69-117『スパイス狂想曲』

さて。お前らは好きな食い物はあるよな?俺はカレーが好きだ。
流石に長門みたいに毎食は食わないが、カレーには一家言あるといっていい。
「キミのカレーは、辛過ぎる。」
今回の騒動は、この佐々木の一言から始まった。
「牛乳を入れて、甘口にして食う奴に言われたくねぇな。」
「ほぉう?」
休日。たまたま遊びに来ていた佐々木に、カレーを作ってやったんだが……
どうやらこいつは甘口がお好みらしい。
「キョン。辛味成分は、脳にあまり良くはない。キミの脳がそれ以上劣化しない為にも、僕のカレーを食べたまえ。」
「佐々木。甘いものは肥りやすい。お前の頬っぺがハムスターにならないよう、俺のカレーを食え。」
火花が飛び散る。
佐々木は、赤い顔をして立ち上がると、言った。
「宣戦布告……そう見なしていいのかな?」
勿論だ、親友……いや、強敵(とも)よ。俺も佐々木にならい、立ち上がる。

「「宜しい。ならば戦争だ!」」

期限は一週間後。会場は、俺の家。審査員は、長門。
この条件に、佐々木は頷いた。
「くつくつ。キミのその破壊された脳細胞で、精々僕のカレーを越える算段をしたまえ。」
「ふん。糖尿病予備軍め。お前の甘いカレーなど、俺のカレーの敵でない。」
お互い、そっぽを向く。

「仲良いねぇ、シャミ。」
「にゃあ。」

翌日。俺は長門に審判を頼んだ。長門は、二つ返事でOKをしてくれた。
「よし、なら、実験のカレーを誰に食べて貰うかだな。」
やはり谷口か国木田だろう。教室で二人に話すと……
「僕は、遠慮したいかなぁ。」
「あ、ああ!そうだよな、国木田!キョン!涼宮なんてどうだ?!」
お前ら、なんでそんな怯えたようにしているんだ?俺の後ろに何かあるのか?
「ハルヒ?いや、俺のカレーは、相応に辛いからなぁ。ハルヒの舌に合うとは……。」
だから、お前ら。何でそう怯えているんだ?!そう考えていると、俺は後ろに引き倒された。
「キョン。あたし、今日はカレーの気分なのよね。」
そこには……悪鬼のような表情を浮かべたハルヒがいた。仕方ない。味見に付き合って貰うか。


俺の家で、ハルヒがカレーを食う。考えてみたら、奇妙なシチュエーションだな。
「色と匂いは合格ね。」
ハルヒは、カレーを口に運ぶ。

ほんのりとした甘さを感じたのは、一瞬。あと、口に残るのは煉獄の熱さだったわ……。(涼宮ハルヒさんの後日談)

「かかかかかか!」
氷を口に含むハルヒ。そんなに辛いか?俺もルーをすくって舐めてみた。
「……二日目だから、マイルドだな。」
「いや、そのりくつはおかしい。」
ハルヒが首を振る。
「こんなに辛いと、味なんて分からないわ。てか、辛いより痛い。」
「うーむ。」
難しいな。ならば、佐々木に倣い牛乳にするか?
「痛いから、口直しに……モゴモゴ……」
ヨーグルトでもいいな。とりあえず、俺のカレーは一般的でないみたいだ。
「……キス……してくれたら治るんだけど……」
佐々木の手法を真似るのは、嫌だが……せっかくなら旨いと言って貰いたいしな。よし、真似るか。
「……キョン……」
さて、鍋だ。牛乳入れて、甘めにして、ヨーグルト、と。
「よし、出来たぜ。……ハルヒ、何やってんだ?」
口唇を突きだし、目を閉じているハルヒ。変わった奴だな、全く。

「へ、閉鎖空間!な、何ですか、このカレーの匂いのする空間は!」

「美味しい!」
そうか。ハルヒの舌に叶うって事は、世間並に旨いって事だろうな。

「閉鎖空間が…消える…」

「ありがとよ、ハルヒ。これで佐々木に食わせる自信がついたぜ。」

「と、思ったらまたですか!か、カレーが!カレーが!」

それからハルヒに、一週間飯を奢らされたが、勝負の日は来た。
朝比奈さんや鶴屋さんも褒めてくれたし、自信はある。……古泉にも味見してもらいたかったが、今、あいつはカレーを見るのも嫌なのだそうだ。
「いざ、勝負だ。」
「くつくつ。」


まずは俺。長門は気持ち恐る恐る匙を口に運ぶ。
「…………」
一口食べた後は、掻き込むように食べてしまった。な、長門!味は……
「ユニーク。」
長門は表情を変えずに言った。さいですか。
次は佐々木。長門は、匙を口に運ぶと……
「……さっきのは、佐々木○○の作ったカレーと推測される。これが貴方。」
そう言うと、赤くなった口唇を押さえた。
佐々木と顔を見合わせる。
お互いの作ったカレーを食べてみると……

「…………」
俺好みの、辛味が効いたカレーだ。佐々木は、くつくつ、と含み笑いをしている。
「くつくつ。やれやれだね、キョン。」
「全くだ。」
笑うしかねぇな。お互いの好きな味を作っていたなんざ、馬鹿らし過ぎる。

長門は立ち上がると、席を離れた。

「…………リア充、爆発しろ…………」

ん?何か言ったようだが、よく聞こえなかった。後で聞いておくか。

「くつくつ。キョン、口を開けたまえ。」
「お前もな。」

それから、佐々木とカレーを食べさせあった。やはりカレーはうまいな。

藤原「爆ぜろ、現地人め!」
谷口「非リアは非リア同士、仲良くしようぜ……」
藤原「は、離せ!僕は非リアなんかじゃ……!み、みくる姉さーんッ!」

END

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最終更新:2013年03月03日 03:43
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