66-140 それは谷口との遭遇

「あ、キョン」
 前方からすっかり耳慣れた声が耳に届く。
 佐々木が立ち止まったのにつられて俺もそうし、九曜も倣った。
「こんなところで会うなんて珍しいなあ」
「国木田、それに谷口か」
 谷口、頼みがある。ダッシュで帰ってくれないか。

「そりゃねえだろキョン」
 谷口はしまりのないニヤニヤ笑いを浮かべ、俺と佐々木にぶしつけな視線を交互にぶつけつつ

「俺も紹介してくれよ、キョン。俺はお前の親友だぜ。なんでも腹を割ってェ!?」
 言いかけた谷口の腹に強烈なボディーブローが入った。
 おい佐々木!?

「……親友。僕が鈍感なキョン相手にどれだけ勇気を出してその呼称を用いたか…………」
 さ、佐々木さん?

「その親友というポジションすらロクに固定されきれていないのにどれだけやきもきと」
 陰鬱なオーラのようなものが垣間見える。
 そのままくの字になって谷口が崩れ落ちると、はっと我に返ったように佐々木が笑った。

「す、すまないキョン。つい持病のボディーブローが」
 その意味不明な持病で倒れたのはお前じゃなくて谷口だけどな。 

「とりあえず「腹を割って」だったね。切開手術は不慣れなのだがやるしかないだろう」
 落ち着け佐々木。国木田、お前も、
「変わってないなあ佐々木さん」
 とか意味不明な言動はやめて救急車頼む。

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最終更新:2012年03月21日 01:02
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