『プール仕舞い』
学校のプール最後の日
下世話な話だが、俺のようなもてない男子生徒にとっては女子の下着姿に極めて似た姿を拝める最後の目の保養の日。
特に今日は、25メートルダッシュ20本等の体育のノルマが無い日だから、自由に鑑賞することができるというものだ。
誰とは言わないが、クラスに2,3人いる彼女持ちは、そんなの関係ないだろうけどな。あー羨ましい。羨ましい。
「僕の観察する所、キミが本当に羨ましがってるようには見えないが」
先程まで仲の良い女子と会話していた佐々木は、人なっつこそうな笑みでわざわざ俺の所にやってきた。
「そうか?」
言われてみると、それほど彼女が欲しいとは思わんな。女の子と恋人としてお付き合いすれば疲れるだけのような気がする、というのもあるが。
「本気でキミが羨ましがっていたら、温厚な僕でもさすがに切れるかもしれないけどね。くつくつ」
考えてみればお互い布が一枚。俺と佐々木の距離は10センチも無い。
美しいものは間近で観察するに限る、というのは須藤他男子生徒数人の言だが、まあ、それはどうでも良い。
「今日でプールも最後だね。くつくつ」
「市内のプールでは日曜日までやっているらしいがな」
そんな感じで俺達はとりとめのない話をしたが……
「ねえキョン。今日で最後だから、競争しようか」
普通に泳いでもつまらないから賭けをするのはやぶさかではないが、残念ながら最近勝率が悪いんだよな。
「またジュースでも賭けるか?」
「折角だから、ドーンとでかいのを賭けよう。僕としては、土曜日の塾の帰りに食事と映画を奢ることを提案する」
本音を言うと、俺は映画よりプールが好きだ。
「俺は映画でなくて滑り台のあるプールに行きたい。そして…」
さらに俺は付け加える。
「できればビキニの水着を着てくれ」
佐々木とは何度か一緒にプールに行ったが、全部ワンピースだった。
佐々木のビキニというのがどんな奇妙な姿になるのか男でも女でも興味があることだろう。普通
一瞬空気が止まる。言った後で俺は後悔した。やはり助平な意味にとられたか?
「残念ながらビキニは所持してなくてね。でもお望みとあらば今日放課後に購入することもやぶさかではない。くつくつ」
佐々木は喜びと怒りが半々の微妙な顔で笑う。幸いなことに、それほど怒ってないみたいだ。勝つと確信しているのかな?
「それじゃ早速勝負だ」
佐々木のビキニ姿を妄想すると変な気分になりそうなので、勝負を急ぐことにした。
「一切了解。ただし、五回勝負だよ」
「どんと来い」
一回戦
勝負は50メートル自由形。10メートルあたりで差をつけられ、
ちょうど佐々木の胸のあたりが俺の頭の位置で、ついていくのがやっとこさで、そのまま敗戦。
こうして見ると、佐々木もちゃんと女なんだな。
二回戦
途中までは一回戦と同じ展開だったが、35メートルあたりから追い上げて、僅差の勝利。
興奮しているためか、乳首が勃っているのが見えた。
三回戦
前回の疲れか、ズルズル後退し、佐々木の腰を見ながら泳ぐ展開になり、もちろん敗北。これでリーチがかかって後がない。
しかし、この尻はいろいろとヤバい。
四回戦
また佐々木の胸のあたりを追っかけるヤバイ展開だったが、後半追い上げて、逆転勝利。
平均より大きめなのに制服だとペッタンコなのは何でだろ。何がって?いや、そんなことはどうでも良いことだ。
そして最終戦
これまでは50メートル自由形だったが、最終戦に限って200メートル。
それも、最初の50メートルが自由形、次の50メートルが平泳ぎ、1最後の00メートルが自由形と続ける変則的な勝負だ。
最初の25メートルはまたまた佐々木の胸のあたりを追っかける展開。25メートルのターンで差をつけられ、横を見ると佐々木の腰があった。
50メートルのターンでも差をつけられ、体一つリードされ、60メートル、70メートル、75メートル、80メートル、90メートル。必死に泳ぐが、離されないだけで精一杯。
100メートルのターンと同時にダッシュをかけ、即座に腰あたりまで追いつくが、そこで追い上げは停止。
125メートルのターンと同時に再びダッシュをかけ、胸のあたりまで追いつく。大体30センチ差で、秒にすると、えーと、よくわからん。
その後、差がつまることはなく、130メートル、140メートル、150メートル、160メートル静止画像のように真横に佐々木の胸がある。
175メートルのターンと共に最後のダッシュをかけるが佐々木も同様にダッシュをかけているためか、差が全くつまらない。
そして…
「僅差でササッキーの勝ちー」
プールサイドの審判女子が叫ぶ
周囲で歓喜の叫びをあげる数人の男女と、あからさまに落胆する数人。こいつら俺達の勝負に外馬を張ってたな。
「言っただろ。キョンは変態だからこういう展開になると」
変な雑音は無視して佐々木を見ると、さすがに疲労困憊の表情だ。
「大丈夫か?」
「キミの方こそ無理はしなかったかな?」
「でも、負けちゃったな」
「3勝2敗だね。勝負は時の運、些細な勝ち負けにくよくよしないことだよ」
差し出された手を握り返す俺がいた。
そして、放課後
「今日は水着を買いに行くから、今から付き合ってくれないか?」
「水着?もう秋になる今からか?」
「今日の賭けで、ビキニの水着で一緒にプールに行く約束だったじゃないか」
佐々木の解釈では、俺が3回映画を奢って、佐々木がプールを2回奢ることになっていたらしい。
そうだっけ?
その日、カーテン一枚向こうは全裸の佐々木がいるとかの妄想をかきたてながら佐々木はビキニの水着を購入し
土曜日と日曜日、佐々木は俺と一緒に買ったビキニの水着を着てきた。
スクール水着の白い焼け跡が何となく眩しくて…
競争したり、一緒に高飛び込みしたり、滑り台で一緒に滑ったりして、とても楽しかった。
折角水着買ったからには、ドンドン使わないともったいない。10月からは温水プールをやっているはずだから、そこに誘おう。
美しいものは間近で観察するに限る、それができるキョンが羨ましい、というのは須藤他男子生徒数人の言だが、まあ、それはどうでも良い。
(おしまい)
最終更新:2008年09月28日 17:15