「今日は暖かいね。」
今日は陽射しが暖かい。
佐々木はよく笑うようになった。再会した時の自嘲的な笑いでなく、自然な笑顔で。
「佐々木、手を繋ぐか?」
「くっくっ。拒否すると思うかい?」
キョンが笑う。前みたいな沈んだ表情でなく、安心した表情で。
最初は、精神的な飢餓を埋めるようにキョンを求めていたが、最近では肌を重ねる回数は減った。……代わりに、その、ね。これは私の口からは言えない。
思春期頃の中学生みたいに、佐々木を求めていたのは何だったんだろうな。最近では、一回に時間かけるから、回数は激減している。
それに、こうして手を繋いで、キスするだけでも充分満たされるからな。こんな小学生みたいな事でも充分じゃないか。
「キョン。アクセサリーを見に行かないか?」
「アクセサリーか。いいな。」
繋いだ手に力を込める。手汗なんて気にしない。このような時間があるなら、ひとりぼっちだった高校時代は、前ふりとして許してやりたい。
もう、俺達はひとりぼっちでも、ふたりぼっちでもない。
大学で、当たり前に友人を作り、当たり前に環境に溶け込み、それでもお互い近くにいたいから、俺達はふたりになった。それだけだ。
アクセサリー屋の話は除外するぜ?宝石なんて分からんからな。
ただ、結構なお値打ちのものが40%オフであり、佐々木の左薬指にしか入らないサイズだった。
今、薬指を見ながらニヤニヤしている佐々木を見て、判断してくれ!ああ、今月はもう塩ご飯しか食えねぇ!
佐々木は、俺に寄り添いながら、穏やかな笑みを浮かべた。俺が一等好きな、佐々木の本来の笑顔。
「キョン。」
「ん?」
「ふたりだね。」
END
最終更新:2013年03月03日 05:34