『影響力』
中学のことだった。1学期の期末試験前、僕達は図書室で勉強していた時。暗い顔の須藤と岡本さんが溜息をついた
「どうしたの?須藤」
須藤は僕の顔をマジマジと見つめて言った。
「本当に勉強できる奴は勉強好きなんだってな。俺は正直勉強好きになれる自信ない」
「あたしも大嫌い。国木田君は好きなのよね?」
須藤も岡本さんもうんざりした様子だ。見ていると悲しくなった。
「僕は結構好きだよ」
「「だろうなー」」
二人の声がハモッた。やっぱり仲が良い
やたらと暗い二人とは対照的に、キョンは楽しそうだった。
「キョンはどうなの?」
「今まで嫌いだったけど、最近すごく楽しいんだ」
キョンは瞳にアンドロメダ星雲をたたえながら答えた。僕はその瞳に引き込まれそうになった。
「なるほどな、わかるよ。お前が付き合っている彼女に影響されやすいのがな」
「キョン君のエッチ」
「意味わからんぞ」
キョンの成績が上がるのも当然だろう。不思議な事は何一つ無かった。
「すまん、遅れた。キョン、隣良いかな?」
佐々木さんがやってきた。
そう、佐々木さんとキョンはいつの間にか恋人どうしになっていた。
「おう、佐々木座れ」
佐々木さんの成績は元々良いけど、最近はさらに良くなっている。もしかしてこれも・・・
「佐々木さん。勉強は楽しい?」
「僕は物心ついた頃から親に勉強させられていたから、それが当たり前で、楽しいとも苦しいとも思ったこと無かった。でも最近すごく楽しいんだよ」
「はいはい、ごちそうさま」
「ごちそうさまなのねキョン君」
「意味わからんぞ、お前ら」
「何故かちょっとだけ勉強が楽しくなってきたぞ」
「あたしも」
「気が合うなお前ら、付き合ったらどうだ」
それは中学時代の他愛の無い1こまだった。
高校に進学し、SOS団に入ってから、キョンは分厚い本を読むようになった。
「キョン、最近分厚い本を読むね。中学時代はそんな難しそうな本はほとんど読んでなかったのに」
「長門に借りたんだ。読んでみると面白いもんだな。昔本が好きだったけど、いつからか読まなくなったな何故だろうかな」
「さあ何でだろね」
本当に楽しそうだ。長門さんの影響なのか
「よう、キョン。将棋やろうぜ」
「そうだな、谷口。久しぶりにやろう」
「佐々木さんと別れてからゲームやらなくなったんじゃなかったの?」
「ブッ」
「またキョンの中学時代の彼女の話か。変な女は涼宮でたくさんだ」
そういえば古泉君と毎日しているらしいね。朝比奈さんや涼宮さんの影響も大きいのだろうなー。
ちょっと聞いてみるか
「キョン、最近勉強は楽しい?」
「楽しくない、大嫌いだ」
だと思ったよ。あの成績だからね。
「キョンは中学時代あんなに好きだったのに?」
「そうだっけ」
「勉強好きになる方法教えてあげようか」
また佐々木さんと付き合えば多分ね
「勉強なんかが好きなのは精神異常者だよ」
谷口からしたら僕も精神異常者なのかな。
ちなみにその頃、佐々木さんは成績が伸び悩んで塾に行くことになったらしい。
2年に進級した頃、キョンが勉強する姿がまた見られるようになった。
「キョン、勉強は楽しい?」
「最近少し好きになったみたいだ」
ということは・・
「キョン、最近佐々木さんと会った?」
「ブッ何を言うんだ」
再会したんだ。キョンの変化は佐々木さんと再会したためだろうか。それとも別な理由?
佐々木さんはまだスランプなのかな?それともキョンと再会して変わった?それとも別の理由でスランプを抜けたのだろうか?
僕は今度佐々木さんに会ったら聞くんだ。
「佐々木さん、最近キョンと会ってる?」そして「佐々木さん、最近勉強は楽しい?」
(終わり)
最終更新:2008年02月05日 08:36