※神話が元になっていますので、一読するとイミフです。
いつから自分がここにいたか、なんて忘れちまった。
とりあえずは自分は、何か作る能力があるみたいだが、別にそれも極々つまらんもんだ。
浮き雲に乗って、今日も自堕落に過ごそうとしていたが、地上を見てみると自分と同質の存在がいる。
ずっと見ていたんだが、話す度胸もなく今に至っている。
「よう。」
「……キミは?」
「多分、お前と同じ存在。」
「へぇ。」
いつから自分がここにいたか。それはわからない。気が付いたらここにいた。あるのはひたすらに広大な大地と、ひたすらに長い時間だけ。
そんな中を、雲に乗ってプカプカ浮いている、自分と同質の存在がいる。
……興味があっても、なかなか声をかける機会がなく、今に至ったんだが……
「些か時間を持て余していたんだ。少し話し相手になってくれると助かるよ。」
考えてみたら、ここにいて初めて会話する気がするな。
「ああ、構わねぇよ。しかし、殺風景だな。」
何もない。暗闇にひたすらに静寂なだけの空間。
「全くだ。非常に無駄がないが、無さすぎるのも寂寥に過ぎる。」
二人で顔を見合わせ笑う。
「お前も手伝え。」
「何をだい?」
彼が手を上に翳すと、五色の雲が降りてきた。
「俺は作る事は出来るが、産み出せない。」
「どれどれ。……色々作ったんだね。水に、土に、宝物に、生き物か。」
くっくっ、と彼女が笑う。
「昆虫の種類が万を越えているね。どれだけ暇だったんだい?」
「うるせぇ。」
「くっくっ。いいよ。僕も何かを産み出す力があっても、何かを作り出す力が無くてね。」
雲を掴んで手を翳す。
「僕の手を握って。」
「ああ。」
それぞれの雲を、彼のイメージ通りに産み出していく。
島は土に覆われ、水が生まれ、金銀珠玉の鉱物が生まれ、生き物が生まれていく。
「おお……」
「くっくっ。壮観だね。」
天地が作られてゆく。彼のイメージ通りに産み出せたようだ。
生まれた世界を見て回る事にする。
沢山の生き物と、色とりどりの自然に囲まれ、それは『国』と定義されるものとなった。
木の上に座り、月を見上げる。
「この『国』を統率する神がいなくてはならないんだが、どうしたものかね。」
「だな。範囲が広すぎる。」
溜め息をつきながら、世界を見る。そこに、一羽の梟がやってきて、女神の肩に止まった。
「くっくっ。可愛いものだね。」
首を傾げ、目をパチパチする梟。
「動物の生態を真似てみるのも、面白いかも知れんな。」
「成る程。僕達を合わせた存在か。」
そして、天神と地神は、沢山の神を産み出した。その中でも
ペケレチュプ(日の神)
クンネチュプ(月の神)
という神は、とりわけ美しく、二柱は国の霧を払い、始まりの地を作った。
役割を終えた天神と地神は、何処かへと消えていった……。
「僕達の力を両方持つ『人間』と、僕達の形を引き継いだ『人間』がいるみたいだね。」
「しかし冴えねぇツラしてんな。」
天神そっくりの男の子が、カチューシャをつけた女の子に平謝りし、地神そっくりの女の子が仲裁に入る。
「くっくっ。さて、どうなる事かな。」
「やれやれ。」
END
スーファミや日本神話だとダークになるので、カムイ神話をモチーフにしました。
一見イミフですが、こうしたファンタジーも良いですかね?続編は無理ですが。
最終更新:2013年04月01日 00:39