕方がない。」
平手打ちでもされるのかと思い、ビクビクしながら佐々木の方を向いた。
俺はこの時佐々木の顔はさっきの腹黒1000%スマイルかなまはげも裸足で逃げ出すような恐ろしい顔かと思ったが
やはり佐々木は俺の期待を斜め上を横切ってそこには
一人の天使が立っていた。
そうとしか言い表せない表情の少女がそこに立っていた。
これでもしポニーテールだったら俺は卒倒していたが、幸か不幸かそこの目の前にいる天使はショートカットだった。
「ささ・・き?」
俺はそう何とか捻りだし、目の前の天使の正体を確認する。
「そうだよ、でもこんな顔は家族以外には見せた事はないかな」
そう言って微笑む天使_____いや佐々木を見て俺の中の何かが切れた。
「さてとキョン、これで君の願いは叶ったわけだからこれでい・・・きゃあ!」
来ました本日の二度目の嬌声、まぁいきなり自分より背の高い男に押し倒されたんだから無理もないと思うが、
しかし俺の脳内ではそんな事より違うもので溢れかえっていた。
「すまん佐々木、しかしそれだけ無防備なお前にも問題があると思うぞ」
「そんな・・・何言って・・・・・」
やばい、うるうるした目で睨んでくる瞳がかなりエロいし、性欲を持て余します。
等と佐々木博覧会を一人でやってるその時であった
「キョンく~ん、HAHAHA鋏かしてって・・・・ってきゃあ!・・・・・・ごめん、ごゆっくり!!!」
空気が死んだ。
ついでに俺も死んだかもしれん。
そして目の前の恐ろしいほど満面の笑みの佐々木様
さてこの状況はどうしたもんかね。
END?
最終更新:2008年01月28日 08:51