66-487「今年のイースターは明日だぞ佐々木」

「やぁ親友」
「よう。だが今年のイースターは明日だぞ佐々木」
「くく、解っているさ」
 今回こいつに招かれ訪れた訳だが、イースターとやらに関しては俺もそれなりの知識がある。
 まあここに来て、正直それどころではない気分ではあるのだが。

 イースター、復活祭とはキリスト教の祝い日の一つで、イエス・キリストの刑死後「三日目の復活」を記念したものである。
 毎年「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるという、年によって日付が異なる移動祝日であり
 冒頭の言葉に繋がるという訳だ。説明終わり。

「意外だね。キミはこういうお祭り事には淡白なイメージがあったのだが」
「SOS団はイベントを楽しむ団体と化しつつあるんでな。明日に向けて鋭意準備中だ」
「そうかい。なら僕の読みもまだ捨てたものじゃなかったようだ」
「どういう事だ?」
「そのままの意味だよ。キミは明日は忙しいだろうから今日招いたというだけさ。このくらいのフライングは許されるだろう?」
「お気遣い感謝するぜ」
 と言いつつ俺の視点はどうにも安定しない。

「ふ、くく、どこを見ているのかな?」
「いやどうせオチは読めてるってだけの話さ」
「くっくっく。判じ物なら間に合っているよキョン」
 言葉のパズルはお前の専売特許だからな。
 あの春の日から早二年弱、電話はともかく直接対面はあれ以来だが、内面はどうやら相変わらずのようだ。

「さてキョン。ならキミはイースターの遊びをよく理解してくれていると思っていいのかな?」
「イースターエッグだろ?」
「その通りさ」
 組み合わせた手のひらの上に顎を乗せ、俺と目線を合わせるようにして首を傾げる。

「イースターエッグとは包装や彩色を施したゆで卵を作る習慣だね。
 これはヒナが卵から生まれることを、イエスが墓から出でて復活したという伝説に被せたとも
 冬が終わり草木に生命が宿る喜びを表したものだとも言われている。そして」
「そのイースターエッグをあちこちに隠して、子供たちに探させる」
 ニヤリと笑って言ってやる。
「そういう遊びをやろうってんだろ?」

「くっくっく、その通りさ。少々寂しさを感じないでもないが察しが良くなってくれて助かるよキョン」
「ふっふっふ、俺をいつまでも昔の俺だと思うなよ佐々木」
 ニヤリ笑いがぶつかり合う。
 ああオチは読めてるぞ。

「んで佐々木。察するにお前が隠してるのはそこだな?」
 指差したのは、二年前と比して豊満すぎるまでに膨らんだバストだ。
 俺がお前に性差を感じていないからこそ出来る冗談だな。まったくもってお前は変わってないようで安心したぜ。

「いや違うよ?」
 言って俺の手を取ると、親友は自らの胸部へと俺の手のひらを導いた。
 おいこらイースターエッグがそこに隠してあるなら……

「!?」

「おい親友」
「ん……なんだい親友? ああ直接見てみたいというなら……そうだね、市役所で貰える書類にサインと判子が欲しいな」
「何の事だかよくわからんな」
「ふふ、そうかい? まあ何にせよだが直接の対面を二年も我慢した甲斐はあったかな」
 言って佐々木は片頬を歪めてニヤリと笑う。二年前と違う、たっぷりと女性らしさを湛えた微笑で。

「幸甚だよ。ようやく僕の性別と肉体的成長をデジタル的に感じて頂けたようだからね」

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最終更新:2012年04月14日 23:51
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