69-374『蓼食う虫と食われる蓼』

「やっぱキョンはないわー。古泉くんみたいにイケメンでお金持ちがいいわー。」
「……そう。」
「ふええ……そ、そうですね。」
「そうか。」
「んっふ。」
ま、知ってた。俺が古泉に勝てる要素はないからな。
「さて、将棋でもやるか?古泉。」
「え?……ええ。」
ハルヒ達は、意外そうに俺を見る。
「……あんた、悔しいとかそんなんないの?」
「事実を指摘されて、悔しいもなにもあるか。実際、俺と古泉を並べて俺を選ぶヤツはいない。」
将棋の駒を用意する。
「わかんないわよ?蓼食う虫も好きずきって言うし。」
「ああ、俺は蓼だからな。だから柔らかくて食べやすい草に行ってくれ。」
下手な慰めなんかいらん。所詮俺は非リア。谷口の類友が精々だ。
そうだ、藤原も誘うか。三人寄らば文殊の知恵ともいう。非リア三人で遊べばさぞ楽しかろう。
ボードゲームで古泉を片付け、団活終了まで時間を潰す。とりあえず谷口にメールを送り、佐々木を経由して藤原にメールを送った。
返事は、二人ともイエス。谷口はともかく、藤原も意外と暇なんだな。

「……だから反対したんですよ……。彼にそうした嫉妬を煽る作戦は、絶対に逆効果になる、と……」

「よー、キョン!来たぜ!」
「僕をお前が遊びに誘うのは、既定事項にない。この遊びが、どれだけの(僕とお前は)未来に影響を及ぼす(お友達になれる)のか……ふくく……」
「すまんな、谷口、藤原。たまにゃ野郎同士の親睦を深めたくてよ。」
俺の言葉に谷口がニヤリと笑う。
「まぁ任せろよキョン。色気ぁねえが、たまにはこんなのも良かろうさ!」
「ふくくっ!親睦か!」
三人で、総合スポーツレジャー施設に入る。
「時間は三時間でいいよな?」
「ああ。」
「一晩でも構わんぞ、現地人。」
「死んじまえ。」
バスケットに、テニスに、サッカーに、バッティングに……
俺達は汗を流し、たまに通るお姉さんを冷やかし、疲れた頃にゲームコーナーに向かい、あっという間に三時間が過ぎた。
藤原と携帯番号を交換し、谷口とも親睦を深め、また遊びに行く約束をして別れる。
……すっげぇ楽しいな、こういうの。次は国木田や中河達を誘うか。
「やぁ、親友。」
不意に後ろから声をかけられた。この声は佐々木か。
「さっき、随分上機嫌な藤原くんがいてね。話を聞くと、キミと遊んだのが楽しかったそうだ。」
ほう。そりゃ何より。お前もなんなら古泉に話を通しておこうか?


「そこで古泉くんが出るのか、甚だ疑問なんだが……。僕は彼よりはキミと遊びたいよ。」
嘘つけ。
「くっくっ。この蓼め。大方何か言われて拗ねたな?」
うぐ……!やはり佐々木は鋭い……。しかし、俺が古泉に勝る所など……
「魅力の違いでないかな?古泉くんのルックスが魅力的という人もいれば、キミの唐変木さが魅力的だという人もいる。僕は蓼食う虫でね。」
……ん?
「男子との友情を深めるのもいいが、たまには僕との友情を深めてくれたまえ、親友。」
佐々木はそう言うと去っていく。

「然るのち、根っ子から食べてあげよう。」

佐々木の言葉に真っ赤になり、俺は立ち尽くした。

……まぁ、後日は略するぜ。結果だけ言えば、蓼はくつくつ虫に根っ子から食われた。
谷口達とも仲良くなり、男連中で遊ぶ機会も増えた。時々くつくつ虫も参戦し、男連中から笑われるが、まぁそこはそれだ。
ハルヒ達が古泉とうまくいくようセッティングしていたら、古泉が過労死寸前になっていた。あの美女三人が相手だとは羨ましいが、それも甲斐性だろうな。頑張れ、古泉。

「堪忍してください……」
「どうしてこうなった……」
「……エラー……」
「ふええ……」

END

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最終更新:2013年03月03日 05:04
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