パソコンのHDDのクラッシュ。よくある話だ。
だが、それがマイスウィートエンジェル、朝比奈さんのお姿を納めた『mikuru』フォルダ入りだとしたら。
お前らならどうするかね?
神様仏様、ノートン様!なんとか復元を!と祈るよな。おれだってそうさ。
おれだってそうしたさ。そしてふくげんしたさ…………クリックミスで、全消ししちまったんだが……
「…………」
痛恨の思いに下を向く。……USBに移すべきだった……!移していれば……!
「良かったー!復元出来たのね!SOS団のロゴ!」
ノートン様は、mikuruフォルダ以外を全て復元された。
「……帰る……」
小声になり、俺は幽鬼同然の足取りで団室を出た。
あの麗しいお姿を納めた、至高のフォルダ。mikuruフォルダ。もはやこの世のどこにも存在しない。
……よし。死のう。今から、すぐに。
電車がいいか、首吊りがいいか、いや、別口の俺いじめSSのように飛び降りや轢死でもいいな。
「……ン」
因みに轢死は佐々木を乗せた車に轢かれたらしいぜ。素晴らしい鬱展開だ。よし、そうと決まれば早速学校に戻って練炭の準備を
「……キョンってば!」
「うわぁ!」
いきなり後ろから声が。後ろにいたのは、佐々木だった。
「何を縁起でもない事をブツブツ言っているんだい?」
「さ、佐々木……」
俺は、天使の姿を納めたデータを消滅させるという許されざる大罪を犯した。
こんな役立たずに、最早生きる資格など……
……おや?久しいな周防。
何故佐々木と頷き合っているんだ?
ん?何だか意識が……
クチュクチュ グリグリ
「――ふん――ふ――ん」
「あっあっ、朝比奈さんのデータをっあっ、ぶっ飛ばしちまってっあっ」
クチュクチュ
「蟻編だね。」
「蟻編なのです。」
次に目を覚ました時、生暖かい目をした佐々木と橘、縛られた藤原、そして見ていると何故か頭が痛くなる鍼を構えた周防がいた。
「全く、キミの朝比奈さんへの崇拝ぶりは、狂信者もかくやだね。」
マイスウィートエンジェルに何を言うか。藤原が暴れているが、橘が腹に蹴りを入れて黙らせている……
簀巻きにされて横になっているところを蹴られているし、イギー並みに蹴られているが……大丈夫なんだろうか?
「ああ。キミが朝比奈さんの事を話したら、『みくる姉さんが汚された!』と暴れだしてね。やむを得ずさ。」
オモイシルノデスッ! ドウダッ! オモイシルノデスッ! ドウダッ! ドウダッ!
「…………」
嫌なデジャヴを感じるが、まぁいい。
「な、なぁ、周防。データの復元なんて出来ないよな?」
「――可能――――」
なんですと?!周防は、俺にUSBメモリを差し出す。
「これを――接―続――」
な、なんと!俺は周防からUSBメモリを貰う。
「因みにどんな写真なんだい?」
「ハルヒが撮った、セクハラ紛いの写真だ。因みに隠しファイルにしていて、あれ以来見てはいないんだがな。」
佐々木がジト目で見る。疑ってやがるな?だが事実だ。
「どうだか。」
つん、と横を向き、歩き去る佐々木。おい。あの二人も持って帰れ。
団室に戻り、PCにUSBメモリを接続する。
「因みに、あれは朝比奈さんのデータの復元なのかい?」
「――橘――京子が――写した――」
USBから流れたファイルは……
「な!マウスのカーソルがひとりでに!」
『保存』『sasaki』
「「…………はい?」」
佐々木から電話があった。
『き、キョン!まだファイルを開けてないよね?!』
ああ、まだ開けてはいないが……
『ぼ、僕が今から北高に行くから!開けてはいけないよ?!絶対にだ!』
余計に気になるじゃないか。しかし、佐々木。
「遠隔操作されているのか、勝手にカーソルが動いているんだが……」
『きゃあああああ!いやあああああ!』
ファイルが開かれる。……そこに写っていたのは……
「……写真立てにキスする佐々木?」
『いやあああああ!やめてええええ!』
写真立てに微笑む佐々木など、様々な佐々木の写真だ。
しかしこいつにこんな一面があるとはな。
恐らくは洋楽か何かの憧れのアーティストか何かだろう。佐々木だって思春期の女の子だしな。そこは武士の情けだ。問い詰めずにおこう。
だが、数少ない佐々木をからかうネタになるし、このファイルは隠しで保存、と。
後日――
『sasaki』フォルダの横に『haruhi』フォルダという隠しファイルがあり、
ハルヒの『いかにも自分で撮りました』といわんばかりの際どいバストショットばかりが並んでいたのは、また別の話だ。
END
最終更新:2013年04月01日 00:54