30-711「キョンポエム」

一年前のこと
「お兄さん。付き合っている人いますか？」と妹の友達に聞かれた
「いない」と答えた。嘘をついているような気分で。最も親しいクラスメートの顔を思い浮かべながら

「好きな人いますか？」と続けて聞かれた
「いない」同じ答え。そして、同じ顔が瞼に浮かぶ

「今まで女の人とお付き合いしたことありますか？」
「残念ながら無いな」また嘘をついている気分。俺のあだ名を広めた変な女の顔が浮かぶ

「じゃあ、お兄さんが一緒にいて楽しいと感じる人は誰ですか？」
「うーん、よくわからないな…」言葉を濁す俺だが、本当は自転車の後部座席にいつも乗せている奴が、一番だと思っていた

「それじゃ、一緒にいるとホッとする人は？」
「うーん、それもよくわからないな…」それも同じ女だった

「これで最も世話になっている子にプレゼントしなさい」とお袋が言って渡した千円札
それで買った文庫本を、僕っ子はすごく喜んでくれた

「キョンの理想の女性ってどんなの？」国木田が聞いてきた
初恋の従姉妹の姉ちゃんのことを話す。従姉妹の姉ちゃんのことを思い出しながら



今も時々同じようなことを聞かれる。今でも答えはほぼ同じ。でも、何かが違う
「お兄さん。付き合っている人いますか？」
「いない」と答える。最も親しい『今の』クラスメートの顔を思い浮かべながら

「好きな人はいますか？」
「いない」これは完全な嘘だ。今度は未来人の上級生の顔が浮かぶ

「キョン。あんた女の人とお付き合いしたことあるの？」
「残念ながら無いな」瞼には僕っ子が

「じゃあ、お兄さんが一緒にいて楽しいと感じる人は誰ですか？」ミヨキチが聞く
「うーん、よくわからないな…」認めたくないが、団長様が一番だと思っていた

「それじゃ、一緒にいるとホッとする人は？」
「最近気が休まったこと無いな…」中学時代の同級生に会ったら気が休まるかと一瞬思ったが、後が怖そうなので会わないことにした

「これで最も世話になっている子にプレゼントしなさい」とお袋が言って渡した千円札
それで買った文庫本を渡した時、無口な宇宙人の顔が僅かに綻んだ

「キョンの理想の女性ってどんなの？」国木田に聞かれる
今でも初恋の従姉妹の姉ちゃんのことを話す。でも何故か頭に浮かぶのは中学時代の同級生