69-390『ふらくら時間』

「キョン、来週の日曜日に買い物に行かないか?」
「佐々木と?構わんぞ。」
よくよく考えれば、二人で出歩くのも久しぶりか。
……さて。お気に入りの服に、お気に入りの香水に、お気に入りの…………ぱ、ぱんつに……あ、あと、ななにがあってもいいように、み、身嗜みに、財布に近藤さんを……!
こうしてめかしこんだ私の前にいたのは……ジャージにビーチサンダルのキョンだった……。

『ふらくら時間』

「随分めかしこんだんだな。見違えたぜ。」
「くっくっ。そうかい?」
ま、まぁ、ともかく……見た目のインパクトは与えたみたいだ。
「いい匂いだな。」
良かった……香水にも気付いてもらえた……
「朝比奈さんも同じヤツをつけてたな。」
…………
「人によって、香りが違うんだな。お前のほうが落ち着いた匂いだ。」
「くっくっ。香水は、つける人間によっても香りが変わるみたいだよ?」
「いい匂いだと思うぜ。何だかお前らしい匂いだ。朝比奈さんよりは、お前を思い出すようになりそうだ。」
一瞬殺してやろうかと思ったが、良しとしよう。……移り香させてやる。

「さて、映画にでも行くか?ああ、図書館はNGだ。長門が『行くな』と言っていたからな。」
長門さん、ねぇ。まぁいいが。
「映画にしようか。」
「そうだな。」
映画は、三本ロードショーされている。

『風邪ヶ丘』
『イスラエルの中心でハイルヒトラーと叫ぶ』
『秒速5キロメートル』

……どれも興味は惹かれるが、あまり見たくないタイトルなのは何故だろう?
特に2番目の映画は、死亡以外のオチがあれば御教示願いたい。

「『秒速5キロメートル』にするか。」

おい!

定番は甘いカップルものだろう!『秒速5センチメートル』のパクりなんだから、悲恋以外何もないだろう!
見てみたい気もするが、これはダメだ!悪い予感しかしない!
「風邪ヶ丘よりいいだろ?お前、恋愛は精神病だと言っていたじゃねぇか。」
ぐ…………!

結局、私達は映画館に入った。

「ねぇ、グラハムくん知ってる?レールガンの撃ち出される速さ。」

二重のパクりだーッ!
声優ネタで銀○かと思えば、ガン○ムだーッ!
もはや、どこをどう突っ込んでいいのかすらわからない。
隣のキョンの顔も、驚愕以外何物でもない。唖然とした表情でスクリーンを見詰めている。


幼馴染みのグラハムとフラッグは、運命的なものをお互いに感じあっていた。
結果は、まぁ悲恋なんだが…………
「……佐々木。これはロボット愛ものなのか?」
「……わからない……フェチズムというのは理解不能だ……」

『よいではないか、よいではないか!収録が終わったら謝りますから、監督が!土下座もさせて頂きますから、監督が!』

ベッドシーンだーッ!メカと人がどうやってーッ?!

「……出よう。理解不能だ。」
「意義なし。」

こうして、ただ単な時間の無駄は過ぎた。

次に行ったのは、食事。喫茶店に入り、トーストとサラダを頼む。……少しはお洒落に見えるかしら?
「そばめし1つ。」
「…………」

……何を浮かれていたんだろうか。キョンにとって、今日はただの友人とのお出掛け……。
万が一なんて起きるわけないじゃないか。

昼食が終わったら帰ろう……。サラダを見ながら溜め息をつく。

「……なんつーか、すまん。」
何が?
「こうして女子と出掛ける時は、こうすりゃいい、ってハルヒがほざきやがって。
どうやら俺は嘘を吐かれていたらしい。」
教えるヤツも大概だが、信じるヤツも大概だ。
「今度、埋め合わせをしたいんだが……」
……おや?少しは恵まれたかな?

「そうだね。次の日曜日なんてどうだい?」
「すまん。その日は妹とミヨキチと出掛けるんだ。」

もういい。私は席を立った。
もう知るか。そう思っていた私だったが、一通のメールで機嫌はたちどころに良くなった。

『次は、俺から誘わせてくれ。あと、お前の今日の格好は最高に似合っていたぞ。』

このフラクラめ……。つれないかと思えば、これだ。

『あんまり待たせないでくれよ?』

ここまで思考にノイズを走らせてくれたんだ。お返しはじっくりしてやる。
そうだな。遊園地を一日付き合わせてやろう。くっくっ。
次は、キョンから誘われる『デート』だ。またおめかししてやるさ。

END

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最終更新:2013年03月03日 05:06
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