60-394「日だまり」

「キョン…」

いつもの声とは程遠い、俺の前でしか出さない甘い声で、佐々木はコツンと俺の肩に頭を委ねた。

「どうした?」

「もう勉強はやめたよ」

佐々木は俺の腕をきゅっとからめて言った。

「今日は君に甘えることにする」

「佐々木…」

暖かい日だまりの中、自然と重なる二つの唇。

唇を離し見つめると、佐々木の頬は仄かに紅く染まる。

「そんな目でみつめないでくれ」

「…嫌だ」

佐々木の細い肩を優しく抱き、啄むように二度目のキス。

「…んっ」

切ない声で俺の唇を求める佐々木に、愛しさが溢れだす。

「もっと君を感じていたいよ」



――まるで昨日のことのように思い出す。


「もっとお前を感じていたかったよ、佐々木」


あのときと同じ暖かい日だまりの中、
佐々木は幸せそうに微笑んだまま永久の眠りについた。


佐々木と過ごした季節はとても短かった。
もっと二人でやりたいことは沢山あった。
楽しい未来を築いていけると思っていた。


――俺は、

本当に佐々木のことが大好きだった。

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最終更新:2011年05月25日 01:42
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