祭り
「…ぇ?…ちょ…キョ、キョン!、な、何を…ッ…ひぁ…!」
気付けば俺は佐々木を抱き締めていた。
佐々木の体はとても柔らかくて甘いシャンプーの香りがした。
今胸の中にいる少女は、力を入れれば簡単に折れてしまいそうな程に華奢で儚い存在だと、そう感じた。
手を伸ばせば掴めそうな、でも何故か遠い。
佐々木ならその手を握り返してくれると思う。
俺は佐々木を信じてる、しかし俺は、自分を信じてないのだ。
自分の気持ちに気付いた時には遅かった。
悩む前に彼女を抱き締めていた。
後ろから手を腰に回して佐々木を覆うように、抱き締めていた。
「なぁ…佐々木、愛の告白、なんてしたことあるか?」
佐々木は一瞬躊躇したような表情を作り、言い淀みながらも返答してくれた。
「わ…ぼ、僕は、した事が…ないな、以前にも公言したが恋愛なんてのは、その"精神病の一種"だと、そう思っている…」
「佐々木!」
思わず叫んでいた、自分でも驚くくらい大きな声で。
佐々木は首だけで振り向いた。
表情は僅かに朱を交えている。
もういいんだ、俺は、覚悟を決めたから。
「…俺はお前と、佐々木とずっと一緒に、共に在りたいと──願ってる」
言ってしまった、俺の全てを、俺の気持ちを。
「──僕も、ううん、わたしも、キョンと共に在りたい…そう、願ってる…」
「ふふ、君はずるいな、いつも良いところばかり取ってゆく」
そう微笑む佐々木を俺はいつまで抱き締めた。
手を伸ばしてしまったのは俺だから、壁を壊してしまったのは俺だから、責任を持たねばならん。
大丈夫さ、こいつと一緒なら…親友と一緒ならどんな壁だって乗り越えられると信じてる。
今はただ永遠に、そう願うだけさ。
最終更新:2008年01月31日 14:41