「くっくっ、やあ、キョン」
SOS団の皆で学校を休んだ長門の見舞いに行った帰り道、俺は予想外の人物と出会った。
「佐々木、か・・・」
「見ての通りさ。キミは長門さんのお見舞いに行ってきたのかい?」
なぜ、お前がそれを知っている?
「簡単なことさ。今朝、あのマンションを訪問してね」
「どういうことだ」
佐々木は寂しげな笑みを湛えてこう言った。
「長門さんには僕が謝っていたと伝えておいてくれ」
「どういう意味だよ!」
「キミならば、キョン、察しはつくと思うが」
「つくわけがねぇだろ!」
「今朝、彼女の自宅に僕と九曜さんで訪問した。その後、彼女は学校を休むはめになった。ここまで言えば解かるかい?」
「お前が、九曜とつるんでいるってことかよ」
「まあ、その認識でいい」
どうなってんだ。あの集まりでもお前は橘の話に乗り気じゃなかったはずだろ。
「くっくっ、その顔を見るとキョン、キミは憤慨しているのかい?それとも驚愕かな?
ああ、言っておくけど、僕が今日九曜さんとともに行動していたのは未来人、宇宙人、超能力者の陰謀があったから
ではない。それは保障しておこう。これは僕の意思で決めたことさ」
「なんでだよ、佐々木、なんで・・・」
すると、女は自嘲気味に言った。
「一言で言ってしまうと自分のためだね」
「どういうこった」
「藤原君いわく、この後、僕が橘さんに対しあのまま態度を保留していたら、涼宮さんの暴走を止める者はおらず、
非常に面倒な事態になるらしい。1年前のとき以上にね。僕はこの世界にはそれなりに愛着もある。だから彼らに協力する
ことにしたのさ。」
「ハルヒは世界を作り変えようなんてもう考えたりしねぇよ。それにあの藤原の話なんか信じられる訳がないだろ」
「僕はキミほど涼宮さんを知らないから前者はなんとも言いようがないが、後者については否定できるね」
「朝比奈さんを誘拐しようとしたりする奴だぜ。なんで信じられるんだ」
「では、キョン、きみはなぜ長門さんや古泉君、朝比奈さんたちを信用できるんだい?」
「あいつらは―――」
「仲間だから、友人だからかい?だったら橘さん、九曜さん、藤原君も僕の友人さ。僕が信じなくて誰が信じるんだい?」
俺がないも言えないでいると、佐々木は俺をじっと見つめてこう言った。
「キョン、できれば僕のことなど忘れてくれ。そして僕はキミを傷つけるようなまねはしない。
それだけは約束するよ、キョン。僕を最後まで信じて欲しい」
***
「――――――」
「どうしたんだい?」
「――― よかった ――― の?」
「ああ」
「――― そう ―――」
「・・・ああ」
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最終更新:2009年10月15日 00:16