69-401『みずいろ』

「なぁ、キョンって童貞なのか?」
「いきなり藪から棒に何をほざくか、お前は。」
教室。朝っぱらから谷口はかっ飛ばしてやがる。
「あんだけ綺麗な彼女がいるんだし、童貞って事はねぇよな。」
こんな時に限って何故岡部は遅い?後ろを向くとハルヒまで聞き耳立ててやがる。
「……答える必要はねぇだろ。」
「かぁー……羨ましいぜ、マジで。」
「そうかい。」
回答の後に岡部が来た。
そんな気になるもんかね、全く。俺が佐々木を抱いていようがいまいが、お前らの人生になにがしらかの得でもあるのか?

いつもの団活が終わり、俺は珍しく古泉に呼ばれた。
「すみませんね、お呼び立て致しまして。」
「……またハルヒ絡みか?」
「いえ。……半分はそうですが。」
少し溜め息を吐く。大方、ハルヒは気付いている。俺が佐々木を抱いていないと。
「……佐々木、だな?」
「ええ。……単刀直入にお伺いしますが、貴方は童貞ですね?」
「まぁな。」
隠す必要もない話だ。
「お前もハルヒも、俺が佐々木を抱かない理由が分からない。そういうどころか?」
「ええ。」
……いちいち説明するのも恥ずかしい理由なんだがな。
「それに近い事はやっている。ただ。抱いてはいない。」
古泉は、首を傾げる。
「疑問ですね。世間一般の高校生ですと、彼女を抱きたいという思いや、リビドーをぶつけたい、彼女を自分のものにしたい、という感情のみが先走るものです。
貴方は、その感情があるのに佐々木さんを抱かない。それが疑問でして。」
本当に、どいつもこいつも。


言う必要もないが、聞きたいなら聞かせてやるよ。くっだらねぇ理由だがな。

「お前、100%避妊が出来るか?」

俺の言葉に古泉が目を丸くする。
「笑いたけりゃ笑えよ。」
古泉は、困ったように微笑むと、やれやれとゼスチャーした。
「……貴方が、何故未だに涼宮さんから好まれているのか、よく理解出来ましたよ。」
「くだらねぇ。俺の自己満足だ。」
佐々木はどうか知らん。だがな。惚れた女に不要なリスクを負わせる位なら、俺は今すぐマイサンを切り落とすぜ。
「呼び出してしまい、すみませんでした。」
古泉は、そう言うと去っていった。

帰り。佐々木を駅で待つ。
「キョン、待たせたかな?」
「ああ、5分位な。」
佐々木はジト目をしながら、喉の奥で笑う。
「くっくっ。そんなつれない男は、仕置きをしてやろう。」
「やれやれ。」

今はまだ。この笑顔を守れたらいい。悔しいが、俺には何の力もないからな。
これからは自分次第だ。
佐々木を守れるか守れないかも。

「青に白足せば水色か。……ちっ。」
「キミは何を言っているんだ?」

思い描く蒼には遠いが、それまではこうして佐々木の手を繋いでいよう。
俺は佐々木と手を繋いで歩き続ける。

END

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最終更新:2013年03月03日 05:12
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