雛祭りから三日。
「そろそろお雛様を片付けるか。」
「片付けなくていいよぉ、あたし、お嫁さんになんか行かないから。キョンくんの側にいるしー。」
お前ら、妹にこんな事言って欲しくないよな?
たまたま不思議探索に佐々木一派がついてきて、昼食の時に皆に相談してみたのだが……
「ふむ。それはいけない。今からすぐに片付けよう。」
「同意する。」
「さっさと片付けさせなさい、バカキョン!」
佐々木、長門が静かに、ハルヒはテーブルを叩かんばかりに叫んだ。
「可愛い妹さんですねぇ~」
「妹さん、可愛いのです。」
「――愛――らし――――い――」
朝比奈さん、橘はニコニコしている。周防は無表情だが。ひ、他人事だと思いやがって……!
「んっふ。片付けるに越した事はないでしょうが、可愛らしいですねぇ。あなたがお困りなら、僕もお手伝いしますよ。」
顔が近いんだよ、気持ち悪い。
「いかん!今すぐに片付けさせるんだ!これは幾多にわたる禁則事項になる!」
お前、何でそんな必死なんだ?藤原。
「当たり前だ!妹ちゃんは僕の」
妹、いや、幼女について大演説を抜かす藤原を見た皆が引く。俺もだ。さすがにない。
「排除する。」
「――排除――――」
長門と周防が立ち上がり、藤原に迫った。よし、やっちまえ!
「ぬわーッ!」
俺達は、請求書を藤原の胸ポケットに入れると自宅に向かった。
自宅には妹が、お雛様の周りにバリケードらしきものを設置していた。……お前は幾つだ、全く……。
「お茶が入りましたよー。」
朝比奈さん、周防、橘は、心底どうでもいいといった表情だ。手伝ってくれよ、ほとほと困り果ててるんだ……。
一方、妹相手に本気で揉めているのが、ハルヒ。子ども相手にしても変わらない女帝気質は流石だ。
淡々と説明し、妹が眠ってしまったのが長門。……困り果てた表情の長門なんて初めて見たような気がするな。
「直したくないなら、それで結構ですが……んっふ。兄妹丼というのも乙な…………な、なにをするんですか!」
森さんお久し振りです。そして橘、何故お前まで機関に協力を?!簀巻きにされた古泉が、森さん、橘と退場してゆく……。
「朝比奈さん、兄妹丼ってどんな食べ物ですか?」
俺の問いに朝比奈さんは赤くなり……
「禁則事項です!えっちなのはいけません!」
とだけ答えた。
臍を曲げた妹に、佐々木は微笑む。
「妹さん。」
「なぁに?」
佐々木は御内裏様を持つと、言った。
「私達は、まだお雛様でないのよ?」
「……え?」
妹の関心を引いたらしい。妹は、佐々木の話を聞き入る。
「女の子は、お雛様に憧れるけどね、お雛様になる前に皆で五人囃子をするのよ。こうして笛太鼓を鳴らしながら。
妹さんはお雛様だけど、私達は五人囃子。御内裏様もお雛様が大好きだから、心配しちゃうのよ。」
「……むー……」
佐々木は穏やかに微笑み、妹の頭を撫でる。
「少し休ませてあげましょ?御内裏様を。……ね、お雛様。」
妹は、納得いかない表情ながらもお雛様を片付ける事に同意した。
お雛様を片付ける途中、ハルヒと長門が佐々木に
「御内裏様は渡さない」
と言っていたが、一体何なのかね?
朝比奈さんはニコニコしながら、少し染みのあるお雛様を感慨深そうに片付けているし。
「アンティーク大好きなんですよ。この時代のものが一番好きです。」
へぇ。因みに朝比奈さんのお雛様って……?
朝比奈さんは、ニコリと笑うと……
「禁則事項です。」
とだけ言った。……未来にいい人がいるんだろうか……。朝比奈さんは俺を満面の笑みで見ている。
「さて、これで最後だね。」
ハルヒ、長門との争奪戦を制した佐々木が御内裏様に封をした。こうして騒動は終わりを告げたのだが……
次の日、包帯だらけで精魂尽き果てミイラになっていた古泉……。森さんがツヤってたが、突っ込むと負けだろう。
俺みたいな非リアからだと羨ましい限りだ。リア充タヒねばいいのに。
一週間後、空腹で行き倒れていた藤原について、語るべきかは俺には分からん。
今はこうして皆で五人囃子しているのが、お似合いかも知れんな。
「「「「フラクラ(だね。)(ですぅ!)(……!)(だわ!)」」」」
END
最終更新:2013年04月29日 12:44