71-82『空鍋事件』

ガスコンロに火をかける佐々木。鍋を置き、鍋をかき回している。
「全く我が儘なものだ。いきなりラーメンが食べたいとは。」
まぁそれでも。自分を頼りにし、自分の手料理(といえるかは疑問だが)を食べたいと言われるのは、嬉しくはある。このせっかくの二人の時間を楽しみたい。のだが。

「僕にとって、キミと会えなかったこの1年がすべてだよ。
キミと過ごした時だけが、僕の生きた時だった。そう確信している。」

虚ろな目をしながら鍋をかき回す。その鍋の中は……空だ。
事の展開を見守っていた橘が引き付けを起こす。佐々木はラーメンを投下しようとして鍋の空炊きに気付いた。
「うかつだね。僕とした事が。」
夢から醒めたような表情で、空炊きした鍋を冷やす。出来たラーメンは……

「……カップ麺を手料理という奴も珍しい。」
「嫌なら食べるな。」

お湯をかけて三分、人類の叡智の結晶。カップ麺である。

「随分時間が掛かっていたな。」
「少々手間取ってね。」

「(言えない……中学時代を思い出してトリップしていたら、いつの間にかお湯が蒸発していて鍋を空炊きしたなんて、言えない……)」

END

みくるでやると、シャレにならないネタ。
「朝比奈さん、空鍋はやめて下さい!」

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最終更新:2013年06月02日 03:49
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