魔王。それが僕の役割だ。
このドラクエ的な世界で、私は魔王として生きている。
「早くきたまえ。……キョン。」
地下に作った庭園。花と水に囲まれ、光に満ちたこの空間。台座に腰を掛け、私はひとりごちた。
「なんつー広い城だ……!」
魔王の城なんて、おどろおどろしいものを想像するが、この城は違う。
大理石に囲まれ、太陽光が織り成す幽玄な光景。そして水音が響く、安らぎに満ちた空間。
モンスター達が笑いさざめく声がし、侵入者である俺にも無視だ。いや、友好的ですらある。
「(古代ローマの城みてぇだな。ルネサンス期のようでもあるが。)」
建築様式の統一。そして趣味からして、俺の身近にいる人間での心当たりは、一人しかいない。
城の最深部に着く。ここもまた、手入れが行き届いた庭園だ。
「くっくっ。ようこそ。」
魔王が姿を見せる。
「やっぱりお前かよ、佐々木。」
佐々木は相好を崩す。
「ああ。久しぶりだね。お茶でも飲むかい?」
「……ああ。」
久々の再会。魔王が佐々木である事は、想像してはいたんだが……やはり悲しいものだ。魔王と勇者は戦う運命。前からそう決まっている。それがお約束だ。
紅茶を飲みながら、庭園を見る。佐々木は、ぽつりと言った。
「……勇者、いや、キョン。どうだい?」
「世界の半分を、ってやつか?」
「そんな使い古されたセリフは言わないさ。」
おや?佐々木の頬が赤い。
「僕の世界をキミにあげよう。対価はキミの世界を僕にくれることだ。イエスなら、戦争は終わり。ノーなら、世界を滅ぼして僕も死のう。」
こうして、世界は救われた。勇者と魔王の子達は、人間とモンスターの架け橋となり、共存共栄したのである……。
「こんな世界、あたしが滅ぼしてやるわ!」
「エラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラーエラー」
新たな火種は残ったが。
END
最終更新:2013年03月03日 04:24